悲しむ暇すら
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この作品には残酷表現があります。苦手な方は注意してください
ユキメノコは遺体すら残さず、ヨノワールとともに消えた。
ニンフィアは取り乱し、地面にへたりこむ。
「…ミロカロス。たった今…ユキメノコが死んだ。ヨノワールを道連れにしてな」
ガブリアスは気持ちを押し殺し、ミロカロスに連絡をする。
『…そうか。ユキメノコは…私達に大いに貢献してくれた…絶対に勝たないといけない…』
ミロカロスは暗い声で、そう呟く。
『…いつまでも悲しんでいられないね。とりあえずガブリアス達はそのまま進んで。広場に向かうんだ。すぐにこちらからジュカインとドリュウズを送るよ』
「ああ。それと…ニンフィアを本部に戻してもいいか?彼女はユキメノコと仲が良かった。とても戦える心理状況ではー」
ガブリアスはニンフィアに気を使い、戻そうとする。が
「…いいや、このまま行くよ…。ユキメノコだって、それを望んでる。それに…皆が戦ってるのに自分だけ無傷でリタイアなんてやだよ」
とニンフィアは涙を拭い、立ち直る。
ガブリアスはため息をついた。
「…だ、そうだ。今のは忘れてくれ」
『…わかった。今言った通りに二人を送り、マニューラはこのまま本部の守りに置いておくよ。…気をつけて』
そこで通信は切れた。
ガブリアス達は、重い足を引きずり、広場に向かった。
そして、ヨノワールが倒されたことにより、ルカリオの結界は解けた。
同時に、ミロカロスからユキメノコが死んだことを告げられる。
「俺が…ここでヨノワールを倒してたら…くそっ!くそぉ!!」
「…落ち着け。ユキメノコは既に何者からか致命傷を受けていたそうだ。それに、ヨノワールを逃したことには…私達にも責任がある」
そうキリキザンになだめられ、ルカリオはギリリ…と歯を食い縛る。
「…一体誰がユキメノコを…あれだけの実力者を、簡単に致命傷にできるなんて…。…進むしかないのか」
ルカリオは一度考えるのを止め、キリキザン達と共に進んだ。
「ーもう我慢ならねぇ…!出るぞ!仲間がやられておきながら、留まってられっかよ!」
ガイラルは激昂しながら、ミロカロスに話す。
ミロカロスは苦い顔をしながら、首を左右に振る。
「…駄目だ、いいかい?君やルカリオはアルセウスから狙われている。実際、ヨノワールもルカリオの時間稼ぎに現れたろう?二人を同時に出したりしたら…どうなるかわからないんだよ」
とミロカロスはなだめる。しかしガイラルは、ミロカロスの前の机に音をたてながら手を置いた。
「…理屈じゃねぇだろ。俺が重要な立ち位置なのはわかってる。だが!仲間の仇を討てないままアルセウスに勝ったとしても…!なんにも嬉しくねぇんだよ!!」
「…大将、落ち着きなよ」
怒り狂うガイラルの肩を、バクフーンが触れた。
ガイラルは手をパッと払う。
「落ち着けねぇよ…!」
「いいや、嫌でも落ち着け。外に、なんだか嫌な気配がするぜ。これを迎え撃とう。そのくらいならかまわないでしょ?ミロカロスさーん」
そう言われ、ミロカロスは渋々頷いた。
「…!なんだ、この気配は…幹部…か?」
ガイラルはバクフーンの言った通りに外の気配を探る。その気配は深い殺気を孕んでおり、ビリビリとした鋭さがある。
かなりの実力者だと感じた。
「…わからないね、だけど…このままにしとくわけにはいかないよね。行くよガイラル」
「…お前と共闘なんて、久々なこった。いこう」
ガイラルとバクフーンは、その気配の正体を探るべく外に出る。
すぐ近くにはいなかったらしく、周辺には見当たらない。
「…もう少し遠くか」
ガイラルとバクフーンは、気配へと走っていった。
ブリガロンは不可解な技により、深いダメージを負っていた。トリックルームからは出れず、その中ではゴロンダは速くなる…素早さの逆転だ。
「っぐ…う!!」
ブリガロンはダメージにより、膝をついた。ゴロンダはにやにやと笑う。
「おお?もう終わりかぁ?旅団のリーダーさんよぉ?」
トリックルームの外で、マフォクシーは術者である兵士を攻撃するが、特殊な障壁に守られていた。魔術が一切通らないのだ。
「くっ、魔術が全く通らない…その為の防御兵がいるのね…!このままだと…!」
マフォクシーの言うとおり、トリックルームを発動する為の複数の兵士の背後に、別の魔術を唱えている兵士がいた。
一人の魔術障壁ならばたやすく破れるが…複数となると難しい。エルレイドによる作戦だったのだ。
これで、一人では劣る兵士でもマフォクシーを止めることが可能なのだ。
「さぁ!終いだ!」
ゴロンダはブリガロンに止めをさすべく、拳を振りかぶった。その瞬間、一つの影がトリックルーム兵の首を掻っ切った。
そして、トリックルームが消えかかる。
「…ぬぉぉぉぉ!!」
ブリガロンはすかさず壁を殴り、トリックルームから抜け出した。
そして、影の正体を見た。
「おまえは…!ゲッコウガか!?」
「…なんだ、翠の旅団のリーダーか。それとマフォクシー。まぁいいや…仕事の続きだ」
ゲッコウガは動揺するゴロンダに襲いかかり、何発もの水の刃を空中に作り出す。それを器用に一つずつ掴んではゴロンダを斬り、無数の斬撃が迸る。
「…『無影』」
「ぐぅおぉおぉお!!?!」
そして、最後の刃でゴロンダの喉を斬りつけた。
ゴロンダはふらふらとよろめき、倒れた。
ぼそりとゲッコウガが呟く。
「…幹部補佐撃破。報酬弾んでよ、ミロカロス」
『…流石としか言えないね。勿論さ』
無線でミロカロスに伝えていたらしく、その場から飛び去った。
そして、ブリガロンも治療の為に本拠地へとテレポートをした。
一方、城内のエルレイドは、ゴロンダが倒れた事を兵士より告げられた。
「…ゴロンダがだと!?くっ、他の補佐も次々とやられているが…まさかあの陣形を崩すとはな…しかも、ゲッコウガがか…ギルドなどやはり宛にならないということか」
エルレイドは椅子に座り、作戦を建て直そうと長考する。
すると、そこにゴウカザルが歩いてきた。
「俺、いきましょーか?そろそろ動きたいんですよねー。とりあえず、主力の奴等を血祭りに上げてやろうかなと」
「…ゴウカザルか。いいだろう、少し早いが…お前に任せた。役目は戦力削り、後はお前の自由だ」
その言葉を聞き、ゴウカザルはにやりと笑った。
味方…ブリガロン、負傷
敵…ゴロンダ、死亡
敵、残り幹部3人、補佐4人