悲しむ暇すら

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読了時間目安:7分

この作品には残酷表現があります。苦手な方は注意してください

ユキメノコは遺体すら残さず、ヨノワールとともに消えた。
ニンフィアは取り乱し、地面にへたりこむ。

「…ミロカロス。たった今…ユキメノコが死んだ。ヨノワールを道連れにしてな」

ガブリアスは気持ちを押し殺し、ミロカロスに連絡をする。

『…そうか。ユキメノコは…私達に大いに貢献してくれた…絶対に勝たないといけない…』

ミロカロスは暗い声で、そう呟く。

『…いつまでも悲しんでいられないね。とりあえずガブリアス達はそのまま進んで。広場に向かうんだ。すぐにこちらからジュカインとドリュウズを送るよ』
「ああ。それと…ニンフィアを本部に戻してもいいか?彼女はユキメノコと仲が良かった。とても戦える心理状況ではー」

ガブリアスはニンフィアに気を使い、戻そうとする。が

「…いいや、このまま行くよ…。ユキメノコだって、それを望んでる。それに…皆が戦ってるのに自分だけ無傷でリタイアなんてやだよ」

とニンフィアは涙を拭い、立ち直る。
ガブリアスはため息をついた。

「…だ、そうだ。今のは忘れてくれ」
『…わかった。今言った通りに二人を送り、マニューラはこのまま本部の守りに置いておくよ。…気をつけて』

そこで通信は切れた。

ガブリアス達は、重い足を引きずり、広場に向かった。





そして、ヨノワールが倒されたことにより、ルカリオの結界は解けた。
同時に、ミロカロスからユキメノコが死んだことを告げられる。

「俺が…ここでヨノワールを倒してたら…くそっ!くそぉ!!」
「…落ち着け。ユキメノコは既に何者からか致命傷を受けていたそうだ。それに、ヨノワールを逃したことには…私達にも責任がある」

そうキリキザンになだめられ、ルカリオはギリリ…と歯を食い縛る。

「…一体誰がユキメノコを…あれだけの実力者を、簡単に致命傷にできるなんて…。…進むしかないのか」

ルカリオは一度考えるのを止め、キリキザン達と共に進んだ。





「ーもう我慢ならねぇ…!出るぞ!仲間がやられておきながら、留まってられっかよ!」

ガイラルは激昂しながら、ミロカロスに話す。
ミロカロスは苦い顔をしながら、首を左右に振る。

「…駄目だ、いいかい?君やルカリオはアルセウスから狙われている。実際、ヨノワールもルカリオの時間稼ぎに現れたろう?二人を同時に出したりしたら…どうなるかわからないんだよ」

とミロカロスはなだめる。しかしガイラルは、ミロカロスの前の机に音をたてながら手を置いた。

「…理屈じゃねぇだろ。俺が重要な立ち位置なのはわかってる。だが!仲間の仇を討てないままアルセウスに勝ったとしても…!なんにも嬉しくねぇんだよ!!」
「…大将、落ち着きなよ」

怒り狂うガイラルの肩を、バクフーンが触れた。
ガイラルは手をパッと払う。

「落ち着けねぇよ…!」
「いいや、嫌でも落ち着け。外に、なんだか嫌な気配がするぜ。これを迎え撃とう。そのくらいならかまわないでしょ?ミロカロスさーん」

そう言われ、ミロカロスは渋々頷いた。

「…!なんだ、この気配は…幹部…か?」

ガイラルはバクフーンの言った通りに外の気配を探る。その気配は深い殺気を孕んでおり、ビリビリとした鋭さがある。
かなりの実力者だと感じた。

「…わからないね、だけど…このままにしとくわけにはいかないよね。行くよガイラル」
「…お前と共闘なんて、久々なこった。いこう」

ガイラルとバクフーンは、その気配の正体を探るべく外に出る。
すぐ近くにはいなかったらしく、周辺には見当たらない。

「…もう少し遠くか」

ガイラルとバクフーンは、気配へと走っていった。





ブリガロンは不可解な技により、深いダメージを負っていた。トリックルームからは出れず、その中ではゴロンダは速くなる…素早さの逆転だ。

「っぐ…う!!」

ブリガロンはダメージにより、膝をついた。ゴロンダはにやにやと笑う。

「おお?もう終わりかぁ?旅団のリーダーさんよぉ?」

トリックルームの外で、マフォクシーは術者である兵士を攻撃するが、特殊な障壁に守られていた。魔術が一切通らないのだ。

「くっ、魔術が全く通らない…その為の防御兵がいるのね…!このままだと…!」

マフォクシーの言うとおり、トリックルームを発動する為の複数の兵士の背後に、別の魔術を唱えている兵士がいた。
一人の魔術障壁ならばたやすく破れるが…複数となると難しい。エルレイドによる作戦だったのだ。
これで、一人では劣る兵士でもマフォクシーを止めることが可能なのだ。

「さぁ!終いだ!」

ゴロンダはブリガロンに止めをさすべく、拳を振りかぶった。その瞬間、一つの影がトリックルーム兵の首を掻っ切った。
そして、トリックルームが消えかかる。

「…ぬぉぉぉぉ!!」

ブリガロンはすかさず壁を殴り、トリックルームから抜け出した。
そして、影の正体を見た。

「おまえは…!ゲッコウガか!?」
「…なんだ、翠の旅団のリーダーか。それとマフォクシー。まぁいいや…仕事の続きだ」

ゲッコウガは動揺するゴロンダに襲いかかり、何発もの水の刃を空中に作り出す。それを器用に一つずつ掴んではゴロンダを斬り、無数の斬撃が迸る。

「…『無影』」
「ぐぅおぉおぉお!!?!」

そして、最後の刃でゴロンダの喉を斬りつけた。
ゴロンダはふらふらとよろめき、倒れた。

ぼそりとゲッコウガが呟く。

「…幹部補佐撃破。報酬弾んでよ、ミロカロス」
『…流石としか言えないね。勿論さ』

無線でミロカロスに伝えていたらしく、その場から飛び去った。
そして、ブリガロンも治療の為に本拠地へとテレポートをした。





一方、城内のエルレイドは、ゴロンダが倒れた事を兵士より告げられた。

「…ゴロンダがだと!?くっ、他の補佐も次々とやられているが…まさかあの陣形を崩すとはな…しかも、ゲッコウガがか…ギルドなどやはり宛にならないということか」

エルレイドは椅子に座り、作戦を建て直そうと長考する。
すると、そこにゴウカザルが歩いてきた。

「俺、いきましょーか?そろそろ動きたいんですよねー。とりあえず、主力の奴等を血祭りに上げてやろうかなと」
「…ゴウカザルか。いいだろう、少し早いが…お前に任せた。役目は戦力削り、後はお前の自由だ」

その言葉を聞き、ゴウカザルはにやりと笑った。





味方…ブリガロン、負傷
敵…ゴロンダ、死亡

敵、残り幹部3人、補佐4人

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