第54話

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この作品には残酷表現があります。苦手な方は注意してください

海上区域は横風がやや強かったが特に支障があるわけでもなく普通に通行できた。しかし、スパイアにとってはかなり酷な状況だったようで本人は疲労困憊の様子である。

ス『ぜぇ・・・ぜぇ・・・。』

タ「ちょ・・・スパイア大丈夫?ボール戻っておく?」

ス『いや・・・これくらいでへこたれてたらダメだからね・・・ぜぇ・・・ぜぇ・・・。』

タ「やっぱりボールに戻っておいて。」

ボールに戻るのを拒むスパイアであったがタツミは問答無用でボールに戻した。やはり翼があるため風の抵抗を受けやすいのだろうか。


海上区域の中にはトレーナーが休憩や回復できるようにと休憩所が設けられている。タツミはそのうちシオンからくると最初に現れる休憩所にて休憩することにした。

休憩所自体は海の上に建っているという訳ではなく小島を改良してその上に建てられているようで、まだ出来て間もないのか中は綺麗で大変使いやすい。


タ「さて、ここからセキチクまであと・・・・長い・・・。まぁ気長に歩いていこうかね。」

タツミは休憩所から出発した。ちなみにここからセキチクまでは大体30キロ前後。今日中に着くのは無理だろう。


休憩所から南側も海上区域だがこちらの方が外海に近いからかやや荒れた天候になっている。しかし、そんな中でも自転車に乗っている強者もいるのでまだそれほど危険な状況ではないのだろう。
ココを通らずに迂回するのもあるのだが、そちらは自転車専用道路を通らなければならない。自転車が無い場合は旧道を通ることになるが長い間放置されているため車は勿論歩行者も通行に大変
支障をきたす程になっている。

タ「さてさて、さっさと行こうかねぇ・・・。でも人通りは少ないなぁ。やっぱり今日ははずれの日かな?」

確かにタツミが言うように人通りは少ない。その理由はやはりタマムシ側のサイクリングロードから行った方がまだ交通量や距離を考えると得策だからだ。



タ「・・・・・・・・・。」

あの後タツミは歩き続けたのだが目の前にあのカビゴンがいた。どうもカビゴンがいることによって道が寸断されており警察が迂回するように言っていたのが通行者が少ない主な理由だったようだ。

タ「さて、邪魔だね・・・。うーん・・・どうしようか~。レガ出てきて。」

タツミはどうやらあまりにも気持ちよさそうに眠っているカビゴンを起こさないように空から迂回するようだ。

レガ『うわ~・・道全部ふさいでるよ・・・。』

タ「そうなんだよね・・・だからちょっと空を飛ぶで迂回しようかなと思ってね。スパイアはあんまり調子よくないみたいだからレガに・・・・。」

レガ『別に僕は構わないけど・・・でもまだちょっと不安あるよ・・・?』

タ「・・・落とさなければそれでもいいよ?」

レガ『うん・・・わかった。』

タツミはレガの背中に乗り昨日と同じ要領で、まだ慣れていないレガは助走をつけ空へと飛びあがった。

タ「おお~楽々と空に飛びあがれるようになったね。」

レガ『うん!』

レガは飛ぶことに不安を感じていたがいざ飛んでみると全然安定感はあり下手するとスパイアよりも安定して乗りごごちは良かったようだ。

タ「あっ、そこらへんでいいよ?結構風強いし疲れるでしょ?」

レガ『別にこのまま次の町まで飛んで行っても良いよ?風の抵抗って言っても僕にとっては微々たるものだし全然大丈夫だけど・・・。』

タ「そっか・・・じゃあこのまま行っちゃおうか?遅くに着くよりは早めに着いて町でも回ってみても良いかもね。」

レガ『そうだよ、やっぱり町に行っても素通りじゃ勿体ないよ?』

っと言うことでタツミはこのままレガの背中に乗ってセキチクシティまで行くことにした。また、意外にも空を飛ぶで飛んで移動する人が多く下手すると空中戦をやっている人もいた。

タ「うわ~・・・空中戦やってるよ・・・。」

レガ『今の僕ではちょっと避けたいな・・まだ飛ぶのも慣れてないしあんな感じにタツミを危険な目に遭わせたくないしね。』

タ「ははは・・・。」

暫く飛んでいると前方に一つの町が見えてきた。どうやらあれがセキチクシティのようである。

レガ『タツミ、町が見えてきたみたいだよ?どこに降ろせばいい?』

タ「そうだねぇ・・・じゃあポケモンセンタ―の前でいいよ。」

レガ『でも結構人だかり出来てるよ・・・あれじゃあ目立つんじゃないかな・・・・?あっちの建物の前にする?』

タ「うーん・・・そうだね・・。じゃああの建物の前で降ろして。」

ポケモンセンターの前は謎の人だかりが出来ていてとてもじゃないがデカいレガを降りさせる訳にはいかずにちょっと離れてはいるが旧サファリパーク正門前へと降ろしてもらうことにした。
サファリパークは現在園長不在の為一時閉鎖しているようだ。

タ「よし、何とか町には着いた。レガお疲れ様、ボールに戻っとく?」

レガ『いや、タツミと一緒に歩こうと思うよ。ボールの中は流石に居心地悪くて・・・。』

タ「マジですか・・・。ほかのポケモンもそうなのかな・・・・?」

レガ『うーん・・・どうかは分からないけど確かスパイアは苦手って前言ってた気がする・・・クラウンは相変わらずタツミと一緒に歩きたそうだけどね(笑)』

タ「そうか・・・もうちょっと考えないといけないね・・・。悪いことしたなぁ・・・。」

レガ『あっ、タツミが決して悪いわけじゃないし本人が言ってたのもかなり前の事だから今はどうかわからないよ?ただ僕は歩きたいな~と思ってね。』

タ「そっか・・・じゃあちょっと歩こうか。」

タツミとレガは町をとりあえず散策してみることにした。セキチクシティはカントー地方でも南部の方に位置しており海に面したやや大きな町である。海に面しているため夏場は海水浴が出来
よく泳ぎに来る人がいる。放射冷却がある時は氷点下まで下がるが基本は温暖な地域である。カントー地方の中心都市のヤマブキからは大体100キロ前後離れているが何とかレガの力を借りて
シオンから1日で来ることが出来た。ちなみにシオンからずっと歩きで来る場合は最低でも2日は掛かる。

タ「うーん・・・あんまり歩いている人が多いってわけでもないね・・・。見るところは少ないのかな・・・?」

レガ『そうだね・・・。海はあるけどちょっとなんかね・・・。なんかちょっと寂しい気がするなぁ・・。』

タ「古い地図なんだけどちょっと離れたところにショッピングモールがあるみたいだね。なるほどねぇ・・・。」

レガ『そっちに人が行っちゃった事?』

タ「簡単に言うとそういう事か・・・。んー・・・じゃあもう今日は休もうか。」

レガ『それもそうだね・・。特に何もないしこのまま歩き回っても収穫少なそうだしね・・・。』

タツミとレガはポケモンセンターへと進路を変更した。しかし、その途中・・・

ト「あっ!お前!強そうなポケモン連れてるな!俺とバトルだー!」

タ「人は少なくてもいる人は元気ってことか・・まぁいいよ。」



結局タツミ達がバトルを終えてポケモンセンターへと辿り着いたのは夕方6時過ぎだった。



タ「スパイアってボールの中にいるの嫌い?」

ス『急にどうした・・・?まぁ嫌いだね。なんか馴染めないし・・・。』

タ「そっか・・・わかった。ありがとね。」

ス『?タツミどうかした?』

タ「いや、ただ聞いてみたかっただけよ。気にしないで。」

ス『タツミがそういうならいいけど・・・。』

スパイアはどこか気にはなりながらもそれ以上は追及しなかった。それに対してタツミは早めに就寝したが、何時もは早めに寝ないタツミが珍しく早めに寝たので気になり他のポケモン達へと
スパイアは相談した。

ク『っでどうした?むっちゃ眠いんだけど・・・。』

ス『ごめんごめん、っでタツミの事なんだけど・・・。』

レガ『タツミがどうかしたか?今日は別に普通に過ごしていたけど。それよりも眠い・・・。』

ス『急にボールの中にいるのが嫌いかって聞いてきて・・・、何時もはそんな質問してこないのに気になってね・・・。』

ク『まぁ確かにボールの中は窮屈だよね・・・。こうやって外に出していてもらった方が楽と言っちゃ楽かな~。』

レガ『あっ、それ僕が言ったからだ・・・。』

ス『言ったって?』

レガ『ほら、前スパイアがヒトカゲだったころにボールの中は嫌いって言ってたじゃん。それをタツミに言った・・。』

ス『それでか・・・。それでタツミは?』

レガ『まぁ特に何も思って無さそうだったけど・・・。んー・・・。』

ク『スヤァ・・・』

フ『スヤァ・・・・』

ル『・・・2人はもう寝ちゃってますね。』

レガ『まぁ疲れていたんだろう。寝かせておいてあげよう。それよりもタツミの事はあんまり心配しなくても良いと思うよ。』

ス『えっ?』

レガ『タツミは確かによく悩む、そして考えすぎるし何でも自分のせいにしようとするけど今までも乗り越えてきたから。今回も大丈夫だと思うよ。それよりもスパイアが悩んだ時の方がまだ怖いね、僕は。
今はそっとしておいてあげた方が良いんじゃないかな?』

ル『確かにそれが良いかもしれないですね。』

ス『うん・・・・。』

レガ『とりあえず僕たちももう寝よう。今日は結構疲れたから・・・お休み。』

ス『おやすみ。』

ル『じゃあ私ももう寝ます。お休みなさい。』


ポケモン達も眠りに就いたがスパイアだけはまだ眠れずにいた。そんな中動く人影があった。その人影は静かにゆっくりと部屋から出ていった。

ス『・・・・?タツミ?』

スパイアは不審思い影の後を追って部屋から出ていった。


タ「はぁ~なんか眠れないなぁ。なかなか相手の思っていることを知るって難しいなぁ・・・。でも、なかなか難しいしなぁ・・・。うーん。」

ス『タツミ。』

タ「!?・・・・・なんだ、スパイアか・・・。どうした?もう遅いけど・・・?」

ス『タツミ、そんなに深く考えなくていいよ。タツミがそんなに悩むと僕だってかなりへこむよ・・・。』

タ「あー・・・ごめんごめん。大丈夫よ、それほど深くは考えてないから・・・それよりも早く寝た方が良いんじゃないの?疲れているでしょ?」

ス『・・・タツミはどうするの?』

タ「うーん・・・もうちょっとここに居ようと思うよ。」

ス『なら僕も一緒に居る。』

タ「今日は風強いし明日も早いから寝た方g」

ス『タツミ!』

タ「は・・・はい。」

ス『前にタツミは言ったよね?どんな時でも僕を助けるって。』

タ「確かにそういう事は言った覚えはあるけど・・・。」

ス『だったら一人で悩まないで僕に相談してよ・・・悩んでいるタツミを見ているとこっちも・・・。』

タ「はぁ・・・・わかった話すよ。今日海上区域歩いていたでしょ?その時スパイア嫌がったじゃない?」

ス『う・・・うん。』

タ「今日レガから聞いたけどボールの中が嫌いだって聞いてね・・・。あーあの時も無理やり戻してしまったなぁ・・・。と思ってね。しかも今までも何回もボールに無理やり戻して・・・。
申し訳ないったらありゃしないってね・・・。」

ス『そんな・・・確かに僕はボールの中は嫌いだけど・・・。無理やりは・・・。』

タ「そうそう、自分でも言い聞かせているんだけどなかなか納得いかなくてね・・・。ごめんね、意味わからん悩みで・・・。気にしないで。」

それを聞いていたスパイアは一息ついたと思ったらタツミの所まで歩きそっと抱きしめた。

タ「?スパイア・・・?」

ス『僕にはタツミが近くにいるだけでいいんだよ・・・。ボールがどうこうじゃなく・・・・。だから僕の事で悩まないでいいんだよ・・・。』

タ「でも・・・・実際嫌なんでしょ?」

ス『・・・・本当のところはね・・・。でもタツミが迷惑になるでしょ?ずっと連れ歩いていたら。』

タ「でも最近は連れ歩いている人が多いしなぁ・・・。でもやっぱりスパイアばかり連れ歩いていたらクラウンがすねそうだし・・・。」

ス『いや、たまにでいいんだよ?本当。』

タ「そうだねぇ・・・。まぁ気分転換程度に歩く?」

ス『それが良さそう。』

タ「よし、じゃあそうしようか。それよりも早く寝た方が良いよ?あとスパイアありがとうね。少しは気持ちが落ち着いたよ。」

ス『何時もタツミに助けてもらってばっかりだからこれくらいなんてことないよ。』

タ「もう寝ようか。時間も時間だし・・・。」

ス『そうだね・・・。』

タツミとスパイアは部屋へと戻って行った。その道中のスパイアの顔は安心しきったようにそしてどこか嬉しそうにしていたんだとか。
最近の最高気温可笑しいですね。

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