近づく決戦

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この作品には残酷表現があります。苦手な方は注意してください

あれから2日過ぎた。
会話や稽古を交わすうちに、全員が打ち解けていた。

「ーでさ、ここにルカリオ達を配置してー」
「なるほど…それならー」

ガイラル、ガブリアス、バクフーン、キリキザンらは決戦での作戦を相談していた。ミロカロスは残った兵士を呼び集める為に、自室で連絡をしているらしい。

ルカリオはサーナイトとバシャーモと共に雑談をしていた。

「すっかり打ち解けているな、兄さん達」
「だな。最初よりは緊張が解けてるな」

今は自由時間。しばらくしたら個人での戦力強化が待っている。
格上がひしめく中での特訓。ルカリオはそれを楽しみにしていた。

「あら、何話してるの?」
「楽しい話なら混ざりたいねー」

そこに、ユキメノコとニンフィアが歩いてきた。

「特に何も。ただの雑談だよ」
「そうなの。アナタ達3人は本当に仲良いのねぇ」

とユキメノコは笑いながら言った。
…確かにそうだな。特に意識していなかったが…年が近いこともあるのだろう。

「はは、まぁな。付き合いはまだ浅いけど、色々とあったからなぁ」
「色々ー?教えてよ?」

とニンフィアが気の抜ける声で聞いてきた。
ーそうだな、とルカリオは思った。

「じゃあ、経緯を話しましょうか?ルカリオさん、バシャーモさん」

サーナイトはそう言い、二人は返事をした。





場所は変わり、ミロカロスの部屋。
王族の部屋にしては、あるのは机とベッドと書籍のみ。寝るための部屋といった所だ。

「…うん。頼むよ、『ギルド』の力も借りれば、勝率は格段に上がるからね。勿論報酬は出す」

ミロカロスは通信機を使い、何者かに連絡をする。

『…そうだな。こちらとしてもアルセウスは目障りだ。あちこちで暴れてるせいで得意先が殺されたりしてな…だが、いくらそっちが王族であろうとも…報酬は結構頂くぞ。俺はともかく、部下の命は安くないからな』

と通信先は答えた。
ミロカロスはクスリと笑い

「…悲しいことに、お金は有り余ってるからね…惜しまないよ」
『…分かった。明日辺りに顔を出させてもらう。俺自身がな』

そう言い、通信を切る。

「よし、『翠の旅団』…『ブリガロン』の力を借りれるなら…かなり助かるね。次は…『紅の魔女』、『マフォクシー』だ」





「さて、作戦の説明をするとしようか。まだ細かな作戦ではないが、大体の動きを頭に入れておいてくれ」

ガブリアスは全員を集めて、大きな地図を広げた。
ミロカロスが持っていた、クワイエット周辺の地図だ。

「クワイエットは広いよ。城下町、城の前の大きい広場、城に通じる廊下、それと避難ようの隠し通路がある。まず、アルセウスが兵士を大量に配置するとするならー、ここかここだね」

ミロカロスはそう言い、小さな赤色の石を地図に置いた。
置いた場所は、城下町と広場だ。

「…やっぱりね。城下町、広場…共に城へ入る事が出来る道があるからね。ここに多く兵士を配置してもおかしくない」

ゾロアークは顎を触りながら頷く。
ミロカロスは続けた。

「となれば私たちも、そこに兵士を投入したいよね。…ここで問題点があるんだけどさ」
「問題点か…それは?」

ルカリオはミロカロスに聞いた。ミロカロスは石を触る。広場の石だ。

「この広場は見ての通り、必ず城下町を抜けないとたどり着けない。つまり城下町の兵士を退けないとここに兵士を置けないんだよ。更に城下町の兵士を倒した後で、広場の兵士と満足に戦えるとは思えない」

とミロカロスは説明した。二重に兵士を配置させては、こちらの消費が激しくなる、とガブリアスは言う。
ここでキリキザンが口を開いた。

「…となると、必要なのは戦力の強化…、つまりは私達の誰かで何人か兵士と戦ってもらう、だな。士気を上げることも出来る」

それにミロカロスは頷いた。
戦力を維持する事が重要になってくるからだ。

「…長期戦になる。ここは…兵士を率いてもらう為にガブリアス、ニンフィア、オーダイル、バシャーモに頼みたい。城下町には幹部や幹部補佐はいないはずだから、苦戦にはならない筈。となるとタフな人に頼みたいからね」

そうミロカロスは4人を見た。
4人は、頷いた。

「任せてもらおう」
「頑張るよ!」
「おーけー、暴れてやらぁ!」
「ああ!わかったぜ!」

早くも配置が決まるやいなや、ミロカロスは提案を入れた。

「こっからは独断で判断してほしいけど、戦況がこちらに傾いたら、君たちは一旦本拠地に戻ってほしい。十分に回復したら、また動いてもらいたいからね」

再び4人は頷いた。
だが、オーダイルが手を上げた。

「回復はどうするんだ?寝るのか?」
「いや、回復班を作るよ。これには…サーナイト、クチート、ガイラルに頼みたい」

と3人を指差す。サーナイトとクチートは頷き、ガイラルは複雑な顔をした。

「俺は待機…ってことか。アルセウスを倒すとなったら移動ってことか?」
「そうだね、それと本拠地の守りにもついてほしい。治癒も得意みたいだし、ここがベストかなって。…不満かい?」

ガイラルは首を振る。

「…いいや、アルセウスを倒すことに集中できるからな。だが、戦況が悪くなったら出るぞ」
「うん、勿論だよ」

ミロカロスは笑う。
だが、直ぐに真剣な表情に戻る。

「本拠地には、私の護衛としてゾロアーク、バクフーンを配置するね。大概の敵なら私達だけで対応出来るし、いざとなればガイラル達もいる。あんまり人数割きたくないし」
「…強気ね。本拠地にいきなり攻めてくる可能性だってあるのよ?」

とユキメノコは不安気な表情になる。ミロカロスは微笑し

「…そうならないようにするんじゃないの?君たちがさ?信頼してるよ」

その言葉を聞き、ユキメノコは「一本取られたねぇ」と笑う。

「さて、次は特殊行動班だ。遊撃手と呼んでもいい。これには…マニューラ、コジョンド、ユキメノコに頼みたい。基本的にどこの場所にいてもいいけど…重要なのは戦力を削ること。暗躍してね」

つまりは、暗殺だ。重要戦力をコッソリと削るという事だ。
3人は頷く。ここでコジョンドが一つ提案をする。

「僕は…本拠地の近くに潜んでもいいかい?狙撃したいんだけど」
「なるほどね、スナイパーか。勿論良いけど…仲間に当てないことと、敵に気づかれないようにね」

それにコジョンドは頷いた。遠距離からの援護という事だ。
ガブリアスが咳をする。

「…いいのか?コジョンド。お前は戦いに参加しなくても良かったんだぞ。出来れば巻き込みたくはない」
「水臭いなぁ。ここまで話を聞いてさ…今更引くつもりはないよ。…僕の責任もあるんだし」

コジョンドは視線を落とす。武器をエルレイドに渡した事を悔やんでいるようだ。ガブリアスはふぅ、と溜め息を付いた。

「こっから重要だよ…広場には引き続きガブリアス達に行ってほしいけど、それでも危ないかもしれない。だから、ここにはジュカイン、ドリュウズにも向かって貰う。真正面から迎え撃ってね」

2人は頷いた。広場の戦力はかなりの厚さだ。これならば不足の事態にも対応できる。

「次、避難経路には…手が開いている人とルカリオ、キリキザン、ダーテングに向かって貰うよ。ここは、ルカリオを守護する形でね」

ルカリオは、力強く頷いた。避難経路は、アルセウスがいるであろう玉座に通じる道…かなり重要だと分かっていたからだ。

「…負けないぜ…!アルセウス!」

静かに、ルカリオは呟いた。

次は、最後の場所だ。

「…ここには最高戦力をつぎ込むよ!城に通じる通路には、ガイラル、バクフーン、ゾロアークに向かって貰う!本拠地の守りは薄くなるけど、タイミングさえ良ければ問題ない。ここと避難経路はアルセウスがいるはずの玉座に続いてる。出来ればルカリオ、ガイラルは同時に行ってほしい。どちらかが欠けても駄目だよっ!残りの人でルカリオとガイラルのサポートをしてね」

とミロカロスは勢い良く地図を叩いた。避難経路と通路…ここに敵も強い戦力を置く筈だとミロカロスは言う。

「あとは…他にも助っ人を呼ばせて貰ったよ。三大ギルドの一つ、「翠の旅団」。ゾロアークレベルの魔術師、「紅の魔女」。そして…裏の世界の住人、「水刃」だ。過剰なまでの戦力だよ。…エルレイドがもし刀の力を使い、それを理想の石で止めたとしたら…レシラムやゼクロムすら呼び寄せてしまう。そうなったとしての保険も兼ねてね」

とミロカロスは言う。ギルド…傭兵の中でもかなりの強さを誇るというチームだ。金さえあれば雇える事ができ、大きな戦力になる。
他の2つも、かなりの強さのようだ。

「…もう一つ言わせて貰うと…殺す気で戦ってね。相手を死なせないように戦って、勝てる相手だと思わない方が良い。これだけの戦力があっても、まだアルセウスのが上。兵力は桁違いだ。一人一人が120%の力を出すんだよ」

ミロカロスは全員の顔を見ていく。
…分かっていた事だが、兄さんは複雑な表情だ。殺さないという方針を、守れないかもしれないからだ。

「…さて、とりあえずこれだけ。後は実戦でどうなったとしても、視野広く動いてほしい。不足の事態は想定してね。それじゃ」

溜め息を付いた後、ミロカロスは部屋に戻っていった。

決戦まで一週間を切った。ルカリオは、手に力を込めていた。




「…これは…凄い光景ですね」

ゴウカザルは城から広場を見て、呟いた。隣にはエルレイドがいた。

「ああ、数千にもなる兵の数…これならば負ける事はないだろう。更に、幹部補佐もいる。…オノノクスの抜け穴くらいは埋めることができたな」

ゴウカザルの眼前には、びっしりと配置された兵士がいた。ミロカロスが集めた兵士よりも、何倍も多い。
ゴウカザルは、にやりと笑った。




「…アブソル、もう少しで仇を討てるからね…ミロカロスを殺して、僕も…」

ジャローダは部屋に籠り、ぼそりと呟く。

「死のう」




クワイエットの空は、どこまでも灰色だった。
次回、少し遅れます…申し訳ありません

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