前へ

しおりを挟みました
しおりが挟まっています。続きから読む場合はクリックしてください
読了時間目安:9分

この作品には残酷表現があります。苦手な方は注意してください

もう少しで書き溜めていたストックが無くなります
かなり遅くなるかも…
「父さんが…ガブリアスに一族の言葉を…。本当だな?その話」

兄さんは少し沈んだ声でガブリアスに問い掛けた。ガブリアスは無言で頷く。

一族の言葉は、俺も聞いた事がある。
だが、実際に使う事は無い。その時は、死んで誰かに何かを託す時に使う言葉だからだ。

そして、それを託された者の掟は…。

「…分かったよ。父さん」

兄さんはそう呟き、ガブリアスは唖然としている。

掟とは、『託された者は生きて願いを達成する」事だ。つまり、ガブリアスは死ぬまで兄さんを守るという訳だ。
一族の掟に厳しい兄さんだから、父さんの約束を破りはしないだろう。それに…このガブリアスを責める理由なんてない。

「ガブリアス。お前はこれからも俺達の仲間だ!だが、父さんに託された願いを、遂行しろよ。お前のせいで父さんは死んだんじゃない。父さんは…生きて俺達を守る事をしたのではなく、誰かに託すためにガブリアスを庇ったんだ」

「…!だが、それでは示しがつかな…」

ガブリアスが戸惑っていると、兄さんは鋭い目付きで

「今まで通りにいくと思うなよ?俺を死ぬ気で守る気持ちでついてこい!まあ、俺は死なねぇがな」

フンと鼻を鳴らし、兄さんは笑った。
ガブリアスはしばらく黙った後、

「…分かった!今まで以上に、俺は働くさ。ガイラル達の親に、恥じない働きをな」

いつものクールな笑みを溢した。
俺も当然、ガブリアスを咎める気は無かった。





しばらく相談した後、コジョンドがある物を手に出現させた。
黒くて丸い、石だ。ただそれだけの石なのに、吸い込まれそうな威圧感を放っている。

「これは?」

サーナイトが不思議そうに、その石を眺める。コジョンドは得意気に

「理想の石。まあ、順に説明するよ――」





コジョンドから聞いた話は、かなり深刻な話だった。エルレイドが、それほどまで神の支配者に命を捧げているとは…。そして、それがジャローダと言っていた事なのか?まだなんとも言えない。

「それで?どう手に入れたんだ?それほどの品を。効力を失っているとはいえ、貴重な物だろう?」

ガブリアスが腕を組みながら、コジョンドを見た。

「大した理由じゃないよ。家族代々伝わっている秘宝だよ。もしもの為にね。だけど、永い時間使われてなかったから効力を失ったんだってさ」

コジョンドは両手をなびかせ、呆れ顔になる。だが、コジョンドの話には何かが引っかかる。

「本当か?その話。本当に、『効力を失い、力を抑える』だけなのか?」

ガブリアスは、有無を言わさない威圧感を放ちながらコジョンドに問い掛ける。使命感からか、場の空気は重い。

「…効力は間違っていないよ。だけど、もう一つある。ただ…」

コジョンドは、何かを考えて口ごもる。ガブリアスは間髪を入れずに

「ただ、なんだ?」

コジョンドは諦めたのか、口を開いた。

「それは…、力を抑えるだけじゃなくて、『吸いとった力で、ゼクロムを復活させる』んだ」

「ゼクロム…?それは、一体…」

思わず口ずさんでしまった。ゼクロムなど、聞いた事は無い。
サーナイトは何かを知っているようで、額から汗が垂れた。

「ゼクロム…って、確か『理想を司る神様』…?」

「理想を司る…神様だって?」

俺は初耳だったが、ガブリアスとサーナイトは深刻な表情をしている。そんな中、コジョンドは話を続けた。

「そして、ゼクロムが復活したら、世界は危険に晒される。再び『黒と白の戦争』が巻き起こると言われているんだ」

黒と白の戦争…?それも全く知らない。自分の知識力を恨むぞ…!
サーナイトとガブリアスは、更に深刻になる。

「まさか…ゼクロムとレシラムが暴れ、世界の大半が消し飛んだ、黒と白の戦争が…!?」

レシラム…?また知らない言葉が出てきたが、それよりも、世界の大半が消し飛んだだって!?

「レシラムって、誰だよ?そいつも、神様か?」

バシャーモが眉を歪ませながらガブリアスに聞く。

「…レシラムは、ゼクロムと対をなす神だ。真実を司ると言われている。そして、その二人の争いこそが黒と白の戦争…!二人の色が黒と白に別れているから黒と白の戦争じゃあない。
…世界を、“モノクロになるまで破壊した”からだ」

ガブリアスが、衝撃の真実を言い放った。
ゾロアークが、話に割って入ってきた。何かに疑問を持っているようだ。

「ちょ、ちょっと待ってよ!ゼクロムが復活するだけなら、大丈夫じゃないの?」

恐らく、ゾロアークはレシラムがいない限り大丈夫だと言いたいのだろう。
だが、当然そんな簡単な話じゃなかった。

「…レシラムもゼクロムも封印されたけど、僕は家族から言い聞かされてきたよ。片方が復活すると、必ずもう片方も復活するとね。そして、エルレイドの力を止めるには、絶対に理想の石を使わないと止められない」

「てことは…!」

「そう。エルレイドをもし倒しても、今度は神を二人も相手にしないといけない。二人とも、多分とんでもない強さだよ。もう既に、敵はアルセウスだけじゃないんだ!」

コジョンドの言葉で、場の空気が更に重くなった。
俺達は、とんでもない戦いをしているのだと、深く考えさせられた。

「でも、やるしかないよな?アルセウスだけを倒したらいいが、まだジャローダ、ゴウカザル、そしてエルレイドがいるんだ。ただでは通れない」

決意を固め、俺は言った。回りの反応は、予想通り更に暗くなる。

「フン…ガイラルさん達がいるんだ。勝てない敵はいない」

ジュカインはそうではなく、むしろやる気に満ちていた。兄さん達と合流してから、いきなり饒舌になった。

「買いかぶりすぎだろ。もう俺らはルカリオ達と大差無いぜ。お前もな」

兄さんは笑いながらそう答えた。兄さんこそ買いかぶりすぎだと思ったが、あえて心にしまった。





それから数分がたち、遂にジャロス家の前にたどり着いた。
勿論行かない手も考えたのだが、互いにミロカロスを敵に回すのは厄介過ぎると思ったから。護衛に付いていた人の数からも、本人の行動からも、かなり発言力がある人物だと容易に判断出来るからだ。

「取りあえず、私が先行して行くね。…誰か知ってる人がいれば良いけど」

ゾロアークがスッと前に出てきて、辺りを見回した。

見張りの兵が数人いて、当然ミロカロスはいない。王族がいるというのに、随分手薄な警備だ。

「さっ!行こうよ」

先行して歩くゾロアークに続き、コジョンドが歩き出す。不審に思ったのか、見張りの兵士が次々とゾロアーク達に近づいてきた。俺達も小走りで近づいた。

「貴様ら…ジャロス家に何用だ?敵か?」

兵士は険しい表情を浮かべ、俺達をまじまじと見る。敵と口にしたという事は、何らかの敵対勢力と緊迫した状況なのかもしれない。

「私達はミロカロスに誘われてきたんだよ。誰か、伝えてくれる?」

ゾロアークは何処か懐かしそうに兵士を見つめ、言った。

「ミロカロス様だと…?…もし本当なら、首をはねられる前に伝えなくては…。誰か!伝令を!」

「はっ!」

一人の兵士が他の兵士に伝え、全力で走っていった。
中々、ジャロス家の兵士は大変そうだ。

「取りあえず、この場から動かないで頂く。もし嘘なら、ただでは帰さんからな」

兵士は凄みながらゾロアークを睨む。ゾロアークは全く怖じけず

「ああ。いいよ」

そう答えた。

「さってと…。取りあえず、待ちますか。何するよ?」

オーダイルがその場で座り、ふぅとため息をついた。

「そう…だな。そうだ!反神の支配者のメンバーが全員揃ったみたいだし、何か話をしてくれないか?」

俺がひそかに聞きたかった事を言った。幹部五人いると聞いたし、兄さん、ガブリアス、マニューラ、オーダイル、そしてジュカインだ。何か話も聞けるかもしれないからな。

「ルカリオ。まだ“幹部”は四人だけだぞ?ジュカインは、まだ修行中の身だったしな」

ガブリアスがしばらく目を丸くした後、話した。ジュカインは恥ずかしそうに目を反らした。そうか、ジュカインはしたっぱだったな。じゃあ、後一人いるって事だ。

「アイツか…。普段から何考えてっか分かんないから、今どこにいるか分かんないね…」

マニューラは唸りながら、腕を組む。周りの反神の支配者メンバーも同じ反応だ。

「じ、じゃあ、名前教えてよ。気になるじゃんか」

そこまで印象的な人物となると、更に気になる。

「名前は…」

ガブリアスが言葉をいいかけると同時に、ジャロス家の家のドアが開く。中からは、鮮やかな炎を纏うイタチの様な人が現れた。

「お待たせしました!『ジャロス家護衛員総責任隊長』バクフーンです!今から、ミロカロスさんのもとに案内します!」


元気な声だけが響き、辺りは静まり返った。

読了報告

 この作品を読了した記録ができるとともに、作者に読了したことを匿名で伝えます。

 ログインすると読了報告できます。

感想フォーム

 ログインすると感想を書くことができます。

感想