選ばれし者
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この作品には残酷表現があります。苦手な方は注意してください
再びルカリオサイドです!
光輝くルカリオを見て、ゴウカザルは歯を噛み締め、とてつもない形相で睨み付けた。
「俺がやろうとしていた事を…、いとも簡単に…っ!紅き目ぇっ!ルカリオォォ!!」
おぞましい叫びを上げ、サーナイトとジュカインは思わず遠退いてしまった。
「ルカリオさん…!それは一体…?」
サーナイトが吹き荒れる風圧を腕で耐えながら、ルカリオに聞いた。
ルカリオから放たれる青白い光に、段々と紅い光が混ざりだした。
「…これが、『オーラブレード』を俺に渡した理由だと思う…。ゴウカザル!てめぇはここで食い止める!」
すると、なぜかルカリオは『オーラブレード』を地面に突き刺した。
突っ込んでくるゴウカザルに対して、ルカリオは素手のままで走り出した。
「『拳』!!」
瞬間に何発ものゴウカザルの拳がルカリオへと繰り出されるが、ルカリオはそれをもろともせず、
「今の俺なら…。止まって見える!」
ニヤリと笑い、余裕の表情を浮かべながら拳を全て拳で弾いた。
ゴウカザルは両腕を弾かれてバランスを崩しかけ、すぐに戻そうとしたがルカリオは一歩前に出た。
「俺は、剣だけでここまで来たわけじゃねぇ!ガブリアス直伝!『飛竜拳』!」
すかさずルカリオは右手をゴウカザルの頭の上に上げ、左手を顎より下に持ってきた。
そして一気に頭を挟みこむように殴打し、ゴウカザルが怯んだスキに右足で顔を蹴り飛ばした。そして、そのままルカリオは後ろへと下がった。ゴウカザルは意識が飛びかけるが、意地で戻す。
「がっはぁ…!…なめるな!『焔』!」
そしてエネルギーを身体中から右手に集め、体をひねらせて野球のボールを投げるように、ルカリオに火の塊を投げつけた。
燃え盛りながら、その火のボールはルカリオへと近づいていく。ジュカインがそれに接近する。
「ルカリオ!俺が弾いてやる!お前は気にせず進め!魔術!『グランドプレート』!」
ルカリオに近づく火の玉にジュカインは、地面を大きく踏みつけ、ルカリオの目の前に板状の土を出現させた。
その土に当り、火を水で消したような音をたて、火の玉は消滅していった。ルカリオは笑う。
「恩に着るぜ!…ゴウカザル!俺の仲間を傷つけた罪、許しはしない!」
ルカリオは大きく土を踏み、『ブースト』を用いてゴウカザルへと高速接近する。
ゴウカザルは
「来い!力の差を思い知らせてやる!」
迎え撃てる様に、拳を前に突きだした。
ルカリオは溢れるエネルギーを両手に集中させ、波動弾を撃つ時の倍の光を放った。
青白く輝く光はとても濃く、そして力強く光っていた。
「これはオリジナルの技だ!!仲間の痛みを知れぇぇ!『波動連打』ッ!!」
ルカリオは右腕を下から上に打ち込もうとする構えを見せた。
「ちっ!」
ゴウカザルは一瞬で両手を腹に近づけ、ガードをしようとする。
だがルカリオの右腕から繰り出された拳は、ゴウカザルを容易く上空に吹き飛ばした。
「一発!そして…」宙に浮き、血を吐き出したゴウカザルへとルカリオは飛び上がり、接近した。
「でぇぇぇりゃああ!!」
横向きで浮くゴウカザルの腹に拳を垂直に構え、全体重をかけた重い拳を腹に連続で打ち込んだ。
「ぐぁぁぁぁぁあっ!!」
地面へとゴウカザルは吹き飛ばされ、地面に背中を強打した。
大量に血を口から吐き出し、ゴウカザルは苦しそうに倒れた。
ルカリオは着地し、倒れ込むゴウカザルの近くへと寄った。
「俺の勝ちだ…!さあ、兵士を連れて帰れ!それが出来ないなら…!貴様を殺す…!」
今までの怒りを込めたルカリオの言葉は、回りにいた全員に緊張が走るほど重く冷たい声だった。
「……まだまだ駄目か…。流石、『オーラブレード』に選ばれし者だな…!ここまで、『オーラブレード』を使いこなせる奴はこの世にいねぇか…」
ゴウカザルは手を顔に置き、悔しそうに声を漏らした。
サーナイトは最大まで貯めた魔術を使い、ゴウカザル以外の全員を回復させた。だがゾロアークとバシャーモはまだ立ち上がることが出来なかった。それほどまでにダメージを受けていた。
「さあ…。早く行け。今ならまだ殺しはしない…」
ルカリオの怒りは大分収まったようだが、言葉に感情はほとんど無かった。
「へ…へぇ…。アンタ、神の支配者をみすみす逃がすのか?甘ちゃんだな…」
ゴウカザルは笑いながらルカリオを指差した。
ルカリオは厳しい表情を浮かべ、
「黙れ。早く行け!」
腕を横に勢い良く向け、早く行けと命令をした。 ゴウカザルはギリリと歯を噛み締める。
「へいへい…。アンタの顔…、忘れねぇぜ。…テレポート命令だ…!全員退却!」
ゴウカザルはスピーカーのような物を出し、兵士と共に消えた…。
「ふう…。俺の…勝…ち……だな…」
ゴウカザル達が消えた後、ルカリオは安心したのか、急に意識を失い倒れた。
サーナイトが急いで駆け寄るが、ルカリオは眠っていただけであった。
「良かった…。皆さん無事で…」
誰一人失うことなく終わったので、サーナイトは腰が抜けたように座り込んだ。
そう。ゴウカザルに勝ったのだ。『神の支配者』の幹部に、ルカリオ達は勝利したのだ。
ルカリオ達は村で怪我をした住人達の手伝いをしていた。
宿を病院がわりに使い、ベッドに怪我人達を寝転ばさせていた。
勿論ルカリオ達も怪我人だが、バシャーモは
「俺は後回しでいいよ。この人達のがよっぽど危ないからな」
そう首を振って断った。
傷ついた住人達を休まずにサーナイトは最低限の治療を施し続け、少し疲労が溜まっていた。
それを心配そうに住人は
「お、おいお嬢さん…。随分疲れた顔してるが、大丈夫か?」
と尋ねた。サーナイトは無理に作った笑顔を浮かべて、小さく首を振る。
「はい!私は大丈夫ですから、アナタ達こそ安静にしてて下さいね」
「…じゃあ、そうするよ」
住人は申し訳なさそうにベッドに横になった。
「ふう…」
押し寄せた怪我人達のほとんどの応急処置が終わり、サーナイトはイスにぐったりと座った。
バシャーモとゾロアークはその後に余ったソファーへと腰かけ、傷を癒していた。
まさに満身創痍な二人だが、『ゴウカザルに勝てた』という結果で、心は歓喜で震えていた。
ルカリオもおなじくソファーを使って眠っていた。三階まである宿の一階の大広間の端の部屋で毛布を被り寝ていて、ソファーは小さめのを使っていた。だがルカリオの身長は小さめなので、ソファーでも十分過ぎるベッドとなった。
「しかしルカリオさんのあの力は一体…?『オーラブレード』の力だけでは片付けられないような強大な力…。実際ゴウカザルさんを一人で倒したようなものだし…。それとも、オーラブレードの力を過小評価し過ぎていたのかも…」
寝息をたてて眠るルカリオをサーナイトが見つめ、独り言を言っていた。
ルカリオはよく眠っていて、起きる気配は無かった。
「サーナイト」
突然サーナイトはゾロアークに呼ばれ、サーナイトは大げさに反応した。
「は、はい!なんですか?」
サーナイトは慌ただしくゾロアークに近づいた。
「アンタも休みな。体が持たないよ…。魔術ってのは体力を持ってかれるからね。しかもあんだけデカイ治癒魔術に、住人にも魔術を使ってんだ。今は自分の体を心配しな…。ソファーは余ってるしね…」
包帯で腹を巻いていて、まだ痛みが消えないのかゾロアークは険しい表情を浮かべていた。
「そうですね…。じゃあ、お言葉に甘えます…」
サーナイトも別部屋にあるソファーへと向かっていった。
そしてジュカインは…。
「『神の支配者』…。まだあんな奴らがいるんだな…。バンギラスをあんな目に会わせやがって…」
ギリリと歯を噛み締め、ジュカインは高台から町を見つめていた。
「ルカリオ…。アイツも『神の支配者』に恨みを持っていたな…。アイツらはなんなんだ…?ちっ!次から次へと…!」
舌打ちをした後、ジュカインは高台を降りていった。