(7)個々

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読了時間目安:8分
それから、仲間になったオレ達は一緒に暮らすことになった。
オレは森できのみを探してきて、住処となった池へ集める。
大体決まった時間に、みんなできのみを食べて池の水を飲む。
何かあった時のために固まって行動することを多くしていたが、やはり何からも襲われることがない。

数日間で森の大体のところを回れた。
そして気づいたことがある。

ここは島だ。
おそらく、一つの森の周りを砂浜が囲んでいる形のものだろう。
海と霧にも覆われているし、外からは完全に遮断されているような場所だった。
周りに他の島は見えないし(霧のせいかもしれないが)、外から船や別のポケモンも来ないし。
つくづく不思議な場所だな。



「ここは島、ってことですか?」
夜のご飯を食べた後、みんなに気づいたことを話してみた。
結構暗い時間だったが、相変わらずここは誰からも襲われないし、みんなで気にせず普通にしゃべった。

「ああ、そうみたいだな。ここだけ外から孤立しているみたいだ」
「なんか不思議だね……ちょっと怖いかも」
「でもさ、そうなったらここ全部わたしたちの家ってことだよね!」


アマが言い放った。
彼女はみんながここについていぶかしむ中、一匹だけニコニコしていた。

「え、この島全部がってことですか!?それはさすがに」
「でも、だれもいないならそれでいいんじゃないかなー?いたらごめんなさいしよ!こんな大きなおうちに住めるの、すっごいいーじゃん!」
アマ、明るい。

「た、たしかに!それいいねアマちゃん!!」
シンもノリだした。気づいた瞬間の顔が今までで一番輝いていたような。


「な、なんかすごいことになってませんか」
「だな」
いつの間にか、ゼニーとオレは端っこの方に追いやられていた。

アマとシンはきゃっきゃと盛り上がっている。家(島)中でおいかけっこするとか、森の真ん中で寝るとか、レストラン?とかいうのをつくるとか……

すごいことになりそうだ。まさかこの話がこんなに盛り上がるとは。



さらに数日後。

「これしかなかったっけ?」
朝に食べるきのみが少なくなった。4匹ともすぐに食べ終わってしまった。

「たしかにちょっと少ないな。オレ取ってくる、みんな待ってて」
「あ、ヒロ!」
軽く森の中をまわることにした。

「あれ?ないな……」
木を見ていくが、きのみがなっているものがほとんどない。
きのみがあったとしても、ほぼ熟す前のやつしかない。

「あ!帰ってきた、よかった……」
「おかえり!」
「おう。でも、これしかなかった」
ひとまず、拾ってきたわずかなきのみをみんなで分け合って食べた。

「うーんとりあえず今日は大丈夫そうだけど……このままだときのみがなくなるのも時間の問題だな」
「そっか……」
シンがしゅんとしてしまった。

「て、てことはもうわたしたちごはん食べられなくなっちゃう!?」
「餓死!?餓死ってことですか!?」
その横でアマとゼニーが深刻な顔をして慌てていた。

おいおい!そんな怖い言葉言わないでくれ!!
あとアマはわかるとしてゼニーはいつも追いやられる側だったろうに……

「そんな慌てなくて大丈夫だから!いいか、オレに考えがある」



「ほんとにいくの?」
次の日の朝。

オレは外へ出てみることにした。
「ああ、別のところできのみ見つけてくる。前いた森にきっとあるだろ。いっぱい持ってくるからな!」
「で、でも」
「オレはこう見えても結構強いから大丈夫だぞ」

アマとゼニーは今日も不安そうな顔をしている。
はやくきのみ見つけに行かないとな。
氷で海を凍らせて道作って、きのみ拾って、一つの氷の中に閉じ込めて持って行けばきっとできるはず。

「あの」
「シンも安心してていいからな」
「そうじゃなくて」

シンが急に声を張り上げた。
「ぼ、僕たちにも何か手伝わせてほしい!あの、いっぱい助けてくれるのはすごいありがたいんだけど、このままだと僕たちいないみたいじゃん」
「!」
「だって、仲間でしょ?僕にもなんかやらせてよ!」
「そうですよ、ぼく達ずっとヒロさんに頼りっぱなしで、申し訳ないっていうか」
「昨日もね、ヒロくんがねたあとみんなで話してたの!」

アマとゼニーもオレの目を見て話し始めた。

「でも」
「僕がヒロを森まで連れてく!多分場所もわかるし」
「え!?」

もしかしてオレ、仲間のこと考えてなかったんじゃないのか。

「ぼく達は海が怖いので一緒には行けませんが」
「おうち、みはっとくよ!だから大丈夫!」

心のどこかで、弱いから守らなきゃって、思ってたんじゃないのか。


……やってみるか。

「わかった。シン、一緒に行こう」
「うん!」
「絶対戻ってくるから、待っててくれ!」



(視点変わります)


「絶対戻ってくるから、待っててくれ」
妙に頭の中でぐるぐる回る言葉だ。
そう言って飛んでいったシンさんとヒロさんに、ぼく達は言葉を返せなかった。

「いっちゃったね」
アマさんが呟く。
4匹でいた時よりも、声のトーンがいくらか下がっているような気がする。


ぼく達は一緒に池の方へ戻った。
海を見たくないからだ。

住処の中、2匹で腰を下ろした。
実はアマさんとはとても親しいというわけではない。
なので、少しだけ気まずい。
前から一緒に暮らしてはいたのだけれど。

「わたしたちどうしようか、何して待ってようねー」
「そうですねぇ」
ぼくとアマさんは年もタイプも(2つの意味で)全然違う。
不安なぼくと、いつも笑ってるアマさん。
乗り切れるだろうか。こんな言い方は良くないかもしれないけれども。


しばらくして。

(は、話すことが無い……)
ぼくはピンチになっていた。
沈黙がかなり長めに流れている。

「ちょっと、のど渇いたので水飲みますね」
「うん……」
この状況をなんとかしたくて、ぼくは池に目を移した。
なんともいえない自分の顔が水面に映る。

一杯すくって飲む。落ち着け、ぼく。
息を吐いて、二杯目を口にいれたその時。

「わたしたち捨てられてないよね」

目の前の水が悪魔に見えた。顔が歪む。
「ゲホッ」
その反動でなのかはわからないが、水が変なところに入ってむせた。

「ごめん」
「ゴホッ、ゲホ」
「ごめん、わたしがこんなこといったから……!!」

アマさんが今にも泣きそうになっている。
池を見れなくなった。
目を閉じて息を整えてからアマさんの方を見る。
「アマさん大丈夫です、全くアマさんのせいではないんですから」
「でも……」
まあ、あんなことがあった手前、当たり前だ。



ヒロさんに助けてもらう少し前。
ぼく達は船から突き落とされた。

久しぶりに「旅行だ」って外に出してもらえて。
船に乗って、手すりに乗せてもらって、景色を見てたら、ドン。
「ふかあまり」とよくわからないことを言われながら落とされた。

他にもいた。
ぼく達は必死になって海の中で耐えていた。
船に叫んでも、何も返ってこなかった。

気づいたら、アマさんとぼくの2匹が、2匹だけが、このよくわからない島に行き着いていた。
ふらふらになりながら砂浜を歩いた。

みんなどこに行ったの。
あれからどれだけ探してもアマさんしかいないんだ。
沈んじゃったの?

みんなどこ行っちゃったの
怖いよ



嫌なことを思いだしてしまった。
「帰ってくるよねっ……?」
アマさんの声が震えている。目に涙が浮かんでいる。
笑ってはいるが笑えていない。

砂浜を歩いた時と同じだ。

「帰、」
ぼくまでアマさんを不安にさせたらだめだ。

「帰って来ます、た」
たぶん

いやっ、
「絶対、帰ってきます」
「ヒロさんが、ぼく達を捨てるわけがない」

「そうだよね、うん……」
アマさんに少しずつ笑顔が戻り始めた。

ヒロさん。
信じていいんですよね……?

「ありがとう」
「ぼくが守りますから」
「ふふっ、それヒロくんみたいじゃん!」
名づけ方
シンプルすぎたか?
まーいーか

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