20-3 再挑戦の旅路

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この作品には残酷表現があります。苦手な方は注意してください



 次の世界は、【トバリ山】の山道だった。山の谷間の道を進んでいると、両側からまたポケモンたちが襲ってくる。そして目前には、カビゴンが鎮座していた。
 アプリコットライチュウ、ライカと共に向こう側に回り込んで『サイコキネシス』でカビゴンを持ち上げようとした。しかしなかなか持ち上がらず、追手のポケモンたちが迫っていく。
 俺のルカリオとオンバーンが構えた時、その追手たちに煙玉がばらまかれる。
 そして俺たちの前に舞い降りて来た白い影……ユキメノコが、『ふぶき』で追手を氷漬けにしていった。

「おユキ、やっちゃってー。ビドー、大丈夫―?」
「アキラちゃん! 助かった!」
「おー、なら、よかったー」

 フライゴン、リュウガに乗ってきょろきょろと辺りを見渡しているアキラちゃんに、ハジメなら先に会ったと伝えると、何故か微笑ましそうに笑われた。

「あー、ふふー、仲良くなれたんだねー、ハジメと」
「まあ、そういうことだろうな」
「えへへー……キミの願いの為にこれ、持って行って」

 そう言って彼女が手渡してくれたのは、回復効果のあるきのみの粉末を携帯しやすくまとめたものだった。礼を言うと、カビゴンの方に異変が起こる。

 アプリコットとライカが苦戦していたカビゴンが持ち上がっていた。
 追加の『サイコキネシス』で援護してくれたメタグロス、バルドに乗ったミケがグレーのハンチング帽を被り直してキザなセリフを言う。

「おや、アサヒさん、ユウヅキさんたち、この世界の謎でお困りでしょうか?」
「ミケさん」
『ミケさん!! とっても困っています!』
「これは、探偵として腕の見せ所でしょうか」
「頼みます……ミケさん」

 ミケにこの飛ばされた世界で再会した俺たちのシチュエーションと、俺とヨアケの旅路と今のところ重なっていることを伝えた。
 彼は少し考えたのち、俺たちを推理で導いてくれる。

「ずいぶんと難解な事件だ。ですが、クロイゼルが観測したアサヒさんとビドーさんの旅路を元にこの世界の数々が構成されているのなら、おそらく最終目的地は【オウマガ】の空中遺跡でしょう。そこに、マナの魂が入ったアサヒさんの身体が守られているはずです」
『【オウマガ】……私とビー君の旅の終着点、だね』
「そういうことです……その、皆さん。今度こそこの事件、きっちり解決しましょう」
『うん、もちろん!』
「ありがとうございます、ミケさん」

 この世界での指針を得た俺たちは、ミケとアキラちゃんにこの場を任せて、先に進む。カビゴンもアキラちゃんのあげたきのみを食べると、協力し始めてくれていた。


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 山道を抜けると、霧がかかった【トバリタウン】に出た。純粋に霧が濃いせいで、方向感覚が分からなくなる。ビー君とルカリオもちょっとどっちに進めばいいのか分からず、苦戦していた。
 すると、地面に矢印の形をした『やどりぎのタネ』が設置されていることに私たちは気づく。
 こういう気遣いをしてくれるのは、あの人しか心辺りはなかった。

 この世界の切り替わり地点までたどり着く。
 そこではソテツさんとアマージョ、ガーちゃんとトロピウスが一緒に待っていた。

「や、無事気づいたみたいだね」
「アサヒさん、この先はまた別の世界です……お気をつけて」
「そういうことだから、じゃあ」
『……ありがとう、ソテツさん! ガーちゃん!』

 そのまま通り過ぎようとすると、「まったく」と零しながらガーちゃんが、ソテツさんを私たちの方に向き直させて、背中を押して突き飛ばした。

「おいおい、何のつもりだいガーちゃん?」
「ガーちゃんじゃありません、ガーベラです。トロピウスをお貸しするのでソテツさんは行ってください。貴方は私と違って、ここで足止めされていい戦力ではありません。サボらないでください」
「しかしだね……」
「貴方がすっぽかしている間も、私頑張っていたんですから。それとも信頼できませんか、自分の弟子を」

 ガーちゃんはロズレイドを出し、トロピウスもソテツさんに乗れと催促する。
 私もダメ押しで「ダメでなければお願いしてもいいですか……?」と頼んだ。
 ソテツさんは「そういうとこだぞ、アサヒちゃん」と仕方なさそうにトロピウスに乗った。
 ユウヅキが「正直少し頼もしい」と小声で言っているとビー君に「お前な……もっと警戒とか覚えろ」とツッコミ入れられていた。
 不思議そうにしているアプリちゃんが可愛いなと思いつつ、ソテツさんとトロピウスを加えた私たちは次の場所へと赴く。


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 【スバルポケモン研究センター】の世界。ここでヨアケと相棒として手を結んだんだったか。
 特に研究センターに入るまでもなく、アキラ君が入り口でチルタリス(名前はアマリーと言うらしい)と待っていた。

「……要するに、とりあえず君たちをその【オウマガ】まで送り届ければいいということか。ずっと後悔していたんだよね。君たちだけで先に行かせたこと。だから今度こそ一緒にって……言いたいけど、どうやら難しそうだね」

 そう言って大きなため息を吐くアキラ君。この時間軸の【スバル】は人が出払っていた。外部からの研究員たちは地方外に避難している上、地下にヤミナベの母親のムラクモ・スバル博士が眠っている。
 つまり、先ほどの【トバリタウン】もだがクロイゼル支配下のポケモンに攻められても研究センター守り切れるくらいの実力の誰かが残らないといけない状態だった。

「今回はその席はあの人に譲るよ。肝心な時に力になれなくて、ごめん」
『アキラ君……ううん、ありがとう。ここは任せるよ』
「うん……君たちの無事を、祈っている。ユウヅキ、ビドー、今度こそアサヒを守れよ」

 アキラ君の言葉に、ヤミナベと俺はしっかりと頷く。
 本当は一緒に行きたかった彼の願いを、俺たちは受け継ぐ。

 研究所の奥から白衣姿のレインがカイリューと共に出てきた。
 レインは、アキラ君に一度頭を下げると、彼の目を見て、守りを引き継ぐ。

「アキラ氏……申し訳ありません。スバル博士のこと、頼みました」
「申し訳ないと思うのなら、僕以上の働きをしてきてください。レイン所長」
「ええ。全力を出させていただきます――――行きましょう、皆さん」

 眼鏡をかけ直してレインはカイリューと共に飛び立つ。
 レインを追うように【スバルポケモン研究センター】の世界を後にする。一瞬ためらいそうになったけどこらえて呑み込んで、アキラ君を信じて次へと向かった。


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 次の世界は【王都ソウキュウ】。何故かここは激戦区となっていた。
 住民が集まっている場所だけあって、お互い割かれている戦力もまた多い。
 そして、ここまでは一本道みたいなものだったが、この先どこへ行けばいいのかがよく分からないのが致命的だった。

「ここの出口は何処だ?!」
「【オウマガ】行くなら【ハルハヤテ】方面じゃないの、ビドー?」
「そうは言っても、地図通りに繋がっている保証がねえんだよ……!」

 レインに、向こう側のポケモンや人たちを操っているシステムの破壊はまだか、と聞く。
 首を横に振るレインは「やはり中枢のメイに干渉できないと厳しいです」と険しい顔で言った。
 迷ったまま大通りから、路地へと入る。このままじゃどこかで行き止まりだ。まずい、まずいぞ。
 ポケモンたちの技が飛び交う中、悩みながらも進んでいると、オンバーンに乗っていたルカリオが何かを察知したようで、「ついてこい」と先頭に出る。
 ルカリオを追いかけていくと、すごく見覚えのあるアパートとその前戦っているアイツらが居た。
 チギヨとハハコモリ、ユーリィとニンフィアとグランブルがアパートを守るようにして陣形を組んでいる。
 ルカリオはオンバーンに乗りながら、アイツらを攻撃しようとしていたタチフサグマに『はどうだん』をぶちかます。
 チギヨたちがこっちに気づき、声を上げる。

「ビドー?! なんでこっち来た! お前はさっさと親玉倒して来いよ!」
「ふたりの帰る場所は、私たちが守るから! 早く行きなさいよこの馬鹿!」

 散々な言われようだ!
 ……でも、正直こいつらの顔を見たことで、少し安心したのはある。
 そんな俺を見てルカリオがわずかに微笑んだ。これを見越していたな……!
 そして、ルカリオの指がヨアケを示し、「彼女と同じ波導を辿れ」と吠えた。
 ……そうか、マナの波導はヨアケと一緒。なら、俺には旅の終着点のマナの波導を辿れる……!
 マナの元にたどり着ければ、ラルトスたちを捕らえているクロイゼルの位置が特定できる可能性も、何よりヨアケが身体を取り戻す機会も生まれる。

「道筋は見えたようだな」

 俺を真っ直ぐ見据えるヨアケを抱えたヤミナベ。そのサイドカーに乗った彼らへ「ああ、届けてやるよ……!」と啖呵を切り、止めたバイクにまたがりながらルカリオと波導の波長を合わせる。
 メガシンカを取って置きながら見つけるのはちょっときつかったけど、ユーリィたちが稼いでくれた時間のおかげで一本の糸筋が見えてくる。

「……こっちだ。行くぞ!」
『チギヨさん、ユーリィさん、みんな、もう少し踏ん張っていて!』

 ユーリィとチギヨが背中を見せつつ手を掲げて振った。
 サイドカー付きバイクのアクセルを再び踏み、進みだす。手繰るように俺たちは波導を掴んでいく。


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ゲストキャラ
アキラちゃん:キャラ親 天竜さん
ミケさん:キャラ親 ジャグラーさん
アキラ君:キャラ親 由衣さん

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