【TALE1】運命が動く時

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この作品には残酷表現があります。苦手な方は注意してください

<SIDE ピカチュウ>

あの時、左手に持っていたロケットが輝きだした。
俺をその光が包む。そうしたら、何故か俺は人間からピチューの姿に変わって、この世界に飛ばされていた。
・・・そんな説明でよろしいだろうか。
兎に角、成長して立派なピカチュウに進化してもなお、ポケモンだけの世界に飛ばされた理由は謎のままだ。

・・・それはさておき、俺が幼いピチューの姿に変えられてしまったばかりに、俺を女手一つで育ててくれたフライゴンさんにはだいぶ迷惑をかけてしまった。
俺がインフィニット騎士団に入団して、彼女が艦長を務める新型揚陸艦・メビウスに乗り込んだのは、そんな理由もあっての事だったのだ。

・・・前置きが長くなって誠に申し訳ない。早いところ今現在の話に移ろうではないか。
・・・インフィニット騎士団への入団から数年後。俺もメビウスで、それなりに経験を積んだ、という頃合いだろうか。相変わらずこの世界に来た理由は謎のままで、騎士団の仕事がてら、仲間と共に、俺が元の世界へ戻る方法を模索していた。

ピカチュウ/廉太郎
「・・・・・・・・」
ミミロル
「・・・あれ、ピカチュウ・・・ ・・・ピカチュウ・・・?」
ピカチュウ/廉太郎
「・・・どうした。 もしかして夕飯か?」
ミミロル
「・・・ご明察よ。 今夜も一生懸命教わって来たんだから」
ピカチュウ/廉太郎
「ああ」

揚陸艦後部にはかなり広い甲板があり、少ない乗組員全員がそこに集まって食事をするという事になっている。

ピカチュウ/廉太郎
「・・・そうだ! 今向かうよ。 そうすれば、フライゴンさんとも話せるからさ」
ミミロル
「うん」

食事がてら、フライゴンさんといつもの下っ端トリオと、元の世界へ戻る方法について話をするつもりだ。

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それから、心地よい夜風が吹く甲板での事。

フライゴン
「人間の世界へ戻る方法ね・・・」
タッツー
「フライゴンさん、もしかして心当たりでも・・・?」
フライゴン
「・・・ええ。 あなたは『時空転移』に巻き込まれたのかもしれないわ」
サイホーン・ストライク・タッツー
「じくう・・・ てん、い・・・?」

どうやら俺が元居た世界と今居る世界は、互いに交わる事がなく、相容れない世界同士(所謂『並行世界』)となっているようだ。
そんな並行世界同士を行き来する『時空転移』は、本来であれば絶対に起こりえない筈の現象である。
その原因がどうしても解らないのだ。

フライゴン
「それで、これから向かうアシュリィの村に小さな遺跡があるの。 そこに行けば、きっと何かが解るわ」
ピカチュウ/廉太郎
「ええ」

アシュリィという村の外れに、かつて異世界の存在を信じた古代ポケモンが、それを後世に伝える為に建設したという神殿の遺構がある。
俺たちは明日そこへ向かう事を決めた。

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それから翌朝、件の神殿での事。

フライゴン
「・・・まさか、こんな所に世界樹があったなんて・・・」
ピカチュウ/廉太郎
「世界樹・・・?」
フライゴン
「ええ。 世界樹は並行世界同士を繋ぐ唯一の光らしいの」

並行世界同士を繋いでいるだけあって、目の前の光の柱は思っていたよりも大きい。

ストライク
「・・・しっかしピカチュウよ、この光何かおかしくないか・・・?」

ストライクに言われて世界樹を見つめてみると、何故か光の中に、微かに混じった闇が感じられる。

タッツー
「それにしても何だろ、あの黒い光は・・・」
ピカチュウ/廉太郎
「黒い光・・・」
フライゴン
「世界樹が穢れている・・・ もしかして・・・」

黒い光を前に俺たちが戦慄を覚えた、その時。

???
「貴様たちか、世界樹の強奪を企むのは」
フライゴン
「そんな、世界樹の強奪なんて・・・」
???
「・・・兎に角、そこを動けば命はないぞ、反逆者共め」

『反逆者共め』って・・・ あのポケモン、一体どういうつもりだ!

ストライク
「・・・フライゴンさん、こいつ敵ですよ! 兎に角さっさと・・・」
フライゴン
「・・・ちょっと、ストライクたち?」

下っ端トリオが怪しいポケモンに立ち向かおうとするのだが・・・

ストライク
「行くぞサイホーン! 兎に角2匹の力があれば・・・」
サイホーン
「ああ・・・!」
???
「無駄だ。 ・・・目覚めるパワー・氷」

サイホーン、戦闘不能。

ストライク
「糞、こうなったら俺が・・・?!」
???
「・・・火炎放射」
ストライク
「うわっ・・・!」

ストライクも戦闘不能。

タッツー
「二人とも! 今援護致し・・・?!」
???
「・・・小賢しい! チャージビーム!!」
タッツー
「ぎゃああっ・・・!!」

タッツー戦闘不能、よって下っ端トリオ全滅・・・。

フライゴン
「全く3匹とも、あれだけ言ってるのに。 無理に前に出ちゃうから・・・」
ピカチュウ/廉太郎
「・・・全く、その通りですね・・・」

???
「・・・全く、こんな生半可な覚悟で世界樹に近づくからこうなるのだ」
ピカチュウ/廉太郎
「・・・それにしても、お前は・・・」
???
「・・・わたしはライボルト。 世界樹を護るギルド・『ジャッジメント・エッジ』の幹部だ」
フライゴン
「『ジャッジメント・エッジ』・・・ ・・・やっぱり・・・!」

ギルドの名前としては聞き慣れないのだが、フライゴンさん曰く、ジャッジメント・エッジとは近年世界各地でテロ行為を繰り返すお尋ね者の集団、謂わば闇の私設武装ギルドなのだという。

ピカチュウ/廉太郎
「テロ組織・・・ まさかあのポケモンたち・・・」
ライボルト
「・・・気を悪くするな。 俺たちが戦うのは明日の世界の平和の為だからな」

そう言い残すや否や、ライボルトは俺たちの前から去って行ってしまう。

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フライゴン
「・・・しかしどうも変ね。 あの黒い光はわたしたちの心の穢れが実体化したものだと言われているの。
 ・・・それにしても、あんなどす黒い光が、それもそこまで世界樹を覆ってるなんて・・・」
ピカチュウ/廉太郎
「・・・まさかこれが、並行世界のバランスを・・・?」
フライゴン
「・・・わたしも詳しい事は解らないわ」

それから俺たちは、下っ端トリオを連れてメビウスに戻る。

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メビウスに戻った俺は、世界樹の黒い光について、とある人物に聞いてみる事にした。
その方はドリュウズさん。フライゴンさんと共にメビウスを纏める、厳しくも思慮深い最年長者だ。

ドリュウズ
「・・・世界樹の光か・・・ 確かにフライゴンの言う通りだが・・・」
ピカチュウ/廉太郎
「・・・じゃあ、本当に黒い光が世界樹のバランスを乱してる、と言うのですか・・・?」
ドリュウズ
「・・・実際の所は解らないが、その説はだいぶ有力な事だろう。 実際それを基にした言い伝えなんぞ、探せば幾らでもあるからな」
ピカチュウ/廉太郎
「・・・あの、世界樹について教えて下さってありがとうございます」
ドリュウズ
「別にいいさ。 また何か聞きたいなら幾らでも聞いてくれ」

ドリュウズさんは本業が考古学者である事から、遺跡や古い伝承の知識はかなり豊富だ。

ドリュウズ
「・・・それはさておきフライゴン。 ・・・あの3人、また慌てて突っ走ってやられたそうじゃないか・・・?」
サイホーン・ストライク・タッツー
「ギ、ギクリ・・・」

下っ端トリオは、緊張で硬直して動けない。

ピカチュウ/廉太郎
「・・・結果的に襲ってきた敵は逃がしちゃったし、あの3匹だけのせいではないんです。
 ・・・でも、・・・」
フライゴン
「・・・と、に、か、く! 何度も言っているけど、3匹とも戦場では落ち着いて行動するように。戦場では少しの焦りが命取りになり得る
 の。 ・・・解っているわよね・・・?」
サイホーン・ストライク・タッツー
「くっ・・・ ごめんなさい・・・」
ドリュウズ
「・・・ひとまず解ってくれれば良いだろう、フライゴン」
フライゴン
「ええ」
サイホーン・ストライク・タッツー
(ほっ・・・)

おいおい3人とも、フライゴンさんの話聞いただろうな・・・

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そして、その日の夜の事。

ミミロル
「あれ、みんな。 どうしたの?」
ピカチュウ/廉太郎
「・・・実は遺跡でやり合ったライボルトの事だが・・・」
ストライク
「ああ。 奴の強さもそうだが、あいつは一体何を・・・」
ミミロル
「・・・もしかして、ライボルトって・・・」

ミミロルの話によると、彼はこの世界各地のギルドに指名手配が回っている、テロ組織『ジャッジメント・エッジ』の中でも特に凶悪な幹部の一人なのだという。

ミミロル
「・・・それだけ凶悪なら無理ないわ。『あの3匹』が束になっても敵わないだなんて」
サイホーン・ストライク・タッツー
(く、屈辱感が・・・)
ピカチュウ/廉太郎
「・・・奴の実力は兎も角、奴は『世界樹を護る』とか、『世界の平和の為に戦う』とか言ってたな」
サイホーン・ストライク・タッツー
「・・・う、うん・・・」

尤もそれは、所詮胡散臭い戯言に過ぎないのだろうが。そう思ったその時。

ドリュウズ
「・・・ピカチュウたち、艦長から連絡だ」
ピカチュウ/廉太郎
「はい」
ドリュウズ
「・・・今度ボノ王国の王都・グリーンランドの、ボノ王国国王・ジュカイン陛下のもとへグランド王国のラルトス王女がいらっしゃって、
 会談を開催するらしい」

この世界にはボノ王国とグランド王国という2つの国家がある。
その2国間には昔から確執があったようだが、関係改善を目指したお二方の懸命な努力の末、晴れて会談を開催できる事になったというのだ。

ドリュウズ
「それで我々メビウスに、会談会場となるジュカイン陛下のお屋敷を警護して欲しいという依頼が入ったのだ」

その時、ふと『明日の世界の平和の為』という言葉が再び響く。そんな気がした。

ピカチュウ/廉太郎
「・・・解りました」
ドリュウズ
「・・・よし。 ・・・やるべき仕事は明日だ」
ピカチュウ・ミミロル・サイホーン・ストライク・タッツー
「ええ」

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明日の世界の平和の為に(こちらも)決意を固めた夜、寝室での事。

ストライク
「・・・今日のバトルは散々だったけど、明日は明日の風が吹く。
 ・・・今宵はゆっくり休んで、明日の任務に備えようぜ」
ピカチュウ/廉太郎
「・・・確かに今日は散々だったかもしれんが、やっぱり前を向かなきゃ何も出来ないもんな」

そう呟いてから右隣を見ると、サイホーンとタッツーは幸せそうに眠っている。
・・・俺ももう限界だ。眠い・・・

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<SIDE ゾロアーク>

あの時僕は、確かに幸せな日常を奪われた。大切な存在もろども。
それから数年。ゾロアからゾロアークに進化した僕は、腐敗した王国に復讐し、平和で幸せな世界を築くべく、ギルド『ジャッジメント・エッジ』を結成したのだった。

・・・それはさておき。

ゾロアーク
「・・・ライボルト。 あの揚陸艦の方は?」
ライボルト
「・・・あそこの輩だが、平和維持を目指すギルドが聞いて呆れる」
ゾロアーク
「ほう。 弱すぎて逆に胸糞悪い、というのか」

すると、幹部の一人・ドンカラスがアジトに帰って来る。そして・・・

ドンカラス
「只今戻りました、ボス。 ・・・ボノ王国の王都グリーンランドで開かれる会談に、グランド王国のラルトス王女がいらっしゃるとの事です」
ゾロアーク
「ああ。・・・兎に角、我々の作戦においては、いかなる権力やギルドの介入も許さない。 それもまた理念さ」

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【TO BE COUNTINUED】

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