Episode 34 -Brightness-

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読了時間目安:20分

この作品には残酷表現があります。苦手な方は注意してください

 カザネたち3匹は宝玉を守る像を相手に試行錯誤を繰り返すが、どの方法も通じず、刻一刻と時間だけが過ぎ去っていく。泥沼に陥る戦局の中で、いるかの脳裏にある言葉が過るのだった……。
 宝玉に近付くカザネに襲いかかる巨大な像の手刀。カザネは何か必ずあると踏んで用心していたため、一瞬早くその一撃を回避し、後ろに飛び退くことができた。


「うわぁ……あんなの叩きつけられたら、間違いなく真っ二つにされるね……。間近だから分かった。小指の外側が刃物みたく鋭利になってたよ。」
「どうやら宝を守る番人のようですね……。見てください、顔がこちらへ向いています。恐らく、カザネさんが近付いたことを引き金に、臨戦態勢へと入ったのでしょう。」

「ならお返ししてやるまでさ!! 機械なら、きっと電気か何かぶつけてやれば制御系統がおかしくなるはず!!」
「雷なら、木属性の魔導書を使えば……!! 『フールメン』!!!!」

ローレルはComplusから取り出した雷の魔導書で、電気弾を像にぶつけた。さらにカザネが曲を鳴らすと、小さな雷雲が天井付近に上り、像の真上から雷の束を落とした。


「さて、これでちょっとは効いてくれるといいんだけど。どう出てくるかな?」
ところがカザネの願いも虚しく、像はカザネたちの方を睨みつけ、額の辺りをきらりと一瞬光らせた。

「あの感じ……。みんな、壁に逃げてっ!!!!」
いるかが何かを直感して叫ぶ。思わず反射的に一同が壁スレスレまで下がった直後、ローレルに向け、像の額からレーザー光が照射された。地面をブスブスと焦がしながら迫るレーザー光は、ローレルの寸前でしばらく停止すると、攻撃する必要はないと判断したのか一度止んだ。


「た、助かりました……。いるかさん、ありがとうございました……。」
「いえ、お怪我がなくてよかったです!! 何か、直感で射出してくるって感じたんです。あんなのまともに食らったら、身体に穴が開きそう……。」

「さっきのレーザー、距離が離れすぎると安全みたいだね。壁ギリギリまで下がらなければ、ローレルが切断されるところだった。だとしたら、あの扉の前だけは近寄るべきじゃないね……。部屋の中で唯一出っ張ってて、レーザーを回避できなくなる。」

部屋の一ヶ所、3匹が入ってきた扉だけは周囲の壁から出っ張る形となっており、正八角形の形をした部屋の中央にいる像のレーザー安全地帯が存在しないことになる。
その位置に逃げ込めば、最悪の場合回避不能な事態も想定されるだろう。











 「さっきから僕らのこと睨んでやがるのが気に食わないなぁ……。やっぱり、あの顔でこっちの位置を認識してるのかな?」
「だとしたら、1匹が囮になって、他の1匹で近づいてみてはどうでしょう? 近付けば手刀、その後に距離を取れば壁際までの距離をカバーできるレーザー。いずれもあの顔が、対象の位置を認識して初めて出せる代物だと思われます。」

「よし、乗ったその話!! じゃあ僕が裏から回り込む。ローレルといるかは、さっき手が振り下ろされた跡のある地点の手前で、奴とにらめっこしててくれ。そうすれば、奴は君たちと膠着状態に入って気を取られてくれるはずだ。」

カザネはローレルの言葉を聞き、壁伝いにそろりと像の背後へ回り込む。カザネが回り込む間、ローレルといるかは少しずつ像の方へとにじり寄り、何が起こっても回避できるように備えていた。


「ひいっ!! やっぱ僕らのことを目で追ってる!!!!」
「落ち着いてください。あの像は、最初に手刀を振り下ろしてからレーザーを出すという行動パターンを取るようです。逆を返せば、あの地面の跡の距離までなら攻撃されません。もっとも、常に不測の事態に備えるべきではありますが。」

ローレルたちが像の顔と睨み合いを続ける中、カザネは完全に像の背後へと回り込み、ゆっくりと忍び寄るようにして宝玉を目指した。

しかし、それはカザネが動き出して数秒後に起こることとなる。


「何か妙な感じが……。金属が擦れるような音がした気がします。」
「どわぁぁぁぁっ!!?」

何と、像が顔の向きを一切変えることなくカザネに拳を振り下ろしてきたのだ。カザネは上手く転がって事なきを得たが、像の顔がカザネの方へくるりと向きを変え、その額が一瞬赤く光る。


「何でぇっ!? 後ろ見えてるのあいつ!?」
「カザネさん!!!! レーザーです、早く壁に!!!!」

「ちょっ、待ってっ!! うわぁぁぁっ!!!!」

カザネは崩した体勢のまま、壁に頭から突っ込むことも厭わずに身体を投げた。壁に後頭部を強打する結果となったが、レーザーは間一髪回避できたようだ。


「いたたたっ……楽器!? ぶ、無事だよね!? いや、安物の持ってきたけど、ぶつけてないよね!!? ごめんなぁ、手荒な扱いしちゃって……!!!!」
「何やってるんですかー!! 楽器心配してる場合じゃないでしょう!!」

「何を言うか!! サックスは精密機器だぞ!!!! ぶつけて凹ませるのは大罪なんだ、例え安物でも10万ポケもするし、大事な大事な可愛い我が子なんだから!!!!」

どうやらカザネは全く問題なさそうだ。吹奏楽部特有の楽器愛好癖はポケモン世界でも健在らしく、レーザーの次の標的にならないように壁際に張り付いているいるかは、その様子に思わず眉をひそめていた。


「しかし困りものです……。近付けば手刀、その後にはレーザー攻撃、そして本体は頑丈で破壊することはできない……。」
「そうだ、今度は2匹で死角から入ったらどうですか? さすがに2ヶ所同時に見ることなんか……。」

「考えてもみなよ、奴の腕は8本もあるんだ。恐らく複数箇所を同時に攻撃するなんて訳もないことだ……。」
「あ、じゃあこんなのはどうです!? レーザーで腕を破壊して……!!」

「それも難しいでしょう……。レーザーを誘導するのはいくら何でも危険すぎますし、床の焦げ跡から察するに、レーザーの着弾点は腕の可動範囲外にあるようです。2つの攻撃範囲は、それぞれ重ならないように作ってあるということです。」

いるかが何とかアイデアを出してみるが、どれも実現は難しそうだ。相変わらず像の顔がこちらを睨みつける中、刻一刻と時間だけが過ぎ去っていく。









 「いいよ、入って。」
執務室の自席に座るカイネは、窓の外をぼんやりと眺めながら呟く。時刻は既に午後7時。カイネは暮れなずむ暗い空をじっとりと見つめると、ため息をつきながらこちらへ振り返った。

「本当に申し訳ありませんでした……。例えもういいと言われても、あなたには謝っておかねばと思って……。」
「……。君のことは一生許さないから。夫と同じだよ。いいや、むしろ私の方がその思いは強いかな。分かる? 自分がお腹を痛めて産んで、自分の乳を飲ませてあの子を育てた私の気持ち。」

「……。想像もできません……。ただ、本当に辛くて辛くて胸が引き裂かれそうな思いをされたこと……。それだけは理解しています。」
「じゃあもういい。本当は君の顔なんて見たくもない。今すぐこの手で見なくて済むように叩き潰してやりたい。その声を聞かなくて済むよう、喉を食いちぎってやりたい。」

カイネはそう告げると、再び窓の外に目をやり、えっこに背中を向けた。えっこは普段の様子からは想像もできないカイネの姿に、思わず言葉を失ってしまった。


「あの……。俺の処分を軽くするためにあなたは……。」
「勘違いしないでくれる? 何で君みたいな奴相手に世話焼く必要があるのさ? ローレルちゃんのためだから……。あの子は私たちの家族も同然なの。君が追放されたら、あの子が悲しむんだから。そんなの見たくなかった……。」

「すみません……。」
「用事が済んだらとっとと出て行って。じゃないと本当に君を殺しかねないから。」

えっこはずっと背を向け続けているカイネに深々と頭を下げると、重い足取りで部屋を後にした。
窓に映るカイネの顔からは、微かに涙が滲み出ていた。


「はは……もう、失ったんだな。ハリマロンえっこさん一家にとって、俺は憎むべき対象になっちまった。ユーグさんの言う通りだ。例え処分が軽くなろうが、カザネが立件しなかろうが、俺は彼を殺めかけたんだ。その事実は変わらないよな……。」

えっこの心に深々と刺さるハリマロンえっこ一家の言葉の数々。えっこは自らがローレルを想う強さで犯した罪の数々を、その心に抱く。
空虚な風穴ができたようなえっこの心は、すぐにその罪の重さで鉛の塊のように重く膨れ上がり、埋め尽くされた。


 いるかたちが像の部屋に入ってから丸2時間が経過していた。窓一つない熱帯雨林の遺跡内部は蒸し暑く、夕刻に差し掛かろうというこの時間帯ですら30度近い室温を示している。

加えて、像に睨まれ続ける物理的プレッシャーと、像を倒す手段が見つからずに苦悩する精神的プレッシャーとが重くのしかかり、一行の体力は限界に近づいていた。


「もうやだぁ……。帰りたいよぉ……。」
「うるさいなぁ……メソメソするなよ、情けない声聞いてると腹立つんだから!!」

「やめてください二人とも、今は敵を倒す手段を考えることに集中しないと……!!」
「でもどうすれば……。僕も本気でこれは手に負えないぞ……。」

いるかが半泣きで弱音を吐く様子に苛立つカザネ。ローレルが静止するが、イライラを抱えたままの頭で名案が浮かぼうはずもない。


「ううっ……。助けてよぉ……。」
いるかが次なる弱音を吐きかけたそのとき、ある言葉がいるかの脳裏に蘇り、彼の心を貫く。それは面接試験の際に伝えられた、ニアからのメッセージだった。


「いつだって仲間と共にある。仲間がいてくれる。たから支え合わなきゃいけない。それは誰に対しても私は伝えてるのー。けどね、君たちは私の教え子。そんなことはとっくに分かってると信じて、もう一歩踏み込んだことを伝えるね。」
「もう一歩踏み込んだ……? 一体どういうことなんです?」

「一流ダイバーは仲間と共にあると同時に、常に孤独でなければならない。いや、孤高というべきかな。」

ニアの口から告げられた意外な一言。カザネたち3匹は、不思議な面持ちでニアの顔を見つめる。


「仲間と共にあると考えると、つい頼り切りになっちゃうのよね。背中を任せられる仲間がいればいるほどその傾向は高まる。でも忘れないで、『自分がやるんだ』という心構えを。誰かがやってくれるから、他のメンバーがきっと助けてくれるからなんて甘い考えを全員がしてたら、結局一瞬で全滅するよ。全滅って意味、分かるよね? 二度とアークの土を踏めなくなるよ。」

ニアの一言がずしりとカザネたちにのしかかる。当然、普通の高校生である彼らが死を意識することなどほとんどない。若い頃に、自分がいつ死ぬかも分からないと常に考えている者など、そうそういないだろう。


「だから約束してね、自分がやるんだって。みんなのため、自分こそが動くんだって。だからダイバーは仲間に囲まれていながらも孤高であらねばならない。それぞれが孤高で孤独だからこそ、互いを助け合うことになるわ。」

いるかはニアの言葉を思い出し、その拳をぎゅっと握り締める。滲み出る涙を拭ったその目つきからは、カザネとローレルを自分こそが救うのだという強い意志が燃え盛って見えた。











 「(そうだ、僕がやらないと……。カザネさんやローレルさんが助けてくれるんじゃないんだ、僕の、僕自身の試練なんだ!!!!)」
いるかは自分に言い聞かせながら、今までに起こったことを頭の中で必死に整理する。カザネやローレルほどには要領こそよくないが、幸い考える時間なら存分にあった。

「(そうだ、不可解な点が2つもあるよね。一つは、背後にいたカザネさんが攻撃されたこと。そしてもう一つ、レーザーがどうして壁スレスレで止まるのか。そのまま突っ切っちゃえば、僕たちを真っ二つにできるのにね。)」
いるかは自分でも驚くほど冷静に現状を分析していく。床や天井の跡を繰り返し眺めて考える様子に、カザネやローレルも驚いていた。


「いるか、一体どうしたの? 何か分かりそうなのか?」
「いえ、考えてるところです。絶対にここから脱出するんです。そんな不気味な像と心中なんてまっぴらごめんだ。必ず、みんなと無事に帰るんだ……!!」

そのとき、いるかの脳裏にある仮説が思い浮かんだ。それは、壁から床に目線を移そうとしたときに起こったのだ。


「まさかっ!? あいつ、やっぱり見えてたってことだ!! きっとそうだ、カザネさんのその姿、ローレルさんや僕の装備と身体……!! 間違いない、分かったぞ!!!!」
「なっ!? 謎が解けたのかいるか!?」

「はい……でも後は奴を倒すための方法……。こればっかりは、やってみないと始まらない……。もうカザネさんやローレルさんに頼り切って任せたりなんてしない、僕が真っ先にやるんだっ!!!!」

いるかはそう叫ぶと、ザックを脱ぎ捨ててComplusからペンライトを取り出し、点灯させながら像の周囲を走り出した。


「ほらーっ!!!! こっちだぁー、こっち見ろよ!!!!」
「やめるんだいるか、下手に近づくと危ない!!!!」

「カザネさん、彼を信じましょう。あの目は何かを確信している目です。僕には分かります。もう、メソメソしていたいるかさんとは違うのです。彼はこの崖っぷちで変わることができたみたいです。」

ローレルがそっとそう呟いた。その間にもいるかは部屋をぐるっと回り、像の死角から腕の攻撃範囲へと侵入していった。


「まずい、攻撃されるぞ!!!!」
「ひぎゃぁぁぁっ!!!!」

振り下ろされた拳を、いるかは叫びながら何とか回避する。しかし、像の顔は既にいるかの方向を向いていた。


「レーザーが来ます!! 早く退避を!!!!」
「おい、何してるんだよ!!!!? そこは、そこだけはダメだ、すぐに離れろーっ!!!!」

こともあろうにいるかは、出入り口の扉に背をつけて立っている。ここだけは周りの壁から出っ張っており、壁際まで下がってもレーザーの射程距離に入ってしまう。


「やってやるんだぁ……来いっ!!!! ………………うわぁぁぁぁぁぁっ!!!!!!」
「いるかーーーっ!!!!」
遂にレーザーがいるかの間近に迫る。いるかは叫び声とともに地面にバブルこうせんをぶつけた。

ピンチになると普段の何倍もの破壊力を実現するいるかの技は、その衝撃で自分自身の身体を大きく吹き飛ばし、いるかの身体は像近くの地面に叩きつけられてしまった。


「そんなっ!! あそこは腕の真下の位置!!!! 離れてください!!!!」
「……ふっ、ふふふっ……。」

像の拳がいるかに勢いよく振り下ろされる。いるかは助からない絶望から気が狂ってしまったのだろうか、全く動かないまま、奇妙な笑みを浮かべていた。










 「やったよ、ビンゴみたいだ。やっぱりそこがお前の弱点だな?」
いるかが突然口を開いた。それと同時に拳が止まり、像は全く動かなくなってしまった。


「見てくださいカザネさん!! レーザーが扉に反射しています!!」
「本当だ、鏡みたいにピカピカした扉にレーザーが反射してる……。でもそれとこの動作停止に何の関係が……!?」

先程までいるかがいた場所にレーザーが当たり、鏡面のように滑らかな扉に光が反射することで、レーザーの軌道は像の台座付近へとぶつかっていた。


「これで目潰し完了だ。何も感知できなくなったはず!!」
「目潰し? 何を言ってるんだ、いるか……!?」

「奴が背後の僕とカザネさんの位置を正確に割り出せたのは、目が360度に付いてるからなんです。」
「そうかっ、あの台座か!! 顔にセンサがあるんじゃなく、恐らく僕らを捉えるためのセンサがあの台座に沿って、360度ぐるりと付いてたのか!!」

カザネはレーザーが浴びせられている台座を見て叫ぶ。それなら確かに、背後や死角の相手もはっきり見えるだろう。


「多分、あいつのセンサは光を捉えるんです。ローレルさんは上着の金色のボタン、僕はクチバシや爪に光が反射してたから、一応はセンサで感知できた。そしてカザネさんは、その楽器が身体の真ん前でキラキラ光ってるから、一番優先して狙われてたのでしょう。」
「なるほど……それでさっきもペンライトを浴びせながら注意を引いたのか……。」

「そして考えました。そんな敏感な光センサに、あの強力なレーザーをぶつけたらどうなるんだろうって。レーザーって超強力な光ですよね? それならきっとポケモンと同じく、強すぎる光で沈静化したり視力がなくなったりするんじゃないかと疑問に思ったんです。だからこの部屋で唯一、あのレーザーが届く距離に鏡みたいな扉があるあの場所を……!!」

いるかの言う通り、例えば戦場などでよく使われる閃光手榴弾の強力な光を浴びせられると、生物は本能的に動きを止めてしまう。
この像は機械ではあるが、生物と同じく光を視認して対象の位置を割り出すタイプのため、レーザーで視界を奪うことが有効打となり得たのだ。


「気付きませんでした……あの顔に睨まれているからそちらに注意が行ってしまい、あの顔が対象を視認しているのだと思いこんでいました……。」
「さあ、奴が怯んでいる内に、君があの宝玉を取るんだ。」

「えっ、カザネさん……?」
「これは君がやり遂げたお手柄なんだぞ、君がいなければ、僕たちはこのピンチを切り抜けられなかったかもしれない。道中は僕やローレルが謎を解いたけど、最後は君の力が僕たちを救った。誰か一匹でも欠けてたら、きっとこの遺跡の探検は失敗に終わってた。だから、君が最後の締めを飾らないとね。」

カザネはそういるかに告げながら、穏やかな笑みを向けた。いるかも明るい笑みとともに黙って頷くと、堂々とした足取りで像の胴体に近付き、暁の宝玉を引き抜いた。

その瞬間、出口のドアが音を立てて開き、像は腕をだらんと垂れ下がらせたまま動かなくなった。それはこの謎解きの試練の終わりを、いるかたちに告げる事実だった。








 それから三日後、カザネたちは揃ってアークへと帰還した。試験の最中の冒険者としての顔つきとは異なり、すっかりどこにでもいるような高校生らしさを見せ始めた一行に、カイネからの招集がかかった。


「母さん、一体何事なんだ? 僕らを突然呼びつけるなんてさ。」
「暁の宝玉なら、先程あなたにお渡ししたはずですが? まさか、あれは偽物だったとでも言うのでしょうか?」

「試験の内容、覚えてるよね? 実技試験の配点は150点。その内90点を取れなければ即アウト。つまり、足切りだね。」
「おい、母さんまさかそれって……!!!!」

カザネが血相を変えてカイネに迫る。カイネはとてもバツが悪そうな表情を見せたが、やがて意を決してその重い口を開いた。


「心の準備はいいね? ローレルちゃんは107.9点、カザネは113.5点で問題なし。でもいるか君は……。」
「そ、そんな……!! いるかさんが……!! 最後にあれだけの活躍を見せたのに!!!!」

「88.4点……。道中で弱音吐いたり、みんなに迷惑かけたり、メソメソしたりしたのが大量減点に繋がったの……。その、残念だけど……。」

惜しくも90点に届かなかったいるか。彼の夢は、ここで打ち砕かれることとなってしまうのか……。

(To be continued...)

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