FILE13 死神の鎌をかけられて

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読了時間目安:6分

この作品には残酷表現があります。苦手な方は注意してください

※ここから先のストーリーは解決編となります。FILE12以降から読み始めても楽しむことはできますが、先にFILE11までを読んでおくことをおすすめします。

・暴力的なシーンやグロテスクなシーンが数多く含まれます。苦手な方はブラウザバックしてください。
・結構な数のポケモンが命を落とします。自分の好きなポケモンが命を落としても平気な方のみどうぞ。
・この物語はフィクションです、実際の人物や団体、及び他のスクエア作品とは関係ありません。
・FILE13 死神の鎌をかけられて



 けたましいアラーム音に嫌でも目が覚めた。
 流石に“日没まで寝てました”ではシャレにならないので、スマホで2時半に最大音量のアラームをセットしていた。
「ん、おそよ…」
 俺の左腕を抱き枕にして熟睡していたアシレーヌも連動して目を覚ます。

「コガネシティに行く前にちょっと飯だけ食ってくぞ」
「何作るの?」
「作って置いてたガパオあるからそれにする、あとは適当にあるものでスープも作っとく」
 寝ぼすけモードのアシレーヌにはもう少しゆっくりしてもらうことにした。


 フライパンに残っていたガパオは温めればご飯に乗せて完成。残っていた人参とセロリを細切りにして小鍋で煮込み、ナンプラーと塩で味を調える。
 ナンプラー味の野菜スープをお椀に入れてくし切りにしたレモンを小皿に置く。
「そろそろご飯だぞ!」
 ガパオを盛り付けてバジルを添えて、手に乗せたスキレットで卵を2個焼き始める。
 アシレーヌが来たタイミングで絶妙な焼き具合、黄身がトロトロな目玉焼きをてっぺんに乗せて完成した。

「ご飯もスープも美味しい!」
「ありあわせだけどそう言ってもらえて嬉しいな、場合によっては…」
「何か言った?」
「いや、良く味わって食べろって言ったんだ」
 仮に事実だとしても“これが最後の食事になるかもしれない”なんてこの状況下では言う気にはなれなかった。
 バジルとナンプラーに卵の黄身がベストマッチしたガパオライスは我ながら会心の出来だった。それこそ最後の食事になってもいいレベルに。
 流石にポルチーニ茸をトッピングのマルゲリータは食べる気にはなれず、かと言って捨てる気にもなれずテーブルに置きっぱなしになっていた…



「ゼラオラからはいいニュースも悪いニュースもなし、そろそろ行くか」
 バックパックには愛用のチェーンを負担を感じないギリギリの重さまで入れておき、万一に備えてのキヘイチェーンのリングもブレスレットやアンクレット以外にも両方の二の腕にセットして、アシレーヌにも“お守り”と言ってチェーンのリング6個とキヘイチェーン24個を持たせてある。
「うん、行こう」
 アシレーヌからもOKサイン、コガネシティに向かって俺たちは走り出した。

 警察署に着くとかなりピリピリした雰囲気だったが、ゼラオラの知り合い特権ですんなり中に入れた。
 家を出る前まではゼラオラへの差し入れにサンドイッチでも買って行こうか悩んでたのに、いざ家を出たら完全に忘れていた…


「ちょうどいい所に来てくれた。ちょっと上層部に話した結果、“緊急中止を主催者に検討させる”って話になったんだ」
「それならガブリアスに殺されるリスクも減るね!」
「そう、だな…」
 確かに命を優先するなら中止は正しい判断だけど、逆にガブリアスを止めたいなら逃げられてしまうリスクが大幅に考えられる。
 どちらが正しいのかは分からないけど、そこは俺がどうにかする問題じゃないか…
「念のため緊急用の救護キットを渡しておく」
 ゼラオラからチェリムの紋章がついた大層な救護キットを渡された。
 中身は元気の塊やPP回復アイテムなどの非売品アイテムがぎっしりで仰々しいだけのことはあった。
「アシレーヌ、これは持っといてくれ」
「ガオくんの方が戦うことが多いのにいいの?」
「俺は救護キット上手く使えないからな、それに応急処置ならできる」
 元気の塊なんて誰かに浸かってもらわなきゃ持ち腐れだし、と言ってアシレーヌに渡すと敬礼して受け取られた。


「俺だ、それで話はどうなっている?」
 ゼラオラがスマホで話してる内容から察するに、多分鍋祭り中止に関する話だろう。
「何?主催者は意地でも開催するだって⁉」

『開催、するんだね…』
『みたいだな…』
 これで、ガブリアスを捕まえるチャンスは増えるけど、罪のないポケモンの命は危険に晒される訳だ。
「そうか、もうしばらく頼む」
 ゼラオラは通話を終えて深いため息をついた。
「どうやら主催者のヤツザキ家は開催したいらしくてな、今署長が必死に説得してる」
「マジか、開催まであと1時間かそこらだぞ?」
「目撃情報とかはどうなったの?」
「残念ながらガブリアスもヒメグマも目撃情報なし、それらの状況がさらにヤバさを増幅させてやがる…!」
 ゼラオラは苦虫を嚙み潰したような顔で小さく叫ぶ。確かにこの状況はかなりマズいな…

「ねぇ、もしかしたらお客さんの中に隠れてるんじゃないかな?」
 重い雰囲気の中でアシレーヌは口を開く。
「お客さんの中?」
「そう、会場のお客さんは毎年すごい数だから紛れ込んだら分からないんじゃないかなって思ったんだけど…」
「…」
「…アリだな」
「会場の警備をしている警官ですら見つけられないのにどうやって探すんだよ?」
「そりゃ、探す奴を増やせばいい」
「ガオガエンはそうやって簡単に言うが、警官の配置を変えるのはどれだけ大変か…」
「俺たちが探しに行く。探し絵の本も頭数多い方が早く見つかるからな」
 バックパックを背負って立ち上がる。
「たまにはこっちから動かないとな、場所だけ教えてくれ」
「放送局前のステージだ、大鍋があるから場所は分かるだろうけど無理するなよ…?」

「了解だ、そして一つだけ言っとく。俺たちはこのコガネシティに来た時点で死神の鎌を首にかけられた状態なんだ、だからこそ言わせてくれ…」
 軽く深呼吸して叫んだ。

「誰も死ぬなよ、全員生きて再会するぞ!」
「うん!」
「当然だ」
 三者三葉の思いで同意、俺とアシレーヌは会場に向かって移動し始めた。



 to be continued…

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