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お題「陽」で書いたお話。
 その日は突き抜けるような空が広がっていた。あいつと死合うにはまさに、絶好の日だった。
 寝床に光が差す前にむくりと体を起こした後に、雨の香りはどこにもなかった。
 目が覚めると同時に腹に寂しさを覚える。母さんを起こすのも気が引けて、あたしはこっそり窓から抜け出した。


 適当な木々から恵みを受け取る。早すぎる朝飯だけれど、これからあいつと殺しあうんだから。
 かじりつき、口の周りの果汁を舐める。あぁでも、こんな早い時間にはいないだろうな。
 馬鹿をやったことに気づく。お天道様はまだほんの少しも顔をのぞかせちゃいないのに、あいつがあそこで先に待っているはずないに決まってるじゃないか。
 あいつは決闘に遅刻したことはない。けど、今回はあたしが早く行き過ぎてるだけだ。だってこんな真っ青な空の下で、あいつと殺りあえるなんて、それだけでわくわくしちまって。
 たまにはゆっくり待ってやるのも面白いかもしれない。
 口の中で転がしていた種を吐き出して、あたしは両手の爪を眺めた。


 ふと眼がさめればまだ太陽は昇っていなかった。まだ朝は寒い。眠りに引き返すには十分だった。
 しかし妙に目が冴える。ずるりと寝床から這い出して、俺は空腹によって完全に目が覚めた。
 どうも朝っていうのはいつも決まって腹が減っている。晩にしていることといえば生傷だらけの体を休めるために寝ているだけだっていうのに。
 

 まぁ、生傷の原因はあいつとの決闘だけど。外に出れば冷たい風にあたる。眠い、と反射的に感じるのは本能か。
 少し先にある林檎の木を目指す。何かを食わないと体が冷えっぱなしだ。体を動かす。
 秋空は雲ひとつない。まるで、いつか見た海みたいだ。いや、こんなに澄んじゃいなかった。やっぱり、空は空だ。
 今日は随分と天気が良い。あいつはまだ寝床の中だろうか。
 こんな朝っぱらから面を合わせることはまずないだろうけど、仮に、だ。
 あいつにあったら、殺しあうか。まだまだこの体は冷える余地がある。眠りこむ前に、この風を涼しく感じられるくらい、死合うことができれば。
 
 
 だってこんな決闘日和、滅多にお目にかかれない。
 

 好敵手ってのどうしてこう、似てるのかねぇ?
 いつもの場所で、いつものように鉢合わせ。
 朝飯は?すませた。上等。ならやるか。

 互いの武器がぶつかり合う、派手な音が空に吸い込まれていった。
相思相愛ってこういう関係性だと思ってます。
まあこれも「鞄」に繋がる幕間です。

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