勇者ロト

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読了時間目安:21分
 アラベスクタウンからルミナスメイズの森を抜け、ラテラルタウンに着いた。
 町中、静まり返っており、人々やポケモンたちの静止した姿があった。その一つ一つを確認している場合ではなく、私たちは、砂塵の舞う6番道路を歩き、ナックルシティへ向かう。

「しかし、砂塵や自然だけは動いているんだな。天体は止まっているというのに」

 そう言うと、ダンデは暗闇の中、少し咳き込んだ。早く抜けたい道である。

「急ぎたいところではあるが、この6番道路は起伏に富んだ道だ。下に降りるときにうっかり足を踏み外すと骨折、ということもありうる。慎重にいきたい」

 焦っているだろうに、ダンデは冷静だった。そして、こう言った。

「サナ、道案内だけは頼むぜ」

 こういうところは、世界変われどダンデである。
 私たちが先を急ぐのには理由があった。ルミナスメイズの森を歩いていると、突然、テレパスを感じたのだ。
 エスパーの力。離れていても、精神と精神を繋ぎ合わせ、意思疎通する能力。
 私に語りかけてきたのは、バウタウンにいるメイちゃんの手持ちポケモンのサーナイト“多幸のサナ”だった。証つきであり、なぜか私と同じ名がメイちゃんによって名付けられている。
 多幸のサナは、メイちゃんの伝言を簡潔に伝えてくれた。

「こちら側のダンデの居ないことに気づいたホップがソニアと共に、マッシュの運転するアーマーガアタクシーに乗り込み、ふたりでナックルに向かった」――簡潔にはそういうことだった。シュートシティとのズーム会議でバウタウン側に情報が入ったという。
 このご時世、空を飛ぶことの危険性は幼いメイちゃんにもすぐに分かり、何とかしたい一心でサナ同士の通信を試みたのだった。

「マッシュ達が出発したことを知れて良かったニャ。でも不思議ニャ……自分も同じことをしようとしてるのに、なんで相手が同じことすると心配でたまらなくなるのニャ……」

「それはお前たちが他者のために身を投げ出せる人間やポケモンだからだろう」

 シャケがそう言うと、腕の中のバズライトイヤーの形をしたT-800が答える。

「じゃあ、おミャーには理解できないニャ?」
「……まあ、今はAIで作られたこの私も少しは理解できるか」
 バズライトイヤーの人形の外見からは表情は見えないが、その言葉には感情が宿っているように感じた。

「一緒なのニャー!」
「一緒ではない」
「ズッ友ニャー!」
「ズッ友とは何だ?」
「ずっと友達の略だニャー!」
「なるほど、スラングか」

 人の言葉を巧みに操るニャースと、AIの宿ったターミネーター。不思議な友情だった。
 シャケは嬉しそうにニャーニャー言っていた。かつて、人の心を持たなかった殺人アンドロイドも、いくつもの出会いと別れ、経験を経て、心を持つようになったのだ。それは、単なるプログラムではない、1個の生としての成長、一つの奇跡のようなものだと思う。

「ナックル城がなく、シンボルが分かりにくいが……あのあたりがナックルシティだ」

 T-800の的確なナビゲーションは、暗くて周囲が良く見えない中とても心強かった。
 道路を進んでいくと、外周にたどり着き、そこにポケモンセンターを発見する。

「様子だけ見ていこう」

 ダンデの一言で中に入る。
 しかし、私もシャケも言葉を失う。そこには、止まったまま動かない人々が身を寄せあっていた。
 避難を誘導したのだろう。もっとも扉に近いところに居たまま時を止めていたのは、この街のジムリーダーだった。

「キバナ……」

 ダンデは思わず言葉に発する。世界は異なるが、かつての友の、物言わぬ姿にショックを隠しきれない様子だった。

「なんてことニャ……あっちの世界でもおミャーはみんなを守って犠牲になったけど、ここでもこうなのニャ……」

「いや、死んだわけでは無いな……しかし、対処法も見つからない。まあ、絶望的な状況で見ると、ショックには違いないな」

「おミャーは悲しくないのかニャ? 世界は違っても、友だった男がこうなっ……」

 シャケはそこで言葉を止めた。
 不自然に背を向けたダンデの肩が震えてるからだ。地面に水滴が滲んだ。

「いかん、雨が降ってきたな」
「雨なんて降ってないニャ」
「いや雨だよ」
「屋内なのニャ……頑固な男ニャ……」

 シャケもつられて涙を零しそうになるが、ダンデは手の甲で目元を強引に拭い、振り返る。

「ところでシャケ。お前のいう、あっちの世界とは、お前の主人のカイトというあの怪盗と迷い込んだ世界か?」

 強引な話題転換であったが、元々いつか聞く機会を窺っていたのかもしれない。

「決闘者の世界ニャ。そういえば前にナックルでおミャーとカイトが闘ったとき、バトルスタイルが似ていたニャ……?」

「お前が聖なるバリア・ミラーフォースになった時だな。あの時はすまなかったな」

 かつては敵だった男は今ここで行動を共にしている。

「おミャーのいた世界のキバナは、最期まで闘っていたニャ。いつか、親友が戻って来るって言ってたニャ……それはきっとおミャーの……」

 シャケの声は震え、それ以上の言葉は紡がれなかった。代わりにダンデは背を向けると、「先を急ごう」とポケモンセンターを後にした。
 その背中にあるのが「罪」だとしても、それは一生をかけて背負っていかないといけないものなのだろうか。そう考えると、悲しくなる。

 外周に沿って歩いていくと、門が見える。しばし無言で私たちは歩き続けた。

「目的地周辺に到着。音声案内を終了する」

 バズライトイヤーの無機質な電子ボイスでT-800は告げる。かつての門だった場所から先は城だった場所がごっそり無くなり、穴のようになっている。そこかしこに瓦礫が少し残っている。かつての美しい古都は見る影も無かった。

「砂塵と夜の闇で見えにくいが、敵が近づいてきている」

 T-800の索敵機能が反応し、同時に私にも敵の襲来が予知された。
 生き物とは若干異なる気配がする。

「シンボラーか。なるほど、ポケモン図鑑にもあったな……古代都市の守り神と」

 ダンデは呟く。
 そして、自身の背負う剣のベルトに少しばかり視線を移す。この剣の柄の部分は、不死鳥が翼を広げたような紋様が装飾されている。それは、ナックル城のデザインとよく似ていた。

「古都の防衛機能が動き出しているのか。なるほど、コレクレーと俺たちが呼んでいるアイツらもその類か」

 だとすれば、天空のナックル城を停止させない限りは動き続ける。

「見たところ、数が多い。そんなものを相手にしている場合じゃない」

「問題ない。目的は地下のエネルギープラントだ。いったんこのまま、目の前の窪みに入れば、流砂でそのまま地下へ行ける」

 バズライトイヤーの地形サーチが入る。目から妙な光線が出ており、それでスキャンしているようだ。

「古代都市の地下迷宮が広がっているようだ。私の知識ではそれは“不思議のダンジョン”と呼ばれる、形を変え続ける迷宮だそうだが、今は幸い、時が止まる一連の騒動の中で、活動を止めているらしい。単なる地下通路に過ぎない」

 その言葉を聞き、ダンデは頷く。

「サナ、シャケ。行くぞ」

 そして、助走を長く取り、流砂の中へ飛び込んだ。シャケはあわあわ行っていたが、バズライトイヤーの飛行モードに引きずられる形で穴の中へ入っていった。私もその後を追う。
 着地した地面は感触が無く、そのまま流砂に私たちは飲み込まれていく。

 そして、そのまま、地の底へ落下した。
 だが、落下というほど衝撃はなく、既に溜まった砂がクッション代わりになり、私たちは傷ひとつなく、地底の底に落ちた。

「ここは、古の昔、王のなかの王と呼ばれる存在が玉座の間にしていたという階層だと、未来の世界のデータベースにはある」

 T-800は周囲を分析する。
 なぜか、不思議と明るかったが、それは、ワットエネルギーが結晶化したものがうっすらと光を放っているせいだろう。

「その王者の剣もかつてはここに至る階層のいずれかにあったものだろう。長い年月、時空の歪みのなかで、別の世界にわたり、“ロトの剣”と呼ばれることもあったという。勇者のみが持つことを許される、最強の剣だ」

 T-800が口にするのは、以前、海賊ルヒィの仲間の剣豪ソロが言っていた伝説の剣のことだ。ここに来てその存在を確認することになろうとは。

「そんなことはどうでもいいが、玉座の間があるんだな?」

 話をぶった切り、ダンデは念を押すように尋ねる。

「そのとおりだ。あそこにダンジョンに繋がる通路が見えるだろう。そこを直進し、右折しすぐの突き当たりを左折、すぐに右折。四本の柱の間を通過し直進。突き当たりを右折、視界が開けるので、そのまま三百メートルを進む。また屋内に入るので突き当たりを右折すると玉座の間だ。実際の交通規制に従って走行してください」

 途中からナビゲーション機能が起動しかけるが、今はありがたく、その指示に従い、薄明かりに照らされた道を進んでいく。
 T-800が的確にナビしたとおり、一度、煉瓦造りのダンジョンを抜ける。そして言われるままに再び、ダンジョンに入ったところで、ダンデが眉間に皺を寄せる。

「あいつ……」

 そう呟いたと同時に走り出し、腰のボールに手をかける。ダンデの手持ちポケモンで唯一、時の制約に縛られずボールから出て来ることのできる黒龍は、すぐにボールの外へと召喚される。

「俺のターン! 真紅眼の黒龍を召喚!!」

 言うや否や、ダンデは闘いに割って入る。緑の王冠を被った何者かの一撃を受け、黒いリザードンは踏みとどまった。
 ダンデが割って入り庇ったのは傷だらけのザシアンとザマゼンタ、そしてマッシュだった。

「お前は……くっ、遅いぜ、だが何とか持ち堪えたぜ……そいつはバドレックスだが、古城の防衛システムみたいなもんになってるらしい。侵入者に反応してやがる。上の階層でホップが復旧作業を行う間、俺はこいつを食い止めてた……」

 マッシュは息絶え絶えの様子で、現状を伝える。

「こいつを足止めするだけじゃ駄目みてぇだ。エネルギープラントが動けば恐らくそれを停止させに行くよう命じられてる。いくらホップとソニアが頑張っても無駄だ。何とかこいつを倒さねえと……だが、俺はもう駄目だ。コウタローから預かってたザマゼンタと俺のザシアンで応戦したが駄目だった。リーダー・ダンデ。後は任せたぜ……」

「マッシュ、俺はリーダーなんかじゃ……」

「馬鹿言え。あっちのダンデはあっちのダンデだ。お前はお前、だろ……グフッ」

 それだけ言うとマッシュは地面に倒れ込む。既に瀕死状態のザシアンとザマゼンタはマッシュのボールへと戻っていく。おそらくこの2体は、ベーコンとナオミだろう。マッシュとコウタローの手持ちポケモンだ。
 2体は命こそあれ身動きひとつ取らない。マッシュはその横で咳き込み吐血する。内臓への損傷はあるかもしれない
――

「サナ、癒しを!」

 ダンデが咄嗟に指示を出すより早く私はマッシュとその手持ち2体に駆けより、癒しの波動を施す。しかし、なかなか効果が出ない。死に瀕している人間を回復させるには、時間があまりに足りない。

「俺に任せろ、サナはそちらを頼む」

 癒しを施し続ける私を庇うようにダンデは立ちはだかった。
 そんな私たち様子を意に介した様子もなく、緑の王冠のポケモンは言う。

『ほほう……その背の剣の不死鳥の紋様、覚えがあるぞ。貴様が勇者の子孫か。我が王国を乗っ取り、腐敗させた大罪人よ』

 脳内に響く声を聞き、ダンデは怪訝な表情を浮かべる。

「俺はダンデだ。この気配? お前はもしや……」

 ダンデの声を遮り、緑の王冠の奇妙な生物がその身を震わせる。

『よくぞ来たダンデよ! 私が王のなかの王、バドレックスである。私は待っておった。そなたのような若者があらわれることを。もし私の味方になれば世界の半分を貴様にやろう。どうじゃ? 私の味方になるか?』

 バドレックスと名乗った敵は仰々しく、両手を広げる。ダンデは私に視線を送ってくる。意図を察知し、私はスカウターを装着し敵のデータを確認した。
 そこにはしっかりと名前が出ている。このバドレックスと名乗るのは――

『サカキ……?』
「この緑の王冠がサカキ様!? そんにゃことないニャ!」
「いや、サカキだ。サナ、覚えているか。東京と呼ばれる街のある、スタンドと呼ばれる存在のいた妙な異世界のことを」

 この世界とは異なるスタンド使いとスタンドの存在する、不思議な世界。私はそこで人間として過ごした。不思議な体験だった。
 サカキも迷い込み、ミュウツーになっていたと思う。

「あのとき、あのミュウツーが俺と対峙したとき、“豊穣の王はどうなった”と聞き、俺は失敗したと答えた」

 あの混乱の中だ。記憶はあやふやだが、確か病院でサナっちを守りながら闘っていた時に、このダンデは参戦してくれて、その時にそんな会話をしていたように思う。

「あの時から遡ると、お前の知らない側で進んでいた話がある。言う必要も無いと思っていたので言わなかったがな。俺はカンムリ雪原でバドレックスの奪取に失敗した……お前のガラルのマスターに邪魔されてな。だが、そのあと、レインボーロケット団の真のボス……お前の言うところの、アローラのマスターがそれを受け取った」

 確かにこの世界に戻った直後のムゲンダイ巣穴でガラルのマスター、ユウナはそう言っていたように思う。まんまとバドレックスを渡してしまったことで、今この惨状があるのだ。

「サカキはムゲンダイ巣穴の闘いで傷つき、手持ちポケモンのミュウツーと共にウルトラホールへ落ちた。その後、少し離れた場所で、レインボーロケット団の手によって回収されたが、廃人のようだった。そのサカキを元に実験を進め、豊穣の王バドレックスとサカキを融合させた研究結果が目の前のアレだ」

「あれがサカキ様ニャ?」

 しかし、腑に落ちないこともある。サカキはミュウツーになったのでは無かったのか。

「サナ。お前の疑問はわかる。あのミュウツーの一件はレインボーロケット団の研究員たちも知らない。俺とお前だけの知る事象だ。ウルトラホールへ落ちた時、サカキとミュウツーの意識が混ざり合い、分かれた。つまり、あのとき闘ったミュウツーは、サカキとミュウツーの混ざりあったものがミュウツーの身体に宿ったものだ。そして、同じように混ざりあったものが、サカキ側の肉体にも宿った。それがアレだな」

 ウルトラホールで起こることは未知数だが、人間とポケモンが混ざり合うなどということがあるのだろうか。いや、いくつか私の知識にもあった。
 例えば、カントー地方のマサキという男だ。ポケモン転送マシンを開発した初期の段階で事故を起こし、ポケモンと一体化していた。それと若干異なるケースだが、そのことを踏まえると可能性としてはありうる。

「やっぱり、あれがサカキ様なのニャ?」

 シャケの目には涙が浮かんでいる。そして、恐る恐る、バドレックスに向き合い、一歩ずつ、歩みを進める。

「サカキ様ニャ……? 会いたかったのニャ。ニャーはダメなニャースだけど、一生懸命頑張って来たのニャ……抱きしめてくれなくていい、なでなでしてくなくていい……ただ、一言、ご苦労、と昔みたいに言ってほしいニャ……」

 その声を聞き、目の前の存在が頭を押さえ、苦しみ始める。

『ぐはあああ……! 何者だお前たちは? わしはバドレックス。ガラルの王として目覚めたばかりだ。うぐおおお……! 私には何も思い出せぬ……。しかし何をやるべきかはわかっている。お前たち人間とポケモンどもを根絶やしにしてくれるわっ!』

 もはや錯乱状態にあるサカキ=バドレックスが腕を振るう。
 その手から放たれたサイコキネシスがシャケを襲うよりも早く、シャケに抱えられていたT-800がその攻撃を身代わりする。

「私はバズライトイヤー……」

 台詞を言い切るよりも早く、地面に強く叩きつけられ、そのまま何度も何度も。玩具のボディがぐちゃぐちゃになるまで鈍い音が響く。

「あああああ、バズーーーー!?」

 シャケが叫ぶ。
 バドレックスは足でそれを踏み潰すと、バズライトイヤーは四肢が無惨に飛び散った。
 元はレオンの玩具だったボディの名残が、ちぎれた足の裏に見える。「レオン」という名前が書かれていた。
 シャケの目の前に、バズライトイヤーの首が転がってくる。

「あ、あ、あ……」

 シャケの口から言葉にならない何かが零れ落ちる。
 それは単なる玩具では無かった。人としての心を持つ、未来の世界の優しきターミネーター。少しお喋りで、変に学習した言葉をたまに混じえ、シリアスなのかユニークなのか分からない、憎めないキャラクターをしていた。

「サカキ様……あんまりだニャ、あんまりニャ……このバズライトイヤーは普通のバズライトイヤーとは違うニャン、貴重だニャン。こいつは良い奴だったニャ……」

 拾ったバズライトイヤーの首を両手に見せながらよろよろと近寄るシャケ。
 私は玩具を回復させることはできない。機械を生き返らせることはできない。仮に出来たとしても、今、私のこの手の中でかろうじて繋いでいるマッシュとナオミ、ベーコンの命を手放すことになる。癒しの波動をかけ続けながら、私は自身の無力さを呪った。

「ロケット団は、悪さはするけど、仲間は大切にしていたはずだニャ! おミャーなんかサカキ様じゃないニャ!! サカキ様は、サカキさ――ギャフッ!?」

 元・ロケット団の首領サカキは、シャケを蹴り飛ばした。短い悲鳴をあげ、壁まで吹き飛ぶシャケ。その手から落ちたバズライトイヤーの首がころころと転がる。
 それを値踏みするように見下す。シャケは蹲り、痙攣している。

 悪夢だった。かつて、この冒険の始まりに、ダークライに見せられた悪夢の光景と同じだ。
 いや、悪夢であればどれほど良かったか。目が覚めればそれで済むのだから。

「サカキ。貴様、完全に豊穣の王に成り下がったか」

『言葉を慎みたまえ。君はガラル王の前にいるのだ』

 そう言うと、バドレックスはさっと手を上げ、どこからとも無く、白と黒の混ざりあった妙な馬を呼び出しそれに跨る。人馬一体、という言葉に相応しい、威風堂々とした姿をしていた。
 ダンデもまた、黒いリザードンに跨り、竜騎士ダンデとなる。そして、王者の剣を抜き放つ。白刃が輝きを見せる。

「いくぜ、リザードン」

 黒いリザードンは雄々しく咆哮をあげると、虚空へ向け、紅蓮の炎を吐き出した。主の怒りに連動し、真紅眼の黒龍は臨戦態勢を取る。
「……俺のターン!」
 決闘開始の合図が高く響き渡った。

――――――――――
【補足】勇者の子孫と王のなかの王のとは?
 ナックル城の地下には王家にすら存在の忘れられた迷宮が広がっている。入る度に地形を変え、探索者を惑わし脱出さえさせない、その悪夢のような迷宮は、文献には『不思議のダンジョン』とある。ポケモンとは異なる魔物(モンスター)と呼ばれる存在が跋扈しており、異世界に通ずるとも言われている。
 最深部に前人未到のフロア、通称『りゅうおうの間』があるが、それが今回サナたちの迷い込んだエリアである。本来は地形を変え続け、増え続ける階層を超えた先にあるが、今回、時間と空間が停止していたため、何のやりこみプレイをすることもなく、呆気なく最深部に到達できてしまった。
 最深部には“王のなかの王”が待っているのが定番であるが、今回バドレックスは本能的にその最深部の玉座に居座り、ナックル城の敷地への侵入者を察知する度にそれを排除する一種の防衛システムの一部と化していた。
 ダンデが年老いた未来の異なる世界線のホップから託された王者の剣は、世界を超えて存在する伝説の剣であり、その出自はこの不思議のダンジョンの先に繋がる異世界にあるとされている。その柄の紋様は別の世界線では『ラーミア』と呼ばれる不死鳥を模したものであり、その剣を手にした勇者ロトの末裔はすべからく世界を救ってきたという逸話もある。
 ガラル王家の始まりとの関連性は不明であるが、シンボラーは不自然にもこのロトの紋章と同じ形状をしており、またナックル城の外観もこのロトの紋章に酷似している。
 もちろん、本作の創造主である私の頭のなかにある勝手な妄想であり、それが具現化したものが今回のストーリーである。
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