二人だけの時間

しおりを挟みました
しおりが挟まっています。続きから読む場合はクリックしてください
読了時間目安:3分
 「ご、ごめん待たせちゃって!早くお店まで行こうか!」

 緊張で声がいつもより強くなってしまった。あ然とするシーちゃんの手を引いて、僕は高鳴る心臓の音と共に、早足で歩き続ける。

 「レ、レオンくん…その…そろそろ手を離してください。強く握りすぎて…ちょっと痛いです…」

 シーちゃんのか細い声を聞いて、僕はようやく自分の手に力が入り過ぎてたことに気づく。

 「あっ、ご、ごめんシーちゃん!あの場所から早く遠ざけたくて…つい…」

 自分の行いを後悔しながら、シーちゃんに向かって頭を下げる。やっぱり僕は、彼女の前だと冷静でいられない。いつもの自分を取り戻せなくなる。

 「大丈夫だよレオンくん。急に知らない人に話しかけられて、どうしたらいいか困ってたの。助けてくれてありがとう」

 シーちゃんはそう言いながら、屈託のない笑顔で僕に感謝を伝えてくれた。彼女のために勇気を振り絞って、必死に行動した結果がこれなら、お小遣いやマンガよりもずっと嬉しいご褒美だ。

 「シーちゃんが無事で何よりだよ。早く待ち合わせ場所へ行こうか」

 これがもしマンガやアニメなら、主人公とヒロインのラブラブイベントといったところだろうか。しかし場所はショッピングモールで、登場人物はヘタレなポケモンと清楚で可愛いポケモン。これから壮大な物語が始まるわけもなく、僕たちはポケカフェへ向かおうとした。

 「ね、ねぇレオンくん。せっかくだから、一緒に色んなところを見てからでいいかしら?レオンくんが隣にいれば、買い物もいつもより楽しいから…」

 突然の提案に僕の脳内が止まる。シーちゃんと一緒に見て回るってことは、男女で仲良くショッピングをするってことは…ででで、デートってことですかシーちゃん!?
 なぜにそのような展開へと路線変更したのか皆目検討がつかない状況ではありますが、これはつまり僕の好感度が上がってるということでお間違いありませんか!?
 や、やっぱりさっきの行動が好印象だったのか!シーちゃんのハートにグッときて、近うよれとお誘いしてくれたのか!

 「こ、こんな僕で良ければ、お付き合いさせていただきます」

 暴走気味だった思考を抑えて、僕はシーちゃんの横で肩を並べながら歩く。
 最初にここへ来た時は、こんな展開が待っているなんて思いもしなかった。もしこうなるなら、事前に家で準備しておけば良かった。何を話そうとか、どこへ行こうとか、何を買おうとか…僕はぶっつけ本番が一番嫌いなんだ。

読了報告

 この作品を読了した記録ができるとともに、作者に読了したことを匿名で伝えます。

 ログインすると読了報告できます。

感想フォーム

 ログインすると感想を書くことができます。

感想