第146話 圧倒的カリスマ先輩

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この作品には残酷表現があります。苦手な方は注意してください

 ゴールドが7の島に来る数時間前の事。アヤノとジュンコはこの島に訪れていた。

「ここが団長のいる島だよ」
「7の島……。なんだか殺風景な場所ですね」

 船着場にコイキングの形をした潜水艦をとめて二人は歩き出す。自然に囲まれた、と言えば聞こえはいいが木々が至る所からそびえ立っている以外に何もない。

「そうだね。団長の中身とは大違いだ。団長の腹の中は何を考えているのかアタシにもさっぱりだから」
「団長さんに話を聞いてもらえるといいですね。私のポケモン達もどうしているのかしら……」

 しばらく森の中にある獣道を進んで行くと、ぽっかりと空間が広がる場所に出た。
 その場所には大きなビルが建てられていて、自然とは正反対の人工物である。壁は所々剥がれ落ちていて立派とは言えない。黒々とした建物が太陽に焼かれているようにも見えた。

「アタシらの、というか団長だけが使っているこのビルの最上階にいるよ。エレベーターはあるけど、いつ止まってもおかしくないからね、階段を使おう。七階さ! 大丈夫、アタシらなら行けるよ」
「はい!」
「ポケモン達が……たくさんいますね」

 ビルの扉は壊れていて両開きの自動ドアは意味を成していない。開放的にも見えたが電気が届いていない場所には闇が広がっていた。
 窓がない一階には薄暗くて何も見えないが襲われることはなかった。しかし、二階に登った時、アヤノの言う通りポケモン達の姿が見えた。
 怯えたような目をする者、興奮して目が充血している者、侵入者に興味がなさそうな者、様々なポケモン達が収容されていた。

「ああ。誘拐して来たポケモンが主だけど、アタシらに懐いたポケモンもいたりするんだ。襲われたりはしないと思うけど……っと! 危ないねぇ! アヤ! 下がってな! この階のポケモンはち~と様子が違うみたいだ! 行きな! ムウマ!」
「ムー!」

 後ろを引っ付いて来て、服を掴んだまま離さないアヤノにジュンコは眉を下げて苦笑い。結構強気なお嬢さんかと思ったらそうでもないらしい。
 そう油断した時、興奮したポケモンがアヤノ目掛けて飛びついて来た。
 襲って来たポケモンはラッタ。大きな丸々とした身体で体当たりをしてきたがジュンコが身体を使って守った。
 仕方なしに手持ちのムウマを出したジュンコは攻撃ではない命令を仕掛けた。

「怪しい光! 今だよアヤ! 駆け抜けな!」

 ムウマの首に掛けている赤い数珠玉のようやアクセサリーから怪しくも美しい光が辺りを埋め尽くした。ラッタ以外のポケモンも目を回して仰向けに倒れている。
 チャンスだ、ジュンコは瞬時に感じ取りアヤノの背中を押して叫ぶ。

「はっはい!」
「アタシはポケモンを傷つけたくないからね……状態異常にしか出来ないけど! さあ! あと五階だ! 一気に行くよ!」
「ギャラちゃん達待っててね!」

 強さと優しさを持ち合わせたジュンコにドキッとしてしまう。身を呈して守ってくれる存在がマイ以外にもいるのだと知った。
 赤くなる頰は走ったせいだと自分に言い聞かせてアヤノとジュンコは走り出す。

◆◆◆

 一方その頃、マイはポケギアでレッド達に連絡を取っていた。
 時間軸にすると、マイが電話をしている現在はゴールドがバビロン団のアジトに侵入した時。すでにアヤノとジュンコは3の島から脱出していて、ゴールドより先にアジト内にいる事になっている。

「レッドさんお久しぶりです、マイです! あのね今友達が誘拐されちゃって困ってるんです! 助けてください!」
『それはいいけど、ゴールドには会ったか?』

 ポケモンリーグ以来の声はとても新鮮に感じた。腕が痺れた事に完全に億劫になってしまった事を知らないレッドだが、そんな事も気にせずに話をしてくれた。
 ゴールドには会ったか? その質問にはマイも困ったように言葉を選んで返す。

「会ってないけど電話はしました! 事情はよく分からないんですけど……バビロン団とかいう悪い人達のアジトの目の前にいるみたいでした! でもどこの島なのか分からなくて!」
『島? えーと俺よく分からないんだけどナナシマにいるだっけ? その内のどこの島にいるか分からないって事でいいか?』

 マイのイケない所は主語を話さない所。島なんていくらでもあるのに、ナナシマの島とは言えない。
 だがレッドはそれを察したのか、たまたまゴールドから聞いていたのを覚えていたからなのかさておき話は通じるみたいだ。

「あっはい! そうです! コウちゃんにもこっちに来てもらうんですけどレッド先輩も来てくれませんか?」

 レッドの返しでようやく自分の言っている事がおかしい事に気付いたのか汗を内心垂らす。ゴールドなら分かってくれるから、なんて言い訳まで心の中でしてしまう。

『ああ! グリーンとブルーとイエローも連れて行くよ! すぐ横にブルーがいるから代わるな! 俺より頭良いから! ほいブルー』
「ぶ、ブルー先輩ですか? はじめましてマイって言います! 突然すいませんけど力を貸してもらえなですか!?」

 話の内容から自分だけでは理解出来ないと、隣にいるらしいブルーに電話を引き渡す。図鑑所有者辞典で顔だけは知っていたが話した事はない。
 まさか初めて話すタイミングがここだとは思わなかったマイは心臓が口から飛び出す勢いで声を出した。

『はぁいブルーちゃんよ。可愛い後輩のピンチに助けない先輩がいるもんですか! 事情は分かったわ、全部で七島のナナシマ。それぞれに散ってアヤとゴールドを見つけるわよ~!』

 それなのにブルーはおちゃらけた雰囲気で電話に出た。が、話している内容はとてもシンプルで至って真面目。

(わわわすごい! ブルー先輩が何を言ってるか分からないけどすごい!)
『1の島は観光客で溢れていてアジトはないはずね、そしてマイのいた4の島にもアジトはない。アヤが誘拐された3の島にコウと――』

 淡々と状況を把握し、何をすべきなのかを説明するブルーに圧倒されるマイの目はクルクルと回りそうだ。しかし、とある言葉には反応を返した。

「あ! わたしさっき3の島に着いたんですけどアヤノ達はもう出て行った後みたいです! 周りにいたバビロン団の人達が言ってました!」

 どうやらマイは今、アヤノがいたとされる3の島にいるらしい。しかも、バビロン団が周りにもいる。しかし、バトルを持ちかけられないという事は既にバトルを終えたという事か。
 中々やるじゃない、ブルーは舌舐めずりをして不気味に笑う。

『ほほほほ頼もしいじゃない……じゃあ1と3と4は無し。じゃあアタシとシルバーで2の島、グリーンとイエローは5の島、レッドとクリスでの6の島、そして残りのラッキーセブン! 7の島はマイとコウで向いなさい! 以上!』
(そっか! わたしにはまだシルバーさんとクリスさんもいたんだ!)

 図鑑所有者の全総力が結成。それぞれ二組に分かれて行動だ。
 ブルーとシルバーは姉弟のような関係で誰よりもお互いを信じあえる、グリーンとイエローは師弟関係で万が一戦闘になっても安心だ。レッドだけでも戦闘力は十分だがなにぶん天然で方向音痴、しっかり者のクリスが不可欠だ。
 最後にポケモンリーグチャンピオンのマイとそのライバルのコウ。お互いの戦い方は理解しているので邪魔にはならない。
 話しながら頭の中で整理するブルーは流石としか言えない。

『マイ? コウが来るまでその場に待機よ! じゃあまた!』
「はっはい! 切れちゃった……あっコウちゃんに連絡しなきゃ! えーと、コウちゃんの連絡先は……あった! もしもしコウちゃん?」

 電話を掛けたのはマイなのに、誰よりも理解してしまったのはブルーのようだ。
 嵐が去った後みたくマイは呆然とポケギアをにぎるだけ。ほんのしばらくしてから思い出したようにコウに電話を掛けた。

『マイか。どうした? そういえばアヤがもの凄い怒ってたけど』
「そのアヤノが誘拐されたんだ! コウちゃんお願い今すぐ3の島に来て!」
『はああ!? 話がみえてこないけど分かった、カントー地方のナナシマだよな?』

 ブルーの圧倒的カリスマ指示に慣れた後のマイの説明はまるで駄目。
 コウは頭に沢山のハテナマークを浮かべながらもパズルのピースを当てはめるように聞き返す。

「えーっ凄いどうして分かるの?」
『ポケモントレーナーなら常識だ』

 気付いた時は遅かった。また自分の説明がなってない事に思っても後の祭り。結果としてはオーライ。

「ソウナンデスカ」
『ああ、じゃあ行くから電話切るぞ』
「ああうんってもう切れてる……はあ、ここで待つのか~」

 自分の成長がみえないマイは肩を落として3の島の船着場にヘタリ込む。
 真夏の太陽がマイをジリジリと追い込んだ。

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