Message:6 波導は我にあり

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 朝。部屋で目が覚める。隣を見ると、ピズはまだ寝ていた。……もしかしたら、ボクのほうがピズより早起きな方なのかもしれない。ボクは枕元に置いてあったスカーフを首元にきゅっきゅと巻く。「よし」と声を出した時、ちょうどピズも目を覚ました。

「ふあぁ……アルコ、おはよう」
「ピズ、おはよう。起こしちゃった?」
「んーん、大丈夫。ちょうどそろそろ起きる時間だったし」
「そっか」

 起き上がったピズが、ボクと同じようにスカーフを巻く。ピズはそれだけではなく、かみなり音符の耳飾りもしっかり身につけていた。そして、もう1つ。ピズが石のネックレスも手に取る。

「あっ、この石のネックレスも身につけることにしたんだね」
「うん、そうなの。……今までは下手につけて盗られちゃうのが嫌だったからつけてなかったんだけど、今はこうして……ほら、スカーフで隠れるから」

 と、ピズがスカーフの下に隠れるように、青い石のネックレスを身につける。「これでよし」とピズが小さく呟いた。

「よし。んじゃ、そろそろ行こうか」
「そうだね」

 前日、ちゃんと中身の準備をしておいたバッグを手に取り肩からかけ、これで完全に準備OK。ボクらは部屋から出て、広間へと向かった。


* * *


「「おはようございますー」」

 ボクらが同時に朝の挨拶を言うと、待ってましたと言わんばかりに現れたのは、トリルさんだった。

「おはよう諸君。待っておったぞ。今日は……わかっておるな?」
「はい、トリルさんとの特訓ですよね!」
「左様。準備は……万端なようだな。では、朝食をとったら、ワタクシについてくるように」
「はい!」「わかりました!」

 元気よく返事をするボクら。それにトリルさんはニコニコと笑顔を見せていた。

「ご飯、出来たよー」

 と、ナイスタイミングでビブラートさんがご飯を出してくれる。

「ありがとうございます!」

 にしても、ビブラートさんって毎日みんなの分のご飯を用意して、凄いなぁ……。尊敬する。

「……ん、僕の顔になにか付いてる?」
「あっ、いやっ、すみません!」

 凄いなぁと思っていたら、ビブラートさんの顔を凝視してしまっていたらしい。

「いやぁ、ビブラートさんって毎日みんなの分のご飯を用意していて、凄いなぁって思って……」

 ボクは、心の中で思っていたことをそのまま口に出す。

「わかる! ほんと感謝です、ありがとうございます、ビブラートさん!」

 ピズもボクに同意して、彼への感謝の言葉を述べた。

「ふふっ、ありがとう。嬉しいよ。……そうだ。ところで君たち、料理に興味あったりしない?」
「料理に興味……?」

 と、ビブラートさんがボクらに投げかけをしてきた。料理に興味、かぁ……。ビブラートさんがいつもどんな風にボクらのご飯を作っているのか、気にならないわけではない……かも。

「興味あ……「めっちゃあります!!」

 ボクが言い切る前に、ピズが勢いよくくい込んできた。

「おお、本当かい? ……なら、僕と一緒に料理教室……なんてどうかな? ストリングスの2匹はちょうど明日休みみたいだし、もしよければ明日にでも」

 料理教室……! 楽しそうだ。それに、ビブラートさんなら優しく教えてくれるだろう。

「はい、ぜひぜひ! 明日めっちゃ空いてます!! ……いいよね、アルコ?」

 ピズがまた元気に返事をした。よっぽど興味があるんだろうな。そして、ボクにも同意をとってくる。

「うん。ボクも、ぜひやってみたいです……!」

 続いてボクも返事をする。面白そうだし、ぜひやりたい。

「了解! んじゃ、明日はよろしくね。今日はトリルとの特訓、頑張ってね!」
「「ありがとうございます!!」」

 というわけで、今日はトリルさんとの特訓、明日はビブラートさんとの料理教室をすることになった。


* * *


 朝食をとり、トリルさんに連れられてボクらはシークレットベースを出て、どこか知らないところへ向かっていく。

「トリルさん、ボクらはどこへむかっているんですか?」
「ふふ、着いてからのお楽しみだな」
「えぇーっ、……わかりました」

 歩き続けて数分後。トリルさんが立ち止まったのは、沢山の木々が生い茂る場所であった。

「ここは……?」
「“ラリネの森”というダンジョンの入口だ。今日はこのダンジョンで特訓をする」
「ああ、シークレットベースから南に真っ直ぐ向かったところにある、一番近いダンジョンですね!」
「そうだ。このダンジョンは難易度も低いからの。マックラ山のように暗くもないし、特訓するには最適な場所じゃろう」
「なるほど……!」

 今日は“ラリネの森”という森のダンジョンで特訓。頑張るぞ……!
 「では行くぞ」と言うトリルさんに続き、ボクらはダンジョンへと入っていった。

 ラリネの森、1F。森ということもあって、くさタイプやむしタイプのポケモンが多いみたいだ(ボクのポケモンに対する知識は、ここ数日でピズから色々教えてもらってある程度身についた)。

「よし。では、ここからはアルコ殿が先導してくれ」
「ええっ、トリルさんが先頭行ってくれるんじゃないんですか!?」
「これはお主らストリングスの特訓であるからな。ワタクシが真ん中に入り、最後尾はピズ殿に任せたぞ」
「は、はいっ、わかりました……!」

 ボクが先頭か……、大丈夫だろうか。ちょっと不安だ。

「まあ、いざとなった時はワタクシが何とかする。そんなに心配しなくてもよいぞ」

 トリルさんがこう言った。……それなら、大丈夫かなぁ。
 と、早速敵ポケモン。こいつは……緑色でイモムシみたいなポケモン……たしか。

「キャタピー……!」

 この前ピズに教えてもらった。むしタイプのポケモンだ。
 ただ、キャタピーは目の前にいるわけではない。1マス先にいるって感じだ。ボクは攻撃をする為に1歩出ようとする。

「ちょっと待った! アルコ殿」
「えっ?」

 トリルさんに止められる。どうしたのだろうか。

「こういった時は“でんこうせっか”が便利である。ちょっと離れた敵にも歩かずに届くからな」
「なるほど……わかりました!」

 ボクはその場から“でんこうせっか”を繰り出す。それは見事キャタピーに命中し、無事倒したようだ。

「よくやったぞ、アルコ殿!」
「ありがとうございます!」

 “でんこうせっか”は少し離れた敵にも当たる、またひとつ新しい知識を得られた。流石ベテランのトリルさんだ。

「お主が覚えている技だと、“しんくうは”も同じように少し離れている敵にも当たるぞ」
「そうなんですね……!」

 ボクが覚えている技はたしか、まず“しんくうは”、“でんこうせっか”、そして使ったことはないけど“いわくだき”と“ふるいたてる”も使えるとトリルさんが教えてくれた。……ただ、ここでひとつ疑問が。ポケモンは、4つまでしか技を所有できないらしい。それで、ボクの技構成は先程述べた4つ。だとすると、前に出した“はどうだん”は何だったのだろうか。
 ボクは、敵が近くにいないのを確認して、トリルさんに思い切って話しかけてみた。

「あ、あの。トリルさん」
「む。どうした、アルコ殿?」
「ちょっと質問というか、相談がありまして」

 ボクは、トリルさんに『前に“しんくうは”を出そうとして“はどうだんが”出せたこと』『でも、2回目出そうと思った時には出せなかったこと』を伝えた。

「なるほどなぁ……。……ワタクシの憶測ではあるが、それは、“波導の力”が影響していると思われる」
「「波導の力?」」

 ボクとピズの声が重なる。波導……? 一体それはなんなのだろうか。

「アルコ殿の種族、リオルは波導の力を持つと言われていてな」
「その、波導の力って一体どんなものなんですか……?」
「それは……よく分かっておらぬ!」
「「えっ」」

 また、ボクとピズの声が重なった。って、トリルさんでもよく分かっていないのか……。

「ただ、お主の感情に依存するものだと思われる。また、おそらく段々と高まっていくものじゃろう」
「はぁ……」

 えーと、つまりまとめると、その波導っていうのはボクの感情に依存していて、その上段々と高まっていくから……もしかしたら、最初のうちは、波導の力が小さかったため“はどうだん”が出せないのかもしれない。

「波導の力が高まると、お主の持っている“しんくうは”が“はどうだん”になるものだと思われる。……“はどうだん”は“しんくうは”以上に強力な技かつ、より遠くの敵にも命中させることができる。……上手く使えば、お主の強力な武器となるであろう」

 なるほど。少しずつわかってきた。ボクが波導の力を使いこなせれば、かなりの強みになるだろう。

「ありがとうございます、頑張ってマスターしてみせます……!」
「ほほほ、その意気じゃ。ただ、波導の力はそんな簡単に扱えるものでは無いとも聞く。焦らず、ゆっくりとな」
「はい!」
「頑張ってね、アルコ!」
「ありがとう、ピズ!」

 焦らず、ゆっくりと。ボクは波導の力と上手く仲良くやっていけたらな、と思った。


* * *


 話が終わり、ボクらはダンジョンを進むことを再開した。波導と和解する為にも“しんくうは”を使ってみたり、でも他の技も使えた方がいいだろう、と“いわくだき”を使ってみたりもした。
 そんな感じでダンジョンをぐんぐんと進んでいく。階段を何回かのぼり、結構奥深くまできた、その時だった。

「クレェエエエエエエッ!!」
「わっ!!」

 突然、ぬっとポケモン現れる。このポケモンは……!

「ボクレーだ!」

 トリルさんがそう言う。ボクレー、いきなり出てきて驚いた。そして、間髪入れずにボクらに攻撃を仕掛けてきた。

「くっ……」

 攻撃を避けたことにより、ボクらは離れてしまった。と、なんだか身体に力がみなぎって来る感じがする。……もしかして、これが波導の力……? それなら、今だったら……!

「まて、こいつには駄目だ……っ!」

 手に力を込めて構えるボクに対し、止めに入るトリルさん。でも、もう力は止まらない。ええい、止めなんて知らない、やったれ……! と、ボクはボクから溢れる力全てをボクレーにぶちかました。

「レッ!? レェェエエエエッ……」

 それは不思議な光を放ちながら命中し、ボクレーは地に落ち、倒れた。

「なぬ……!?」

 何故かトリルさんは驚いた様子だ。

「……どうされました? あ、あとどうしてさっきは止めたんですか?」

 ボクは訊いてみる。すると、トリルさんはこう言った。

「あやつはくさ・ゴーストタイプでな。それで、ゴーストタイプのポケモンにはかくとうタイプの技は効かないんじゃ。……なのに、お主の“はどうだん”はあやつに命中し、倒した。……お主、何者だ……?」

 トリルさんがボクを見つめる。その目がちょっと怖くて、ボクは咄嗟に後ずさりしてしまった。

「……と、すまぬ。お主にもわからぬよな。申し訳ない……」
「……はい……」

 その後は、ボクらは普通にダンジョンを進んでいった。ただ、その間もボクはこの不思議な“はどうだん”のことが少し気がかりだった。


* * *


「この階段をのぼれば、このダンジョンは終わりじゃ」

 トリルさんがそう言った。ボクを先頭に、ボクらは階段をのぼっていく。のぼった先にあったのは。

「わぁっ……」

 光が差し込み、ボクは眩しくて目を瞑ってしまう。数秒して、そっと目を開けてみると。そこには、たくさんの花が咲く場所――花畑があった。

「綺麗……!」
「“カスタナの花畑”という場所である。綺麗な花がたくさんあって、とても良い場所じゃ」
「うん、ほんと! 素敵……」

 ピズが花畑をうっとりと眺めていた。ボクも、なんだか心が安らぐ感じがする。

「ここでしか見られない珍しい花とかもあってな、ダンジョンを抜けたご褒美であるな」

 ボクらは、その絶景をしばし眺めた後、持っている伝達隊バッジをかざし、シークレットベースへと戻るのであった。


* * *


「おかえり! 特訓はどうだった?」

 シークレットベースに戻って、出迎えてくれたのは、毎度おなじみビブラートさんであった。実家のような安心感。……まあ、今のボクにとってはここが家のようなものだから、間違ってはいないか。

「色々トリルさんに教えてもらえて、良いものになりました!」
「おお、それはよかったよ」
「うむ」

 そのあと、次々に帰ってきた他のチームのみんなと、ビブラートさんが作ったご飯を食べた(昼ごはんはダンジョン内でリンゴで済ませた)。朝食はボクとピズだけで食べたが、やっぱりみんなで一緒に食べるご飯はいいなぁと感じる。どうも、チーム:スローリーの2匹は朝が弱いみたいで、またスモールズも幼いポケモンが多いため起きるのが遅く、なかなか一緒に朝食がとれない。だから、夜ご飯はその2チームも一緒にご飯が食べられて、嬉しい。
 ただ、他にもサウンズのメンバーはいるらしいが、リーダーのリットさんは全然姿を見せないし、他のポケモンはボクは1回も姿を見たことがない。なんなら夜ご飯にも顔を出さないから、ボクにとっては幻の存在になっている。……いつか会えたらいいけど。

 ご飯を食べ終え、ボクとピズは部屋へ向かう。

「明日は料理教室! 楽しみだね」
「うん! ワクワクするよ!」

 明日へのワクワクした気持ちを共有しあい、ボクらは寝支度をし、就寝することにした。
 今日は学んだこともあれば、疑問が残ることもあったけど、ボクにとってプラスにはなったと思う。
 明日はビブラートさんとの料理教室。楽しみだ。パチッと部屋の電気を消し、ボクはベッドに寝転んだ。

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