第5話 開戦

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読了時間目安:19分

この作品には残酷表現があります。苦手な方は注意してください

 第一集合体、アクセス。
 空間グリッド424、座標1842と5821。
 第七オクタントを集合体に接続、収集したデータをアップロード。
 解析中……解析中……。

 ポケモン調査団本部の中枢には、先代から遺された機構がまだ生きている。そのひとつに、『ガショエタワー』という大きな情報端末ホログラムがあった。地球儀にも似た立体映像を擁するこの装置は、調査団が調べた結果を蓄積するデータベースであり、調査団の歴史そのものでもある。
 もっとも、今や別の用途に使われているのだが。
 ルカリオが脱走してから三日間、エーフィは寝食をほとんど挟まず、ガショエタワーの前に立ち続けていた。他の調査団員に「なにをしているんですか?」と聞かれれば、「行方不明になったルカリオ団長の足跡を探しているの」と答えた。
 それは半分正しかった。エーフィは精神をガショエタワーに接続して、ルカリオの行動記録を洗うと同時に、もはや別物と呼べるほどシステムを改造していた。
「こんにちは、副団長……あぁいや、臨時団長。今日も熱心ですね、少し休まれてはどうですか?」
「それには及びません」
 ガショエタワーの建つ大広間に通りがかったキノガッサが挨拶すると、エーフィは微笑んで返した。
「どうもその呼び方には慣れませんね。今まで通り、副団長と呼んでください」
 仰せのままに、とキノガッサは頷いた。そしてタワーを見上げると、何か言いたげに口を開くも、言葉に詰まってしまった。
「……団長は必ず見つけ出します」
 エーフィが力強く告げると、キノガッサは安堵したように顔が綻んだ。
「疑ってませんよ。調査団を総動員しているんです、我々に見つけられないものなんてありません。ただ、その、気になる噂を耳にしてしまったもので」
「噂?」
 尋ねると、キノガッサは気まずそうに言い淀んだ。
「……あまりこういうことは言いたくないのですが、団長が……ルカリオ団長が、ダークマターの力に魅入られてしまったのではないか、と」
 エーフィはすかさず眉間にシワを寄せた。
「誰がそんなことを。根も葉もないデタラメを、まさか信じるとでも?」
「そ、そうですよね! 僕だって信じていませんよ! でも確かに、このところルカリオ団長はこそこそと陰で動いていたような気がするんです。お尋ね者とコソコソ会っていたり、帳簿係のニャースが言うには、何に使ったのか分からないお金もちらほら……」
 帳簿、か。エーフィは思案顔で呟いた。
 この2年間で調査団の内部に『同志』を増やしてきたが、最初のエーフィ副団長を除いて、未だに重要なポストは抑えられていない。これまでルカリオ団長が目を光らせていたお蔭で、襲う隙もほとんどなかった。
 今なら誰でも楽に襲えるが、『ストック』は限られている。誰を乗っ取るか迷っていたが、まずは資金の流れを抑えにいくか……。
「団長が悪事に手を染めていたとは到底考えられません。が、あらゆる可能性を考えなくては。ニャースを執務室に呼んできてもらえる? 彼から直接話を聞きたいわ」
 キノガッサは背筋を伸ばして「了解です!」と答え、そそくさと走っていった。

「失礼しますニャ」
 ニャースがノックして執務室に入る。そしてドアを閉じた瞬間、叫ぶ暇もなく、コキャッと音を立てて首が一回転した。
 サイコキネシスほど便利な技はない。特に、油断しきっている相手を即座に殺す分には。
 デスクの上で横たわっていたエーフィは、むくりと身体を起こして、バスケットの中から『復活の種』を念力で持ち上げた。それをニャースだった亡骸の開きっぱなしの口に押し込むと、しばらく窓の外を見上げて時を待った。今日はとても日差しが強くて、思わず目を薄めた。
 種は凄まじい速度でメキメキと成長していく。口腔にて発芽したと思えば、根が呼吸器系や消化器官まで巡り、臓器を突き破って血管と神経を冒し始める。一見してニャースに変化はないが、時折ビクンビクンと痙攣を起こしていた。
 やがてニャースは、折れた首をバキバキと自ら元の位置に戻して、死んだときに目を見開いた顔そのままでエーフィを見上げた。
「再生プロセス完了、命令を入力してください」
「神経シナプスをガショエタワーのインターリンクに接続。第一集合体、第三オクタントに接続し、あなたの記憶と知識をすべてアップロードしなさい」
「了解、命令を実行します」
 ニャースの眼球がみるみる黒く染まっていく。濃霧に包まれた彼の記憶が次第に晴れていく爽快感を味わいながら、エーフィは薄ら笑いを浮かべていた。
 記憶の帳簿には確かに不審な取引が2年前から続いている。鉄の針に銀の針、リングル、種、不思議玉……調査団の備蓄補充には多すぎる量だ。既に同化した貯蔵係カメールの記憶を洗ってみても、受け入れ記録と整合しない。どこかに武器を隠しているのだろう。
 これだけの取引を、我々に気づかれず密かに進めることができるだろうか。誰かいる。ルカリオ団長に味方して、影で動いている者が。
 それを暴き出すにはもう少し同志の数を増やす必要があるのだが。
「……種の収穫を急がなければ」
 呟いて、エーフィはガショエタワーの明かりを消した。


 *


 バシャーモたち一行は『じょうかの洞窟』を目指して、北へ歩き続けた。二日間も山道を歩き続けなければならない過酷な旅路ではあるが、三匹それぞれ気合いは十分。遠路に慣れているバシャーモに、浮きっぱなしのムウマージ、ツタージャは若さゆえの根性で乗り切るつもり……だったのだが。
「控えろ無礼者ども! 我らダーテング一族の縄張りに無断で足を踏み入れたな、地の果てまで吹き飛ばしてやるぞ!」
「調査隊の甘ちゃんみーっけ。俺様はとっても腹が減ってんだ、お前たちの持っている食糧を全部置いていきな。でないと酷い目に遭うぜ」
「くそ、もうこんなところまで追って来やがったのか!? 絶対に俺は捕まらねえぞ、てめえらを皆殺しにして逃げ延びてやる!」
 群れを支配する野良王ダーテング。森一番の暴れん坊ヘラクロス。指名手配の凶悪犯バンギラス。いずれも漲る覇気だけで木々が震え、脳髄の奥底に畏怖を刻みつけられるほど圧倒的な存在感を放っていた。間違いなくハイパーランク(上から数えて三番目)以上の任務に相当する連中……なのだが、いずれもバシャーモの強烈な初撃で地面に埋もれる羽目になった。
 息ひとつ乱れず、燃ゆる脚から炎を払うと、バシャーモは黒焦げのポケモンたちを足蹴にして、「先へ進むぞ」と何食わぬ顔で先陣を歩いた。
 頼もしすぎてダメになりそう。ツタージャはひたすら口を開けっぱなしにしていた。
「……あの黒眼と戦ってたから強いのは知ってたけど、おじさんって調査団ではどのランクだったの?」ツタージャがおずおず尋ねると。
「マスターランク(上から二番目)だが、そこまで昇れたのはほとんど相棒のおかげだ。俺はもっぱら武闘派で、正直なところ、調査隊らしい調査は奴に任せきりだった」
 その調査が無事にできたのも、どんな強敵も薙ぎ倒してきたからなんだろうなぁ。ツタージャは腑に落ちたものの、かえって疑問が湧いてきた。
「なんで調査団を辞めたの?」
 素朴にして当然の疑問を、口にしてからツタージャは「しまった!」とおののいた。余計なことを聞いてしまったかも。嫌な間が空いて、しかし歩くペースは保っている。後ろをトテトテついて行きながら、ツタージャはなんとかその顔色を伺おうとおそるおそる見上げてみる。
 その目はまっすぐ前を見据えていた。
「相棒だからって、ずっと一緒にいる訳じゃないからな。いつかは道が別れる日が来る。あいつは調査団の団長を目指していたし、それには団の運営経験も積まなきゃならん」
「そうなんだ……」
 話の的をずらされた気がするが、それはつまり、これ以上突っ込んだことを聞くなということなのだろう。おっかない、おっかない。ツタージャはそれとなく返事をして、歩くことに集中した。
「で、結局あんたが辞めた理由はなに?」
 ムウマージが地雷を踏み抜いた。そもそも浮いているからお構いなしなのか。
 バシャーモはあからさまなため息を吐いて、答えなかった。

「ニンゲン英雄譚には矛盾が多くて見るに堪えないけど、そこに闇の勢力の狙いが隠されているんだ。そもそもニンゲンは実在するのか? 彼らは伝説の上でしか語られていないのに、我々の歴史にしばしば登場している。それも歴史上の重要な局面で、この世界を救った英雄として。危機はあったのか? それは確かに事実として起こったのだろう。けれど危機を招いたのは、『氷蝕体』とか『ダークマター』なんていう架空の敵じゃない、世界の裏側で権力を握っている闇の勢力が引き起こしたんだ。そう、私はこう思っている。ニンゲンこそが闇の勢力であり、いずれこの世界を支配するために介入しているのだと!」
 嫌な沈黙が流れちゃうな、と思っていたら、到底そんなことはなく、ひたすらムウマージが喋り倒す旅路が続いた。
 鬱蒼とした森の中をこんな賑やかにしていたら、要らぬ気を引いてしまって誰かに襲われるのではないかと、ツタージャはビクビクして周りを警戒していたが、木々の合間から覗く怪しげな影は一向に出てくる気配がない。どうやらバシャーモが睨みを利かせてくれているおかげらしい。
 徐々に緊張にも慣れてきて、二日間も歩けば、ツタージャも緊張より疲労が勝って足取りが重くなってきた。不安に思う余裕がないのは良いけれど、まだ着かないのかな。昇った太陽が沈みかけて、空が赤く染まり、辺りが薄暗くなってくると、突然バシャーモが木陰に隠れた。慌ててツタージャとムウマージもそれに倣うと、一気に心臓が早鐘のように鳴りだした。
「……なに?」
 ツタージャが小声で尋ねると、バシャーモは口元に指を立てて合図するだけで、そっと茂みの向こうを伺った。

 どんよりと不気味な黒い霧が立ちこめていた。視界を塗り潰すほどではないが、霧というより煙に近く、小道の先に続く洞窟から漂っているように見えた。
 その入り口を三匹のポケモンが守っていた。いずれも屈強で大きく、確か名前は、リザードンにカメックス、フシギバナだ。どの目も普通に見えるが、黒眼のポケモン特有の、どこか死体のように冷たい雰囲気が漂っていた。さすがのバシャーモもあの三匹は手強いと見たのか、これまでの道中と違って慎重に様子を伺っていた。
「どうする?」
 またツタージャが尋ねると、バシャーモは目を細めて。
「強行突破でもいいが、安全策を採りたいな。幸いこっちには此奴がいる」
 と言って見やったのは、ムウマージだ。
 はじめキョトンと目を丸めていたムウマージだが、すぐに把握したのか、にんまりと悪そうな笑みを浮かべた。

 番兵たる三匹は銅像のように動かない。まるで『じょうかの洞窟』を守るためだけに存在するような彼らの前に、フラフラとおぼつかない浮遊霊が漂ってきた。
「あぁ、お腹が空いた。ひもじいよぅ。リンゴはどこ? リンゴをちょうだい?」
 ムウマージはこれでもかと哀れっぽい声で鳴いたが、鉄面皮の三匹は視線だけを傾けて動こうとしない。カメックスは平坦な声で告げた。
「そこのポケモン、ただちにこの場を立ち去れ。ここは調査団が一切の立ち入りを禁じている。それ以上近づけば敵対行為と見なし、攻撃する。警告は一度しか言わない」
「そんな殺生な、私はリンゴが欲しいだけなの……に!」
 ギンッ。見開いたムウマージの瞳から、ぐにゃぐにゃと波動が広がっていく。見た者を夢に誘う『催眠術』だ。
 かかった! 手応えあり! ムウマージはすかさず振り向いて、バシャーモたちに「任務完了!」と合図を送った。
 刹那、ムウマージの視界がぐるりと回った。天地がひっくり返って、気づけば逆さまになって転がっていた。
「……あれ?」
 素っ頓狂な声をあげているうちに、凄まじい衝撃波に押されて茂みに突っ込んだ。
 効いたと思った催眠術は失敗に終わっていた。ムウマージの合図に反して一斉に襲いかかる三匹に対し、いの一番に動いたのはバシャーモだった。ムウマージの裾を引っ張って後ろに投げた後、リザードンの『ドラゴンクロー』とカメックスの『頭突き』、フシギバナの『蔓の鞭』を、『ブレイズキック』一本で受け止めた。
 次いでツタージャが勇気を振り絞って立ち向かおうとした。
「進め!!」
 バシャーモは足技で三匹を捌きながら喚いた。リザードンの下顎に強烈なハイキックをぶち込んだ直後、フシギバナの『葉っぱカッター』に胸部から肩にかけて切り裂かれた。噴き出す血をものともせず、ツタージャを狙うカメックスの甲羅の砲台に手を突っ込んで、『炎のパンチ』を炸裂させた。
 手助けにすらならない。怪物たちの頂上決戦とも呼ぶべき激戦に、自分の立ち入る余地はないのだ。ツタージャはすぐに悟った。持ち前のすばしっこさを駆使して戦場をすり抜けながら、心の底から安堵した。
「あとは任せた!」と、ムウマージ。
「お前は手伝え!!」
 呼び止める声も虚しく、ひゅるるる、とムウマージが洞窟の闇に融けていく。
 あいつはあとで殺す。拳に刺さった砲台の破片を引き抜いて、血まみれのそれを投げ捨てると、バシャーモは改まって拳を構えた。
 三匹はどれも黒眼に染まっている。誰から落とすか、と考える猶予もなく、フシギバナの蔓が鋭く矢のように襲ってきた。見切って避けるまでは良かったが、鞭を浴びた樹木が弾けるような音を立てて大きく抉れている。続けざまにカメックスの『ハイドロポンプ』。砲台をひとつ潰したとはいえ、水流はまるで大砲のごとく。跳躍して避けたあと、レーザーのように伸びた水流の後には、樹木や岩に貫通した穴がきれいに空いていた。空中で襲いくるのはリザードンだ。鋭く伸びた爪で容赦なく『切り裂く』攻撃を仕掛けてきた。
「お前からだ!」
 バシャーモは近づいてきたリザードンの首に脚を回して羽交い締めにしながら、爪を土手っ腹に浴びて血飛沫が舞った。斬撃の余波が地上まで抉ったが、リングマの拳を浴び続けて鍛えた鋼鉄の腹筋は見事に耐え抜いた。
 ゴキ。
 首から嫌な音を立てて、リザードンが落下を始めた。哀れな飛龍の死骸を踏み台にして、墜落寸前に再び宙へ跳ぶ。伸びてきた蔓には『炎のパンチ』をぶつけたが、あっけなく力で押されて地面に叩き落とされてしまった。
 おびただしい土煙をあげて、そのまま潰れて死んでもおかしくないところ、地面に激突する寸前、バシャーモは『ブレイズキック』で大地を叩き割っていた。
 衝撃を殺したところで、すかさず立ち向かおうと脚に力を込めると、背中から壁に叩きつけられたような衝撃に襲われた。カメックスの恐るべき『ロケット頭突き』だ。まるで巨岩そのもの、バシャーモは血反吐を吐いて飛ばされ、その先で待ち受けるフシギバナの洗礼『花びらの舞い』を浴びた。万のごとく舞い散る花びらひとつひとつが、鋭い刃となって全身を切り刻んでいく。
 永遠に舞い続ける花びらに動きを止めたバシャーモへと、カメックスは砲台の狙いを定めた。当たれば即死は免れない『ハイドロポンプ』が、バシャーモの頭部に照準を置く。
 発射!
 と、同時に残る砲台が暴発した。砕かれた砲台と甲羅の欠片が爆散し、怯んだ隙にカメックスの脳天に『鉄の針』が突き刺さった。砲台にもこれを投げ放ったのだ。
 燃える拳で振り払い、花弁が焼けて舞い落ちる。残るはフシギバナを火葬に処するのみだが、不利と悟るや、フシギバナは背中の大花を揺さぶり、『眠り粉』を吐き出した。
 それを拳圧だけで吹き飛ばし、バシャーモは次の拳を引いた。
「……今までずっと戦闘に夢中で聞いてこなかったんだが、お前たちは何者だ?」
 フシギバナは答えることなく、『蔓の鞭』で襲ってきた。
 問答は無駄らしい。バシャーモは蔓を飛び越え、その上を駆け抜けて、業火を宿した脚『ブレイズキック』で、思いきりフシギバナの顔面を蹴り飛ばした。その凄惨たる結末はもはや語るまでもなかろうが、頭から背面にかけて大きく抉れた残骸は、ごうごうと炎に包まれながら崩れ落ちていった。

 それと同時刻、調査団本部にてエーフィは顔を上げた。
 洞窟を守っていた『声』が三つ、消えた。ルカリオ団長か。否、あれらに敵う戦力は調査団には残っていない。唯一彼らを倒せる奴がいるとすれば。
「……あのバシャーモか」
 呟いて、エーフィはガショエタワーを見やった。
 となれば、例の場所も露呈する。もはや一刻の猶予もない。エーフィは目つきを鋭くしてタワーに念じた。
「第一集合体、アクセス。計画を変更する。第四から第七オクタント、ただちに『遠足』を実行せよ。第二、第三オクタントは……待て」
 また『声』が消えた。今度は二つ。このワイワイタウンの中で。エーフィは窓際まで歩いて、外の様子を覗いた。すっかり夜が降りて、仕事に疲れたポケモンたちが家路につく姿がちらほらと目についた。
 何事もなく穏やかに見えるが、水面下で何かが起きている。考えられる答えはひとつしかない。
「ルカリオ団長、戻ったのか。いずれ来るとは思っていたぞ」
 エーフィはガショエタワーに向き直り、再び念じた。
「第二、第三オクタントは潜伏モードを解除。ターゲットをルカリオに設定。同時に扇動作戦を進める。ただし住民には危害を加えるなよ、我々はこの町を守る正義のヒーローなのだ」
 ワイワイタウンのあちこちで、言動が一瞬ピタリと止まるポケモンたちが相次いだ。商店街組合のリーダー、ゴンベ。倉庫屋のハピナス。調査団員のクリムガン。農家のヤナッキー。他にも大勢が、エーフィの命令を受け取った。
 ただ二匹、フラエッテとルクシオは、それを受け取るべき脳に『銀の針』を突き刺されて絶命していた。黒ずんだ赤い血をずるりと垂らして、長い針を引き抜き、闇夜の影で一対の目を光らせながら、ルカリオはそれを握り締めた。
 どうやら天も味方してくれているらしい。明るく太った月に雲が掛かって、一層闇が深くなっている。今宵の戦いですべてに決着をつけよう。音もなくルカリオは歩き、町の闇に融けていった。
 長い夜が、幕を開けた……。

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