悪と正義①

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この作品には残酷表現があります。苦手な方は注意してください

「ふう、最近はすっかり暑くなってきたな」


さんさんと照り付ける太陽を背に、僕は額の汗を拭い扉に手をかけた。


ここはヒオウギシティのトレーナーズスクール。

今日から僕は、この施設の校長に就任する。

かねてからの夢が叶った。しかし、まだ実感が沸かない。

採用試験の結果を見たときは飛び上がって喜んだものだが、いざ現地に来てみると不思議と「そういうものか」という感覚がする。



ふと、数年前のことが頭によぎった。

僕には心の中で恩師とする人物がいるのだが、今あの人はどこで何をしているのだろう。

あの日あの人と出会わなければ、間違いなく今の僕はいなかった。

どこか訳ありな人物だとは理解しているのだが、この先もう会えないかもしれないと思うと心にくるものがある。

せめて、あの日のお礼を言いたいものだが・・・それは、叶わないことなのだろう。



「おーっす!未来のチャンピオン・・・じゃなかった!」

扉の向こうで僕を待ち構えていたのは、施設の受け付けを担当するおじさんであった。

どうやらこの様子では、僕のことを挑戦者だと勘違いしたらしい。


「・・・もう、間違えないでくださいよ」

僕は呆れたような視線をおじさんに送る。

「いやぁ、キミのような若者が校長なんて、なかなか珍しいからなぁ!」

「それは誉め言葉として受け取っておきますね・・・」


自分でもわかっている。まだまだ僕には貫禄というものが足りていないのだ。

それもそうだ。現役大学生の身分でトレーナーズスクールの校長など、とてもじゃないが並大抵の人物に務まるものではない。

曲がりなりにも、今まで努力を積み重ねてきた結果が実ったということだろう。


自分自身に労いの言葉をかけたいところは山々なのだが、僕には立ち止まっている暇はない。

なぜなら、このトレーナーズスクールはこの街特有の機能を有しているからだ。



「じゃあ改めて・・・ようこそ!トレーナーズスクール・・・もとい、ヒオウギシティポケモンジムへ!若きジムリーダーチェレンよ、これからよろしく頼んだよ!」

「はい、こちらこそよろしくお願いいたします」


そう、この街のトレーナーズスクールは、ポケモンジムを兼ねているのだ。

今日から僕はこの街の、ポケモンジムリーダーとなった。

実際にジムリーダーと呼ばれたその瞬間、心臓の鼓動がより一層大きく聞こえたような気がした。


とはいえ、出来立てのジムにいきなり挑戦者が来ることもないだろう。

まずは、生徒となる子供たちに、ポケモンバトルの基礎を教えるトレーナーズスクールの校長としての仕事を覚えなくては。


施設の奥、教室の方から子供たちの楽しそうな声が聞こえる。

僕は手に持っているポケモンバトルについての教科書をパラパラとめくり、腕時計を確認した。

そろそろ授業の時間だ。将来ポケモントレーナーを目指す学校帰りの子供たちが、教室で僕を待っている。

少しでも多くの子供たちに、今まで僕が学んできたことを教え込むのだ。


「あ、そうそうチェレン君」

受け付けのおじさんが言った。

「はい、なんでしょう」

「そういえばさっき、お客さんが来ておりましたね」

「お客さん?」


そういった話は、特にポケモンジム協会からも聞いてはいなかったのだけど。

生徒の保護者が来ているのかな?


「急いで応接室に行った方がよろしいでしょうか?」

僕はおじさんに尋ねた。

「いや、確か教室の方に入っていったぞ」

「教室に?」


教室からは子供たちの声が聞こえているが、そこに誰かがいるのだろうか?

「わかりました。では、教室に向かいましょう」


僕とおじさんは、教室に向かった。

そこで僕を待っていたのは、思いもよらぬ人物であった。


また会いたいと思っていた。しかし、立場上接触するのも難しいだろうとも思っていた。

あの日生まれて初めて聞いた流暢なコガネ弁。

僕がずっと、目標としていた人物、それはー



「はいはーい!草タイプのポケモンには炎タイプの技が効果バツグンなんだよー!」

一人の生徒が手を挙げて、どこかで覚えたバトルの知識を披露している。

「正解や!よう分かっとるやんけ!まあ、複合タイプの場合はそうやないこともあるんやけど、そこはこれからの応用やな・・・ん?」

教壇に立つ、一人の男がこちらに気付いたようだ。

「あなたは・・・」
この章では、ポケモンBW、BW2の登場人物「チェレン」を視点に物語が展開されます。

全体構想は出来上がっていますが、不定期更新です!

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