30Days:「私やあたしがススム理由~トゲトゲやま#7~」の巻

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 ニドリーノたちとのバトルに負けてボロボロになっちゃったのは痛いけど、おかげでより一層“トゥモロー”としての結束力が強くなったような気がするぞ。だけどこの調子で“おたずねもの”と呼ばれるくらい実力があるスリープからルリリを助けることが出来るのか…………それだけは不安だなぁ。




 「ひとまず先に進みましょう。ススムさんと離れている時間が長い分、何も道具が見つからなかったではシャレになりませんからね」

 「そうだね。よーし、頑張らなきゃ!」





 私とココロちゃんは“恋のライバル”といったような関係。でも、見方を変えればそれは「ススムを支えたい」という気持ちで一致した最高のコンビなのかもしれません。





 (そんな風に考えると、何だか楽しくなってきたな♪ココロちゃんのことを知るチャンスだし、何とか仲の良い友達になれたら良いな)





 段々とワクワクしたような気持ちになっていくのがわかりました。でもあまりそういうテンションが得意じゃないのか、一緒に歩くココロちゃんはあまり楽しくなさそうな雰囲気のまま。…………いや、ススムから任された役目を果たしたいって気持ちに意識を集中させているんだと理解しました。





 (…………ギルドを卒業して、一流の探検隊になったら…………私もあんな風になるのかな?)





 探検隊………というか、ダンジョンの中の冒険に関しての経験値はココロちゃんの方が上だったから、より一層そんな風に感じたのかも知れませんが、彼女の意識の高さがカッコよく感じました。そして自分の未来像を勝手に想像して何だか切ない気持ちにもなったのです。





 (一流になってもココロちゃんやススムと、ずっと一緒に探検隊出来ると良いな…………)





 だって二匹は私と違って、元々は人間だから………。もしかしたらいつの日かお別れのときが来るかも知れない………。そうしたらまたススムと出会う前のような、独りぼっちになる可能性だってあるのですから。





 (二匹と離ればなれになったら、私………どうなっちゃうんだろう)





 何とも言えない気持ちになった私はココロちゃんの背中をとぼとぼと追うのでした。





 …………と、そのときでした。ココロちゃんが何か思い立ったように私の方へ振り返り、こんなことを聞いてきたのです。





 「…………ところで、あなたはどうして探検隊を目指そうと思ったの?」

 「え?」





 ジッと見つめる少しキツめな眼差し。カラカラという種族が基本的にそんな雰囲気だから、特別ココロちゃんが私に対して怒っているとか、軽蔑しているという訳ではない…………というのはすぐに理解できました。だけど、このタイミングでなぜそんな質問をするのか………動揺してすぐに答えられませんでした。





 ………すると彼女は続けてこのように言うのでした。





 「少なくともあたしとは違いそうですよね。人間から“カラカラ”になって、絶望していた自分を助けてくれた探検隊に憧れたあたしとは………」

 「助けてくれた探検隊?何って言うチーム名なの?ギルドに所属しているとか?」

 「いえ、違います………」





 話の展開が急すぎたため、内容に追い付くのに時間がかかってしまいました。世界的にも有名なプクリンのギルドにも所属しないココロちゃんの憧れのチームって一体誰なんだろうと。気になってしまった私でしたが、一旦ゴクリとつばを飲み込みました。そうしてからもう一度覚悟を決めて彼女に尋ねたのです。





 「そう…………じゃあ一体どのチーム?よかったら教えてもらっても良いかな?」

 「“トゥモロー”………」

 「え?それは私たちの…………」

 「本当です。“トゥモロー”と言いました。それもヒトカゲとあなたのようなハート型のしっぽのピカチュウの二匹がメンバーの」

 「えええぇぇぇぇぇぇ!?」





 まさかの事実でした。だってススムが決めてくれた名前と同じ探検隊が………しかも同じ種族のチームが存在するなんて、信じられるわけが無いじゃないですか!!ダンジョンに住むポケモンたちに居場所を気付かれてしまうので、本当なら大声を出すことは避けるべきですが、このときばかりはそのことを忘れるくらいに大声を出してしまったのです。





 しかし彼女は至って平常心でした。あまり表情が変化することもなく、自分の話を続けてきたのです。





 「だからあなたやススムさんに出逢ったとき、何か運命のようなものを感じたのかもしれません。一緒にいればカラカラになった理由も、人間に戻れる方法も…………もしかしたらわかるかも知れないって」

 「なるほど………」





 ココロちゃんの憧れの探検隊、“トゥモロー”が一体どんなチームなのか想像は出来ないけれど、いつか巡り会えるチャンスがあるなら話をしてみたい…………私はそっと瞳を閉じて想いを語る彼女の姿を見ながらそんなことを考えていました。でも…………ひとつだけ自分には気になることがありました。





 「ねぇココロちゃん。そのとき出会ったヒトカゲって、ススムにそっくりだった?」

 「え…………それは…………」





 突然の質問に彼女もびっくりした様子でした。恥ずかしそうに少しだけ顔を赤くしたところをみると、きっとススムにそっくりなんだろうなって思いました。





 (…………なんでそんなこと聞いてきたんだろう。やっぱりススムさんのこと譲りたくないのかな)





 あたしは不意打ちを受けた気分でした。確かに自分を助けてくれたもうひとつの“トゥモロー”に所属するヒトカゲの雰囲気とススムさんはそっくり。もしまた彼と逢えたら本当に自分の気持ちを伝えるかも知れません。感謝の気持ちを込めて。そんなことを考えていると自然と顔が熱くなるのを感じました。





 しかし、面白くなさそうな表情だったソラさんの次の一言によって、その感情は一気に吹き飛んでしまったのです。





 「もし、そのヒトカゲとススムと重ねているならやめてね。そんなの彼も迷惑だし、それで恋心を抱いているなら、想い違いでしょ?」

 「何ですって!?ひどい!」





 そこまで自分をススムさんから遠ざける必要があるのでしょうか。憤りと悲しみが込み上げてきました。しかも決まって彼がいない場所でソラさんは私に冷たく扱うのでした。





 (もしかして、これがソラさんの本当の姿なの?ススムさんへ見せている笑顔は偽りだって言うの…………?)





 こうなってくると何を信じて良いのかわからなくなってきました。本当にソラさんはススムさんの味方なのか、それとも何か別の目的を果たすためにわざと味方のフリをしているだけなのか。





 いずれにせよわかっていることはひとつ。自分はソラさんから邪魔者扱いされているってことでした。せっかく少しだけでも仲良くなれたような気がしたのに。





 (この先本当にソラさんと力を合わせてススムさんを支えることなんて出来るのかな………)





 あたしは不安な気持ちを消すことが出来ないまま、自分の役割を果たすために歩き始めるのでした。

















 「ソラやココロ…………上手くやっていると良いな。何とか少しだけでもアイテムを確保出来ていると良いんだけど………」





 ぼくはソワソワしながら時には後ろを振り返りつつ、この7階を歩き回っていた。ひとまず階段があった大きなフロアを越えて狭い一本道を進んでいく。相変わらず周囲は薄暗く、しっぽの炎による明るさが松明のような役割を果たしていた。





 「あ、分かれ道だ。どっちに行こうかな?」





 しばらく道なりに進むと左右に伸びる丁字路のような場所に出てきた。一体どちらが次の階段の近道になるのか考える。それが一瞬隙を作ることも知らず。





 「いたぞ!探検隊だ!!」

 「しまった!?」

 「黙れ!!」

 「ぐわっ!!?」





 いつの間に背後にいたのだろう。ムックルが素早い動きで自分に突撃してきた!!恐らくこれは“でんこうせっか”だろう。逃げ場の無い狭い道で繰り出されてしまったものだからボクも避けようがなく、モロにダメージを受けて倒れてしまった。





 「なかなかしぶといヤツらだね!てっきりニドリーノたちが倒したと思ったんだけど!」

 「冗談じゃないよ!!頂上でぼくたちの助けを待っているポケモンがいるんだ!!勝手にここを荒らしているなんて思い込むなよ!?」

 「ふん、そんな話信じられないね!!みんな、やっちまうぜ!!」

 『おう!!』





 そのムックルが呼びかけたタイミングでさらに十匹くらいのムックルが集まってきた!!瞬く間にぼくの周りの道が塞がれてしまい、身動きが出来なくなってしまう。





 「いつの間に………」

 「こうなったらキミだってただでは済まされないだろう?頂上で誰が待っているか知らないけど…………そいつを助けに先に進みたかったら、ぼくたちを倒してみるんだね!!」

 「ちくしょう!!」





 正直なところ、まともに体力を回復できてない今の状態でこの集団を撃退するのは困難だった。せめてソラやココロがそばにいるなら何とかなるかも知れないが、別行動な以上はここで彼女たちと合流出来る望みも薄い。





 (なんたってこのタイミングで………)





 しかし、ぼくにはもうこのムックルたちを倒していくしか道は無い。自分の運の悪さに嘆きつつ、覚悟を決める。





 「絶対に負けるもんか!!えーい!!」

 「!?」





 次の瞬間、ぼくは力を込めて炎を放った!!まだバトルのレベルは未熟だから、技そのもののパワーもさほど強くもないし、体力だってそう長続きはしない。だからこそ少しでも早くこのバトルを終わらせる必要があった。





 …………と、そのときである!





 「そうはさせるかよ!“つばさでうつ”!!」

 「わわっ!!(くっ!!別方向から攻撃が来て集中力が途切れちゃう…………!)」





 ちょうど背後から別のムックルが攻撃をしかけてきた。なんとかその気配を事前にキャッチ出来たので、大きなダメージを受けずに済んだ。しかし、結果として先ほど繰り出した“ひのこ”は中途半端なところでそのエネルギーが途切れてしまったのである。





 「ありがとうよ!今だ!!喰らいやがれ!」

 「うわっ!!」





 エネルギーが途切れた。それはすなわちどのムックルにはノーダメージで終わることを意味していた。そのためすぐに真っ正面のムックルから反撃を受けてしまい、その場で倒れてしまった。





 「まだまだぁ!オレたちも続けるぜ!!」

 「覚悟しな!!」

 「わっ!!ぐっ!ぎゃっ!!」





 続けざまに丁字路部分の左右からそれぞれ別のムックルが、壁をすり抜けるように“でんこうせっか”を繰り出してきた!!通常であれば恐らく攻撃範囲外にいたはずなのに、さも当然のように彼らは攻撃をしてきたのである。





 (一体なぜだ?)





 ぼくは一瞬迷ってしまう。もしかしたら相手は自分よりもレベルが高いのかも知れないと。そうであれば自分ひとりだけでこの集団を倒して先に進むなんて、ますます不可能に感じた。





 (それでもがんばるしか無いや!!ソラとココロだって自分の無茶な要求に応えているんだ。“パートナー”だからって、たったそれだけの理由で…………!!)

 「なっ!!何だ!?」

 「あんな技、見たこと無いぞ!!」





 ムックルたちが驚きの表情を浮かべている。無理もない。ぼくの繰り出した“ひのこ”の色が赤色から青色へと変化したのだから。つまり火力が強まってより高温に達していることを意味している。





 (“もうか”………では無いよな。あのときはただ炎が巨大化しただけだから)





 今までもピンチに陥ったとき、自分でも制御出来ないくらいの潜在的なパワーが発揮されては、そのピンチを切り抜けてきた。恐らく今回もそんな予感がする。しかしながらこの潜在的なパワーの正体は自分にもわからない。だから正直怖さもあった。





 一方のムックルたち。彼らはぼくの変貌ぶりに一度は驚いて動揺した様子だったが、徐々に反攻へとチームワークを固めてきた。





 「ちっ!お前が何しようと関係ねぇ!そんな炎なんか吹き飛ばしてやる!!」

 「俺たちを見くびるなよ!?」





 向かってくる炎に正対する形で、集結したムックルたちは自分たちの体で壁を作った。次の瞬間、翼を大きく広げたかと思うと、一斉にバサバサと勢いよく羽ばたかせたのである!!





 「ぐっ!!なんて風圧だ…………!!」





 彼らが翼を羽ばたかせれば羽ばたかせるほど、勢いよく発生する風。ぼくも右腕で真っ正面からの風を防ぎ、それから地面に強く踏ん張って体が飛ばされないようにした。なるほど、確かに通常のポケモンバトルで相手を吹き飛ばすだけはある。





 しかもそれだけでは終わらない。次の瞬間、彼らは一斉に“かげぶんしん”を発動させたのである!それまでの十匹でもかなりの大群に感じたが、今はその数倍にもムックルがいるように感じてしまう。こうなるといくら自分が制御不能なくらいパワーアップしても、技が命中するかどうかは別問題だ。せっかく突破口が開けそうだったのが、一気に逆戻りになったのである。





 (ちくしょう!一体どうすれば………!?一辺にこんな大群を相手にするのは不可能だぞ!?)





 ひとまず挟み撃ちの状況ではどうにもならない。ぼくはそのように考え、後退りする形で一旦元きた道を戻ることにした。そうして一匹ずつムックルたちを細い道へと誘導し、地道に倒していく作戦にしたのだ。体力的にも技を繰り出すエネルギー的にもかなり厳しい状況だが、やるしかない。地上でルリリの無事を願うマリルをガッカリさせるわけにはいかないのだ!





 (何とか頑張らなくちゃ…………)





 ぼくは既にボロボロな自分を無理やり奮起させる。どこまでその気力を保てるかわからないけれど。













 (おかしい…………。これだけ探してもアイテムが見つからないなんて…………。一体どうなってるの?)

 「ねぇ、ココロちゃん。本当にこのフロアって何かアイテム落ちているの?」

 「え?落ちてますよ!!不思議のダンジョンと呼ばれている場所なら、その中に普通は落ちているはずです!」

 「本当に?」





 アイテム探しは難航するばかりでした。そのせいか時間を追うごとに焦りも出てきて、神経質になっているのを自分でも感じていました。本当ならこういう場面でソラさんも力を貸してくれると良いのですが、





 「もしこのまま何にも見つからなかったら、ススムに何て言えば良いんだろう…………」





 とまあこんな感じで、弱音を言うばかり。そのことがますますあたし自身のストレスにつながり、余計に苛立ちを隠せなくなってきたのです。





 「うるさいな!!そんなグチグチ弱音を言う暇があるなら、アイテム探しに集中すれば良いでしょう!!?」

 「な…………!?何さ!!ちょっと探検隊の経験があるからって偉そうじゃない!?途中からチームに入ってきたくせに!毎回余計なお世話だし、邪魔なんだよ!!」

 「は!?それってどういう意味よ!?」





 冷静に考えれば自分も言い過ぎだったと思います。けれどソラさんが邪魔者扱いしてきたことに、とうとう我慢出来なくなりませんでした。ススムさんの前では愛嬌良く振る舞って、彼がいない場所では身勝手。こんなヤツが自分と同じ“パートナー”という立場だと思うと悔しくてたまらなかったのです!





 「とにかく!私にあれこれ指示しないで!私は私なりにススムの手助けになりたいんだから!!」

 「あっそう!!だったら好きにすれぱ良いじゃない!あなたがどうなっても知らないからね!」





 こうしてあたしとソラさんは、ススムさんの願いもむなしく再び対立を深めていってしまうのでした。





 「あ!どこに行くつもり!?」

 「しつこいな!ココロちゃんとは別行動でアイテム探しをするんだよ!あなたと一緒にいるから上手くいかない感じがするもの!」

 「言いましたね!?その言葉、後悔することになるんだから!」





 こうして私はココロちゃんと別行動になってしまいました。どうしてもススムのことを譲りたくないって気持ちのせいで、ついつい意地を張ってしまう自分。しかし、こうでもしないといつ彼女にススムを獲られちゃうかわかりません。ずっと夢見てきた探検隊のチームの中で独りぼっちにもなりたくなかったし、個人的には仕方ないと思いました。それが迷惑をかけることなんてこれっぽっちも考えずに。





 ココロちゃんと離ればなれとなった後、私は道なりに歩き続けました。しばらくしてたどり着いたのは、その先に道が無い小さな部屋。





 「階段もアイテムも落ちていないなぁ.………」





 見るからにプラス要素が無さそうな雰囲気にガッカリする私。こんなことを何度繰り返せば良いのでしょうか。でも、このまま立ち止まる訳にもいかず、やった来た道を戻る他ありませんでした。…………と、そのときでした!





 「おーっと!先には行かせないぜ?」

 「そんな…………いつの間に!?」

 「首に青いスカーフを巻いていたから気になってつけてきたの。ビンゴね、あなた探検隊でしょ?」

 「うぅ…………」

 「ケケケ…………。コイツらの話を聞いてまさかとは思ったけど、面白いことになってきたなぁ………」

 「覚悟しやがれ!下のヤツらを痛ぶってくれたお礼もしてやるからよ!」

 「ふ…………ふざけないで!」





 部屋の出口を塞ぐように現れたニドリーノ、ニドリーナ、イシツブテ、ワンリキー。明らかに自分よりレベルが高そうな感じがして、無意識のうちに震え出す体。そんな姿を見せたせいで、私はますます相手から小馬鹿にされるのでした。





 「俺たちがふざけているか、確かめてみるか?オラァァ!!!」

 「え!?きゃあ!!」

 「ハハハハ!面白そうね!!パス!!」

 「ひっ!!」

 「パス回しにはちょうど良いな!!いくぜ!?」

 「!?いやあ!!」

 「まだまだ!何周持つかな!?」

 「痛い!!お願い!!やめてぇ!」

 「こんな面白いことやめられるわけないだろう!?ギャハハハハハ!!」





 そのまま緊張で動けないでいると、私はまるで“ふしぎだま”や、ボールのように彼らに体を蹴られてパス回しされてしまいました。当然のように傷ついていく体。だけど自分にはどうすることも出来ず、少しでも痛みを感じないようにと体を小さく丸めてじっと耐え続けるほかありあせんでした。





 もしココロちゃんと口論にならずに協力をしていたら、ここまで苦痛を感じずに済んだことでしょう。私はこれは自分への天罰なんだと捉えました。そして情けないことに、心の中で彼女に助けを叫んだのです。











 「……………もう、仕方ないな!本当に足引っ張ってばかりなんだから!!」
 「え!?ココロちゃん!?なんで………!?」
 「あなたが心配だからでしょ!?それ以外に何かあると思う!?」


 やっぱり自分の判断は正しかった。というのも、ソラさんがそばを離れたあとも、あたしは彼女の後をつけていたのです。理由は自分たちのことでススムさんに迷惑かけたくなかったから。でも直接伝えると彼女にショックを与えるでしょうから、敢えて本意でないことを口にしたのです。


 「チッ、なんだよ。同じスカーフをしてるってことは仲間も健在か。面倒だな」
 「しかもカラカラってことは、ウチらがニガテなじめんタイプじゃない。だるっ!」
 「構わないぜ。コイツも束になって攻撃すりゃ恐くないだろ?」
 「だな!!さっさとやっちまおうぜ!」


 自分たちが楽しんでいるところを邪魔されて面白くなくなったのでしょう。ソラさんを集中攻撃的していた4匹は、ターゲットをあたしに向けたのです。わざとらしく部屋の入口付近を空けて、自分にその中に入れと言わんばかりに。


 「どうした?来ないのか?」
 「フフフ、意外と怖がりなのね?」
 「来ないってなら、仲間をもっと痛みつけてやっても良いんだぜ?」
 「こんな風にな!!オラァ!!」
 「きゃあ!!」
 「くっ………」


 お互いの連携プレーはさておき、ソラさんが万全だったら相手を挟み撃ちして何とか切り抜けてたかも知れない場面。つくづく彼女への不満が溜まる一方でした。でも、そんなことも言ってられません。無事にススムさんと合流するためにも、ここは何とか踏ん張らないと行けませんでした。


 「コ………ココロちゃん!私には構わないで大丈夫だよ!!」
 「うるせぇんだよ、この野郎!!お前は黙ってろ!」
 「ぐっ!!」
 「ソラさん!!もう、自分勝手なことばかり言わないで!!あなたの力なんて必要ないから!」


 そうやって頭の中で考えていると、またソラさんが助言をしてきました。自らの体を張ってまでの気持ちを、あたしも本当は汲み取るべきだったかも知れません。ところがさっきの彼女の振る舞いをまだ許せてないのか、ここでも自分は心ない言葉を突き刺してしまったのです。その言葉を受け取ったその直後、ソラさんが目を見開き、そして感じた絶望を受け入れたのか、そのままガックリとうなだれたのでした。


 「ギャハハハ!仲間割れか!?こりゃ面白ぇ!思ったより苦戦せずに済みそうだな!」
 「二匹まとめてやっちまおうぜ!」
 「フフフ、面白そうね」


 そんなあたしたちの様子を見て、四匹はますます不愉快な笑みを浮かべるばかり。正直腹立たしさ以外感じるものはありませんでした。


 (ダメよ、あたし!こないだだって冷静さを失ってススムさんに迷惑かけちゃったんだから。何を言われても我慢しなくちゃ)


 あたしは彼らの挑発的態度にグッと堪え続けました。闇雲に行動したところで数では不利な状況だし、きっと相手だって熱くなればなるほど、自分たちが優位になると考えていそうなのは必然的だったから。


 「何だよ?これだけ煽られてもまだ行動しないつもりか?だったらこっちから動かせて貰うぜ!?」
 (来た!!)


 膠着した状況はどれほど続いたでしょうか。ソラさんを壁側へ放り投げたと思うと、先陣を切ったワンリキーが自分に向かって突撃してきたのです!!

 (大丈夫!落ち着いていけば!!)


 あたしは意識を集中させて技を繰り出すタイミングが狂わないように、骨を握る力を強くしました。恐らく勝負は一撃で決まる…………そんな風に感じながら。


 (うぅぅ………ずるいよ、ココロちゃんばかり目立ってばかりいて………。これじゃ何のための修業なのかわからないよ………)


 ココロちゃんが探検隊としての経験が豊富なのは仕方ないことでしょう。だからといって自分の出番が無くなりそうなのは、どうしても受け入れがたいもの。ましてや夢見てきたギルドの入門を果たしたのに、こうも彼女の活躍ばかりが目立ってばかりじゃ、このあとの修業を自分がする必要があるのかさえ、わからなくなってきたのです。


 (ススムだってココロちゃんをかばったりするし………、きっと自分なんて目障りな存在なんだろうな…………)


 半ばふて腐れながら、放り投げられた衝撃による激痛に耐える私。そうしている内に段々と意識が遠退いていくのを感じました。





 (……………そういえば、どうして私って探検隊になりたかったんだっけ…………)


 思えば私には取り柄なんて何もなかった。怖がりだったせいか、あまり仲間ともお話したり馴染めなくて一人ポツンといるような感じ。だから楽しい思い出はあまり無いような気がする。


 そんなある日のこと、母親からおつかいを頼まれて隣町からの帰り道でした。鼻歌混じりに歩きながらふと草の茂みに目をやると、明らかに異質な石があったのです。それがあの不思議な模様の石でした。


 (何だろう一体…………)


 今まで見たことの無いような石。まじまじと見つめれば見つめるほど、何だか不思議に思えてきて、一体これが何なのかその正体を知りたくなってきたのです。


 (でも私一人の力じゃ、多分無理だよね………)


 この時の自分はバトルの経験はおろか、知識もほとんどない状態。そのため自分の住んでいる町から飛び出すことなんて到底不可能に感じたのです。だけど、せっかく見つけたあの石を戻すこともしたくありませんでした。そっと自分がお出かけのときに肩から下げている、小さなバッグの中へしまいこんだのです。


 それからしばらく経ったある日のこと。私の仲間の一匹が探検隊になろうと、自分の住む町から遠く離れた“トレジャータウン”という場所にあるという、“プクリンのギルド”への入門を目指している…………そんな話を聞いたのです。


 (じゃあ私もその場所に入門したら………この石の正体もわかるかも知れない………!!)


 私は早速両親に自分の想いを伝えました。だけど「女の子であるソラに危ないことはさせたくない」と、何度も釘を刺されることに。正直心が折れてしまいそうでしたが、それでもあの石の正体を突き止めたい気持ちは消えることはありません。むしろますます強くなる一方で、私は“プクリンのギルド”での生活に興味を抱いていくのです。その中で不思議のダンジョンの存在も知り、バトルのことやアイテムのこと等を独学で勉強し続けたのでした。




 (…………そうだよね。いつまでもパパやママが許してくれなかったから、自分で“トレジャータウン”の近くに住んだりしたんだ………)


 それくらい夢見てきた探検隊。オーバーな表現でしょうけど、いつかススムにも話したように、あの石が今の自分の原動力でもあり、生きる理由にもなっている。だからココロちゃんと関係が悪くても、中途半端に終わるわけにはいかないでしょう!!


 (これ以上誰にも邪魔されたくない!!)


           …………31Daysに続く。


 

 








 























 



 





 





 





















 





































 





 
 節目の30話目、到達しました!これからもよろしくお願いします!!

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