No.52 † 激励のライブキャスター †

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開会式翌朝。
現在午前10時15分

私は役員さんと他の代表者の皆に軽く挨拶をして、協会が所有している黒塗りの高級車でハイルドベルグの近くまで送ってもらった。

アーシェ:「(この車に乗るの2回目なんだけど……うぅ……やっぱり緊張するな……)」

運転手さんにお礼の挨拶をして、ハイルドベルグの町を歩いていると

男の子:「アーシェおねーちゃーん!」

いつも庭に遊びに来ている男の子が、私を見つけて駆け寄って来た。

アーシェ:「おう!今日も元気だな。これから庭に遊びに行くのか?」
男の子:「うん!あっ、きのう、テレビでおねーちゃんみたよ!かっこよかった!」
アーシェ:「そ……そうか……///// 」

率直な感想を述べられ、少し照れてしまった。

***

男の子と一緒に担当施設へ戻って来ると、庭で作業をしていたノーマとメゼスが気付いて柵越しに声を掛けてきてくれた。

ノーマ:「あっ!お帰りなさい、アーシェさん。」
メゼス:「お疲れさまでした。アーシェさん。」
アーシェ:「おう!ただいま。ノーマ、メゼス。」
男の子:「おじゃまします!」
メゼス:「はぁい。いらっしゃ~い。」

木製の柵を開けてすぐ、ポケモン達の方へ全力疾走していく男の子と見守りのために同行するメゼスを見守りつつ、私はノーマに話しかける。

アーシェ:「それで?私の留守中に、何か遭ったか?」
ノーマ:「いえ。特に何も……あっ!開会式の様子は録画しておきましたよ!見ますか?」
アーシェ:「やだ。そんな、恥ずかしい……」
ノーマ:「それにしても、今回の帰宅は早かったですね。いつもはもう少し日数がかかってますのに。」
アーシェ:「ハイルドベルグの入り口まで、協会が所有する黒塗りの車で送ってもらったんだよ。リーグ参加者達が此処に来るのは、もう少し先だろうな。それに、全員が全員1度に、真っ先に此処に来るとは限らねぇし。まっ!気楽に、普段通りでいこうぜ。」
ノーマ:「うふふ。はい、そうですね。」

***

同日の夜、20時45分

アーシェ:「ふぅ……さっぱりした。」

風呂から出て自室に戻り、寝る前に読書をしようとした時、ライブキャスターの呼び出し音が鳴り響いた。

アーシェ:「ん?誰だろう?もしもし?」
ティア:『もしもし?アーシェちゃん、久しぶり。』
アーシェ:「ティア!久しぶりだな!元気にしてたか?」
ティア:『えぇ。特に病にかかることも無く、元気に日々を過ごさせてもらっているわ。』
アーシェ:「そっか。よかった。」
ティア:『うふふ。それより、アーシェちゃん。見たわよ、昨日のフィリア地方ポケモンリーグ開会式。代表就任、おめでとう!』
アーシェ:「ゔっ……見てたのか……」
ティア:『えぇ。今日はお祝いの言葉を送ろうと思って電話させてもらったのだけれど……1番最初に、グラードンの件で対峙したあの女の子が出て来て驚いたわ。』
アーシェ:「あぁ。何でも、こっちの協会の役員の1人に、アイツの家の者が賄賂を贈って取り立ててもらったらしい。あいつの家は権力っつうモンがあるみてぇでな。異を唱えたらあいつの家の人間に何をされるか分かったモンじゃないから、1度取り立ててもらったら、誰も反論できなくなっちまったらしいぜ。」
ティア:『なるほど。』

ティアとそんな話をしていると、追加で呼び出し音が鳴ったのでそちらとも通話を繋ぐ。

コルボー:『よぅ、アーシェ。今、時間、大丈夫か?』
アーシェ:「コルボー!あぁ、全然問題無いぜ。」
コルボー:『そうか。おっ!ティアもやっぱり昨日の件か?』
ティア:『えぇ。アーシェちゃんにお祝いの言葉を伝えに。』
アーシェ:「……コルボーも見たのか?」
コルボー:『おぅ。詰め所にあるテレビで同僚達と一緒にな。お前が大トリで出て来た時、かなり盛り上がったぞ。』
アーシェ:「そ……そうか……/////」

そしてまた、ライブキャスターの呼び出し音が鳴り響く。

アーシェ:「この流れからして……もしもし?」
フクス:『アーシェさん!見ましたよ!ポケモンリーグ開会式!代表就任、おめでとうございます!』
サモン:『ふふっ、なかなか堂々としてたね。』
アーシェ:「やっぱり、お前達も見てくれていたのか……ありがとう。」

ライブキャスターの画面に、追加でフクスとサモンの画面が表示される。

フクス:『あっ!やっぱり、ティアさんとコルボーさんとも通話が繋がっていたんですね。』
コルボー:『まぁな。知り合いがテレビに映ってたんだぜ?全力で冷やかしたくなるだろ?」
フクス:『解ります!』
アーシェ:「はいっ、そこ!変な方向で意気投合しない!」
サモン:『まぁ、アーシェさんもそうだけどさ、他の人達もなかなか強そうだったよね。』
アーシェ:「あぁ、うん。私もまだ対峙したことないし、代表ポケモンしか見てねぇけど……各地の代表に選ばれるくらいだ。強いと思うぜ。」

アリアとはサルスーラのグラードンの件以降対峙していないけど、あれから純粋に強くなってる……と思う。

そんなことを声に出さずに頭の中で考えていると、ライブキャスターの呼び出し音がまた鳴り響いた。

クレマ:『お……おぉ……賑わっているな。』
アーシェ:「クレマ!まさか、お前も……」
クレマ:『あぁ。ポケモンセンターに設置されているテレビでな……』
フクス:『えっと、あの……アーシェさん、こちらの方は?』
アーシェ:「え?あっ、そうか。」

他の皆とクレマとは初対面だったので、先日フィリアで起こった墓荒らし事件と、その時に協力してもらったことを簡単に説明する。

サモン:『墓荒らしって……今でもする人が居たんだね?ちょっとビックリだよ。』
アーシェ:「うんうん。普通はそういう反応だよな。」
コルボー:『クレマだったか?道中、アーシェがメチャクチャなこと言って、お前を困らせたりしなかったか?』
クレマ:『いや、特には……むしろ、興味深い場所を案内してもらって、勉強になった……』
フクス:『興味深い場所?』
アーシェ:「あぁ。カタコンベっていう地下共同墓所に……」
ティア:『カタコンベって……仲間になってもらったばかりの方と、いきなり行くような場所とは思えないのだけれど……』
アーシェ:「事情が事情で、道中にあったから、つい……」
クレマ:『まぁ、そんなことより……お前と会ったときに自己紹介がてらそこの代表になったことを聞いた時は、半信半疑だったが……本当だったんだな。少しでも疑って悪かった。就任おめでとう、アーシェ。』
アーシェ:「おう!ありがとう、クレマ。」

自分のライブキャスターの五等分に区切られた画面に映る異国の友人達がこうして声を掛けてくれたことが嬉しくて……本当に嬉しくて
胸の奥がじんわりと温かくなってくる。

ティア:『今回はフィリア地方の人達しか参加できないでしょうけど、全国にあの開会式が中継されたんですもの。次回以降は、他の地方からの参加者さんが増えるかもしれないわね。』
アーシェ:「そうだな。この最初の第1回をちゃんと成功で終わらせて、その後も続かせるためにも、頑張らねぇと!」
コルボー:『…………』
サモン:『どうしたんだい?コルボーさん。』
フクス:『今までアーシェさんのお友達の中で男性は自分だけだったのに、クレマさんの登場で内心穏やかではないと?』
クレマ:『ん?そうなのか?』
コルボー:『え?あぁ、いや、違う違う。なぁ、アーシェ。』
アーシェ:「ん?何だ?」
コルボー:『もし……またいずれそっちに遊びに行った時に、お前の担当するその施設にお邪魔させてもらうとして……だ。その時、お前とポケモンバトルをすることは可能なのか?』
アーシェ:「……!あぁ。一応仕事だからリーグ参加者を優先させてもらうけど、その時に来訪者が誰も居なければ、私のポケモン達を鍛えるために、非公式の練習試合として相手になって欲しい。」
コルボー:『あぁ、もちろんだ。』
クレマ:『ほぅ……それは良いことを聞かせてもらった。俺もいずれ、アーシェとポケモンバトルをしてみたいな……』
アーシェ:「おう!挑戦者としてでも、普通にお客様としてでも、皆とまた直接会える日を楽しみにしてるよ。さすがに、旅はちょっと難しくなっちまったけどな。」
ティア:『うふふ。そうね。また近いうちに遊びに行かせてもらうわね。』
フクス:『アーシェさんがどんな場所で、代表を務めているのかも気になりますしね。』
サモン:『確かに、それは興味なるね。』
アーシェ:「まぁ……皆の仕事や事情みたいなのは、概ね把握してるつもりだからさ。無理しないで、そっちを優先してくれ。こうしていつでも通話できるんだしな。」
コルボー:『ははっ、そうだな。』
アーシェ:「…………皆、今日は本当にありがとな。祝いの言葉、すっげぇ嬉しかった!昨日の今日で挑戦者とはまだバトルしてねぇけど、おかげで頑張れる気がしてきた。」
コルボー:『『 頑張れる気 』じゃなくて、ちゃんと頑張れ!お前なら大丈夫さ。』
サモン:『応援してるからね、アーシェさん。』
アーシェ:「うん。ありがと!」ニコッ

応援や叱咤激励の言葉をそれぞれ言ってから通話終了で、全員の通話画面が消えたライブキャスターを机の上に置いて、私はベッドの上に仰向けに寝転がる。

アーシェ:「皆にあそこまで言ってもらったんだ……緊張もしてなかったし、最初から責任感はあったけど……うん。俄然、やる気が湧いてきた。」

これからの日々に改めてワクワクしながら、私は静かに眠りに就いた。

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