No.50 † 箱の中のモフモフ †

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読了時間目安:17分
施設建設や庭の木製の柵に扉を取り付け、遊具も作ってくれた大工さん達に、お菓子屋さんの併設依頼をメゼスと一緒にお願いして
その後町でいろいろと買い物をして、施設の庭の前まで戻って来ると……

ノーマ:「ん~……困りました……」

アーシェ:「ノーマ、ただいまぁ。」
メゼス:「ただいま、戻りました。」

私達は木製の扉を開けて庭に入り、ノーマに声を掛ける。

ノーマ:「あっ!アーシェさん、メゼスさん、お帰りなさい!」
アーシェ:「どうしたんだ?ノーマ。何か困ってたように見えたんだけど……私の留守中に、何か遭ったのか?」
ノーマ:「あぁ!そうでした。アーシェさん、メゼスさん……こちらを見てください。」

そう言ってノーマはそこそこ大きな段ボール箱を抱えて、私達の所へ歩いて来た。

メゼス:「段ボール箱……ですか?」
ノーマ:「問題は、その中身なんです。」

ノーマがそう言いながらガムテープで留められていない蓋をそっと開ける。
同時に私とメゼスは箱の中を覗き込み……そして驚いた。

箱の中には同じポケモンが3匹入っていて、こちらを見上げていた。

アーシェ:「このポケモンは……!」


【 イーブイ 】
しんかポケモン / 高さ:0.3m / 重さ:6.5kg / ノーマルタイプ
今現在の調査では、8種類ものポケモンへ進化する可能性を持つ。
アンバランスかつ不安定な遺伝子を持っており、様々な進化の可能性を秘めている。
不規則な形の遺伝子は、周りの影響を受けやすい。
暮らしている環境で突然変異する不安定な遺伝子を持つ。環境が変わると進化する。
進化のとき、姿と能力が変わることで、厳しい環境に対応する。
環境やトレーナーの愛情などによって遺伝子が変異を起こし、すぐに姿や形を変えてしまうという。
こういった理由で非常に貴重な存在として扱われており、実際イーブイが野生で生息している場所は極めて少ない。
ガラル地方では、キョダイマックスの姿も確認されている。
ただ、その個体はガラル粒子にイーブイのまま適合したため、他の進化系への進化ができなくなっている。
特別な個体やトレーナーが進化させない個体、進化を望まない個体などもいるため、全個体が進化を望んでいるわけではない。
周りの影響を 受けやすい遺伝子を持つため、親になったトレーナーの顔にも似てくる。


メゼス:「イーブイちゃんじゃないですか。それも3匹……」
アーシェ:「どうしたんだ?このイーブイ達。」
ノーマ:「お2人が出掛けられて、皆さんのポケモン達をこのお庭に出した後、あの木製の扉の方から鳴き声が聞こえる……と思ったので近づいてみたら、この状態で放置されていたんです。」
アーシェ:「そのとき、蓋は?」
ノーマ:「既に開いていました。なので、窒息はしていませんでしたが……」
メゼス:「可哀想に……こんなに可愛い子達を……」
アーシェ:「まったくだぜ!……ん~……ちょっと失礼。」

私はライブキャスターを取り出し、通話を試みる。

アーシェ:「時間的にどうだろう?………あっ、繋がった。もしもし?」
コルボー:『おう。どうした?アーシェ。』
アーシェ:「コルボー。お前さ……私の所にイーブイを3匹、シンオウ地方から段ボールに詰めて空輸やら、船で輸出……なんてことしてねぇよな?」
コルボー:『はぁ!?そんなことするわけねえだろ!お前じゃあるまいし!』
アーシェ:「私じゃあるまいし!って、どういうことだよ!?私だってやって良いことと、悪い事の区別くらいできるし、ポケモンを苦しめるほどの奇怪な行動をした覚えはねぇんだけど!?」
コルボー:『ヒンバスの美しさを上げようとして、たわしで擦ろうとしていた奴がよく言う……』
アーシェ:「ヒンバスのあの件は未遂で終わっただろうがっ!」
コルボー:『俺が止めたからなっ!……で?何でいきなり、そんな話をしてきたんだ?』
アーシェ:「あぁ、実は……私が担当することになった施設に併設されている庭を囲う柵のところに、イーブイが3匹、段ボールに入れられた状態で放置……あんまり言いたくねぇが、捨てられていてな。」
コルボー:『そいつぁ……』
アーシェ:「それで私の知る限り、イーブイが住んでいる場所に心当たりがあるのがウラヤマさんの裏庭だったからさ、絶対にそんなことはないって判ってたんだけど、一応……な。」
コルボー:『なるほどな。確かに、シンオウ地方からの密輸って可能性も否定できないが……幸いと言って良いのか、今のところ裏庭の生態系はあまり変わって無いな。少なくとも、イーブイの数は、お前が此処を訪れた時から変わってないぞ。』
アーシェ:「そっか……よかった。っていうか、個体数の管理までやってんのか!?前にも言ったけど、それはもう警備員の仕事じゃねぇだろ!」
コルボー:『まぁ、成り行きで仕方なく……な。』
アーシェ:「……大変だな、コルボーも。」
コルボー:『おう……それで、話を戻すが、仮に俺が此処のイーブイをそっちへ密輸しようとしたとして……だ。俺、お前が担当するハイルドベルグとやらに行ったことが無ければ、お前の担当するその施設の場所だって、まだ知らないからな?住所が判らねえから、送りようがない。』
アーシェ:「あぁ!確かに!」
コルボー:『とりあえず、飼い主が判らなくて、どうしようもないって状態なんだったら……もう、お前がそのイーブイ達のトレーナーになるしかないな。3匹共迎え入れたとして、それぞれ違うポケモンに進化させればいいだけのことだし。』
アーシェ:「いや……仮に迎え入れるとして、今、この施設に門下生……って肩書で、一緒に生活してくれてる大切な仲間が2人居てくれてるからさ。私を含めて3人だし、1匹ずつ担当することになると思う。」
コルボー:『ほぅ!そっちも着々と挑戦者を待ち構える準備が整ってきているみたいだな。そうか……ははっ、また今度、そっちへ行く楽しみが増えたぜ。』
アーシェ:「ふふっ……あぁ。またいつでも遊びに来てくれ。私も、お前とまた直接会える日を楽しみにしてるよ。」ニコッ

- 通話終了 -

アーシェ:「どうやら、知り合いの所から送られてきたわけでもないから、たぶん御近所のどなたさんが、何らかの理由でそのイーブイ達を此処へ置いて行ったのかもしれねぇな。」

トレーナー……人の手を介して野生化したポケモン達は今まで何匹か見てきたけど、このパターンは初めてだな。
理由は……何だろう?孵化厳選とやらで、理想個体ってヤツに出会えなかったから……とか?

アーシェ:「とりあえず……この子達を一度、ハイルドベルグのポケモンセンターに連れて行く。そこで、ナースさんにトレーナーIDを確認してもらってくるよ。」
ノーマ:「わかりました。お願いします、アーシェさん。」

結果……

アーシェ:「え~……非常に残念というか、可哀想な事に、この子達のトレーナーIDは確認されませんでした。たぶんだけど、捨てられたことで野生のポケモン扱いになってしまっている……とのことです。」

私はナースさんに言われたことを、ノーマとメゼスに正直に伝えた。

ノーマ:「そうですか……」
メゼス:「それでは、アーシェさんの異国の御友人……コルボーさん?が仰られていた『 飼い主が判らなくて、どうしようもないという状態 』というわけですし、この子達は私達が責任をもって育ててあげましょうか。」
アーシェ:「あぁ。改めて野に放つなんて真似はしてやりたくねぇし……そうするしかねぇよな。」

私は3匹のイーブイを段ボール箱の中から、庭へと出してやる。
広い場所に出してあげたが……戸惑っているのか、どうしたらいいのか分からないのだろうか
庭に出してやったイーブイ達は私達の前から動こうとしない。

アーシェ:「さてと……それじゃ、2人共。ファーストコンタクトで気に入ったイーブイにモンスターボールを投げてどうぞ。」
メゼス:「そう言われましても……イーブイの♂、♀の区別は見た目だけでは判別できませんし……」
ノーマ:「え?見た目で判別できますよ?」
アーシェ:「えっ!?そうなのか?私も判別できないと思ってたぜ。」
ノーマ:「はい。尻尾の模様を見てください。ギザギザな子が♂で、丸まった模様の子が♀です。なので……右から♂・♀・♀ですね。」
アーシェ:「へぇ!そうだったんだ。」
メゼス:「そう教えてもらってから見ると確かに……勉強になりますね。」
アーシェ:「それにしても……確か、イーブイも♀の方が見つかりにくいって聞いたことあるけど、この子達のうち、2匹は♀なんだな。」
ノーマ:「はい。ついでに報告しますと、真ん中の♀のイーブイの特性は『 危険予知 』です。」
メゼス:「なるほど………では、そこまで調べていただいたノーマさんに先を譲りたいと思います。どうぞ、ノーマさん。最初に選んでください。」
ノーマ:「えっ!?いいんですか?それじゃあ…………決めました。私はこの子にします。」

そう言ってノーマは手にしていたモンスターボールの開閉ボタンを、選んだ真ん中に居たイーブイの額にそっと押し当てた。

メゼス:「それでは、私はこのイーブイちゃんを選びます。」

続いてメゼスがノーマと同じように、選んだ右側に居たイーブイの額にモンスターボールの開閉ボタンをそっと押し当てた。

アーシェ:「それじゃ、この子が私のイーブイだな。」

最後に私が残った左側で座っていた、箱の中で唯一の♂であるイーブイの額にボールの開閉ボタンをそっと押し当てる。

それぞれのイーブイを吸い込んで閉じたモンスターボールは、しばらくカタカタ揺れ動いた後……カチッという音を立てて、完全に停止した。

アーシェ:「よしっ!イーブイ、ゲットだぜ!」
ノーマ:「うふふ。またこのお庭が賑やかになりますね。」
メゼス:「それでは早速、イーブイちゃん達を外に出してあげましょうか。」
アーシェ:「おうっ!相棒にも早く、新しい仲間を対面させてやりてぇしな。」

私達が投げたボールが開いて3匹のイーブイが、続けて投げた私とメゼスが投げたボールが開いてバシャーモとマホイップが姿を現した。

同時に私達のポケモンが各々のペースで集まって来て、新しく仲間入りした3匹のイーブイを快く受け入れてくれたようだった。

アーシェ:「いやぁ……ちっちゃいポケモンも増えて来たな。」
メゼス:「うふふ。微笑ましいですね。」
ノーマ:「此処で私達のポケモン達と一緒に、楽しく暮らしてくれると良いですね!」
アーシェ:「あぁ。そうだな。」


***


翌朝

自分のポケモンを外に出してあげようと庭へ出た時……とある異変に気付いた。

ノーマ:「あっ!おはようございます、アーシェさん。」
アーシェ:「おはよう、ノーマ……って、えぇ!?もうニンフィアに進化したのか!?」


【 ニンフィア 】
むすびつきポケモン / 高さ:1.0m / 重さ:23.5kg / フェアリータイプ
リボンのような触角から敵意を消す波動を発して、争いをやめさせる。
獲物を見つけると、リボン状の触角を揺らして油断させ、隙ができると飛びかかる。
ひとたび戦いとなれば、自分の何倍もあるドラゴンタイプのポケモンにも、いっさい怯まず飛びかかっていく。
恐ろしいドラゴンタイプのポケモンを、美しいニンフィアが退治する童話がガラル地方に残っている。
触覚で触れると相手の気持ちが判るので、トレーナーの腕にリボン状の触角を巻きつけてくる。
大好きなトレーナーの腕にリボンのような触角を巻きつけて、一緒に歩く。


ノーマ:「はい。昨日、あの後からずっと……夜もボールから出して部屋で一緒に過ごしていたら、『 つぶらな瞳 』を覚えていたのでしょうね。先程、ボールから出してあげたら、進化したんです。」
アーシェ:「それでも昨日の今日でって……これも才能なんだろうな。おめでとう、ノーマ。ニンフィア。」ニコッ
ノーマ:「はい!ありがとうございます。」ニコッ
ニンフィア:「(〃 ^ ∇ ^) 」
メゼス:「おはようございます、アーシェさん、ノーマさん……あら?ニンフィアが……えっと、この子は……」
ノーマ:「はい!私のイーブイが進化しました。」
アーシェ:「ブリーダーの本領を発揮した結果だそうです。」
メゼス:「なるほど……流石ですね。」
アーシェ:「ちなみに、メゼスはイーブイを何に進化させるか……候補みたいなのは考えてるのか?」
メゼス:「え?う~ん……そうですね……」
アーシェ:「ブースターならケーキやクッキーなんかの焼き菓子って呼ばれる類のお菓子作りに、グレイシアならアイスクリームやプリンみたいな冷やして固めて作るお菓子作りの時に頑張ってくれそうだと思うんだけど……いかがでしょうか?」
ノーマ:「ウチのキッチンには既にオーブンも冷凍庫付きの冷蔵庫もあるじゃないですか。頼れるところは、家電に頼りましょうよ。」
メゼス:「うふふ。でも、アーシェさんみたいな考え方も、1つの選択の手段としては有りなのかもしれませんね。」

~ 数時間後 ~

喉が渇いたので、共同スペースに設けられたキッチンに向かって歩いていると……甘くて良い匂いが漂ってきた。

アーシェ:「メゼス。今日もお菓子、作ってくれてるのか?」
メゼス:「はい。私達で食べきれる分だけですが……お店が建つまで何もしないでいると、腕が……感覚が鈍ってしまいそうな気がして……」
アーシェ:「なるほどな……って、んっ!?その子は……」


【 ブースター 】
ほのおポケモン / 高さ:0.9m / 重さ:25.0kg / 炎タイプ
体内に炎袋を持つ。
平均体温 7〜800度だが、興奮したり、戦いが始まる直前には、体内に溜まった炎の熱で体温が900度まで上がる。
ふさふさの体毛は広げることにより、上がり過ぎた体温を空気に放熱して下げる機能を持つ。
大きく空気を吸い込むのは、攻撃のサイン。
吸い込んだ空気を体内の炎袋に送りこみ、1700度の炎にして吹く。
木の実や獲物を捕まえると、炎を吹いてウェルダンぐらいになるまで焼きあげてから食べる。


アーシェ:「本当にブースターにしたんだ!やっぱり、お菓子作りを手伝って……」
メゼス:「うふふ。さすがにブースターちゃんが吹く炎を使ったら、全部黒焦げになってしまいますよ。アーシェさんは私のポケモン達を御存知ですよね?」
アーシェ:「あぁ。マホイップにポットデス、アマージョとビークイン……あぁ!なるほど、特性か。」
メゼス:「はい。シャワーズちゃんにするか迷ったのですが……アマージョちゃんとビークインちゃんに向けて放たれた炎タイプの技をダメージを負わず完全無効化するために、『 貰い火 』の特性を持つブースターちゃんにしたんです。」
アーシェ:「そっか。メゼスが考えて導き出した答えなら、それが正解なんだと思う。おめでとう、メゼス。ブースター。」ニコッ
メゼス:「ありがとうございます、アーシェさん。」
ブースター:「(〃 ^ ∇ ^) 」

◇◆◇

それから……

メゼスと一緒に外に出て、庭をトコトコ歩いていたブースターアにニンフィアが歩み寄り、更には私のイーブイも駆け寄って来た。
同じタイミングでウチに来たブイズ達が、庭の一角にある花畑で楽しそうにじゃれ合っている。

アーシェ:「これは……私も進化の石を使って、イーブイを早く進化させるべきか……?」
ノーマ:「そっ……そんなに焦ることはないと思いますよ。」
メゼス:「私達と同じポケモンでも構いませんし、それ以外にもまだ6通りの進化先がありますからね。ゆっくり考慮されてからでも、遅くはないかと。」
アーシェ:「そう……だよな。」

私はニンフィアとブースターと別れ、トコトコと私の所に来たイーブイを抱き上げる。

アーシェ:「何に進化させるか……コイツと一緒に、気長に考えて決めるとするよ。な?イーブイ。」
イーブイ:「(。 ・ ω ・) ”」

皆に続く……進化ラッシュに続くためだけに、焦って進化させて、私もイーブイも後悔したくねぇしな。

今はまだイーブイとして、一緒に日々を過ごしていくとするか。

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