15話 ブースターのひみつ

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「ピカチュウくん、お疲れ様です~! おかげで助かりました~。 これ、どうぞ」

俺がバイトをしているカフェのオーナー、パッチールがリンゴジュースを持ってきてくれる。
今日はとにかく忙しかったし面倒な客が多かった。
その上一緒に入っていたのが新人の子だったので、何かとフォローしてあげる必要があった。
その子は俺に申し訳なさそうにしていたが、気にしないでほしい。
ロコンとのバイトはこれの二倍は頭を下げていた。

「ありがとうございます、いただきます」

リンゴジュースをぐいっと飲み干し、グラスを空にする。
あぁ、沁みる。
果物類が人間の頃より美味しく感じるのは、この体、ポケモンの主食が炭水化物ではなく木の実だからだろうか。
パッチールは腕を組みながら。

「今日は黒いタマゴの客が多かったですねぇ~」

「黒いタマゴ?」

「比喩ですよ。伝説にある、世界で最も邪悪なポケモンが生まれると噂の黒色のタマゴ。彼らはそれから生まれたに違いありませんよ~」

ふーむ、慣用句みたいなものか。
リオルの言っていた、勇者の伝説とも関連があるのだろうか。
言いながら、フラフラと立ち上がるパッチール。

「まあ、そんなタマゴありませんけどね。ともかく、今日はお疲れ様でした~。またお願いしますね~」

おぼつかない足取りで、カウンターに向かう。
バックヤードから店内をどうやって把握しているか知らないが、パッチールには客が来たらわかるらしい。

「お疲れ様です、お先に失礼します」

「はい~」

毎朝の日課であるギルドの掲示板確認だが、今日は行けそうなクエストはなかった。
つまりこれから自由時間。
家で寝ようか、それともリオルきゅんにでも会いに行こうかな。
身分の違いはあれど、なんとか会えるだろう。
バイトで怒鳴られ、ルームメイトが問題を起こし続ける俺は日々の癒しを求めていた。

 ◇

「ピカチュウ、話があるのです。入っていいですか?」

「………。」

最近精神が疲弊しているので、今日はリオルに会って癒されたかった。
だが、家に帰ると二匹のどちらかが泣きついてきて後始末を任されるかもしれない。
そう考えた俺は、気付かれないようにこっそり準備をして出かけようとしていたが、どうやら見つかっていたらしい。

「どうぞ」

まあ、仕方ない。
ブースターはアホだが、悪気があって失敗しているわけではない。
見つかった以上は付き合ってやるか、と考えていたのだが。
ブースターは入ってきて、クッションの上に座る。
普段の、何も考えていなさそうなこいつとは何かが違う。
なんだか厳かで、気が引き締まるような緊張感を感じる。
はたしてこいつは何をやらかしたのか。

「ピカチュウ、この世界に来た時の話を覚えていますか?」

「お前が間違えたとか言って俺をポンコツにしたときの話か?」

ブースターは目を閉じる。

「ワタシは自分が神であると名乗り、世界を救うためにピカチュウをこの世界に呼び出したと言ったのですが、今まで一ミリもそれについて聞いてこなかったのは、きっとワタシのことを信じてくれてのことなのですよね」

「聞けよ」

ちなみにそういうわけではない。
ただ、今まで忙しすぎて聞きそびれてしまっていたというだけのことで。

「ついにお前とロコンがなんなのか、そして『レベルダウン』がなんなのか教えてくれるのか?」

「ロコンちゃんは素で強いだけなのですが、まあ、そういうことなのです。」

素で強いだけなのかよ。
テレポートを使う自称神のブースター。
レベルダウンという未知の力を使うピカチュウ。
出自を聞いてもはぐらかされる、妙に強い謎のロコン。
考えてみれば、俺は二匹のことはおろか、自分のことすらよく知らない。
気になる。
一体、このパーティはなんなのか。
どうして、何もかも常識から外れているのか。

「それを説明する前に、これを見るのです」

ブースターの手からいつもの青い光が出る。
そして、手の中に………。

黒に赤い幾何学模様が入った、禍々しいタマゴが出現した。

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