No.49 † 御三家贈呈式 †

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午前7時30分
ハイルドベルグ担当施設・バトルフィールド奥1階共同スペース

メゼス:「おはようございます、ノーマさん。」
ノーマ:「あっ!メゼスさん。おはようございます!」
メゼス:「…………あの、アーシェさんはどちらに居られるか、御存知ですか?先程から姿が見当たらなくて……」
ノーマ:「あぁ。アーシェさんでしたら、ハイルドベルグのポケモンセンターに行ってますよ。」
メゼス:「ポケモンセンターに?ノーマさんとポケモンバトルをして、アーシェさんのポケモンがダメージを負ったから……ですか?」
ノーマ:「いえ、違いますよ。そっか……メゼスさんにはまだ話していませんでしたね。此処ではフィリアポケモンリーグに参加するための認定バトルをする他に、新人トレーナーになった子ども達に御三家と呼ばれるポケモン達を提供する役目があるんです。」
メゼス:「まぁ!そうだったのですか。」
ノーマ:「それで、提供するポケモンは協会からポケモンセンターへ送られる手筈になっているそうで……」
メゼス:「そのポケモン達を受け取りに行かれたというわけですね。」

アーシェ:「ただいまぁ。あっ、おはよう!メゼス。」

メゼス:「おはようございます、アーシェさん。」
ノーマ:「アーシェさん。件のお客様は何時頃来られるのですか?」
アーシェ:「10時頃って話だったけど、向こうさんの都合で変わったりするだろうから、まぁ……臨機応変に対応していく方向で。」

***

午前10時25分
担当施設バトルフィールド

背景……装飾として設置していただいた祭壇の裏側に置いた椅子に座って本を読んでいると、前方の大きな扉がゆっくりと押し開かれ
1人の男の子と1人の女の子が入って来た。

アーシェ:「来たか……」
男の子トレーナー:「あ……あの、すいません。此処で最初のポケモンが貰えるって聞いて来たのですが……」
アーシェ:「あぁ。話はポケモン協会の役員さんから聞いてるぜ。それじゃ早速、お前達のパートナー候補のポケモン達に登場してもらおうか!」

私が最初に投げたモンスターボールからナエトルが、次に投げたボールからヒトカゲが、最後に投げたボールからワニノコが姿を現した。


【 ナエトル 】
わかばポケモン / 高さ:0.4m / 重さ:10.2kg / 草タイプ
甲羅は土が硬くなったもの。
土でできた背中の甲羅は、水を飲むと更に硬くなる。
甲羅を触ってほどよく湿っていたなら、そのナエトルはとても元気だと確認できる。
のどが渇くと頭の葉っぱがしおれてしまう。野生では湖の畔で暮らしている。
太陽の光を浴びて全身で光合成をして、酸素を作る。


【 ワニノコ 】
おおあごポケモン / 高さ:0.6m / 重さ:9.5kg / 水タイプ
小さいながらも暴れん坊。
目の前で動くものがあれば、とにかく噛みついてくる。
発達したアゴはパワフルで、何でも噛み砕いてしまうので、親のトレーナーでも要注意。
ワニノコ自身は甘噛みしているつもりでも、大怪我をしてしまうほどの力がある。
視界内で後ろを見せてしまうと、獲物と誤認するため、特に噛みついてくる。


この時初めて協会から送られて来たポケモンを見たのだが……

アーシェ:「(私がヴァン神父と担当した時は、アチャモ・モクロー・ポッチャマの鳥ポケモン3匹だったな……なるほど、今回は爬虫類系ポケモンできたか。)」

男の子と女の子は、興味に満ち溢れた熱い眼差しを3匹のポケモン達に向けている。

アーシェ:「まぁ、大事な最初のパートナー選びだからな。急かすようなことはしないから、いっぱい考えて決めるといいさ。」
女の子トレーナー:「あっ……ありがとうございます!」

メゼス:「うふふ。やっていますね。」

私の背後にある扉が開き、メゼスとマホイップが生クリームでデコレーションしたカップケーキと、お茶の準備をして入って来た。

メゼス:「はい、どうぞ。サービスだから、遠慮しないで食べて。」ニコッ
男の子トレーナー:「ありがとうございます!」
女の子トレーナー:「いただきます!」
アーシェ:「メゼス。私も欲しいです。」
メゼス:「はい。そんな悲しそうな声を出されなくても……ちゃんと、アーシェさんとノーマさんの分も用意してありますから。」
アーシェ:「んっ!なら良し!」

男の子と女の子にケーキとお茶を提供したメゼスが、私の隣に立つ。

メゼス:「それで……アーシェさんから見て、あの3匹のポケモンの中で『 この子がオススメ! 』みたいな子って、居るのですか?」
アーシェ:「ん~……今回の3匹は難しいな……」
メゼス:「あら?そうなのですか?理由を御聞きしても?」
アーシェ:「これは私の偏見なんだけどさ……今回のあの3匹のポケモン達って、新人さんがパートナーにするにはレベルじゃない、根本的な育成難易度がちょっと高いと思うんだよ。」
メゼス:「……と、いいますと?」
アーシェ:「ヒトカゲは尻尾の炎が消えてしまうと死んでしまうから、常に!って程じゃないけど気にかけてやる必要がある。ナエトルは喉が渇くと頭の葉っぱがしおれて不調を訴えてくるから、水分管理をしてやる必要がある。ワニノコは甘噛み感覚で容赦ないパワーで噛みついてくる。ついでに、背中を見せた時点で襲われる。」
メゼス:「なるほど。」
アーシェ:「まぁ、私が言ったのは図鑑からの知識や一般論であって、最終的に決め手になるのは、あの子達とポケモンとのフィーリングみたいなモンだろうな。大丈夫!本気で仲良くなりたいって思う相手と一緒の旅なら、どこへだって行けるだろうさ。」ニコッ
メゼス:「うふふ。そうですね。」ニコッ

数分後

男の子トレーナー:「決めました!僕、ヒトカゲと一緒に旅に出ます!」
女の子トレーナー:「私は、ワニノコと一緒に行きます!」
アーシェ:「おっ!決まったか。それじゃあ……はい。これがヒトカゲのモンスターボール。これがワニノコのモンスターボールだ。」

私はそれぞれのポケモン達が入っていたボールを新人トレーナー達に手渡す。

アーシェ:「まずは手始めに、パートナーに選んだポケモン達をボールに戻して、もう1回出してみよっか。」
男女トレーナー:「「はいっ!」」

2人はポケモン達をモンスターボールに戻し、すぐに投げて自分達のパートナーを呼び出す。

女の子トレーナー:「これからよろしくね、ワニノコ!」
ワニノコ:「(〃 ^ ∇ ^) 」
男の子トレーナー:「一緒に楽しく、強くなろうな!ヒトカゲ!」
ヒトカゲ:「(。`・ ω ・) ” 」

アーシェ:「ふふっ………この後、さっき入って来たあの扉を出た瞬間から、お前達とポケモンとの冒険が幕を開けることになる。その旅は楽しいばかりじゃない、時にはバトルに負けて悲しんだり、怖いポケモンと遭遇して危険な目に遭うかもしれない。」
男女トレーナー:「「……」」
アーシェ:「それでも……大丈夫!いろいろ経験していくうちに知識は増えるし、勝ち負けを繰り返していく分、お前達の心もポケモン達も確実に強くなる!気に入ったポケモンをゲットして仲間を増やすのも、知らない町を訪れていろんな人と出会うのは、きっと楽しいぜ。実際、私もいろんな場所に行ってポケモン達を増やして、異国の友人ができて楽しかった!って、胸を張って言えるからな。」
女の子トレーナー:「お姉さん……」
アーシェ:「いつか……もしかしたら、私が此処で2人の前に対戦相手のトレーナーとして立ちはだかる日が来るかもしれない。それまでに2人がどこへ行って、どんなポケモンを仲間にして私達の前に現れるのか……ふふっ、そんな日が来るのを、楽しみにしてるよ。」ニコッ
男女トレーナー:「「はいっ!」」
アーシェ:「よしっ!長々と引き留めて悪かったな。ほら……行ってこい!いろんな出会いが、お前達を待ってるぜ。」

男の子トレーナー:「ありがとうございました!」
女の子トレーナー:「はいっ!行ってきます!」

2人の新人トレーナーは深く頭を下げてお辞儀をした後、パートナーポケモン達と一緒に扉を押し開けて、出発していった。

アーシェ:「ふぅ……」
メゼス:「うふふ。お疲れ様です、アーシェさん。」
アーシェ:「んー……らしくねぇ……熱弁しちまったぜ。」
ノーマ:「お疲れさまです、アーシェさん。」

庭へと続く扉が開き、今までポケモンのお世話をしてくれていたノーマが入って来た。

ノーマ:「つい先程、此処から出て来た2人のトレーナーさんがポケモンを連れて、楽しそうにハイルドベルグの町の方へ行きましたよ。」
アーシェ:「そっか。北上するのか、ルアンの方へ行くのかな?……さてと!」

私は立ち上がり、ナエトルが入っていたボールを手に取る。

アーシェ:「残念だけど、選ばれなかったナエトルはボールに戻して協会へ送り返してやらないとな……次に選ばれるまで待機…………」
ノーマ:「あっ、あの!アーシェさん、ちょっと待ってください!」

ナエトルが入っていたボールを持つ私の右手首を、ノーマが慌てた様子でガシッと掴む。

アーシェ:「のっ……ノーマ?どうしたんだ?」
ノーマ:「えっと、その……そのナエトル、私が育てても構いませんか?」
アーシェ:「え?ナエトルを?」
ノーマ:「その子が新人トレーナーさん達のために用意された子だということは、解っています。でも……これまでずっと育てたいと思っていたのに、なかなか野生で巡り合えなくて……ですから、もし許可さえ頂けるのなら……」
アーシェ:「……わかった。ちょっと、役員さんに相談してみるよ。」
ノーマ:「我儘を言ってすいません、お願いします。」

- 通話中 - - 通話中 - - 通話中 -

- 通話終了 -

アーシェ:「役員さんが、『 ノーマさんなら安心して任せられます。ナエトルをよろしくお願いします。 』 だってさ。」
メゼス:「よかったですね、ノーマさん。」ニコッ
ノーマ:「は……はいっ!」
アーシェ:「それじゃ、はいコレ!ナエトルが入ってたモンスターボール。ノーマなら心配ないってのは解ってるんだけど、一応……ナエトルを大事に育ててやってくれ。」ニコッ
ノーマ:「もちろんです!他のポケモン達同様、分け隔てなく大切に育ててあげますよ。」ニコッ

新人トレーナーにポケモンを譲渡するだけかと思ってたけど、思わぬ形でウチに新しいポケモンが仲間に加わった。

草タイプのポケモンは成長が早いって聞くし、育て屋の資格も持ってるノーマのポケモンになったんだ。

あのナエトルはかなり早い段階で、最終進化を遂げる……かもしれない。

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