Message:3 結成! ストリングス

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 みんなでご飯を食べ終わって、サウンズのポケモンがそれぞれくつろいだりおしゃべりしたりしている。中には、もうさっさと奥の方へと行ってしまっている方もいた。奥には個別部屋があるのだろうか。

「アルコ、ちょっといい?」

 と、ぼんやりイスに座っていたボクに、ピズが声をかけてきた。振り向き、「どうしたの?」と返す。

「アルコもこれからシークレットベースで暮らすことになるだろうから、寝床の案内。なんだけど……」

 ピズが手招きし、ボクを案内する。進んだ先には、何個かのドアがあった。その中の1つのドア、“ピチカート”と書かれた看板があるドアのドアノブをピズがひねり、開ける。そこには、ぽつんと1つの藁の山があった。

「……ここ、私の部屋。……ほんとは、アルコにも1つの部屋を用意したかったんだけど……」

 ……この口ぶりだと、おそらくもう部屋がないのだろう。部屋の数、ポケモンの数より明らかに少なかったし。

「それでなんだけどねっ」

 ピズが、ボクに向き直り真剣な表情で話す。

「私と一緒に! チーム、組んでほしいな……って……」

 最初こそ威厳のいい言い方だったが、竜頭蛇尾、段々と声がしぼんでいった。……そういえば、自己紹介の時も他のメンバーは何かしらのチームに所属していたけれど、ピズだけチーム未所属って言ってたっけ。

「えっとね、私、実はこのシークレットベースに来たのアルコを除けば1番新しくて、だから、チーム組む相手がいなくて……」

 つまり、ピズはボクの次にサウンズで新米というわけか。「スモールズに入ってもよかったんだけど……」とピズが付け足したが、まあ、彼らはボクらより幼めだし、そこにピズが入るのをちょっと躊躇うのもわかる。

「そこに! アルコ、同年代のアルコが来てくれて……。……あなたしかいないって思ったんだ」

 強い口調で、ピズがそう言った。真っ直ぐな眼差しでボクをみるピズ。サウンズに入ったからには、ボクもどこかチームに所属しなければならないだろう。そして、組むとしたら……その相手は、ピズになるのが自然だと思った。

「だから……」
「……うん、いいよ」

 ピズが言い切る前に、ボクは承諾した。ピズが目を見開き、そして、満面の笑みになる。

「アルコ、ありがとうっ!!」
「わぷっ」

 ピズがいきなりボクに抱きついてくる。よっぽど嬉しかったのだろうか。びっくりすると共に、ちょっとドキドキしてしまった。
 こうして、ボクとピズは一緒にチームを組むことになったのだ。


* * *


「うーんと、チーム結成するなら、チーム名を決めなきゃなんだけど……」
「チーム名かぁ……」

 そうか、チーム名。ボクとピズのチームの名前。何かいいのあるかな、と2匹で悩んでいた時……。

「あっ!」
「わぁっ!」

 ピズがいきなり大きな声を出したので、驚いてしまった。「あっ、ごめん!」とピズが謝ったあと、彼女がキラキラした目で訴えかけてきた。

「“ストリングス”っていうのはどう、かな……!」

 ストリングス。綺麗な響きの言葉だ。でも、どういう意味なんだろう。ボクが訊こうとした時。ピズが先に口を開いた。

「私があなたに“アルコ”って名前をつけた時、“ピチカート”と反対の意味の言葉って言ったでしょ?」
「あ、たしかに」

 あの時は訊く暇がなかったけど、アルコ、ピチカートってどういう意味なんだろう。

「ピチカートっていうのが、ヴァイオリンとかの弦をはじいて音を出すこと。アルコが逆に弓で弾くことなの」
「なるほど……」
「そして、その2つの共通点、“弦”って意味の“ストリング”、それを複数形にして“ストリングス”! っていいなって私は思って……!」

 なるほどなるほど。ボクが最初に思った感想は、素敵だなっていう率直なものだった。

「素敵だね、いいと思う、ストリングス……!」

 ボクはそのまま伝えた。変にひねるよりかは、いいと思ったから。

「ほんと!? わーい、やったー! じゃあ、私たちは今日からチーム:ストリングスだ!」
「……うんっ!」

 ぴょんぴょんと跳ね、ピズが喜ぶ。それはまるでピチカートという言葉そのものを表しているようだった。


* * *


 今日はチーム名を決めている間に夜も更け、遅いということで、ボクらがチームを結成したことは、みんなには明日の朝伝えることにした。というわけで、ボクらは寝ることになった、のだが……。

「え、一緒に寝るの……!?」
「あ、うん、そ、そうなんだよね」

 ボクが冷や汗をかき、ピズがちょっとキョドる。そうか、最初に部屋を案内した時ピズの様子が少し変だったのはそういうことか。と、今更納得する。

「まあ、他のチームもチームメイト同士で同じ部屋だし……」
「じゃあ、レントさんとアダージョさんとかも一緒に寝てるの?」
「そういうこと」

 へええ。トリルさんビブラートさんのチーム:シェイクスや、小さい子たち4匹のチーム:スモールズならまだわかるが、チーム:スローリーズも一緒に寝ているのか。ちょっと意外だった。

「よいしょ、と」

 ピズが部屋の奥の収納スペースから何かを取り出す。それは、部屋に元々あったものと同じような藁の山であった。

「これ、アルコの分のベッド。長らくしまわれてたけれど、たぶん綺麗だと思う」

 なるほど、今日からは藁のベッドで寝るのか。ピズがピズ自身の藁ベッドを少し端に寄せ、空いたスペースにボクの分の藁ベッドを置く。ぽんぽん、と少し叩き、ボクに声をかける。

「ささ、どうぞ」
「ありがとう」

 ボクは用意されたてほやほやのベッドに腰掛ける。ふわりと草の匂いがして、心地いい。

「今日はもう遅いし、寝よっか」

 ピズがそう言って、寝支度を始めた。といっても、藁をちょっと整えて寝転がるだけなのだが。

「そうだね、おやすみ」

 今日は色々ありすぎて疲れたし、ボクも寝ることにした。ふかふかとした藁のベッドに身を投げる。いつもは人間の世界のベッド……羽毛などで出来たもので寝ていたから、藁のベッドは新鮮で、少しなれなかったけどそこまで悪いものではなかった。……それよりもボクが気になったことは。

「…………」

 隣にいる、ピズの事だった。いくらポケモンだとはいえ、同年代の女の子だ。ボクは気にしないように、と思ったが、どうしても少しだけ意識してしまう。背中越しにピズの気配を感じながら、目をつぶり、眠ろうとする。
 しばらくすると、隣からすうすうと寝息が聞こえてくる。ピズはもう寝てしまったようだ。ボクも寝なきゃ、と思いつつ、どうも眠れない。何度かゴロゴロと寝返りをうつ。まあ結局、それを繰り返しているうちにいつの間にか眠りに落ちていた。

 こうして、ピチカートの部屋、改めアルコとピチカートの部屋となったこの部屋のドアには、“ピチカート”と書かれた看板の代わりに、“ストリングス”という看板が付けられることになるのだった。


* * *


 真っ暗闇。気がつけば辺り一面がそうなっていた。あれ、どうしてボクはこんな所に……?

《……無事に、こちらの世界に着けたようだな……》

 だ、誰……!? どこからか声が聞こえる。でも、姿は見えない。……そりゃ、真っ暗闇だから当たり前か。
 と、いきなり足元が沈み始める。まって、このままじゃ飲み込まれる……ッ!

《……悪夢……ばかりで、すま……なぃ……》

 悪夢? そうか、これは夢なのか、と気づく。そして、誰のものか分からない声が段々と遠くなり、聞こえづらくなる。夢とわかっても身体が段々と地面に沈んでいくのは怖いものであり、必死にもがいて出ようとするが、それはかえって悪手で、ボクの身体はどんどん沈んでいく。

《…………ユ…××………どう……か……世界を……》

 ん、何か名前のようなものを姿見えぬ声が言ったような気がしたけど……聞き取れない。そのままボクは頭まで地面へと沈み……そこで、意識は途切れた――。

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