8-6 勝ちたい気持ちは誰だって

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この作品には残酷表現があります。苦手な方は注意してください



 第二試合のテイルさんとフォクスライを破ってハジメ君とマツが勝ち上がったことにより、彼らが準決勝でビー君と当たることが決まった。
 第三試合は鱗の大量にじゃらじゃらさせたポケモン、予選でも活躍していたジャラランガを連れた少年ヒエン君と、噂の中心になっているビッパ使いの男性、ヒイロさん。
 客席より外側の通路にいても、会場から手のひら返しのビッパコールが聞こえてきた。
 見回りのガーちゃんと再び遭遇した。彼女は両手にバラのブーケの腕を持つロズレイドと一緒に画面に見入っていた。
 私に気づいたガーちゃんが、私に向けて今の感情を吐露した。

「ヒエン君とジャラランガは、以前ポケモンバトルをした相手です。私情は挟んではいけないですが、やはり応援したくなってしまいますね」
「……いいんじゃないかな、応援しても。そこは、立場とかちょっと忘れて、さ」
「立場は立場です。そんな、私だけ忘れて好きにするのは、ソテツさんたちに申し訳ないですから」
「ガーちゃん……」
「まったく、もう。ガーちゃんじゃありません、ガーベラです」

 そういいつつも、その文句にはいつもほどの元気はなかった。
 私も彼女につられて、画面に見入った。
 第三試合が、始まる。


***************************


 後ろで縛った赤茶の髪を揺らし、ジャラランガ使いの少年、ヒエンはヒイロに宣戦布告した。

「ビッパの兄ちゃん。兄ちゃんたちが強いってのはなんとなくわかっている。でもオレとジャラランガもいろいろ特訓してきて、そしてここにいる――負けないから」

 ヒイロは、ヒエンの言葉を受け取り、その上でこう返した。

「……君の、君にとっての本当の強さを教えてくれよ」

 証明をして見せろ、と告げたその言葉は、どこか待ちわびているようにヒエンは感じた。

 試合開始の合図が響き渡る。
 観客のビッパコールを、ヒエンとジャラランガは、

 物理的にかき消した。


「行くぞジャラランガあっ!!!」

 ヒエンは咆哮とともに右腕につけた『Zリング』を左腕とともに交差させる。
 『Zリング』からのゼンリョクエネルギーを受け取ったヒエンとジャラランガは、腕で半円を描き、握り拳を突き出した。右足を力強く引いて、両腕を竜の口のようにふたりは開く。
 そこからジャラランガは雄々しい舞を踊り始める。全身の鱗をすべて震わせた、すべての音を一つに集めた超爆音波が、放たれる!

「『ブレイジングソウルビート』――――!!!!」
「! 『まるくなる』」

 ビッパの『まるくなる』。気おされずに完璧なタイミングのヒイロの指示でジャストガードをして防ぐビッパ。
 『まるくなる』を解き、ビッパはきりっと立ち上がる。
 しかしピッパは、踏ん張って立っていた。
 完全に防いだかに見えたその攻撃は、通っていた。
 そして、『ブレイジングソウルビート』の追加効果でジャラランガの全能力が上がる。

「いくらジャストガードでも、Z技を無傷は無理だろ? ジャラランガ『いやなおと』っ!!」
「『のろい』!」

 『のろい』で素早さを捨てる代わりに攻撃と防御の能力を上げつつも、ジャラランガも放つ音に苦しそうに防御力を下げられるビッパ。
 しかしヒイロは迷わず指示を出す。

「『ころがる』」

 ゆっくりと始まるビッパの『ころがる』。
 その一撃を受けてはいけないことを知っていたヒエンは、ジャラランガに遠距離攻撃を出させる。

「『ばくおんぱ』で吹っ飛ばせ!!」

 ヒエンの望み通り、ビッパは音波の圧によって吹っ飛ばされる。
 だが。

「『ばくおんぱ』が相殺、された……? そして『ころがる』が、解除されていない……?」

 ビッパは先ほどよりスピードの上がった2回目の『ころがる』を仕掛けてくる。
 音波の壁に“当たってしまった”ことにより、2回目のころがるは威力がさらに上がっていた。
 そのことにヒエンが気づいたのは、4回目の……4回もビッパの『ころがる』をジャラランガがギリギリで『ばくおんぱ』で吹き飛ばしたあとだった。

「――『ころがる』」

 5回目の『ころがる』
 速度も、威力も極まった“転狩る”に対して、ヒエンとジャラランガは打つ手がなかった。

 その茶色の弾丸は、ジャラランガを場外の壁まで一瞬で叩き飛ばした……。

「ジャラ、ランガ……!」

 戦闘不能に陥ったジャラランガにヒエンは駆け寄る。その姿をヒイロはじっと見て、それから一言「ありがとうございました」といい、ビッパを抱え上げフィールドを離れた。

「ゴメン、ゴメンよジャラランガ……!!」

 ヒエンの涙がフィールドの土を湿らし、三人目の勝者が、次のステージに進んだ。


***************************


 第4試合。ユーリィVSキョウヘイ。

 ユーリィには、迷いが少しあった。

 彼女はハジメやメイ、ココチヨやカツミと同じ集団、<ダスク>に所属するメンバーだった。
 彼女ら<ダスク>は大会の優勝賞品、隕石を狙っている。
 そして、今彼女の目の前に立つキョウヘイは、同じく同志のサモンが依頼した手練れの協力者だった。

 選手には、通信、テレパシーの類が許されていない。つまり、現場で判断するしかない状況。
 そしてユーリィは、その躊躇を踏みつぶして、キョウヘイに言う。

「サモンさんから話は聞いているけど、私も戦いたい相手がいるから勝ちに行くわ」

 彼女が戦いたいのは、彼女の幼馴染でもある、ビドー。
 ビドーはユーリィが<ダスク>に入っていることを知らない。
 けれど、知らないからこそ純粋に戦い競い合える機会を心のどこかでユーリィは待っていた。
 約束というほどきちんとした言葉は交わしてないが、ビドーに「もしぶつかったら、負けないからな」と言われ、感傷に浸っていたユーリィは、

 次のキョウヘイの一言で現実に引き戻される。


「レンタルポケモンといい、なめているのか?」


 キョウヘイの言葉に彼女は動揺する。
 予選を共に勝ち抜いたグランブルがレンタルポケモンだと見抜かれていた驚きもあるが、自身が目の前のキョウヘイに対して、否、大会に対してどこか甘く見ていたことを暴かれたことに対し、いたたまれなさを感じていたからだ。
 そもそも、ユーリィは今回の大会にレンタルポケモンの試用を依頼されていたという事情を持っていた。つまりはその場として大会を利用していただけとも言える。
 さらに自分のポケモンで挑まなかったことに対して“ポケモン保護区制度”を言い訳に使うにもヒイロのあの宣言もあってできない。
 一応グランブルと練習はしてはいたが、それも付け焼刃程度でしかない。

 それらを踏まえて、ユーリィにはキョウヘイに反論できる言葉がなかった。

 入場アナウンスが入り、それ以降の会話はなかった。

「行くぞ、ブルンゲル」
「お願い……グランブル!」

 キョウヘイは大きな頭を持ち、ふわりと浮いたブルンゲルを、ユーリィは下あごとキバが大きいグランブルを出し、そして試合が始まる。

 グランブルがその強面で吠え、ブルンゲルを威嚇した。
 ブルンゲルは一瞬びくつくもすぐに呼吸を整える。
 整ったことを確認したキョウヘイは短く指示を出す。

「状態異常にしろ」

 状態異常。それだけの言葉ではどんな技が放たれるかユーリィには絞り切ることはできない。けれども、ブルンゲルにとってはその指示だけで何をすべきかわかっていた。

 ゆらり、とブルンゲルは横に一回転。するとグランブルの周りに怪しげな炎が回り始め、グランブルを焼け焦がす。

「! グランブル『かみくだく』!」

 火の粉を振り払いながらグランブルは突進。ブルンゲルのひらひらとした腕を噛むも、『やけど』でうまく『かみくだく』ことができない。その異常を『おにび』によるものだと気づくユーリィだが、全く効いていないわけではない、と彼女は判断を下し技の継続を促した。

「ダメージは通っているはず、グランブルそのまま――」
「――そのままよく噛んでいろ。ブルンゲル!」

 言葉を奪われたユーリィは、次の光景に愕然とする。
 ブルンゲルが空いたもう片方の手でグランブルを抱き込んだ。
 無情なキョウヘイの指示が飛ぶ。

「回復だ」

 みるみると体力を回復させるブルンゲル。それと比例して、グランブルの噛む力が抜けて行く。
 ユーリィは初めのうちは、ブルンゲルがグランブルの体力を吸い取っているのではと誤認していた。
 しかし、グランブルのあごの力がどんどん緩んでいくのを見て、考えを改める。

(グランブルの力が、吸い取られているの?)

 『ちからをすいとる』、それは相手の攻撃力を吸い取り減らし、その分の体力を回復させるという相手の力に依存している技である。
 『やけど』の状態異常といい、力が得意のグランブルの長所をことごとく彼らは抑えていく。

 さらに、グランブルの動きが止まる。

「グランブル?」

 グランブルはぱくぱくと口を閉じようとしては失敗を繰り返した。
 ……グランブルの『かみくだく』が封じられていた。
 ブルンゲルの金縛りという呪いによって、その牙を封じられていた。

 そのブルンゲルの体質の名前は『のろわれボディ』。
 相手の最後に使った技を金縛りにし、偶に使えなくさせる特性だ。

(どうしたらいいの)

 挫けそうになった彼女は、ボロボロのグランブルを見る。
 そのグランブルを見た時、ユーリィは猛省した。
 何故なら、グランブルは悔しそうにしていたからだ。

(確かに、知り合って間もない私たちと向こうでは連携経験の差は埋まらない)
(でも、この子は悔しがっている)
(負けることを望んでない)
(グランブルは勝ちたがっている)

(バトルに勝ちたいと思うことに、そこにレンタルポケモンとか、その差はないじゃない……!)

 彼女が思い返すのは、それこそ付け焼刃の訓練。
 少しでも勝てるようにと、一緒に練習した記憶。

(勝たせてあげたい……いや、勝つ!)

 ぎり、と歯を食いしばり。ユーリィは反撃の一手をグランブルに出す。

「グランブル『ストーンエッジ』!!」

 グランブルが足で地面を踏みつけ、岩石の刃を地面から発生させブルンゲルの体を射抜いた。
 『ストーンエッジ』は、打てる回数こそ少ないが、急所に当たりやすい大技。
 急所に入ってしまえば、攻撃力の低下はカバーできる……だが今の攻撃は急所から外れていた。

(でも、ありったけ叩き込むしかない!)

 その気迫を込めた彼女の叫びを……容赦なく。
 彼はドスの聞いた声で遮った。

「――『うらみ』、だ」

 ブルンゲルの怨みをかったグランブル。
 グランブルの『ストーンエッジ』は空振り、地団駄に終わる。
 『うらみ』は相手が最後に放った技の残り回数を減らす技。
 つまり、放てる回数の少ない大技ほど……刺さる。

「グランブル、『じゃれつ」「『たたりめ』で決めろブルンゲル!」

 『やけど』状態のグランブルに、威力が倍増されたブルンゲルの『たたりめ』が入る。
 攻撃に堪えきれず、グランブルは倒れ……そして起き上がれなかった。
 第4試合の決着だった。

「……ありがとう、ごめんねグランブル」
「……よくやった、戻れブルンゲル」

 キョウヘイとブルンゲルが勝利し、準決勝へ向かう最後の選手揃う。
 ユーリィはグランブルを抱きしめ、心の中で思った。

(ビドー、ごめん。そしてハジメさん、キョウヘイさん。あとは頼んだよ)



 準決勝の対戦カードが発表される。



 準決勝第一試合 ビドーVSハジメ
 準決勝第二試合 ヒイロVSキョウヘイ


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ゲストキャラ
ヒイロさん:キャラ親 あきはばら博士さん
キョウヘイ君:キャラ親 ひこさん

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