よくぞあれだけ絶望的な天気だった連休予報から、こんなに晴れ続きの連休になったものです。
その家の人と思われる女性に招き入れられた僕達。あんな警備隊に追われてる僕達を匿ってくれるっぽいのは助かるけど、一体何故そんなリスクを冒してまで僕達を家の中に入れてくれたのかがちょっと気になる。そもそもなんかさっきの警備隊?みたいな人達の態度からすると僕のこのスーツ姿にショルダーバックという服装はこの時代のこの地方ではかなり不審者といった感じだったし、そんな人をわざわざ何も聞かずに自宅に招き入れるのだろうかねぇ・・・万が一僕が泥棒とかだったら大惨事よ?もしかして逆に僕の持ち物全部取られて着の身着のまま外に放り投げられるという最低最悪な事になりかねないよね??よね???
「ヒノアラシもブイゼルも僕から離れないでね?なんかちょっと気になる事があり過ぎるし、こんな不審者扱いされたどこの人達か知らない僕達を招き入れる人だから危ない人かもしれないよ・・・・ヒソヒソ」
ヒ『僕もそれは思いました。なんか気になりますよね・・・見ず知らずの僕達を家の中に招き入れるって凄い危機管理がなっていないというか、あまりにも無防備ではないのかなと。』
ブ『そうかな~僕は別に怪しいとも思わなかったし、この部屋にも何もないと思ったけどなぁ~。』
ヒ『少しブイゼルは黙っていてください。』
ブ『酷・・・。』
あーあ、ブイゼル少し拗ねちゃったじゃないの・・・それにヒノアラシも危機管理なんて難しい言葉無理して使わないで良いでしょ・・・それよりもこの人一体何考えているのかな?あっ、手にお盆持ってこっちに戻ってきた。えっ?ごはん??有難いけど一体なんでこの人ここまでしてくれるのかな・・・ますます疑心暗鬼になってきたわ。
???「さぁさぁ寒かったでしょう?暖かい物を食べて冷え切った体を温めてくださいな。」
「ありがとうございます・・・お伺いしますが、何故こんな見ず知らずのしかも変な人にそんな親切をして頂けるのでしょうか?しかも貴方は外に居た私達を特に深追いせずに家の中に招き入れて頂きましたし・・・招き入れて頂きましたと言う表現は変か・・・招いていただきましたの方が良いか?」
ヒ『シンゴ何一人でぶつぶつ言ってるのです・・・あの人凄く困った感じになってますよ?』
「おっとごめんごめん。こっちも今日だけで色々とあり過ぎて頭の中がキャパオーバーになりかけているから変な行動をとってしまいがちになる。・・・すいません、変な事聞いてしまって。それではいただきm」
「私困ってる人を見るとどうしても放っておけない性分なんです・・・・だから貴方達が外で凍えているのを見るとどうしても助けずにはいられなくて・・・ごめんなさい・・・なんか貴方達に不信感を与えてしまって・・・。」
「いえ・・・そうでしたか・・・そういう風に言っていただけたらこちらも安心します。それに先程はこちらこそデリカシーの無い発言をしてしまって申し訳ありませんでした・・・。」
「すいません・・・あっ、今暖かいお茶を淹れますね?」
今日はもう夜遅い。ここでお暇しますと言って外に出ても結局は野宿となるだろうし、それだと先程の警備隊に見つかって結局おじゃんという事にもなりかねない。それに思ったら今の僕ってタイムスリップしているって事はあまりこういう当時の人間とかポケモンとかと接するというのは避けた方が良いという気がするのだ。どこでどう歯車が狂うかわからないし・・・・
「一先ず今日の所はお世話になろうか。明日以降の事は明日考える事にしよう・・・ヒノアラシとかブイゼルも色々あった日だし、今日はゆっくり休む事にしない?」
ヒ『シンゴがそう言うなら・・・分かりました。』
ブ『僕はどっちでも良いよ!シンゴがそう言うんだったら僕も全然大丈夫!』
僕は帰ってきた彼女に今日一日だけお世話になる事を告げるが、彼女はやっぱりそうじゃないのと言った感じでふふっと軽く笑うと僕達の前に淹れてきたお茶を置いた。
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翌朝目が覚めた僕は取り合えず周りの様子を伺ってみる。うん、やっぱり特に変わりはない昨日の景色のままで、隣にはまだ寝息を立てて眠っているヒノアラシと掛けていた筈の毛布をどこかに蹴飛ばしてるブイゼルの姿があった。もしかして一睡したら元の世界に戻るかと期待していたけども、現実は残酷なもので残念ながらそうはさせてくれなかった模様。何時までもどうあがいても絶望という気持ちのままなのもどうかと思ったので、一先ず身支度だけは済ませて外へと出てみることに。我ながらびっくりする位の気持ちの切り替えの早さだ。昨日はかなり遅くに来たからよく町の様子を伺えなかったけど、今のコトブキシティと比べてもそう広さは変わらないし逆にこっちがゴチャゴチャしてない分広く感じる。それに空気が綺麗な気が鈍感な僕でも分かる・・・自動車や工場が無い分空気が綺麗なのだろう。
ヒ『おはようございます・・・朝早いですね・・・それにこんな所に居たら昨日のあの人達に見つかっちゃいますよ?えっ?ちゃんと細心の注意を払ってるから大丈夫ですって??そんな事言ってると捕まっちゃいますからね?』
「はいはい分かってますよ。それよりブイゼルはまだ寝てた?あーそう・・・昨日あれだけ歩いたから疲れたのかもしれないなぁ。もうちょっとだけ寝かせておいてあげようっと。それよりもヒノアラシはこれからどうする?なんか成り行きで連れてきちゃったけど・・・あれだったら元の場所に近いとこまで送るけど?」
ヒ『・・・・シンゴはどうされたいのですか?僕と旅するのは嫌いですか?僕はもうシンゴと一緒にこの世界を見ていくって覚悟は決めましたよ?えっ?もしかしてシンゴは僕と一緒に居るのが嫌ですか?・・・本当ですか・・・??』
ブ『僕もシンゴに付いていくよ!折角出会えたんだし、これも何かの縁だと思う!それに僕が悩んでいた事も色々と分かってくれたし、アドバイスもしてくれたし!』
「ブイゼルは何時起きてこっちに来たんや・・・いや別に僕は一緒に居るのが嫌とかそんなんじゃなくて、こんな僕の為に大事な人生決めても良いのかと思っちゃって・・・でもそう言ってくれるならこれからもよろしくお願いします。・・・でもモンスターボールが無いからなぁ・・・ずっと連れ歩くというのもリスクが生じるような気もするし・・・どうするか。」
女性「それならこちらをどうぞ。木製のモンスターボールと呼ばれる物で鉄で出来たモンスターボールよりも耐久性は落ちますが、ちゃんと従来の機能通りに機能しますよ?」
「そうですか・・・ありがとうございます。じゃあ一旦ボールの中に入っていて?」
女性から差し出された2つの空なモンスターボール(木製)を軽くヒノアラシとブイゼルに当てる。するとそれぞれの姿が赤く発色してボールの中に吸い込まれていった。おっ、これは確かに僕が居た時代のモンスターボールと同じ機能だな。
「でもなんでこんな物が」
女性「それよりもこの町を少し巡りませんか?折角お越しになったのですし、これも何かの縁と思いまして。」
「は・・・はあ・・・。」
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聞きたかった事が聞けずにモヤモヤした僕ではあったが、一先ずその事に関しては後々聞く事にしてその女性に付いていき町を案内してもらう事になった。・・・身バレしないように上にはこの時代のジャケットみたいなのを羽織り、帽子を被って移動するが果たしてこれで身バレしないのだろうかね。
女性「ここがこうであれがあーで。」
女性が一通り町を説明してはくれているのだが、お店というよりも何か官公庁的な役目の建物が多い印象。飲食店も1軒だけでその他の商店と見られるお店もそこまで多くはない。人は多いけどポケモンを連れていたり、町を歩いているポケモンも現代と比べるとかなり少ない。何故だろうか・・・ポケモンと人間が共存出来ていないのか・・・??
女性「そしてここが一番村の中でも端っこの方にある「通称牧場」です。」
「牧場ですか・・・名前も無いただの牧場って言う名称も珍しいですね。色々なポケモンが中には居ますけど・・・ここは?」
女性「はい、調査隊の方々が調査の為にモンスターボールで捕獲したポケモンや怪我をしたポケモンを保護する為にこの場所が設置されました。ただ、ポケモンと人間がまだ友好的に接する事が出来ていないので私達のような一般人はこの牧場でポケモン達と触れ合っているのです。」
「なるほど・・・ん?あのポケモンは??」
僕は牧場の中に居た1体のヒトカゲに目が行った。懐かしいなぁ・・・リザードンもあんなに小さい時があったのに今ではあんなに立派になっちゃったからなぁ・・・しみじみ・・・という気持ちに僕はなったのだが、どうもなんかあのヒトカゲは様子がおかしい。
「なんかやたらと気性が荒いですね・・・あっ!!」
ちょっと気になって見ていたその瞬間にそのヒトカゲは牧場内に居たお世話係と思われる女性を切りつけたのだ。これにはちょっと僕も見て見ぬふりは出来ませんねぇ。
女性「あのポケモンは何時もああいう感じでお世話している方を気づけてばかりの問題児・・・ああ!!ちょっとどこ行くんですか!?!中に入ったら危ないですよ!!」
女性の制止する声も聞かずに僕はその襲われた女性とヒトカゲの間に割って入る。ヒトカゲは最初こそは驚いた顔をしていたがすぐに元の顔に戻りこちらを睨みつけてきた。
「危ないですよ!!そのヒトカゲは!!すぐに逃げてください!!」
「大丈夫、僕意外とヒトカゲとか育てた事ありますので何となく分かります。ここは僕に任せて貴方は安全な場所に下がっていてくださいな?さてと・・・・見た感じ人間が嫌いなのは分かった。でもね?だからと言って罪も何もない人を襲うのはナンセンス。・・・やらないとわかってくれませんかぁ・・・話し合いで決着付けられればいいと思ってたけど・・・ブイゼル宜しく!」
ブ『了解!!あっ!あっちは炎タイプだから僕みたいな水タイプのポケモンが相性良いもんね!!さっすがシンゴ!じゃあやろう!!』
ブイゼルのテンションが高いのはちょっと置いといて僕はそのヒトカゲの方を見直してみる。かなり荒れてるな・・・でも普段は温和な性格の持ち主のヒトカゲがあんなに殺気全開でこっちを見ているという事はそれなりの何かがあったのかもしれない。
「あの!あのヒトカゲって何かありましたか??その大切なポケモンや物を傷つけたり奪ったりとか無かったですか??」
女性「え・・・えぇ・・・あのヒトカゲは確かここから少し離れた所で倒れていたのを保護されただけでそのような事はしていないと思うのですが・・・でも確か近くには・・・親と思われるリザードンが倒れてて・・・そのリザードンは残念ながら・・・な事はありました・・・。」
ここまで荒れてる原因はそれだな・・・もしかしたら何者かがこの子の親であるリザードンの命を奪ったのだろう。そしてこの子もそれを目の当たりにしてしかも自分までも襲われて瀕死の重傷を負わされたという事か。そして、恐らくどこの誰か分からない人間の仕業・・・だからこんなに人間を嫌っているという事ね。
「さてと・・・この状況ではとてもじゃないけどお話出来る感じではないよね?ブイゼル、あのヒトカゲはブイゼルよりも年下だ。レベルも低いと思うから取り合えずは手加減してあげて?本気で行くのは少しお預け。」
ブ『わかった。じゃあ普段の力の8割位で行くよ!』
ブイゼルは水鉄砲を放ったが、向こうのヒトカゲが放った火の粉の方が何故か威力が強くて水鉄砲はヒトカゲまで届かずに蒸発してしまった。
ブ『えぇ・・・シンゴ!あいつ手加減してたら勝てないって!!!だからいつも通りの力で行っても良いよね!だってだって僕の水鉄砲だとちょっとキツイって!』
「そうやね・・・じゃあ何時もの力の+1割程度で攻撃して?」
相も変わらずヒトカゲの気性は荒いまま。これじゃあ終わりが見えないなぁ・・・それにこの騒動が続くとなるとまたあの警備隊が駆けつけてそれこそ僕達は終了って事になりかねない。だからその前に終わらせたい所。
「ブイゼル、ヒトカゲに向かって連続で水鉄砲打てる?小出しにしてヒトカゲの周りを濡らしてほしいんだけど??」
ブ『!OK!やってみるよ!』
ヒトカゲの周りに水鉄砲を繰り出してドロドロのぐちゃぐちゃな路面を作り出す。これにはヒトカゲも困惑しているようで一瞬動きが止まる。そしてその時を狙って
「ブイゼル今!みずてっぽうを通常3割増しで!!!急いで!」
ブ『了解!!!』
ヒトカゲはブイゼルの放った水鉄砲を避けようと横に移動するが、濡れてぬかるんだ路面に足を取られて思う様に動けずにブイゼルの水鉄砲に当たってしまう。その瞬間にブイゼルが続けてスピードスターを至近距離で放ち、この勝負は決着がついたのだった。