第137話 フィアンセの元に駆けつけて。アヤノ編

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この作品には残酷表現があります。苦手な方は注意してください

「えっ!? ま、マイが一人で2の島へ!?」

 アヤノはクリスから連絡をもらうと手伝いを早々に終えて、荷物をリュックにまとめてポケモン塾を飛び出した。
 子供達が不安そうな顔でアヤノに近寄り「帰っちゃうの~?」と眉を下げて声を掛けてくる。アヤノは長い黒髪を耳にかけながらしゃがんで、目線を子供達に合わせる。

「ううん。悪い子供を迎えに行くだけ。大丈夫、必ずここに帰ってくるわ。ね?」
「うん! 分かった~!」

 良い返事を聞くと膝に手を当てて立つ。一番近くにいた子供の髪をくしゃりと撫でてからニコリと笑う。
 そんなアヤノの姿に子供達は目を奪われ、とろける様な瞳で見送った。

「ここまで来れば見られないわよね。って何魔法少女みたいな事言ってるの! よーし、ギャラちゃん! カントー地方のクチバシティにレッツゴー!」

 モンスターボールから煙を上げて出てきた強面ポケモン、ギャラドスのが頭を地面につけてアヤノを頭に乗せる。
 右手を空に掲げて空を飛ぶ! 掛け声がマイみたいだな、なんて内心思いながら。

「少し前にオーキド博士からこの"レインボーチケット"もらっておいてよかったわね」

 リュックのサブポケットから虹色をした船のチケットを取り出す。空を飛んであっという間にクチバシティに到着。
 風に海の匂いが乗っかって、どこか好奇心を誘って来る。シーギャロップハイスピード号という大きな船に乗って1の島に行く。そこから更に別の船で2の島に行けるのだが、マイがいるであろう「キワメ婆さん」の家には波乗りでないといけない。
 アヤノは船の前で受付けをしているお兄さんに話しかけてチケットを見せる。

「お嬢ちゃん、可愛いね。良い船旅を~!」
「……? はい、どうも」

 お兄さんの言葉に首を傾げながらも船に足を入れる。意外としっかりとした作りになっていて、足場に汚れなど一切ない。マイ達が乗った豪華客船にも似ている。

「フィア、出ておいで」
「こ~ん」
「ふふ、ボールの中は嫌いだもんね。ここでは出ててもいいみたいだけど暴れちゃ駄目よ?」

 船が出るにはまだ時間がある。しばらく探検する事にした。
 船旅の時間はおよそ八時間なので、寝てもいいし、船からの風景を楽しんでも構わない。フィアは潮の香りに鼻をひくひくと忙しく動かしていた。

「そういえば、ルームシェアらしいけど部屋があるらしいって言ってたわね。フィア、はじめにそっちに行こうか」
「こん!」

 二階建てになっている船で客室は二階。何室も部屋がある中で入り口から一番遠い部屋を選択。部屋は女性と男性で別れていてセキュリティも万全。コインロッカーにリュックを入れてからアヤノは部屋から出た。

「お~。いたいた」
「そこのロコンのおねーさん」
(ロコンのお姉さん? まさか私じゃないわよね)

 動き出した船から海を割く音が心地よく聞こえる。海風に吹かれて黒髪がなびく。
 手すりにつかまり風景を楽しんでいるアヤノの後ろから男二人組の声がする。言葉通り、自分ではないと判断したアヤノは無視をしてロコンに「気持ちいいね」なんて会話を楽しむ。

「ちょっと、君だよ!」
「きゃっ!? なんだ私だったんですか」
「そーだよ。一人? 俺達と遊ぼうよ。良い事教えてあげるよ」

 肩を叩かれて振り向くと、金髪の男と黒髪の男が立っていて、アヤノは分かりずらいが口角をニヤリと上げた。

「良い事……? あなた達がどこまで進んでいるかとか?」
「ちっげーよ! お嬢ちゃん、何? 今流行りの腐女子って奴?」

 金髪の男は赤いジャージを着こなした細身で長身。ポケットに手を入れながらアヤノに前屈みでそう言うと、一切動揺する事なく言葉を返した。

「いいえ、腐女子じゃないわ。あえて言うなら、そうね……。恋のエンジェル大使かしら」
「意味が分からないぜ!?」

 黒髪の男は青いジャージをダボダボに着ていて、師弟関係でいうならこっちが下だろう。それにしても似たような髪型をしていて、この二人は双子なのか? アヤノは余裕でそんな事を考えていた。

「二人は付き合っているのですか? それとも双子か何か?」
「なーんで男同士で付き合ってなきゃいけねーんだよ! 調子狂うな~」
「お姉さん、名前は? 俺はリツ! こっちの赤いのはソーセイ!」

 意外と悪い人達ではないのかもしれない。青いジャージの黒髪ははリツ。赤いジャージの金髪はソーセイ。

「私はアヤノです。何か用ですか? ポケモンバトルならお断りしますが。フィアがフィアンセモードに入ってるし……本気出ちゃいそう」
「え~。俺達こう見えてもカントーでは強いんだぜ? アヤノちゃん、ポケモンリーグ出た事ある? 俺達ね~ベスト100に入ってるの~」

 フィアンセモードとは戦闘モードの事である。謎の言葉にリツとソーセイは首を同時に傾ける。ポケモンリーグ、というワードに耳をピクリと動かす。

「今年のワカバタウンで開かれたポケモンリーグに出ました」
「へ~! ベスト何?」
「三位です。ベスト100とか聞いた事ないです」

 三位が心に響いたのをソーセイは忘れないだろう。トンデモない性格の子かと思いきや、トンデモない実力者だったと。

「つ、強いんだ。よ、よよよよ」
「ソーセイ。どうした?」
「良い船旅を……」

 壊れたラジオみたいに同じ単語を繰り返すとリツが不思議そうに顔を覗き込む。そんな二人にアヤノは心が燃え上がる事を認識。

(あら、船員さんだったのね。失礼な態度取っちゃったわ)

 違います。彼らはただのナンパ師です。

◆◆◆

「ふう。寝心地はまあまあだったけど、とにかく1の島到着ね! さっそくギャラちゃんに乗って2の島へ行くルートを確認しなきゃ!」

 船から降りるとポケモンセンターに駆けて行く。情報収集ならここが一番手っ取り早く済む。

(あの大きな山、ともしび山だったかしら? 伝説のポケモンがいるとか言い伝えがあるとかないとか)

 駆けながらも辺りを見渡す。一番目立つのは存在感が著しく目立つ山だろうか。名前は「ともしび山」温かい山で、南国らしい1の島にはぴったりな名前だ。
 あの山に登ってポケモンを捕獲したい気持ちもあったがマイに会いたい気持ちが強くて、煩悩を振り払うみたいに首を左右に振ってから頬を叩く。

「フィア、行くわよー!」

 石の階段を上ってそびえ立つポケモンセンターを発見。中に入ると冷気が身体に触れて少し鳥肌が立つ。
 灰色のジャンパースカートに真っ白なYシャツを着用しているだけなのでロコンを抱きかかえてホッカイロ代わりに。それでもロコンは役に立てて嬉しいのか、ご機嫌な声を上げるのであった。

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