第136話 俺には何が出来る?ゴールド編
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この作品には残酷表現があります。苦手な方は注意してください
「ちぇー! レッド先輩今日は忙しいから来れないのかよ。石でも蹴ってねぇとやってらんないな!」
「コラ! ゴールド、危ないでしょう!」
「おー。クリスじゃねぇか。どうした珍しいな」
さっそく力を借りようとポケギアを使い電話をしたが「忙しいからまた今度」そう言われてしまった。レッドにも色々とやる事があるらしい。一刻も早くマイに会いたいゴールドは怒ったように前だけ見てずんずんと歩いていたが無性に物に当たりたくなった。
家の前まで来るとちょうどいいサイズの小石があったのでそれを蹴飛ばすとその先にクリスがいて、腰に手を当てて前屈みになりながらお説教をはじめようとしていた。
「あのねぇ……あら? マイちゃんは? ポケモン塾でお祝いしようと思って迎えに来たんだけど」
「それで、どーして俺の家に来るんだよ」
「だってあなた達四六時中一緒じゃないの。その様子じゃまだ迎えに行ってないのね。一緒に迎えに行きましょうよ」
くどくどと話を始めるかと思いきや説教はなく、ため息をついただけで終わった。クリスはマイのリーグ優勝を祝いに来たので、怒る気分にもなれなかったみたいだ。
ゴールドの家にマイがいるとインプットされているので、これからウツギの家に行くのかと察して、そう誘った。
「それが出来たら迎えに行ってる! 出来ないからこうしてんだよ」
「こうしてるって庭にいる事……? 頭ぶつけたの?」
「ちげーよ! マイが勝手に一人で2の島に行っちまったんだ! 俺を置いてな!!」
完全な八つ当たり。声は次第に大きくなりクリスを怒鳴りつける。目をぱちくりさせるクリスを見て、すまねえ、と謝ると珍しくクリスは怒りもしなかった。
「そう……マイちゃんが一人で。でもどうして2の島へ? 確か、ナナシマの内の一つよね」
「ナナシマ? なんでって……そりゃおめー……」
「いつも一緒にいるはずのマイがいなくて不安で仕方ない」ゴールドの気持ちを汲み取って、なぜ単身で2の島へ言ったのか聞く。
2の島はカントー地方の海に浮かぶ七つの島の一つ、ゴールドはそれを知らなかった。それだからか、先程とは別人のように口ごもってしまう。右手が動かない時がある、なんて言ったらそれこそクリスが大噴火してしまう。
「……しゅ、修行だよ。もっと強くなるって」
「そうなんだ、頑張るわねマイちゃん。なら応援してあげなさいよ、あなたマイちゃんの保護者みたいなもんなんだから」
「保護者ってよォ……」
思考回路をフル回転させて出てきた言葉はあながち間違っていない。長い空白があったにも関わらず、カラッと安堵させるような口軽な言いぶりのクリス。
そんな態度にゴールドも肩の荷が下りたように鼻から息が漏れた。
「2の島に一人か、でも危険よねぇ……」
口元に手を運んで考え込むクリスの結ばれた髪がゆらゆらと揺れいる。
「おお! そうだろ! なぁ一緒に行こうぜ!?」
「それはお断りよ。あなたと二人だなんて死んでもごめんだわ」
「どういうこった!?」
これだったら一緒に行ってくれるかもしれないと明るい未来に期待したゴールドだったが速攻で断られてしまう。クリスも仕事で忙しいのだ。
「でもあなたの心配は分かったわ」
「べべべ別に心配してねぇよ!」
「アヤに連絡入れておくから。あの子ならすぐに向かうはずだし……」
伏せていた顔を上げて、意地悪な笑みを浮かべられてゴールドは顔を赤くする。こういう反応がいつも出来るなら可愛いのにな~、とクリスは内心思いながら提案をしてくれた。
「そうか、アヤなら行き方も知ってるしな! なら俺もアヤについて「駄目よ!」なんでだよ!?」
「マイちゃんならともかくアヤは純情なの! あなたといたらそれこそ性格が移るわ!」
「移んねーよ! ったくお前はいつも説教ばっかりだな!」
先程までの暗いゴールドの顔はなく、いつもの顔に戻っていた。ゴールドから逃げるようにクリスはネイティに運ばれてキキョウシティまで飛んで行った。
◆◆◆
「そんで、次はシルバーかよ」
「悪いか。それよりマイはどうした? 一緒じゃないのか?」
「まーたそれかよ! ったく、せっかく落ち着いてきたのによォ」
ウツギ博士の研究所に戻ったゴールドは、クリスとアヤノには連絡したと伝えた。ウツギは相変わらず研究所内をあっちをうろうろこっちをうろうろ、と落ち着きのない様子で研究にも手がつかないようだ。
助手がせっせと働いていてゴールドは自分がしっかりしようと、いつもならマイが隣に座って居るはずのソファーに一人で座っていたら――シルバーがやってきたのである。
「一人で2の島へ向かったのか」
「おう。どう思うよ、シル公。俺としては大反対っつっても本人はもういないんだけどな」
どうやらシルバーはオーキド博士のお使いでポケモンのタマゴの研究資料を持って行くように頼まれたそうだ。
「まぁあそこには強力な野生のポケモンも生息しているとブルー姉さんが言っていたからな。それ以上にキワメ婆さんとか言う人物が凶悪だと聞くが……」
「にゃんだって~!? それこそ俺が早く行った方が! いやでも~!」
「でも、ここに信じて待ってて、と書かれているじゃないか」
ゴールドからポケギアを持たされて無理矢理マイからのメールを読まされる。読みながらシルバーは2の島の情報を流すと、ゴールドの顔が真っ青になる。
落ち着かせるためか、メールの画面を顔に近づけてもう一度読ませる。そこには確かに「信じて待って」と書かれていて。
「くっそ! 俺にはどうしようも出来ねえってのかよ!」
「チョゲ~!」
「うお!? トゲたろう!? お前急にどうしたんだよ」
床を蹴るようにしてソファーから立ち上がると研究所に預けていたモンスターボールからゴールドが孵化したポケモンのトゲピーが飛び出してきた。
ゴールドの腹に体当たりして自分の存在をアピールして来た事に目を白黒させながら抱き上げると、指を振った。
「あ、おいおい待て待て!」
「チョゲー!」
「これは破壊光線の前触れ!?」
――その日からウツギ博士の研究所の一部の破壊された壁を直すのに約一週間工事をする事になったそうな。
「コラ! ゴールド、危ないでしょう!」
「おー。クリスじゃねぇか。どうした珍しいな」
さっそく力を借りようとポケギアを使い電話をしたが「忙しいからまた今度」そう言われてしまった。レッドにも色々とやる事があるらしい。一刻も早くマイに会いたいゴールドは怒ったように前だけ見てずんずんと歩いていたが無性に物に当たりたくなった。
家の前まで来るとちょうどいいサイズの小石があったのでそれを蹴飛ばすとその先にクリスがいて、腰に手を当てて前屈みになりながらお説教をはじめようとしていた。
「あのねぇ……あら? マイちゃんは? ポケモン塾でお祝いしようと思って迎えに来たんだけど」
「それで、どーして俺の家に来るんだよ」
「だってあなた達四六時中一緒じゃないの。その様子じゃまだ迎えに行ってないのね。一緒に迎えに行きましょうよ」
くどくどと話を始めるかと思いきや説教はなく、ため息をついただけで終わった。クリスはマイのリーグ優勝を祝いに来たので、怒る気分にもなれなかったみたいだ。
ゴールドの家にマイがいるとインプットされているので、これからウツギの家に行くのかと察して、そう誘った。
「それが出来たら迎えに行ってる! 出来ないからこうしてんだよ」
「こうしてるって庭にいる事……? 頭ぶつけたの?」
「ちげーよ! マイが勝手に一人で2の島に行っちまったんだ! 俺を置いてな!!」
完全な八つ当たり。声は次第に大きくなりクリスを怒鳴りつける。目をぱちくりさせるクリスを見て、すまねえ、と謝ると珍しくクリスは怒りもしなかった。
「そう……マイちゃんが一人で。でもどうして2の島へ? 確か、ナナシマの内の一つよね」
「ナナシマ? なんでって……そりゃおめー……」
「いつも一緒にいるはずのマイがいなくて不安で仕方ない」ゴールドの気持ちを汲み取って、なぜ単身で2の島へ言ったのか聞く。
2の島はカントー地方の海に浮かぶ七つの島の一つ、ゴールドはそれを知らなかった。それだからか、先程とは別人のように口ごもってしまう。右手が動かない時がある、なんて言ったらそれこそクリスが大噴火してしまう。
「……しゅ、修行だよ。もっと強くなるって」
「そうなんだ、頑張るわねマイちゃん。なら応援してあげなさいよ、あなたマイちゃんの保護者みたいなもんなんだから」
「保護者ってよォ……」
思考回路をフル回転させて出てきた言葉はあながち間違っていない。長い空白があったにも関わらず、カラッと安堵させるような口軽な言いぶりのクリス。
そんな態度にゴールドも肩の荷が下りたように鼻から息が漏れた。
「2の島に一人か、でも危険よねぇ……」
口元に手を運んで考え込むクリスの結ばれた髪がゆらゆらと揺れいる。
「おお! そうだろ! なぁ一緒に行こうぜ!?」
「それはお断りよ。あなたと二人だなんて死んでもごめんだわ」
「どういうこった!?」
これだったら一緒に行ってくれるかもしれないと明るい未来に期待したゴールドだったが速攻で断られてしまう。クリスも仕事で忙しいのだ。
「でもあなたの心配は分かったわ」
「べべべ別に心配してねぇよ!」
「アヤに連絡入れておくから。あの子ならすぐに向かうはずだし……」
伏せていた顔を上げて、意地悪な笑みを浮かべられてゴールドは顔を赤くする。こういう反応がいつも出来るなら可愛いのにな~、とクリスは内心思いながら提案をしてくれた。
「そうか、アヤなら行き方も知ってるしな! なら俺もアヤについて「駄目よ!」なんでだよ!?」
「マイちゃんならともかくアヤは純情なの! あなたといたらそれこそ性格が移るわ!」
「移んねーよ! ったくお前はいつも説教ばっかりだな!」
先程までの暗いゴールドの顔はなく、いつもの顔に戻っていた。ゴールドから逃げるようにクリスはネイティに運ばれてキキョウシティまで飛んで行った。
◆◆◆
「そんで、次はシルバーかよ」
「悪いか。それよりマイはどうした? 一緒じゃないのか?」
「まーたそれかよ! ったく、せっかく落ち着いてきたのによォ」
ウツギ博士の研究所に戻ったゴールドは、クリスとアヤノには連絡したと伝えた。ウツギは相変わらず研究所内をあっちをうろうろこっちをうろうろ、と落ち着きのない様子で研究にも手がつかないようだ。
助手がせっせと働いていてゴールドは自分がしっかりしようと、いつもならマイが隣に座って居るはずのソファーに一人で座っていたら――シルバーがやってきたのである。
「一人で2の島へ向かったのか」
「おう。どう思うよ、シル公。俺としては大反対っつっても本人はもういないんだけどな」
どうやらシルバーはオーキド博士のお使いでポケモンのタマゴの研究資料を持って行くように頼まれたそうだ。
「まぁあそこには強力な野生のポケモンも生息しているとブルー姉さんが言っていたからな。それ以上にキワメ婆さんとか言う人物が凶悪だと聞くが……」
「にゃんだって~!? それこそ俺が早く行った方が! いやでも~!」
「でも、ここに信じて待ってて、と書かれているじゃないか」
ゴールドからポケギアを持たされて無理矢理マイからのメールを読まされる。読みながらシルバーは2の島の情報を流すと、ゴールドの顔が真っ青になる。
落ち着かせるためか、メールの画面を顔に近づけてもう一度読ませる。そこには確かに「信じて待って」と書かれていて。
「くっそ! 俺にはどうしようも出来ねえってのかよ!」
「チョゲ~!」
「うお!? トゲたろう!? お前急にどうしたんだよ」
床を蹴るようにしてソファーから立ち上がると研究所に預けていたモンスターボールからゴールドが孵化したポケモンのトゲピーが飛び出してきた。
ゴールドの腹に体当たりして自分の存在をアピールして来た事に目を白黒させながら抱き上げると、指を振った。
「あ、おいおい待て待て!」
「チョゲー!」
「これは破壊光線の前触れ!?」
――その日からウツギ博士の研究所の一部の破壊された壁を直すのに約一週間工事をする事になったそうな。