*20*勝利、そして、目的のその先にあるもの

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チェレンとのバトル、チャンピオンとの初邂逅回。

*主人公の設定(生い立ちや容姿や立場)はゲームのものですが、それ以外の性格や個性などは完全にこちらで創作したオリジナルです。
*N主♀、チェレベル等のNLが含まれる傾向があります。
*手持ちのポケモンにはニックネームを付けていきます。
本来ニックネームは5文字までですが、5文字以上の名前をつける場合がありますので、ご了承ください。
*この長編で謳っている「ゲーム沿い」は、原作のストーリーの流れに沿って話を書くという意味ですので、その他の設定すべてがゲーム基準というわけではありません。
大体の世界観や細かい設定などは、ゲームとアニメを都合の良いように解釈して織り交ぜたオリジナルです。

※上記の事に同意できる方のみ閲覧お願いします。



「トウカ、ストップ!」


ホドモエシティへ行くために5番道路――通称パフォーマーストリートに差し掛かって間もなく、チェレンに呼び止められた。
きびきびした発音の声、人を呼び止めるときの言い方、間違えようがないのだから振り返らなくてもよくわかる。
そして、旅に出てからはあの「ストップ」が何を意味するのかも何となくわかる。

振り返れば、案の定――モンスターボールを握りしめているチェレンが立っていて、やっぱり、と声には出さずに心の中で呟いた。
ここのところ、チェレンは本当に挑戦的。
それは同時になにかに焦っている証拠でもあった。
けれど、訳を聞くにしてもゆっくりと話をしてくれそうにはなくて、私はひとしれずため息を吐くとモンスターボールを取り出した。


「バトルね、チェレン。」

「ああ。ボルトバッジを持つ者同士、どちらが強いか確かめる!」


というか、勝たせてもらうよ。

最後に会ったのは、砂嵐が吹き荒れる4番道路だからそこまで久しぶりというわけではないけれど、再会に対するアイサツもなしに、チェレンはモンスターボールを私に突きつけてきた。



――――『なぜぼくは勝てない!?』



4番道路の砂漠でのバトル――。
私が勝った後に砂嵐の向こう側で叫んだチェレンの声がよみがえる。
あのとき彼は、どんな顔をしていたんだろう。
怒っていたのか、困惑していたのか、泣きそうだったのか、そのどれでもないのか、私は彼の幼なじみなのに全然わからない。

今もまっすぐこちらを見据えてくるチェレンの顔は、ひどく緊迫しているようだった。
目力の強いその顔をじっと見返すことが憚られて、ボウシのつばをやや下げながら「……受けて立つわ。」とだけ返した。

それが、ますます彼の闘争心や負けん気を刺激させてしまったみたい。


「きみはいつでもそうやって、ぼくがバトルを挑めば澄ましているよね。まるでぼくなんて眼中にないみたいだ。
本当はポケモンバトルの強さに関してだって、それほど興味がないんじゃないのか?」

「チェレン……?どういうこと?」


そんなつもりはないわ、とそう言いたいのに先にモンスターボールを投げ込んで、レパルダスを出してきたチェレンによってその声は閉ざされる。
今、とても聞き流せないようなことを言われたのに否定もさせてくれない。
いいからはやく、と視線で急かされて胸にもやを抱えたまま、レパルダスと相性の良いコジョフーのムースを繰り出した。


「レパルダス、ねこだましだ!」

「ドレインパンチよ、ムース。」

「!くっ……!」


ダッ!と素早く駆け出したレパルダスの攻撃は、本来相手を確実に怯ませる技。
けれど、ムースの特性は『せいしんりょく』――。
鍛えられた精神によって怯み状態にならない特性を生かして、ねこだましをものともせずに、逆に眼前で叩き合わされたその前脚を白刃取りの要領で掴み取る。
勤勉なチェレンがポケモンの特性を読み間違えるだなんて、珍しいことだった。
いくらムースがここからうんと遠い、セッカシティ付近でしかゲットできないポケモンだからって、知識が皆無なわけじゃないでしょうに。

自分の技の選択ミスに気が付くも、時すでに遅し。

完全に動きを封じられて防御もままならなかったレパルダスの無防備なお腹に強力な一撃を与えられる。
あまりに重たい一撃に目を見開いて、開いた口からカハ、と息を吐いたレパルダスをムースは鮮やかな所作による背負い投げでコンクリートに叩き付ける。
お腹と背中にもたらされた激しい衝撃にレパルダスは一気に体力を減らされてしまった。
立ち上がるどころか身動きを取るのも辛そうに痙攣していて、「レパルダス、立つんだ!」というチェレンの指示はとても聞けそうにない。


「……くっ、戻ってレパルダス。……ごめん、ぼくの判断ミスだ。
――――だけど、次はない!ハトーボー、頼んだよ!」

「ハトーーッ。」


レパルダスと交代で出てきたのは、マメパトの進化系のハトーボー。
丸々とした小鳥だったマメパトから、スラリと細身の体型ときりっとした目元の赤色が賢く、美しい印象を与える姿になった。

ひこうタイプが相手だと、ムースのままじゃ相性が悪いわね。


「ムース、交代しましょう。――――シャルロット、おねがい!」

「ヒヤ~プ!」


間延びした鳴き声を上げて出てきたヒヤップのシャルロットに対し、チェレンはメガネの奥の目を細めた。


「ヒヤップ、ね……。てっきりシママでくるかと思っていたよ。どうして相性通りにポケモンを出さないんだい?」

「別に相性だけでバトルをするわけじゃないもの。シャルロットだって十分ひこうタイプに対して戦えるわ。」

「タイプ相性がすべてじゃないって?たしかにそうかもしれないね。
でも、さっきはぼくのレパルダスをコジョフーで簡単に伸してくれたじゃないか。」

「チェレン……?」


言葉の節々に棘が含まれているのが、いやでもわかる。
訝しんで名前を呼べば、彼はメガネを中指で押し上げる仕草をして「……ごめん。いやな言い方だったね」と落ち着いた声でそう言った。
さすがに自分でも今の言い方はよくないと思ったらしい。


「考え足らずな発言だったよ。……今はバトルに集中した方がいいみたいだね。」

「……そうね。そうした方がよさそうだわ。」


きっとお互いに、だ。
私がさっき相性で勝利を収めたのだって事実なのだから、彼の発言だってわからないでもない。
深く考えてはいけないのだ。でないと、その先を考えるのがこわかった。


「気を取り直して再開しよう。――――ハトーボー、エアカッター!」

「かわして、シャルロット。」


羽ばたくハトーボーがシャルロットの真上から切り裂いた空気を飛ばしてくる。
持ち前の素早さを生かして、後ろへ跳んだシャルロット。
反撃のねっとうをハトーボーに向けて放つもハトーボーは平行に広げた翼を傾けて滑空し、ねっとうをやり過ごす。

そのままシャルロットの近くまで下降してきたハトーボーは、シャルロットの背後に回り込もうとする。
シャルロットが後ろを振り向けば、今度はするりと前に回り込むハトーボー。
すぐさまシャルロットが前を向くけれど、その頃にはシャルロットの背後まで飛んで回ってしまう。
攻撃の気配はない。けれど、いつどこで仕掛けられるのかわからなくて、ハトーボーから目を離せないシャルロットは、すでにハトーボーの術中の中にあった。
前に後ろに右へ左へ。
ぐるぐる、ぐるぐる、とハトーボーの動きを追いかけるあまり自分自身が回転していたことに気付かずに、シャルロットは目を回してくらくらと足元をおぼつかせた。


「シャルロットっ、」

「今だ、ハトーボー。エアカッター!」

「ハトーっ!」


完全にハトーボーを見失ったシャルロットの背後から飛ばされる、空気の刃。
まともに食らってべしゃりと顔から転んだシャルロットが痛みに呻く間にでんこうせっかの追撃が迫る。


「ヒヤァ~っ!」

「シャルロット、起きて!いわくだきで反撃よ!」


二度目のでんこうせっかを食らう前に行動を起こさないと、と声を上げるけれど、振り上げた拳は直前で舞い上がったハトーボーに届かず、空振りに終わる。
翻弄されているわね。
けれど、目を回していたシャルロットもようやく平衡感覚を取り戻したらしく、ふるふると頭を振って視界をはっきりさせた。


「ねっとう!」

「みきりだ!」


狙いを定めて一直線に向かったねっとうも、見切られてかわされてしまう。

スキがないわ。
このままだと押し切られる……。

水技を使った遠距離戦なら戦えると思ったけれど、思った以上に難しかった。


「ヒヤァ……。」


自分の上空を飛び回るハトーボーを見上げて、不安そうに鳴くシャルロット。
どうしよう、と言いたげな彼の元にチェレンの指示を受けたハトーボーが鋭く舞い降りてくる。


「そろそろ決めさせてもらうよ。でんこうせっかだ!」

「ハトっ!」


翼を畳んで猛スピードで真上からハトーボーがシャルロットに突っ込んでくる。
あわあわとしたシャルロットが頭を抱えてその場に蹲った。
下を向いているシャルロットを見て、はた、と思いついたことがあった。


「シャルロット、地面に向かってねっとうを撃って!」

「!なにを……っ。」


「ヒ~……ヤァーープ!」


蹲った体勢のまま言われた通り、地面に向けてねっとうを放ったシャルロット。
勢いよく発射されたねっとうは、ジュウゥっとアスファルトに当たって煙を上げる。
噴き上がった白い煙はシャルロットの姿を隠してしまい、間もなくシャルロットの元に届くはずだったハトーボーがとっさに空中で動きを止めた。

目くらましか、とチェレンが向こう側で呟いている。
本当の狙いはそこじゃないわ。
誰にも見えていないシャルロットの姿が私にはよく見えるもの。


「シャルロット!」

「ヒヤァプ!」


「!なにっ!?」


シャルロットが現れたのは、煙の中からじゃない。
――――ハトーボーの上から。

驚きで反応を遅らせたハトーボーの背中にシャルロットが飛び乗った。


「……!ああ、そういうことか……!ねっとうでアスファルトに煙を立たせたのはフェイク……!」


本当の狙いは、ねっとうを放つ勢いを利用してシャルロットの身体を上空へ打ち上げることだった。
なるほど、その技を選ぶとはね――とチェレンは悔しさを交えてそう呟いた。
煙で身を隠せるから下にいるとばかり思っていたシャルロットが上から迫っているだなんて気付けなかったチェレンは、けれど、即座に仕掛けを理解して拳を握りしめる。


「かみついて!」

「ヤプゥ!」

「ハトォっ!?」


背中にしがみついたシャルロットがハトーボーの首筋に牙を立てる。
急所を突かれ、ハトーボーが痛みをこらえきれずに翼をめちゃくちゃにばたつかせて空を泳ぐ。
羽が散るほどの羽ばたきにも負けず、シャルロットが一層強くかみついていると、チェレンの指示が飛んだ。


「はねやすめだ、ハトーボー!」


すぐさま煙の消えたアスファルトに舞い降りて、翼を畳むハトーボー。
シャルロットがかみつくのも構わずに身を休める行為によって、ハトーボーはひこうタイプを一時的に失う代わりに体力を回復させた。

文字通り、羽を休めて気持ちを落ち着かせ、チェレンの指示によって空へと舞い飛ぶ。
でんこうせっかによって、空で大きく旋回し、地面へ下降する。
背中にしがみつき、首筋に牙を立てるシャルロットがちょうど下になるような飛び方に、彼を地面に叩き付けて離すつもりだと予測がついた。


「シャルロット、もう一度地面に向かってねっとうよ!」


ヒヤァ!とシャルロットが返事をして、まっすぐ向かっていた地面にねっとうが放たれる。
そうすると、勢いよく地面にぶつかった反動でシャルロットにしがみつかれたハトーボーの身体は空へと押し返された。


「こちらの体勢を崩して攻撃に転じるつもりらしいけれど、無駄だよトウカ。
ハトーボー、でんこうせっかで振り落とせ!」


牙が離れたのなら、こっちのものだとばかりにチェレンが指示の声を上げる。
方向転換したハトーボーが凄まじいスピードで上空を滑るように舞い上がるため、ねっとうを放っていたシャルロットはバランスを崩してしまった。
地面に落ちたところを狙って、ハトーボーが体当たる。
ハトーボーの特性『きょううん』が功をなし、シャルロットの急所を射抜いた一撃は、シャルロットの体力を一気に減らしてしまった。


「決めるよ、エアカッター!」

「ハトーっ!」


動きの鈍ったシャルロットに放たれたエアカッターがトドメとなり、シャルロットはあえなく目を回す。
少し奇をてらいすぎたわね……。


「戻って、シャルロット。がんばったわね、休んでいて。次は――――、」

「戻れ、ハトーボー。」

「!アナタも交代するのね。」

「まあね。」


てっきりこのままハトーボーで攻め続けるのかと思ったけれど、私の交代に合わせてチェレンもポケモンを代えてくるとは思わなかった。
ひょっとしたら、ワッフルの登場を警戒しているのかもしれない。
ハトーボーはひこうタイプだから、私のムースにも相性が良いし、ワッフルを出して倒されるより先の展開を見越して温存する方向にしたんだろう。

抜かりないわね、さすがチェレン。


「チャオブー、頼んだよ!」

「――――おねがい。」


チェレンが選出したのは、彼の手持ちのエース格であるチャオブー。

ここで彼を投入してくるということは、一気に勝負をつけにきたということかしら。
彼で苛烈に攻め入って、残りのポケモンでトドメを刺す。そんな風に戦うつもりかもしれない。
……でも、そうはさせないわ。
チャオブーにはここで倒れてもらうつもりよ。


「……ねえ、トウカ。」


中指でメガネのブリッジを押さえたままのチェレンが訝し気に私の名前を呼んだ。
彼のレンズに私が繰り出したポケモンの姿がうっすらと映り込んでいる。


「ひとつ聞くけど、ぼくのチャオブーときみのジャノビーは相性が悪いってことは知っているよね?」


チャオブーと対峙しているのは、くさタイプのミルフィーユ。
モンスターボールは、ほぼ同時に投げ込んだからお互い狙ったわけじゃない相性での対面になった。
だからこそ特に交代する素振りを見せない私のことをチェレンはどういうつもりかと問いかけてきているのだ。


「……ええ、ちゃんと知っているわ。」

「だったらなんで……いや、やめておくよ。きみが何を考えているのか知らないけれど、勝つのはぼくたちだということに変わりはない。
――――チャオブー、ニトロチャージだ!」

「チャオチャオ!チャオーーっ!」


足踏みで地面を鳴らし、勇んだチャオブーが全身に火炎を纏った。
くらえー!と言っているような鳴き方で、得意げな笑みを浮かべて突っ込んでくる。
私は「よけて!」とだけ指示を出した。
すると、見た目にそぐわず中々のスピードで向かってくるチャオブーをこともなげに軽くかわしてみせた。
チャオブーは目標が消えてしまったせいでそのまま草地に生えている木にぶつかってしまい、頭の上に星を飛ばしてしまっている。
それを見て、お腹を抱えてケラケラ笑うミルフィーユ。


「…………。」


ぶつかった拍子にころころと転がったチャオブーは、起き上がり、、笑われたことに対してムッ!と顔をしかめる。
チェレンの指示を受けて、鼻から噴き出すスモッグの勢いが凄まじいのも笑われたからだ。
もくもくと辺り一面を覆ってしまうほどの黒煙は、瞬く間に2匹の姿を隠してしまった。

憤るチャオブーの鳴き声を聞いたチェレンが冷静な声で指示を出す。


「……落ち着いて、チャオブー。次のニトロチャージで決めるよ。――――ニトロチャージ!」

「チャーオッ!」


怒るチャオブーを言葉一つでなだめたチェレン。
砂漠でのバトルと同じね。
ニトロチャージの目的は、スモッグに引火させて威力を倍増させること。


「させないわ。スモッグから抜け出して――――、」


おねがいっ……。



「――――あくのはどう!」



間もなく黒煙から出てきた緑色の影。
ニンマリと口元に三日月を描くミルフィーユの、見たこともないくらいシニカルな顔。
シャープな身体の輪郭を黒色に縁取って、全身から放出した悪のオーラが波打ちながら大炎となりかけたスモッグの中にいるチャオブーへと放たれる。


「あくのはどうだって……!?」


どうしてそんな技をジャノビーが……!?


そうチェレンが目を見開く。

かくとうタイプも併せ持つチャオブーに効果はいまひとつだったけれど、意表を突いた技に呑まれたチャオブーは、火炎を纏ったままその場に立ち尽くす。
あくのはどうには、相手を怯ませる効果がある。
目を見開いて固まるチャオブーの前で、ゆらゆらと葉の尻尾を妖しく揺らすミルフィーユがゾッとするほど楽しそうに笑んでいた。

私はタネ明かしのために技の指示とともに、その名前を呼んだ。


「"シフォン"、ひっかく攻撃!」


「!シフォン……?」


ミルフィーユの姿と異なった名前をチェレンが復唱する。
今日は機嫌がよかったのか、それとも相手を悪戯に翻弄できることが楽しくて仕方ないおかげなのか――――ミルフィーユの姿をした"ゾロアのシフォン"が、チャオブーを容赦の欠片もなく、文字通り引っ掻きまわした。

爪なんてどこにもないはずの手で確実に顔や身体を切り刻まれて、チャオブーは目を白黒させながらも反撃に転じてきた。
振り下ろされた手を裏手で弾いて、もう片方の手でミルフィーユの姿をしたシフォンの顎下を狙ってくる。
ニトロチャージで素早さを上げたおかげもあって、丸々とした見た目に反して動きがしなやかだ。
けれど、シフォンは掌底を叩きこまれる寸前で身を弓なりにくねらせてかわしきり、そのままクルンと空中で弧を描いてチャオブーから距離を取った。
ニッと意地悪気にルビーの目が細まるけれど、チャオブーはすでにシフォンの眼前に迫っている。


「!?ジャッ……ロァァ!?」

「シフォンっ!」


チャオブーが「ころがる」攻撃を仕掛けてきていたのだ。
ニトロチャージの効果と体型を生かしたスピードによる体当たりによって、シフォンは回避しきれずに弾き飛ばされてしまう。
宙に浮いた緑色の身体が滲み、色を形を失くしていく。
そうして、アスファルトに着地したのは、ふさふさの赤と黒の毛を持つ、小さな化け狐だった。


「なるほど、ゾロアか。特性と使える技とを照らし合わせれば、わかることだったはずなのに……。」


そう、シフォン――ゾロア――の特性は 『イリュージョン』といって、バトルの際に自分の手持ちの一番最後のポケモンに姿を変えて、相手を惑わすという特殊なもの。

変化したポケモンの技が使えるというわけでなくて、あくまでもステータスはそのままだから、バトル相手はもちろん自分の手持ちとの相性バランスを考えれば、面白いバトルが出来るのだろう。
といっても今の私だとこうした一瞬のだまし討ちにしか扱えないけれど。
それにシフォンの特性自体、生かしたのはこれがハジメテだった。
さらに言えば、今回は相手を"だます"ためだったから興味を持ってくれて指示も聞いてくれたみたいだけれど、普段からシフォンは言うことを聞いてくれないから使いどころが本当に難しそう。


「ゾロアのことは知っていたのね。相変わらずの勉強家ね、チェレン。」

「けれど、実戦に生かせないなら無用の長物だよ。これは、ぼくのトレーナーとしての実力の落ち度だ。」


はっきりとチェレンがそう言い切ったことに驚いた。
眉間に皺を寄せて、語尾を強めた物言いはどこか吐き捨てるようにも聞こえてしまうくらい、悔しそうだったのだ。
"何か"が彼の胸の内に巣食っているのだと感じずにはいられなくて、チェレン、と名前を呼ぶけれど……今はバトル中、チャオブーの攻撃がシフォンに迫っていた。


「……!シフォン、もう一度あくのはどうよ!」

「……ロァっ。」

「!シフォンっ、」


つっぱりを食らわせようと接近したチャオブーをひょいひょいとかわしていくシフォン。
身のこなしの軽やかさに危なげは感じられないけれど、一向に私の指示通りに技を放つ気配がない。

……まただわ……。

さっきまでは相手をだましていたから生き生きとしていた分、正体がバレてしまった後だともう騙し甲斐もなくなり、つまらなくて仕方がないとばかりの態度だ。
一気に機嫌を損ねてしまった。
こうなったらきっと何を言っても聞いてくれないわね……。
残念だけれど、シフォンの出番はここまでだわ。

戻って、とボールを向ければ、飛び出す赤い光に大人しく包まれて、中に吸い込まれる。
戻る前からもう地面に座り込んで、そっぽを向いてあくびをしている始末だもの。
先が思いやられて、ため息を吐き出した。


「なんだか難儀しているみたいたね。」

「そうなの……。もう大変。気を取り直すわ。――――ワッフル、おねがい!」


「ゼブゼブゥ~!」


ゼブライカのワッフルがモンスターボールから顕現したことを確認して、チェレンがメガネを軽く押し上げる。
進化していたんだね、と呟く彼に向って頷けば、ワッフルがゼブ~~!と前脚を振り上げて、いなないた。
それに触発されたチャオブーが自分もすごいんだぞ!と言いたげに、鼻息荒く太い腕を持ち上げて力こぶを見せつける。


「そろそろ進化している頃だとは思っていたよ。だけど、ぼくのチャオブーの方が強いことを証明する!
――――ニトロチャージだ!」

「こっちもニトロチャージよ!」


炎に身を包んで、駆け出す姿は同じ。
あとはぶつかり合った後のパワー差が勝負を決める。

真っ向から互いの体当たりを食らった2匹は――互いに脚を踏ん張って、その場に留まった。
ワッフルの身体を両手で受け止めるチャオブーと、そんなチャオブーに押し留められてもなお前進しようと歯を食いしばるワッフル。


「対抗してきたね、トウカ。ぼくがチャオブーにニトロチャージを指示したのは、素早さの高いゼブライカのスピードに少しでも追い付くため。そして。」

「――――チャオォブ!!」

「自分のタイプと一致した技を使えば、ポケモンはより力を増すからだ。」


その瞬間、チャオブーが腰を落とした。
重心を据わらせたことで、押し出す威力を増したチャオブーのニトロチャージは火炎の勢いさえ増して、ワッフルを突き飛ばす。
その衝突力に一気に体勢を崩されたワッフルは、悲鳴を上げて転倒してしまった。

ワッフル、と名前を呼ぶ声に顔を上げたけれど、上からチャオブーのつっぱりによる張り手がワッフルに連続で落とされた。
進化してかくとうタイプとなったことで、身のこなしがしなやかになり、技から技への転じ方がひどく軽やか。
パワーファイターに見せかけたテクニカルなチャオブーの動きは、まさしくチェレンがエース格として育て上げた賜物だった。

……けど、負けないわ。


「進化したアナタの電撃……見せてあげて、ワッフル!でんげきは!」

「ゼーーブゥーーッ!!」


いつまでも無防備にやられるわけにはいかない。
その指示を待っていたとばかりにゼブラ模様の明滅を強くさせたワッフルは、眩いばかりの電気の波をチャオブーに送り込んだ。
至近距離から放たれた電撃は、逃れる場所さえなくしてチャオブーの全身を余すことなく駆け巡る。
チャオブー!とパートナーの悲鳴にたまらず叫んだチェレンが、くっ!と舌を打つ。
油断をしていたわけじゃない。
けれど、予想を超えてワッフルの電撃がチャオブーに効いていることが悔しいのだと、その顔が物語っていた。


「反撃開始よ。――――スパーク!」

「ゼブラァ!」


起き上がり、振り上げた前脚で宙を掻いたワッフルが、全身から電気を放出しながらチャオブーに体当たる。
しかし、バチバチと空気を焦がす音を立てるそれは、真正面からぶつかったにも関わらず、チャオブーを転倒させることは叶わなかった。
チャオブーがまたしてもワッフルを両手で受け止めたからだ。
電気の名残を身体のあちこちに散りばめ、痺れて動かし難いだろう身体でワッフルの全力を食い止める。
ダメージを負って体力を減らしたことで、先程よりも押し止める表情は険しいけれど、チャオブーは一歩も引かなかった。

陽気な笑顔が印象的だった彼の必死の形相は、チェレンの「チャオブー、その調子。」という声で、より色を濃くさせる。

絶対に勝つんだ――と、迸る熱意が瞳の中に揺蕩っていた。


「チャオブー、スモッグ!そこからニトロチャージだ!」

「させないわ、ワッフル!でんげきは!」


スモックの目眩ましとほのお技の威力を増して、一気に勝負を決めに掛かったチェレンの作戦を阻止するべく、こちらもスパークの電気に別のでんき技を重ねることで威力を強める戦法に出た。
チャオブーの鼻から噴き出した黒煙を間近で食らって、ワッフルが咳き込む声が聞こえてくる。
けれど、次の瞬間には2匹を覆う黒い煙を裂くような眩い金色の輝きがバチバチと音を立てて放たれた。


「ゼブゥーーーっ!」


ワッフルのいななきがパフォーマーストリートに響き渡る。

直後、黒煙を劈いて転がり出てきたのは目を回したチャオブーだった。


「……!そんな……チャオブーっ!」

「チャォ……ォ……。」


痙攣する身体の節々に走る電気を見て、チェレンのメガネの奥の瞳がハッと揺らぐ。
――――スパークが持つ追加効果、相手をマヒさせるそれにより、チャオブーは身体が痺れて動けなかったのだ。
だからニトロチャージに移れなかった。
そうする前にワッフルがチャオブーに押し勝ち、彼を戦闘不能へと追いやったのだと、そう理解する。


「……まだ、ぼくはやれる。――――ヤナップ、まかせたよ!」

「ナプ!」

「ワッフル、このままおねがい。」

「ゼブゥ!」


しばらくチャオブーを戻したモンスターボールを見つめていたチェレンは、視線を外すと同時に手早く次のポケモン――ヤナップを繰り出してくる。
声のトーンがさっきまでより勢いを落としているのは、チャオブーを倒されたことが彼の中でよっぽどショックだったのかもしれない。

――――「ぼくらは」ではなく「ぼくは」と言ったことだけが、妙に引っかかったけれど、それもすぐに展開がバトルに移行したことで頭の片隅へと追いやられた。

私が交代をしないことを告げると、ワッフルはまかせろ!というように気合十分にいななき、ヤナップは愛らしい大きな目をキッ!とつり上げてバトルの構えを作る。
先に動いたのは、ヤナップの方。


「やどりぎのタネだ!」

「ナァープ!」


前回のバトルと同じく、頭の房から取り出したタネを狙いを定めてワッフルに向かって投げつけてくる。
けれど、こちらはそれをニトロチャージで焼き切った。
勢いをころさないまま火炎に身を包んでヤナップに向かえば、チェレンはヤナップに「タネばくだん」の指示を出した。


「ナプゥ!」

「ゼブっ!?」


やどりぎのタネよりも2回りは大きなタネは見るからに硬質な殻に覆われており、ヤナップはそれをワッフルに目掛けるんじゃなく、ワッフルが駆ける地面に向けて投げつけた。
ガツン、と石を思いきりぶつけたような音がアスファルトにぶつかって響いたと思ったら、直後、タネは鋭利な角度でバウンドしてワッフルの顎下にぶつかった。

思わぬところから来た重たく、激しい衝撃にワッフルの首が仰け反る。


「今だ、みだれひっかき!」

「ナプ!」


小さな手に生えた爪の連続攻撃。
ワッフルが脚をふらつかせるうちに懐へ入り込み、反撃が来る前にすかさず距離を取る。
接近しすぎず、けれど、的確にダメージを与えてくる戦法は素早さの高いヤナップならではだと感じられた。

だけど、チェレン。残念ね。


「ワッフル、でんげきは!」

「ゼブ……!」


タネばくだんで一瞬飛んでいた意識を戻し、しっかりと四ツ足でアスファルトを踏みしめたワッフルは、ぶるるっと鼻を鳴らして放出した電撃を波立たせる。
回避不能の技なら防御するしかないヤナップは、その場に留まるを得なかった。
前回は砂漠という土地を利用して、砂に潜って電気をやり過ごしたけれど、今回は受けざるを得ないのだ。
それに技を相殺できる技も持ち合わせてはいないみたい。


「タネばくだんっ!」

「ニトロチャージ!」


私がニトロチャージを指示することをわかっていて、私よりも先に技を叫んだチェレン。
判断の差はアナタの勝ちね。
でも、ポケモンの素早さはこれまで積んだニトロチャージの効果によって、ワッフルが圧倒的に勝っているから。

ヤナップがタネばくだんを放つ前にワッフルのニトロチャージによる体当たりが決まる。

それは同時にヤナップの戦闘不能を意味していた。


「…………、」


チェレンは一瞬、目を見開くと、険しさを湛えて瞳を伏せる。
そんな自分を落ち着けようと中指でメガネを早々に押し上げて、次がラストになるモンスターボールを取り出した。

その一連の動作も表情もどこか焦っているようで、負けそうなこの現実を受け入れがたいというようにも見えてしまう。

チェレンに残されているのは、手負いのハトーボー。
そして、こちらも手負いとはいえ、今バトルに出ているのは、でんきタイプのワッフル。
もしもチェレンがワッフルを下せば、こちらに残されているのは言うことを聞かないシフォンと、ひこうタイプのハトーボーとは相性が悪い、くさタイプのミルフィーユ。
まだ勝負はわからない。


けれど。



「ゼブゥーーっ!」



「ハトォっ……!?」



ワッフルの電撃は、容赦なくハトーボーを射抜き、体力を根こそぎ奪ってしまう。
みきりででんげきはを回避しても、次に技を放てば同じだった。
はねやすめで、ひこうタイプを失くして回復しても結局はでんげきはから逃れられはしない。
もともとシャルロットとのバトルで体力も削られていた状態でのスタートだったんだもの。
「いっておくけど、まだ終わってないよ!」――――ハトーボーを繰り出したとき、彼はそう自分自身に言うように勇み立てていた。
ハトーボーも懸命にチェレンの指示に従って戦った。

けれど――――結果は、こちらの勝利に終わったわ。


「……!相変わらず、強い!」


倒れたハトーボーの向こう側から聞こえた言葉の語尾は強い。
噛みしめるように、詰めていた息を吐き出すように、空気を震わせた彼の声は一見私を称えているようで、そうではないから喜べない。
私の強さを口にして、その実、彼は自分が私よりも劣っていたのだと突きつけているように聞こえてしまったのだ。

だからかな……勝ったのに、なぜだかどこか胸の内が重たい気がした。


「……どうして?どうして、きみに勝てない?」


ハトーボーを戻したモンスターボールを握りしめる彼の正確な表情は、うつむいていてわからない。

きっと本気で勝ちたかったんだろう。
否、今だけじゃない。ずっとずっと、彼は私に勝ちたかった。
でも、今回も勝ったのは私。
その理由に対して、どうして?と尋ねらたって……そんなの、わからないわ……。
ただ、負けないようにみんなとがんばった――ただ、それだけだったから。
同時に、どうしていつもチェレンとバトルをしたら私が勝ってしまうのか、考えたこともなかった。
チェレンだって強いのは確か。だから私は、彼とのバトルは苦戦ばかりだわ。
でも、それでも私が勝てるのは……それは……。



――――『きみはいつでもそうやって、ぼくがバトルを挑めば澄ましているよね。まるでぼくなんて眼中にないみたいだ。
本当はポケモンバトルの強さに関してだって、それほど興味がないんじゃないのか?』



――――「強さ」も「勝利」もこだわりがないし、自分でもよくわかっていない。
ライモンシティでベルにもそう言ってしまった私は、改めて自分自身のことに首を傾げた。

ただ、なんとなくそうした方がいいから、ジムバッジを集めているの?

そこに何の目的も、求めるものがなくてもいいの?


ポケモンたちとただ一緒にいたいだけで、本当にいいの?


「チェレン、あの……、」


チェレンから言われた言葉の重たさが今になってじわじわと身に染みてきて、こわくなった。
前まではっきりとそうだと言えたはずの言葉を紡ぐことが、なんだか無性に重苦しい。


わからないわ。


ねえ、私だって……、



「あなたたち、友達同士なんだ……。」


ライモンシティ側の道からカツカツとヒール音を鳴らしてやってきたのは、ライモンジムのジムリーダー、カミツレさん。

そういえば、ジム戦後に次のポケモンジムがある町――ホドモエシティへ行くと言ったらカミツレさんがこう言っていたのだ。
「でも行けないわね、きっと。」――と。
だから、なぜかホドモエシティに行けなくなっている理由を彼女が何とかしてくれるというから、5番道路で待ち合わせをしていたのだ。
特に時間を決めて約束をしていなかったから、彼女が私たちのポケモンバトルを見ていたなんて思わなかった。

ジムに挑戦しに来た私とチェレンに関わりがあったことに対し、興味深そうな眼差しで私たちを見やると、口元に小さな弧を描く。


「いいわね。そうやってお互い競い合い、高めあうのって。」


その言葉にちらりとチェレンを見やれば、眉を潜めて、じっと口を噤んでいる。
彼からすれば、自分が負けてしまったバトルのどこがいいんだ、というところかもしれない。

私もカミツレさんの言葉に何も返せないでいると、彼女は特に気にしていないのか、クルリと軽やかに身体の向きを変えて「さ、行きましょ」と言った。
長いコードが揺れる様さえ艶めかしい彼女の後ろ姿を見ながらチェレンと一緒について歩く。
その間はずっと無言で、チェレンも私も一言も言葉を発しなかった。


道路の中央まで差し掛かったとき、パフォーマーたちの芸に夢中な人だかりから少し外れた所に立っていた一人の男性がこちらに向かって手を上げる。


「!おお!カミツレではないか!」


「……?」

「?」


カミツレさんの知り合いかしら?
壮年というよりは初老を迎えて間もない男性の声に私たちが一斉に振り向くと、赤く逆立った髪型が紅葉を連想させる男性がこちらに歩いてきていた。

声の通り、年齢の高さがうかがえる顔立ち。
民族チックな羽織を身に纏い、少し変わったサンダルを履いていて、首や腰にはやや古びたモンスターボールを連ねて下げている。
なんだか不思議な風体の男性。
それに衣服から覗く手足は年齢に反して筋肉質。
穏やかに笑っている顔の雰囲気も優しさだけではなく、隠し切れない雄々しさが滲み出ていた。

なんだか ただ者ではないような感じ……。
一体、誰なのかしら。

私たちの前までやってきた男性は、「フェスティバルはよいな!人生は楽しまねばな!」と、愉快そうにそう言った。
大きく口を開けて笑う姿が豪快で、それゆえに自然と親しみが湧く人だった。

チェレンは突然現れて、ホドモエまで道のりの足を止めるその人に訝しみを覚えているみたい――もしくは、バトルに関して虫の居所が悪いのか――じとりと男性を横目で見やり、すぐに視線をカミツレさんに戻した。
さも仕方なしに「……この人は?」と彼が尋ねると、カミツレさんは相変わらずクールに、あっけらかんとして。


「アデクさん。――――イッシュ地方のチャンピオンよ。」


「!えっ……。」

「チャンピオン!?」


何てことなさそうに告げられた男性の正体にチェレンと目を剥いた。

だって、チャンピオンだなんて……。
ポケモンリーグの頂点にいる――簡単に言ってみれば、このイッシュ地方で一番強い人だわ。

そんなすごい人が……どうして……。

同じように驚いていたはずのチェレンは、なんだかすぐに別の感情を抱いたみたいで、メガネを中指で押し上げると、きちんとチャンピオンのアデクさんと向き合う形を取って、


「どうしてチャンピオンがこんなところで遊んでいるのです?」

「!チェレン……、」


私も似たようなことを思ったけれど、それにしたって言い方がきつい。
刺々しさが丸見えなその態度は、攻撃的でさえあった。
これじゃあ、まるで八つ当たりだわ。
失礼だと咎めるつもりで名前を呼ぶけれど、問われた当の本人は特に怒りや気分を損ねた態度は見せなかった。

近くのパフォーマンスの音にかき消されそうな声もしっかりと拾い上げて、手を掛けた顎をさすりながら困ったように口元を和らげた。


「……聞こえたが、なんとも手厳しい若者だな。」


一歩間違えれば悪意とも取れてしまう物言いを甘受して、アデクさんは日に焼けた大きな手を差し出してくる。


「はじめまして、わしの名前はアデク。イッシュポケモンリーグのチャンピオンだよ。」


ちなみに遊んでいるのではなく、旅をしているのだ!とアデクさんはいったん差し出した手を腰に当てて、そう弁解をした。


「イッシュの隅々まで知ってるぞ。」


お茶目を思わせる笑みを浮かべると、改めてチェレンに手を差し出す。
チェレンはその手を見て少し沈黙すると、大人しく自分の手を伸ばした。


「……自分は、カノコタウン出身のチェレンといいます。
こちらは、トウカ。彼女も自分と同じカノコタウン出身のトレーナーです。

――――ぼくのトレーナーとしての目的はチャンピオンですけど。」


よろしく、というアイサツもなしに大胆に自分の夢を物語ったチェレン。
大胆というか……これは、ある意味一種の挑戦なのかもしれない。
チェレンの「チャンピオンになる」という言葉は、すなわち打倒アデクさんという意味だ。
となるとこれはポケモントレーナーとして、目指すものではなく越えるものへの彼なりの「よろしく」といったところかしら。

横で聞いていたカミツレさんが、面白そうに笑みを深くさせていた。

今度こそ何かしらのアクションを起こすかと思って見上げたアデクさんは笑みを絶やさず、どころかむしろ満足そうに頷いていた。
「うむ!目的をもって旅をすることはすばらしいことだ。」と、チェレンを褒める口ぶりは、大物にふさわしい器といった風格だ。

けれど、彼の"深み"はただそれだけに収まらなかった。


彼は一呼吸おいて、チェレンの目をまっすぐに見下ろして、こう問いかけた。



「――――それで、チャンピオンになってどうするつもりかね?」



その言葉は、言われたチェレンも、私も意外だった。

アデクさんは自分を追い越すという目的を持ったチェレンの"その先"を尋ねてきている。
自分の目的はあるけれど、ただそれだけじゃない。
大事なのは、目的の"その先"なんだと――彼は言っているのだ。

言われた当の本人であるチェレンは、きょとんとしてアデクさんに向けて首を傾げる。


「?……強さを求める――それ以外になにかあるのですか?一番強いトレーナー、それがチャンピオンですよね。」

「ふむう、強くなる……。強くなる、か……。それだけが目的でいいのかね?」


いや、もちろん君の考えを否定しているわけではない。
アデクさんは首を横に振って一度 言葉を区切った。
今のチェレンの考えだって間違っていないのだと前置きするための否定。

考え方も結果も感情も、決してたった一つに留まらないのだと、そう言いたいのかもしれない。


「わしは、いろんな人たちにポケモンを好きになってもらう、そのことも大事だと考えるようになってな。
――――彼女たちと遊んでみれば、少しはわかってもらえるかもな。」


ちらり、とアデクさんが視線をやった先にいるのは、二人組の子供。
幼稚園児くらいの男の子と女の子が、手を握り合ってパフォーマンスを観賞している。
カミツレさんが「あら、お孫さん?」と尋ねると、いやいやとアデクさんは笑顔で手を振って否定する。


「ここで一緒にパフォーマンスを見て仲良くなったコたちだ。」


わしの孫は、あのコたちよりもう少し大きなわんぱく坊主だぞ、と声を上げて笑いながら言うアデクさんにカミツレさんが「そうでしたね」と同意する。
カミツレさん、私たちがこの空気に打ち解けられていないから、アデクさんのお孫さんのことを知っていて、わざと聞いてくれたんだわ。

アデクさんはカミツレさんに向けていた視線をチェレンと、そして私に向けると一つ提案を持ちかけた。


「君たち2人で彼女たちとポケモン勝負をしてみないか?」


問いかけるや否や私たちの答えを待たずに、アデクさんは後ろにいる子供たちに「おーい。」と呼びかける。

無邪気に駆け寄ってきてアデクさんから事情を聞くと、その子達はやる気満々といった具合に私たちの前までやってきた。
おまけにちゃんと自己紹介までしてくれたのだから、断る理由はいつの間にかなくなってしまっていた。

トモヤくんとユウミちゃん、そう名前を教えてくれた二人が揃って私たちを爛々と見上げてくる。

チェレンはしばし沈黙して、やがてメガネを中指で押さえながらため息交じりにイエスを返した。
苛立っていた気持ちをぐっと抑え込まざるをえないくらい小さいコの無邪気さって強いのね。
私も断る理由がないから別に構わないと首を縦に振る。

私たちの了承に「よし」とアデクさんが頷いて、カミツレさんを見た。
必然的に待たせてしまうことになる彼女は、お澄まし顔で掌を上に向けて「どうぞ」とだけジェスチャーを返す。
その間に私とチェレンはお互いのポケモンを回復させる。
私はまだ無傷のコがいるけれど、彼は手持ちがみんな負傷してしまっているから薬を使わないと。

回復を済ませて、タッグバトルだからとお互いに使用するポケモンを決めて、準備OKだとチェレンがアデクさんに伝えれば、アデクさんはトモヤくんとユウミちゃんの肩に手を置いた。


「わしが見ているから大丈夫だ。君たちが思うようにやってみるんだぞ。」


言い諭すような穏やかな言葉に元気に頷いた二人が「よろしくおねがいします!」と声を揃えてぺこりとお辞儀し、私たちと対峙する。
両手でぎゅっと握られていた、まだ真新しいモンスターボールがえいっ!という掛け声と共に思いきり放り投げられた。

二人のモンスターボールから飛び出したのは、ハーデリアだ。


「いくよ、トウカ。――――レパルダス、頼んだよ。」

「ムース、おねがい。」

「レパルっ!」

「ジョフっ。」


二人のハーデリアの前に降り立ったレパルダスとムース。
トモヤくんのハーデリアは、出てきた2匹を遊び相手と思ったのか、頭を低くさせて腰を突き上げ、尻尾をぶんぶん振り始めた。
お座りしているユウミちゃんのハーデリアは、バトルがよくわかってないみたいで、首をこてんと傾けて舌を出している。

ポケモンの様子からも何となくわかるけれど、二人はポケモンバトルはハジメテみたい。
あたし、きんちょーする!と言うユウミちゃんの手をぎゅっと握って、トモヤくんがだいじょうぶ!と勇気付ける姿が、なんだかまぶしいわ。


「よーし、せんてひっしょーだ!ハーデリア、とっしん!」

「ワフウっ!」


一番最初にモーションを見せたのは、トモヤくんのハーデリア。
びし、とムースを指差して指示を出す姿は、初々しさに満ちていて、なんだかカワイイ。

指示を受けたハーデリアが前に飛び出した。
投げられたボールを必死に追いかけるような走り方で突っ込んでくるハーデリアを迎え入れる体勢でムースが構えを取っている。
けれど、そんな2匹の間へ潜り込んできた美しい斑点模様の持ち主。
チェレンの「ねこだまし」の指示を受けたレパルダスがトモヤくんのハーデリアに足音も立てずに接近して、眼前で両前脚を叩き合わせた。


「キャインッ。」


目をギュッと瞑って怯んだハーデリアが、前が見えなくなったことで急ブレーキをかけるも上手くいかず、派手に転倒してしまう。


「ぼくのハーデリアが!」

「ああっ!あたしのハーデリア、トモヤくんのハーデリアをたすけて!」

「ワンワンっ!」


ユウミちゃんの方を向いてイエスと吠えたハーデリアが追撃を仕掛ける姿勢に入ったレパルダスの横から、とっしんを炸裂させる。
その姿に、やったあ!とユウミちゃんが声を上げ、トモヤくんがすごい!と目を輝かせた。
渾身の体当たりにレパルダスがよろめくも、当たった衝撃で後ろへ跳んだハーデリアが着地に失敗して尻もちを着いた。
ヒャン!という短い悲鳴にユウミちゃんもキャッと悲鳴を上げる。


「ハーデリア、だいじょうぶ!?」

「……ワンっ!」


ユウミちゃんの心配する声に立ち上がったハーデリアが一声吠える。
大丈夫だと返すような鳴き声にユウミちゃんがトモヤくんと顔を見合わせて、笑顔を広げた。


「ぼくたち、ちゃんとポケモンバトルできてるよ!」

「うんっ!すごいっ!」


握り合った手をもっとぎゅっと握って、二人はハーデリアたちのがんばりをとても喜んでいる。
技を指示して、ポケモンが動く様子を見つめる目はまるで満天の星空のよう。
隣をちらりと見やると、チェレンは複雑そうな顔で黙ったまま二人を見つめていた。


「……なんだかやり辛いな。」

「でも、ふたりとも一生懸命だわ。なんだか素敵。」

「……そうだね。相手が誰であろうと、やることは一つだ。これはポケモンバトルなんだから。」


チェレン?もう一度彼を見ると、中指をブリッジに添えてメガネをくいと押し上げる、その横顔。
感情が纏まらない表情を真剣なものに変える瞬間を捉えて、疑問符が首をもたげた。


「レパルダス、みだれひっかき!」

「レパっ!」

「ジョフ!」

「……!ええ、ムース。ドレインパンチよ。」


駆けるレパルダスを見て、ムースが私へ振り返って鳴き声を上げる。
バトルが始まってからまだ自分だけ技の指示が出されていないことを指摘するそれにハッとして、私もようやっと技名を口にした。

向かってくる2匹にきたよ!と叫んで、トモヤくんとユウミちゃんが顔を見合わせた。


「ぼくのハーデリア、いくぞ!とっしんだーっ!」

「あたしのハーデリア、トモヤくんのハーデリアをてつだって!」

「ワフゥ!」

「ワォーン!」


迎え撃つつもりらしい、トモヤくんのハーデリアが走り出す。
ユウミちゃんのハーデリアが遠吠えを響かせると、トモヤくんのハーデリアの身体が黄色い光に縁取られた。
「てつだって」と言われたユウミちゃんのハーデリアが「てだすけ」の技を発動させたんだとチェレンが言った。

それにより、チェレンのレパルダスのみだれひっかきを真正面からの力押しで破って、レパルダスにこれまでで一番大きなダメージを与えてみせた。


「……!!」


チェレンの目が大きく見開かれた。
どくん、と脈打った彼の心臓の音が鮮明に聞こえた気がして隣を一瞥するも、様子を窺うより先にユウミちゃんの悲鳴が聞こえてきて、視線をバトルに戻す。
ムースのドレインパンチがユウミちゃんのハーデリアに迫り、ユウミちゃんも彼女のハーデリアもどうしていいかわからず、固まっている。


「ハーデリア!ユウミちゃんのハーデリアをまもって!」

「ハアッ!」


レパルダスと対面していたハーデリアがトモヤくんの指示で、急いで踵を返す。
それを追いかけようとして、レパルダスがチェレンへ振り返った。
何の指示も出さないチェレンを訝しむ視線の先で、彼はどこか遠くを見て沈黙している。

その間に全速力で戻ってきたハーデリアがユウミちゃんのハーデリアとムースの間に飛び込み、ムースのドレインパンチをその身体で受け止めた。
効果はバツグン。ムースの的確な一撃によって、トモヤくんのハーデリアは目を回してしまった。


「ハーデリア、だいじょうぶ!?」

「あ!……よーし、ならあたしたちがトモヤくんたちのぶんまでがんばる!ハーデリア、トモヤくんのハーデリアみたいに、とっしんだよ!」

「ワゥゥン!」


倒れたハーデリアとハーデリアに駆け寄るトモヤくんを見たユウミちゃんが、責任感を芽生えさせて気合いを入れる。
その意思をしっかりと汲み取ったユウミちゃんのハーデリアも顔付きを幾分も凛々しくさせて、ムースに突っ込んだ。


「ユウミちゃんとハーデリア、がんばれー!」


両腕を振り上げて声を張り上げるトモヤくん。
トモヤくんと握っていた手を胸の前で組み合わせて、ユウミちゃんも「うん!がんばるの!」と声を上げた。

二人分の声援をその身に宿したハーデリアのとっしんをムースは冷静に処理をした。
腕をクロスさせて防御して、反動を受けてわずかに身体を仰け反らせた相手の懐へと素早く潜り込み、肘鉄で突き上げる。
アスファルトを転がったハーデリアを見て、チェレンが口を開いた。


「……レパルダス、おいうちだ。」

「レパルッ!」


スキだらけの無防備なハーデリアに指示を下されたレパルダスのおいうちが炸裂したことで、勝負はついた。
舌を出して伸びてしまったハーデリアにユウミちゃんが駆け寄って、ぼさぼさになった毛を撫でながら「がんばった、がんばったね」と、とても嬉しそうに笑う。

その姿にチェレンがぴくりとこめかみを疼かせた。

ハーデリアをボールに戻したユウミちゃんの元に回復させてもらったらしいハーデリアと一緒にトモヤくんがアデクさんを連れて駆け寄り、ユウミちゃんは高揚を顔中に広げて、


「あたしのポケモン、すごくかわいかった!」


満干の想いでそう言えば、続けてトモヤくんが目をキラキラさせながらアデクさんにはしゃいで言った。


「ポケモンがぼくのいうことをきいて、たたかってくれたよ!」


その声は、負けてしまったことを感じさせないくら明るい。

アデクさんからもらった薬を「ぼくがやってあげる!」とユウミちゃんのハーデリアに使い、回復してあげるトモヤくん。
元気になったユウミちゃんのハーデリアは、トモヤくんのハーデリアと鼻と鼻をくっつき合わせて、尻尾を振り回していた。
お互いのがんばりを称えるような仕草を微笑ましく見下ろして、アデクさんはトモヤくんとユウミちゃんの頭をわしわしと豪快に撫でる。


「おまえたち!勝てなかったが、いい勝負だったな!」


ポケモンもうれしそうだったし。
そう言われたハーデリアたちが「ワン!」と2匹同時に吠えて、トモヤくんとユウミちゃんは「えへへ」とはにかんだ。
手を握るふたりにハーデリアたちがじゃれついて、なんだかその光景が陽だまりみたいにあたたかくて、キラキラしているようだった。

その様子にアデクさんが満足そうに頷いて、チェレンと向き合った。


「さて、若者よ。君のように強さを求める者がいれば、彼らのようにポケモンといっしょにいるだけで満足するものもいる。
君とわしの考えるチャンピオン像が違っていても、そういうものだと思ってくれい!」」


人によって、考え方も好みもめいめいあって、それぞれ違う。
それはまさしく十人十色、そして、違って当たり前なのだ。
誰かみたいにじゃなく、こうだと決めつけることが正しいわけじゃなく、真実はたくさんあるのだとアデクさんはきっとそう言っているんだろう。


じゃあ……私の、真実は……。


アデクさんの言葉をチェレンはずっとうつむいて聞いていた。
彼の手には、さっきまでバトルをしていたレパルダスの入ったモンスターボールが握られている。
物言わぬそれを掌に感じながら彼は何を考えているんだろう。


一通りの話が終わったころを見計らって、カミツレさんが私たちに声をかける。


「……さ、行きましょ。ホドモエの跳ね橋はもうすぐよ。」

「あ、はい。……チェレン。」


先に行ってしまったカミツレさんをこれ以上待たせたらいけないと思って、チェレンを呼ぶ。
チェレンは一度強くモンスターボールを握りしめると、アデクさんの視線から逃げるように――拒絶をするように背を向けて、うつむいていた顔を上げる。


「強いのがチャンピオン!――――それ以外の答えはないよ。」


それが……今、チェレンが出した答え。


チェレンはアデクさんの方を見向きもせずに私の横をすり抜けて行ってしまった。


「チェレン……。」


どこか切ない気持ちに駆られてチェレンの背中を見つめていると、やれやれと苦笑交じりのため息を吐いたアデクさんが私の方を向いて、「ときに、君。」と声をかけてきた。
少しびっくりしたけれど、平然を装って振り返る。
アデクさんはじっと私の顔を見下ろしてきて、何の用があるのかと首を傾げてしまう。
すると、彼は深みのある色をした目をニッと細めて、歯を見せて笑った。


「人とポケモンのように全然違う存在が、お互いを認め合って一緒にいるのはすばらしいな!」

「!……それは、」


アデクさんは、まるで悪戯でも成功させた子供みたいな笑顔を浮かべていた。





「!こっち。」


結局私が遅れて、到着した。
ホドモエシティへ続く跳ね橋。
その前で待っていたカミツレさんとチェレンの元まで駆け足で急げば、私が来たことを確認したカミツレさんが手首に付けたライブキャスターを操作する。


「――――わたしです。跳ね橋だけど、おろしてよ。あなたに挑戦したいってトレーナーがいるの。――――はい、よろしく。」


言葉の終わりと共に早々にピッと音を立てて通話は切れる。
振り返ったカミツレさんが「さ、みてて!」と、
跳ね橋を指差した。
期待を促す笑顔を不思議に思いながら言われた通り跳ね橋に注目した。

ガコン、と大きな機械の動く重たい音が立ち、二つに分かれていた跳ね橋が眠りから目覚たようにゆっくり稼働する。
太陽の光を浴びて下りていく橋は、やがてぴったりと繋がった。
そうして完成された姿を現した、壮大なホドモエの跳ね橋。
この橋の向こう側が私たちが次に目指すポケモンジムがある町――ホドモエシティだ。

跳ね橋が完全に下ろされ、通行を可能にしてくれたカミツレさんがこれでよし、と腰に手を当てて頷く。
そうして、ヘッドホンのコードを軽く指に巻きながらアイスブルーの目をこちらへ流した。


「テレビの取材があるから、わたしここで帰るわね。」

「はい。カミツレさん、忙しいのにありがとうごさいました。」

「ありがとうございます。これでホドモエジムに挑戦できます。」


カミツレさんがこうして時間を割いてくれなかったら、今も通れないままだったかもしれないもの。
お礼を言えば、いいのよ、と彼女は当然のことをしたまでだとばかりにクールに流した。


「次の街のジムリーダーはクセのあるおっさんだけど、あなたたちがんばって。」


カミツレさんはそれだけ言うと手を振りながらライモンシティへと戻っていく。
日差しを受けてより艶めく金色の髪が彼女の後姿を眩しくさせるから、つい素敵だと見惚れてしまいそうになる。

ぼうっとカミツレさんが行った方を眺めていると徐にチェレンが口を開いた。


「ぼくはトレーナーだ。強くなり、勝利することでぼくの強さを証明するよ。」


チャンピオンに対しても――――。


チェレンは迷いのない真っ直ぐな目で、静かながらも強い口調でそう宣言した。
それが正しいことなのだと信じているみたいに。

アナタにはアナタの真実がある。
アデクさんにはアデクさんの真実がある。

そのふたつは、きっと今のままだと交われない。


「……チェレン、さっきの、」

「なに?」

「…………。……なんでもないわ。」


そう、とだけチェレンは言った。
その後は、相変わらず。わき目も振らずにさっさと一人で先にホドモエシティへ向かってしまった。

広い跳ね橋の真ん中を早足で歩いていく彼の背中が、遠ざかっていく。


……チェレン、ちがうわ。
あのとき――ユウミちゃんとトモヤくんとのバトルの中で私が「素敵」だって言ったのは、ふたりがハジメテのポケモンバトルに本当に夢中だったから。
アナタはまるで一生懸命な相手だからこそ、一切手を抜かずに勝ちにいこうって、私の言葉に対してそんな風に思ったみたいだけれど――ちがう、そんなつもりで言ったんじゃないわ。
ただ……そう、もしも叶うなら、私やアナタがあのふたりみたいに楽しく真剣なポケモンバトルができたら、何かがきっと大きく変われるはずだと思うの。
でも、夢も目的も何もないこの先を進む中で、何を楽しく、何を真剣に想えばいいのかが今の私にはわからなかった。


だから私は、彼に何も言えなかった。
チェレンの焦りや苛立ちを示すために、ちょっといやな感じの物言いをさせてしまいました。
が、やっかみとか僻みとか、彼はそういうのを一番抱えている時期にいるはずなので、ましてや冒頭でのトウカに対する言葉は言い得て妙なので、彼の苛立ちの原因にトウカがいれば、これくらいはいいかなと。
大人びていても子供なので、存分に八つ当たりしましょう。
もっと言えば、自分が求めているもの(勝利や強さ)を何とも思わず手にしているトウカの態度は、手にしていて当然、みたいに映ってしまっていたらいいです。
トウカは感情表現が人より鈍いので、幼なじみさえも誤解すればいいのです。
そうすれば、お互い変わり甲斐がある。

実際、強さに対してチェレンほどよく考えていないトウカが、同じく「強さ」にこだわるムースのことでひと悶着起こすので、このままが都合がよくなりました。


次回は、ホドモエシティにてプラズマ団とのバトル回。

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