No.35 † 人世初・遊園地 †

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私はヒンメル地方での観光を堪能し、フィリアに一度戻ろうと思い、港町であるミョウジョウの町まで戻って来ていた。

アーシェ:「ん?」
サモン:「どうしたんだい?アーシェさん。」
アーシェ:「え?あぁ、いや……この町に初めて来た時は気付かなかったんだけど……」

私達の前方、町の一角にとても華やかな施設が建っていた。
高い位置に設置されているレールや、大きな観覧車。そこから聞こえてくる楽しそうな笑い声や絶叫から、そこが遊園地なのだとすぐに解った。

アーシェ:「この町には遊園地があるんだな。いいなぁ……」
サモン:「アーシェさん、遊園地に行ったことないのかい?」
アーシェ:「恥ずかしながら……小さい頃、お父さんも仕事が忙しくて連れて行ってもらった記憶が無いなぁ……この歳になるまで、遊園地に行く機会も無かったし……」
サモン:「えっと……何か、ごめん。」
アーシェ:「謝らねぇでくれ!サモンは何も悪くないんだし、幼少期は外で遊ぶより、室内で本を読んで過ごすのが好きだったんだよ。でも、今はちょっと……」
サモン:「遊びに行きたい?」
アーシェ:「……うん。フィリアに戻ったらそのうち仕事が始まるだろうし、遊べる時に遊んでおきたいな……なぁ、サモン。ちょっと付き合ってくれねぇか?」
サモン:「えっ?……いいのかな?そんなリア充みたいなことしても……」
アーシェ:「良いだろ、別に。というより、どこに抵抗意識感じてんだよ。ホラ、これから恩人さん探しで忙しくする前に、ちょっと気晴らしでもしようぜ。」
サモン:「まったく……アーシェさんは本当に、強引なんだから。」

『仕方ないね』と呆れ半分で困ったような笑みを浮かべつつも、サモンは私に付き合ってくれた。
そのお礼も兼ねて、私はサモンの分の料金を支払い、産まれて初めて遊園地という夢のような世界へ足を踏み入れた。

サモン:「それじゃ、せっかく来たんだし……まずはアレに乗ろうよ。」

そう言ってサモンが指をさした先には、大きなジェットコースターが設置されている。

アーシェ:「おいおい……おいおいおい。何だよ、あの乗る人をKILLする気満々のレールは……あんなの、人が乗るようなモンじゃねぇだろ。」
サモン:「そんなことないでしょ?ほら、先に乗ってる人達だって……」

丁度私達の頭上にあるレールを、乗客を乗せたコースターが物凄いスピードで通り過ぎていった。
それと同時に、乗客さんの悲鳴が轟音と共に少しずつ小さくなっていく。

アーシェ:「…………」
サモン:「もしかして、アーシェさん……怖い?」
アーシェ:「はぁ!?ばっ、そんなワケねぇだろ!いいぜ。その安い挑発に乗ってやる!あんなの、安全バーから手を離したうえで、両手を上げて乗ってやるよ!」
サモン:「いや、そういう危ない乗車はしない方が……でも、うん。大丈夫みたいだし……乗ろっか。」ニコッ
アーシェ:「お……おぅ……」

それから何分かの待ち時間の後、『ありがたいことに』最前列の席にサモンと座らされ……実際にはそんなことはないんだろうけど、永遠とも思えるほど長い時間を、コースターに揺られ続けていた。

~ ジェットコースター 終了後 ~

サモン:「大丈夫かい?アーシェさん。生まれたてのシキジカみたいに、足がプルプルしてるけど……」
アーシェ:「はぁ……はぁ……リバースしなくて、お漏らしもしなかった自分を……誉めてやりたい。いやぁ……自分には苦手な物なんて無いと思ってたけど、コレは駄目だわ……」
サモン:「どうする?少し休むかい?」
アーシェ:「いや……!休んでる時間がもったいない。次は、コーヒーカップとやらだ!」
サモン:「え?アーシェさんの今の状態で、それはやめておいたほうが……乗るにしても、時間を空けた方が良いと思うよ。」
アーシェ:「ん?そんなにハードな乗り物なのか?ん~……じゃあ、アレなんかどうだ?」

私は近場にあった、おどろおどろしい建物を指さす。

サモン:「あれって……お化け屋敷かい?」
アーシェ:「へぇ、お化け屋敷っていうのか。何だ?ゴーストタイプのポケモンでも居るのか?」
サモン:「まぁ、うん。居るだろうね。そういう場所だからね。」
アーシェ:「ゲットしても良いのか?」
サモン:「駄目じゃないかな?一応、この遊園地が所有しているポケモンだろうから……」
アーシェ:「それもそっか。でも、あっちこっちでフヨフヨと漂うゴーストタイプのポケモンが居る世界で、こういう施設って需要があるのかな?」
サモン:「あるんじゃないかな?ゴーストタイプのポケモンが苦手っていう人なんて、探せばそれなりに居ると思うし……」
アーシェ:「なるほど……後学のためだ。ちょっと入ってみようぜ。」
サモン:「いいよ。アーシェさんは泣かないで出ることができるのかな?」
アーシェ:「あんまり私を嘗めるなよ。ゴーストポケモンはこれまでに何匹か見てるからな。怖いことなんて、何も無いぜ!」

~ 数分後 ~

アーシェ:「くそっ!あれは反則だろ……」
サモン:「物陰からゴーストタイプのポケモンが出る度に、良い反応してたよね。『きゃあっ!』って悲鳴まで上げて……ふふっ、あれだけ驚いてもらえれば、ゴーストタイプのポケモン達も本望だろうね。」
アーシェ:「うっさい……けど、今日1日で自分の事がよく解った……私は絶叫マシーンと、いきなり驚かされるのが嫌いみたいだ。」

その後も時間が許す限りサモンと遊園地を遊びまわり、最後の締めとして私達は観覧車に乗車した。

アーシェ:「はぁー!遊んだ、遊んだ。いろいろ怖い思いもしたけど、楽しかったよ。」
サモン:「絶叫マシーンに乗る度に、お手本のようなリアクションしてたもんね。」
アーシェ:「ふふっ……忘れてくれると助かる。」
サモン:「そういえば、アーシェさんは今後どうするか決めてるのかい?」
アーシェ:「ん?あれ?サモンはあの時居たから、私と役員さんの話が聞こえてたと思ってたんだけど……実は私、フィリアでジムリーダー的な役目を勤めることになってさ。」
サモン:「えっ、そうだったんだ。おめでとう!」
アーシェ:「ありがとう。とはいっても、具体的なことはまだあんまり決まってないみてぇだし、私が担当する施設もまだ完成してないんだけどな。それでも、とりあえず1度戻って、役員さんと話し合いをしようと思う。」
サモン:「なるほど。」
アーシェ:「遊園地に入る前にも言ったけど、本格的にそのお勤めが始動しだしたら、こうやってゆっくり遊べる機会が減るだろうからな……今日、こうして遊べて楽しかった。付き合ってくれてありがとな、サモン。」
サモン:「ふふっ、どういたしまして。」

◇◇◇

遊園地を堪能し、ポケモンセンターで1夜を過ごし……私は港でフィリア行きのチケットを購入し終えた。

アーシェ:「短い間だったけど世話になったな、サモン。」
サモン:「ううん。どういたしまして。」
アーシェ:「結局私はサモンの恩人さんがどんな人か、知ることができなかったけど……お前の恩人さん探しを、異国の地から応援してるよ。ちゃんと見つかると良いな。」ニコッ
サモン:「うん。ありがと。アーシェさんも、仕事が始まったら頑張って。」
アーシェ:「おう!ありがとな。」

私とサモンは握手を交わし、手を振って別れた後、フィリア行きの船に乗り……久しぶりの故郷へ戻る船旅を楽しむことにした。

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