双子 1

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読了時間目安:12分

この作品には残酷表現があります。苦手な方は注意してください

「ハッハッハッ…」

走る。走る。走る。
ここはガラスのドームに囲まれた森。レイと初めてであった場所であり、「仕事場」と呼ばれている。

すると地に足が着いている感覚がふとなくなる。下を見ると僕の片足は真っ黒な影に飲まれている。僕は慌てて影に飲まれていない片方の足で地面を蹴り、側転をして影から出る。そこからバク転に繋いでその影から距離をとる。

「ゲンゲロゲェッ!」

影の方を見るとゲンガーが影から出てくる。そのゲンガーの目は血走っており、必死さがピリピリと伝わってくる。

「メリープ!」

僕はゲンガーの背後に向かって叫ぶ。

「メヘヘヘヘッ!」

すると木の上から気配を消していたメリープが降り、ゲンガーの背後へまわる。

「メリープ!アイアンテールッ!」

「メエェッ!」

不意打ちを打たれたゲンガーはかわせずに直撃する。

「ゲンゲッ!」

ゲンガーはコロコロと向こうへ転がる。

「メリープ!ナイス!」

「メー!」

僕はメリープとハイタッチする。

「ゲン…ゲン…」

その瞬間。辺りがピカっと光る。僕は眩しくてつい目を瞑ってしまう。すると、身体中に何かが刺さるような痛みが襲ってくる。 マジカルシャインだ…!

「痛ったいっ!」

「メェッ!」

僕もメリープも思わず声を上げる。うっすらと目を開けると目の前にゲンガーが迫ってきた。

まずいっ!

するとゲンガーの手に濃い紫のオーラが纏われる。シャドーパンチだ。そして僕の腹に直撃する。

「かはっ…」

そんなかわいた声を出した後、僕は勢いよく吹っ飛び、木に体がぶつかる。
くふっ… とまたもやかわいた声が溢れ出る。

体中が痛い…けれど、立ち上がらなきゃ死ぬ…!

僕はかすれかけている視界を頼りに立ち上がり、メリープとゲンガーが交戦している所へと行こうとする。
けれど、直ぐに体が倒れてしまう。僕はポッケに入れていた昨日のご飯であるオボンの身を食べる。
まずい。生臭くて腐敗している味がする。それでも食べる。飲み込む。すると体が軽く感じる。
最近分かったことだが、オボンの実やオレンの実等ポケモンを回復してくれる木の実は人間にも効果があるようだ。
僕はそのままメリープとゲンガーの元へ向かう。

僕は走り、そのスピードに任せ側転を続けスピードを更に上げる。そのスピードと体重を乗せれる体制になり、ゲンガーへと蹴りを入れる。

ゲンガーが少しこちらを見たかと思うと…
 スッ と、僕の足がゲンガーの体を貫通した。いや、貫通じゃない。これは透けてるんだ。
そうか、ゲンガーはゴーストタイプだからこうやって単純な攻撃は透けてしまうんだ…

僕はそれに気づくが、受け身の体制を取れずに地面へと転がってしまう。

「うっ…」

「メェッ!」

するとメリープが心配してか僕の方へ来てくれる。
メリープもかなり体力が減っているようだ。
元々メリープはアイアンテールとエレキボールしかゲンガーに攻撃出来る手段が無い。

僕はもう動けない。だからメリープへ指示をすることしか出来ない。
元々、人間がポケモンバトルに参加すること自体が無謀なのだ。
そう嘆きつつ、僕達はゲンガーと睨み合う。

先に動きだしたのはゲンガーだ。ゲンガーはシャドーパンチを繰り出した。

「メリープ!かわして!」

「メヘッ!」

メリープはジャンプしてシャドーパンチをかわす。しかし、そのシャドーパンチの勢いは止まらず、僕の方へ向かってくる。

そうだ…僕が指示側に回っても攻撃される側には変わりない。

ゲンガーのシャドーパンチが迫ってくる。それがスローモーションに見え、相対的に僕の鼓動が早鐘を打つ。

やられる…!

「はい不合格〜」

すると上からゲッコウガが水手裏剣を持ってゲンガーの脳天に直撃させる。ゲンガーが吹っ飛び、それに追い打ちとして何回も水手裏剣でゲンガーを殴る。すると、ゲンガーの体から紫色の煙がでて、シュウッという音とともにゲンガーは消えた。
ゲンガーは…こうやって死ぬんだ…
さっきまで生死を分けた戦いをしていた相手が呆気なく亡くなることへのショックと安心感が襲う。

「うん。身体能力は上がってるけどまだまだだね。指示を出す側に回る時はもっと体力が残ってる時にするべきだったね」

レイはいつもの微笑みを絶やさずに僕に言う。
僕は少しむっとしながらも、その通りだと肩を落とす。仕方がないじゃないか。自分の生死をかけてがむしゃらに戦うんだもの。レイのように余裕な態度は出来ない。

「ゲッコウガはメリープおねがいね」

そういうとレイは僕をお姫様抱っこする。
うん。毎日こうやって僕達の特訓してくれてるのはいいんだけど、毎回これは恥ずかしいかな…

ーーーーーーーーー
大きくて白い岩が重なり合ってる場所。
ここには何故かポケモンも、人も来ない。
岩と岩の間。人が余裕で通れるほどの間にレイは入る。その中は葉の絨毯が引いてあり、そこには木鉢や石、枝など、原始的な道具が地面に置いてある。

その奥にある藁の山に寝かせられる。
身体中が痛く、ジンジンする。僕は少し唸る。

「それにしても、成長具合は早い方じゃない?」

レイが木の実や薬草をすり鉢ですりながら話す。
僕が直接メリープとポケモンと戦うようになった理由。それは僕がこの施設に来た頃に遡る。

ーーーーーーーーー
「シュウ。特訓をしないか?」

仕事終わりの食堂にて、最近質問することが無くなってきて困っていた頃。レイが不意に口を開く。

「と、特訓って…」

「シュウは俺に助けられるばかりだろう?少し負い目を感じてるんじゃないか?」

図星だった。しかし、何も出来ないのは事実のため、何も言えなかった。

「うん。出来るなら…お願いしたい。」

僕は強い決意でレイにお願いした。

ーーーーーーーーーーーー
ということがあり、毎日ポケモンの相手をしているのだがポケモン1匹が限界だ。ここの人達はレイのような助け無しで毎日ポケモンと戦っているのか… そう思うと施設の人達の人間離れした能力がしみじみと分かる。

「ほら、飲んで」

レイがすり鉢を差し出してくる。その中には緑色の液体が入っており、僕は少し躊躇いながらそれを飲む。すると体が軽くなってく。

「じゃあ、俺は仕事してくるからそこで大人しくしてるんだよ。」

と。レイは去っていった。仕事が終わる時間になるとレイが戻ってきて帰るのだ。

それが、僕の新しい日常になっていた。

ーーーーーーーーーーーー

ここに来て何ヶ月だろう。カレンダーがないからどれぐらいの月日がたったか分からない。

「そろそろランキング期間だねぇ」

食事中。レイが不意に言う。
ランキング…?

「ランキングっていうのはね。たまに行われる個人の成績まとめの日かな。その時に上位10名の名前がでて、それぞれ報酬が貰えるんだ。」

僕の顔に出ていたのだろうか。レイが答えてくれる。
上位10名は報酬が貰える…てことは、もしかしたら脱走に役立つアイテムとか貰えたりするかも...!

「その、上位10名に入るにはどうしたらいいの?」

「んー…今のシュウには無理だね。」

と、レイに涼しい微笑みでそう言われた。

「へ?」

「ここの奴隷数は1万を超える。その中から新入りが上位10名になるのは普通に考えて無理だ。」

「うっ...」

その通り過ぎて何も言えない。ということは何の物資も無しに脱走することになるから、かなり厳しくなる...

「なんとか、なんとか上位10名になる方法はない?」

レイは僕がそういうと思っていたのだろうか...いや、確信していたようにニヤリと笑う。

「方法は無くはない。」

「何!」

僕は食い気味にその話に食いつく。

「俺のハードモードな特訓についていくことかな。」


レイのハードモードな特訓...
今でもかなりスパルタな訓練をされている。命を失いかけるほどは。それ以上のハードモードな特訓をしなければならないとなると、それこそ命が危うい。それで死んで脱走出来なかったら本末転倒だ。

...でも、方法があるならやってみたい、挑戦してみたい。尚且つ、楽しそうだ。

こんなハイリスクハイリターンな事、前の僕なら避けていただろう。しかし、地獄なような...いや、地獄を見てきた僕は、ローリスクハイターンで上手くいくことは無いことを知った。『脱走』という大きすぎる獲物はハイリスクハイリターンでないと奪い取れない。それに、これに対してワクワクしている自分がいる。

「やるよ。その特訓」

ただ僕は好奇心でその言葉を口にした。待ってましたと言うように、レイは微笑む。

「そうでなくっちゃ」

でもその微笑みはいつもとは違う、不敵な笑みだった。

ーーーーーーーーーーーー

次の日。また仕事が始まり、ガラスのドームへと放り込まれる。

「シュウ問題だ。毎日俺らが捌くために放り込まれるポケモンの数は?」

え、急にそんなこと聞かれても...

「1万体ぐらい... ?」

僕は内心焦りながらも答える。ここの奴隷の数が1万人なら、捌くポケモンの数も同じぐらいじゃないのだろうか。

「正解は100万体だ。」

「100...万...」

僕の想像していた100倍のポケモンが、このドームの中をうろついていることを知る。
てことは、少なくとも101万の人間とポケモン。いや、人間が連れているパートナーのポケモン含むと、とんでもない数がこのドームにいることになる。そうなると、このドームも、寝泊まりしている屋敷も、全部合わせて1つの大きな街ぐらいの大きさってことになる。
そんな大きな施設なのに、何故「表」では認知されていないんだろう...
いや、僕が知らないだけで本当は認知されているものなのか?

空を見上げるといつもと同じ曇りで、太陽の光は少ししか入ってきていない。

謎が謎を呼ぶこの施設だが、今はそれよりランキングだ。

「てことはだ。1人100のポケモンを狩る事が想定されているんだ。」

レイが話を続ける。
1人...100体...
一日で僕は一体を捌くのが限界だ。

「そんなこと...出来やしないよ...」

「出来るんだよそれが」

信じられない。てことはだ。ここの施設にいる奴隷は皆バケモノってことじゃないか...

「まあ、大半のやつは1人5、6体ぐらいだ。チームを組んで行っている奴らも一日に多くて50体。そんな絶望する必要は無いよ。」

大ありだよ。それでも平均1人、5、6体は捌いてるなんて、僕がランキングに入るなんて絶望的じゃないか。
あれ、でもここで疑問が湧いてくる。

「それじゃぁ、結構なポケモンがあまらない?」

1人5、6体。チームで50を捌いてるとしても1人100体のノルマには程遠い。
そしたらポケモンで溢れかえるんじゃ無いのだろうか。

「んー。ポケモンの中にも食物連鎖の関係で強いポケモンに食われるポケモンもいる訳だから、100万体放り込まれても、100万体を倒す必要は無いんだよ。」

なるほど。だから強いポケモンばかりが相手になるのか。

「それでも、1人のノルマには程遠いのは事実だ。そのポケモン達は。俺らの様な強い奴が捌いてる。」

「え、レイは一日何体捌いてるの...?」

「俺は大体一日900体前後かな。多い時はもっと捌いてる。」

僕は絶句した。1人ノルマの約9倍目の前にいるレイは軽々こなしているのだ。

「まあ、俺一応3柱だし、リーダー除いたら1番強いからね。」

リーダーも...そんなに強いのか。3柱も...
僕がランキング入りをする。そんな未来を厚く重い大きな壁が塞いできた。

「大丈夫大丈夫。今から特訓したら、ランキング10にはギリギリ入れる。」

そうだ。ひたむきになったらダメだ!ランキング入りをして、脱走するアイテムを手に入れるんだ!
絶望してたら脱走の前にここで野垂れ死にしてしまう!

「いい顔になったね。じゃあこれからの特訓について話すよ。と言っても内容はシンプルだ。」

どんな辛い特訓でもドンと来い!

「俺と一緒にポケモンを一日500体狩ってもらう。」

「へ?」

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