第5話 『目標はいつだって高く!』

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この作品には残酷表現があります。苦手な方は注意してください

ついにジムリーダー『ツツジ』を倒したハルカ。
初めてのジムバッジ取得にハルカは叫ぶ。
ジム戦の後、ハルカはツツジ、リンカと最後の食事を採った。
これからの進路を決め、ハルカはカナズミジムを出る。
その瞬間、ふたりの男がハルカの前を通り過ぎる、それはトウカの森で出会った、妙な男と盗賊だった。

妙な男は『デボンコーポレーション』の社員で、何やら重要な荷物を盗まれてしまったらしい。
仕方無く、その荷物を追いかけるハルカ。
途中、キャモメを攫われて泣き叫ぶ老人を見て、ハルカは盗賊への怒りに燃える。

行き止まりの洞窟で盗賊を追い詰めるハルカ。
盗賊はポチエナを繰り出し、応戦しようとするがハルカのキャモメによってあっさりと撃退される。
こうして、無事にデボンの荷物とキャモメの『ピーコちゃん』を取り返すハルカ
ハルカは『ハギ』と言う老人にピーコちゃんを返し、帰路に着くのであった…
ポケットモンスター ルビー 『ハルカジェネレーション』



第5話 『目標はいつだって高く!』






現在位置は116番道路側出口…
時刻はまだ昼時だが、かなり気分は鬱。


ハルカ
「はぁ…何でこんなに疲れてるんだろ?」


まずは深いため息…まだまだ若いって言うのに、自分でも不安になっていた。
私は右手に持っている鞄を見て、ただ項垂れる。


ハルカ
「ぶっちゃけ、何でこんなことしてるんだろ私?」

ジグザグマ
「ジグ…?」


いつもの様に外に出していたジグザグマが首を傾げる。
いや、この娘に説明しても解らないでしょ…と私は内心ツッコミを入れた。
そんな事を考えながらカナズミシティの前に着くと、すぐに私に向けて声が聞こえる。


デボンの馬鹿社員
「あ~その荷物は…良かった無事だったんだね!」

ハルカ
「……」


何か引っ掛かる言い方をしてくれる。
私が無事なのが嬉しいのか、荷物が嬉しいのか…?
多分後者だろうけど…私に限ってそんなミスするとも思われないだろうし。
そして、以前にこの人の目の前で胴回し回転蹴りを披露したのが脳裏によぎった。
今更だけど、私ロクな死に方しないでしょうね…


デボンの馬鹿社員
「本当にありがとう! えっと、この前は急ぎでお礼出来なかったけど、これをあげちゃおう!」

ハルカ
「? モンスターボール?」


が、通常の物とは少し違った。
色は青色で、見た事の無いタイプだ。
私はそれを両手で受け取る…しかも2個。


デボンの馬鹿社員
「あれ、もしかして見た事なかった? それは『スーパーボール』って言って、『モンスターボール』よりも捕まえやすいボールなんだよ」
「進化系とかなると、通常のモンスターボールでは捕まえにくいから、そういうのに使うと良いと思うよ♪」

ハルカ
「へぇ…あ、それってコレとどっちが強いんですか?」


私はバッグから、ジグザグマが拾ってきたボールを社員に見せる。
社員はそれを見ると、ギョッと驚く。


デボンの馬鹿社員
「わっ! これは『ハイパーボール』だよ!? 『スーパーボール』よりも更に強力な奴だよ…この辺りには売ってないのによく手に入ったね~」


成る程、この辺りでは手に入らないらしい…どこまでレアなのよ?
ジグザグマの特性恐るべし。


ジグザグマ
「ジグジグ…?」

デボンの馬鹿社員
「ああ…成る程、ジグザグマが拾ってきたんだね?」


社員は意外にも気付く。
結構鋭いじゃない…それでどうしてあんなにトロイかな。


ハルカ
「ええ…そうなんですよ、色々拾って来てくれるんですけど、意味の解らない物も多くて」

デボンの馬鹿社員
「じゃあ、良かったら見せてみてよ? 僕が説明してあげるから♪」

ハルカ
「本当ですか? それは助かります!」


正直嬉しかった。
私ってばこういう知識が無いから、ひとつひとつ覚えていかないと大変だしね。
私は心の中でこの人のランクをアップさせた。
そしてまず、1番使い道の解らない金色の玉を取り出す。


デボンのトロ社員
「それは文字通り『きんのたま』だね…いわゆる換金用のアイテムさ」

ハルカ
「へぇ…それっていくら位になるんですか?」

私はそれを見ながら聞く。
大きさは大粒の飴玉くらいで、さすがにそこまで価値があるとは思えないけど…

デボンのトロ社員
「そうだね、ひとつで5000円位にはなるよ」

ハルカ
「5000円ーーー!?」


流石にそれはかなり驚く。
腐っても金ね!!
私は次に、この前アチャモに食べさせた飴を見せた。
コレを食べた後に進化したと言う、正に不思議な飴。


デボンのトロ社員
「お、これは『ふしぎなアメ』だね」


って、そのままかい!
…何て言うか、特別な名称が有るわけじゃないのね。


デボンのトロ社員
「実は、この飴自体がどこで生産されているのか解らないんだよね…だから特に商品名とかも無くて」

ハルカ
「はぁ…で、結局効果は?」

デボンのトロ社員
「凄いよ? 何とポケモンに食べさせるとレベルが上がるんだ!」

ハルカ
「は…?」

デボンのトロ社員
「えっと…まぁ解り難いかもしれないけど、単純にポケモンが強くなるとか、成長するとか思えば良い」

ハルカ
「グ○コみたいな物ですか?」

デボンのトロ社員
「そ、そうだね…一粒1レベルってとこ」


何とも微妙な値だ。
実際にはそれ程効果がある物なのだろうか?


デボンのトロ社員
「でも、あまり多用はしないほうが良いと思う、やっぱりちゃんと努力して成長した方がポケモンは強くなるから」

ハルカ
「そうですか…気を付けます」


なるほど、楽して強くなるのにデメリットが無いわけ無いもんね。
私は次に最初の頃ジグザグマが拾って来た薬を見せる。
瀕死のアチャモを助けた凄い薬らしい。


デボンのトロ社員
「うん…これは『げんきのかけら』だね」
「これもこの辺りでは売ってないんだ…効果も凄いよ、『ひんし』のポケモンを再び戦わせる事が出来る位」

ハルカ
「あ、やっぱり凄いんだ…」


これで納得、アチャモが助かったのは必然らしい。
その調子で私は意味の解らない薬を更に4つ程出す。
社員はひとつひとつ眼を通して説明してくれた。


デボンのトロ社員
「えっと、左から順に…まずこれは『かいふくのくすり』、『ひんし』でなければどんなポケモンでも全快する最高級の薬だ」
「そしてその隣が『なんでもなおし』…やけど、こおり、ねむり、どく、こんらん、体力以外ならほぼ何でも治してくれるよ」
「次は『タウリン』だね、ポケモンに使うとちょっと力が強くなる…と言っても、栄養剤みたいな物だから安心して使ってね?」
「最後は『ポイントアップ』…非売品って言われてるからちょっと効果が曖昧だけど、どうも『パワーポイント』を増やす効果があるみたい」

ハルカ
「…??」


最後のは意味が解らなかった。
パワーポイントって何?


デボンのトロ社員
「えっとね…ポケモンには技を出す時に、ある力を使っているって言われているんだ」
「それが『パワーポイント』…一般的には『PP』って呼ばれてて、『ポイントアップ』は文字通りそれを上げる効果があるんだ」
「と言っても、実際どれ位上がるかよく解らないし、ポケモンの体調や能力によって全然差が違うみたいだからそこは何とも…」

ハルカ
「デメリットは有るんですか?」

デボンのトロ社員
「とりあえずは無いかな…まぁ、レアな道具を失ったって言うのはある意味デメリットかもね」

とりあえず、これで一通り聞き終わる。
結構長かったわね。
私は道具を全てバッグに仕舞った。
そして、社員に一礼する。

ハルカ
「どうもすみませんでした、忙しい所に」

デボンのトロ社員
「いやいや、役に立てて嬉しいよ…本当にお世話になったし」
「あ! そうだ、もし良かったら会社の方に来てよ? 折角だから社長に会って欲しいんだ♪」

ハルカ
「は、はぁ…」


社長とまで言われては流石に断るのも躊躇われるわね。
ってな訳で、まだもう少しカナズミに滞在しそうであった…



………………………



デボンのトロ社員
「到着! さぁ遠慮無く入ってよ♪」


社員はそう言って先に中に入って行く。
私は会社のビルを見て思わず感心していた。


ハルカ
(へぇ、ここがデボンコーポレーションの本社…)


入り口付近に配置されている大理石の石柱にも、大きくそう彫られてある。
とりあえず、私も中に入ってみた。
ちなみにジグザグマは流石にボールに戻しておく。


ハルカ
「……」


中に入ると、まず空気が違った。
会社独特の空気清浄機が、外とは違う事を如実に教えてくれる。
そして、入ってすぐの所にスーツに身を包んだ受付嬢がまず礼をした。


受付嬢
「ようこそ『デボンコーポレーション』へ」

ハルカ
「あ、どうも…」


流石は一流企業の社員…
思わず頭が下がるってこういう事を言うのね。


デボンのトロ社員
「さぁ、こっちこっち」


社員は手招きして階段の方に向かう…どうやら上の方にいる様ね。
そのまま3階まで着いた所で、社員はとある部屋の前で止まった。


デボンのトロ社員
「…ちょっと待っててね?」


私は無言で頷く。
そこは、ある部屋の前だ。
社員はノックをしてから許可を貰い、改めて中に入る。
扉はまさに高級感溢れ、ネームプレートにはこう書いてあった。


『社長室』


ハルカ
(社長ねぇ…本当に会わせる気なのかしら?)


少なくとも、名も知らぬパンピー相手に一流企業の社長様がわざわざ会うだろうか?
そんな不安がよぎるも、すぐに社員がドアを開けて私を手招きした。

デボンのトロ社員
「さぁさぁ、入って入って!」

ハルカ
「は、はぁ…」


軽すぎるでしょいくら何でも!? 仮にも社長室なのに…
とはいえ、流石に礼儀を弁えながら私は部屋へと入って行った。


ハルカ
「……」


中は結構広く、会議室にある様な大きい長方形テーブルが中央に配置されている。
壁際には大事そうなケースに入れてある石もあった。
飾られているって事は凄い石なんだでしょ…多分。
そんな風に部屋の中を見渡していると、やがて私は社長のテーブルの前に立つ。
そこで、思わず社長と目が合った。
その男性は細目であり、とても威厳のある顔。
初老…と言うにはまだ若すぎる顔付きで、まだまだ現役と言った感じの若さは感じられる。
流石の私も少しだけ緊張してしまった…


社長
「成る程…君が例の荷物を取り返してくれたというハルカちゃんかな?」


やや低音と言った声で、そう優しく語り掛けてくる。
これはかなりのダンディーね。


ハルカ
「…どうも、お初お目にかかります」
「私、ミシロタウンからやって参りましたハルカと申します」
「お会い出来て光栄です、ツワブキ社長」


私は知りうる限りの丁寧さで、まさしく教科書通りの自己紹介をする。
すると、社長は驚いた様に私を見た。


ツワブキ
「…私の事は知っていたのかい? 少し意外だったよ」

ハルカ
「こちらでは有名な方ですし、TVでもお姿を拝見した事が有りますので…」


と言っても偶然だけど…まぁ、それを一々気にする事も無いでしょ。
私が当然の様にそう言うと、社長はやや照れくさそうにした。


ツワブキ
「そうか…まぁ、とりあえずそれは置いておこう」
「今回わざわざ君に来て貰ったのは、どうしても君に頼みたい事があってなんだ…」

ハルカ
「私に頼み…? その内容は?」


私が?を浮かべてそう言うと、社長は少々困った顔をしてこう語りだす。
何やら厄介事でもあったのかしら?


ツワブキ
「ふむ…実はこの荷物を、カイナシティにいる『クスノキ』と言う男に届けてほしいんだ」

ハルカ
「成る程…護衛も兼ねて、という事ですか?」

ツワブキ
「うむ、今回の事もあるので出来れば安全に届けたい」
「今回マグマ団が関わっていると解った以上、ポケモントレーナーに頼むのが最適だと思ってな」

ハルカ
「マグマ団…?」


初めて聞く名前ね…何かの組織っぽいけど。
そんな風に私が疑問を浮かべていると、更に社長は続ける。


ツワブキ
「…最近、特に活発に動いている集団だ」
「君も何回か見ていると思うが、赤い装束に見を包んだ連中さ」


私はそこであのコスプレ野郎を思い浮かべる。
きっと間違いないわね…あいつらマグマ団って言うんだ。


ツワブキ
「マグマ団の目的は詳細が解っていない…ただ言える事は、今回この荷物を確実に狙っていると言う事」
「こんな事を本来子供の君に頼むのは、正直社会を代表する大人として最低だとは思う…だが、相手も逆に子供が持っているとも思い難いはずだ」
「勿論強制はしない、あくまで君の判断で引き受けてくれ」
「引き受けてくれるならば、カイナシティへ道はこちらで用意させて貰おう」

ハルカ
「…カイナシティ、か」


私は少し考える…ぶっちゃけ他に進む道が無い以上、これは良い機会だ。
道まで用意してくれるって言うなら願ったり叶ったりだしね♪
ギブ&テイク…そう考えて私は心の中で納得する。
そして笑みを浮かべて私はこう答えた。


ハルカ
「でしたら、引き受けさせていただきます」
「私もカイナシティに行けるなら助かりますし♪」

ツワブキ
「すまない…本当に助かるよ」
「カイナシティまでの道のりは、トウカシティの西に居を構えているはずの『ハギ』と言う男に頼むと良い」
「私からの紹介状を渡すので、それを見せれば船を出してくれるだろう」

ハルカ
「はい、かしこまりました」


確か『ハギ』って、この前助けた老人よね?
何て言うか、偶然と呼ぶには出来すぎてるわ。


ツワブキ
「それと後もうひとつ…ムロタウンに着いたら、この手紙を『ダイゴ』と言う男に渡してくれないか? 恐らくはまだ『ムロタウン』にいると思うんだが…」
「ムロタウンはカイナシティまでの途中に寄れる町だから、寄り道にはならないはずだ」


そう言って社長は手紙を2枚私に渡す。
ひとつは紹介状、もうひとつの方がそのダイゴという人への手紙だろう。
私はそれ等を慎重にバッグに入れた。
一応重要書類みたいだしね!


ハルカ
「では、確かに引き受けました」
「そういえば、期限とかそういうのは?」

ツワブキ
「それは君に任せるよ、君の時間を束縛するつもりは無いからね」
「何なら旅のついででも構わない…街に着いたら、その事を思い出してくれる位でね?」

ハルカ
「そう言ってもらえれば、気が楽になります」


私は微笑してバッグを背負い直す。
とりあえず、これでやる事が新たに出来た。
今は出来る事をひとつひとつやっていこう。
カガミとは結局会えなかったけれど、案外向こうで会えるかもしれないしね…
私がそんな事を考えて背中を向けると、社長は私を呼び止める。

ツワブキ
「待ってくれハルカちゃん! 良ければこれを持って行ってくれ!」


そう言って社長は何やら黄色の小型機械を差し出した。
それは茶色の色をした機会であり、前にリンカちゃんから借りた物と同じだ。
リンカちゃんは携帯って言ってたから、携帯電話?
って言っても、普通に売ってる携帯電話よりもかなり大きいけど…


ツワブキ
「それは『ポケナビ』と言ってね…ホウエン地方のトレーナーなら大抵は持っている物さ」

ハルカ
「って、コレ結構高価な物なんじゃ?」


私がそう言うと、ツワブキ社長は微笑みながら構わないさ♪と格好良くに言ってくれる。
うーむ、正にダンディーね!


ツワブキ
「使い方は解るかな?」

ハルカ
「あ、いえ殆ど知らないんで…」


リンカちゃんの借りた時でも結局使わなかったし。
とりあえず、通話が出来るのは知ってるけど…


ツワブキ
「それじゃあ、まずこのボタンで起動だ…すると変形してモニターが出て来る」

ハルカ
「おおっ! 無駄にハイテク!!」


私は教えられた通りのボタンを押したら、機体の上部が変形してカーナビみたいなモニターが出て来る。
これをこのサイズで仕込むなんて凄いわね~
(2003年代当時の水準でイメージしてください)


ツワブキ
「まず、この画面が『タウンマップ』の機能…自分の現在位置やホウエン地方のマップを見る事が出来る」
「これで拡大縮小も出来るので、道に迷った時は頼ると良い」

ハルカ
「流石は仮にもナビと付いてるだけありますね!」

ツワブキ
「次にこれでトレーナーアイの機能…これはトレーナー同士を繋ぐ機能だ」

ハルカ
「要するに携帯電話みたいな物ですね」

ツワブキ
「そのイメージで構わない、これで電話帳登録も出来るよ?」
「通話をするにはこう…ちょっと使いにくいかもしれないけど我慢してくれ」


そう言って少ないボタンで機能を説明してくれるツワブキ社長。
まぁ、通話とかはぶっちゃけオマケみたいな物だろうしね~
電話するだけなら携帯電話も普及してるんだし…


ツワブキ
「最後に、これでコンディションとリボン確認機能だ」
「コンディションは、ポケモンをモニターする事で大まかだがそのポケモンのコンディションを表示してくれる」
「リボン確認は、トレーナーカードとの連動で今まで取得したリボンを登録する事が出来るよ」

ハルカ
「リボンですか…それってどういった物なんですか?」


私はリボンについて聞いてみる。
まだ手に入れたことは無いし、見た事も無い。
少なくとも状態異常を防ぐ装備では無さそうだけど…


ツワブキ
「そうだね…色々有るんだけど、1番身近なのはコンテストリボンかな?」

ハルカ
「コンテスト…?」


またしても聞きなれない言葉が。
コンテストって、そのままの意味?


ツワブキ
「各開催場所にて行われる、ポケモンコンテストの事さ」
「バトルとは違い、ポケモンの強さだけでは無く美しさ逞しさ等、表現力を競う競技なんだ」
「まぁ口では正直説明が難しい…興味が有ればカイナシティで見てみると良いだろう」
「未経験なら参加は出来なくとも、見学は出来るはずだ」

ハルカ
「へぇ…そういうのもあるんだ」


とはいえ、今の所私にはどうでも良さそうだった。
初心者トレーナーの私としては、とりあえず父さんを目標にしたいしね♪


ツワブキ
「以上だが…より詳しい事はこの説明書を見ると良いだろう」


そう言ってツワブキ社長はやや厚めの説明書を私に渡す。
私はそれをバッグに仕舞い、改めてポケナビを見た。

ハルカ
(…ポケットに突っ込むには流石に大きわね)


なので、それもバッグに仕舞う事にした。
ついでに書類も確認すると、今度こそ私は社長に背中を向ける。


ハルカ
「それでは、行って参ります!」

ツワブキ
「ああ、気を付けてな…」


私はひとつ頷いて会社を出る。
そして、外に出てから改めて空を見上げると…


ハルカ
「既に夕方やん…」


流石に今日ももう一泊する事にした。
そう思った所で、ふと嫌な予感が脳裏をよぎる。


ハルカ
「ポケセンの部屋、空いてるのかな?」


以前は空いてなかったしね…
なら大抵、今の時期は込むのだろう。
と言う事は必然的にあそこを頼るしか無いのだけれど…


ハルカ
(まぁ、あの天下無双が嫌とは言わないでしょうけどね~)


それでも頼るのはどうかと思い、私はあえてポケモンセンターに向かった。
別に会うのが嫌だからでは決して無い。
あくまでプライドの問題だからだ!



………………………



受付嬢
「ようこそ、ハルカ様」

ハルカ
「あの…今日は部屋空いてます?」


私はそう言って苦笑しながら聞く。
すると、受付嬢も苦笑して…


受付嬢
「申し訳ございません…今日も満席です」

ハルカ
「…全部屋?」

受付嬢
「……」


無言でコクリと頷かれる。
正直ダレた…今回は本気で野宿しようかな?
と思っていると、後ろから妙な視線を感じる。
私はおもむろにその方向へと視線を移す。
そして、私はこの時程運命を疑った事はありませんでしたとさ…


ツツジ
「あはは…やっぱりハルカさん往生してたんですね?」

ハルカ
「は、ははは…」


もう笑うしか無ぇ!!
結局、またツツジさんのお宅に泊まる事になるんだってさ!?
まぁツツジさん曰く親友だそうだから、別に良いんだけど…
ある意味プライドはズタズタよ!



………………………



リンカ
「あ、お帰りツツジ~…って、あっはは~やっぱり♪」

ハルカ
「やっぱりですか…そうですか」


もはや、リンカちゃんもこうなる事を予想していた様だ。
私はそれを知って思わず息を吐いた。


リンカ
「で、ツツジ…どうだった?」

ツツジ
「ええ、特に問題はありませんでした♪」

ハルカ
「…? 何か、あったんですか?」


私は妙な雰囲気を感じ取り、不思議に思ってふたりに聞く。
すると、ツツジさんは少々困った顔をしてこう語り始めた…


ツツジ
「ええ、ちょっと…ポケモンが大きなダメージを受けてしまいまして」

ハルカ
「ジムバトルで…ですか?」


私がそう言うと、ツツジさんはやや暗い顔で頷く。
よっぽどの負け方をしたんだろう…あのニコニコスマイルが良く似合うツツジさんがかなり沈んでるのだから。


リンカ
「まぁ、あの結果じゃあねぇ~正直相手が悪かったもの」

ツツジ
「それでも…バッジ無しのトレーナーにあんな負け方をしたのは初めてです」

ハルカ
「…それ、どんな相手だったんですか?」

ツツジ
「全身をローブで隠していたトレーナーで、使っていたポケモンは『ヘルガー』だったのですが…」
「相性は明らかにこちらが有利なのにも関わらず、岩には今一つの『かえんほうしゃ』一撃で、全員倒されてしまったんです…」


私はそこで凍り付いた様な戦慄を思い出す。
そんな場違いなレベルのポケモンを使うのは間違いない…カガミだわ!


リンカ
「ヘルガーなんて、このホウエン地方にはいないポケモンよね…? 私初めて見たもん」
「しかも、バッジ無しであのレベルだと…ねぇ?」

ハルカ
「……」


私は流石に驚愕する。
あのツツジさんのポケモンでさえ、一撃?
経験上、ツツジさんのノズパスはかなり固いイメージだ。
炎タイプの技では、恐らく大したダメージは与えられないはず。
それでも一撃…かぁ。
なら、私のポケモンじゃどうにもならないわね…
今の私のポケモンじゃ、どうやってもカガミに勝つのは無理!


ハルカ
(なら、仮に会ったとしてどうすれば良いのよ?)


途端にそんな疑問が出てきてしまう…
実力の差はどう考えても明白。
だったら私がそれだけ強くなれば良いのだけど…
そんな簡単に埋まる差では無く思える。


ツツジ
「ハルカ、さん?」

ハルカ
「え…? あ、はい?」


私はやや反応が遅れてしまった。
すると、ツツジさんが心配そうに私を見ているのに気付く。


ツツジ 
「どうかしたんですか? 怖い顔をしてますけど…」


ツツジさんはまるで自分の事の様に心配をしてくれる。
本当に天下無双のお人好しなんだから…
私は内心呆れながらも、心配かけない様に苦笑した。


ハルカ
「あははっ、ちょっとね~…まぁ気にしないでよ」


そんな空笑いが静かなジム内で響く。
正直、笑って済ませられないんだけどね…


リンカ
「ハルカちゃん…もしかしてあのトレーナーに心当たりあるの?」

ハルカ
「う…」


ここで痛い所を突かれる。
でもまぁ、ふたりに隠すのもアレだし…ね。


ハルカ
「まぁちょっと…ね、戦った事あるんですよ」

リンカ
「で、無様に負けたと…」

ハルカ
「そうですけど! 言い方!?」


私のツッコミにリンカちゃんは大笑いする。
くっそ~! 完全に遊ばれたわね!!
いつか見てなさいよ~? 絶対アイツをぶちのめしてやるんだから!
勿論ポケモンバトルで!!


ツツジ
「えっと…その、彼女とは知り合いなんですか?」

ハルカ
「…ううん、前に1度会っただけ」
「もしかして、アイツもポケモンリーグを目指してるのかな?」

ツツジ
「ええ、多分そうだと思いますよ…? その為にジム戦をしに来た様でしたし」

ハルカ
「だとしたら、最終目的地は同じ…?」


私はそう考えた…そして結論も出る。
なら、前に進めば良い。
いつか最後に辿り着く場にアイツがいるなら、きっとその頃にはレベルも追い付いているはず。
そうでなければ、きっとその場に立てないだろうから…

そうと決まれば腹は決まった! 結局、やるならそれ位目標が高い方が良い!!
改めて、私は明確な目標を心に刻む。


ハルカ
(まずはジムを全部周る! そしてバッジを全部ゲットする! その後はポケモンリーグに進む! そして最後にカガミをぶっ倒す、以上!! 私のサクセスストーリー!!)

ツツジ
「とりあえず、ハルカさんはこれからどうするんですか?」

ハルカ
「う~ん、まずはムロタウンって所に行く予定」


ツワブキ社長の依頼が有るからね~
海を越えれる様になったのは正直意外だけど。


リンカ
「成る程ムロジムかぁ~…確かにあそこはハルカちゃんならいけそうだもんね♪」

ハルカ
「え? ジムあるんですか?」


そこまでは流石に知らなかった。
それなら尚の事意味が有りそうね♪


ツツジ
「ええ、有りますよ…あそこのジムは格闘タイプを得意とするジムですので、ワカシャモ使いのハルカさんも色々学ぶ事は多いと思います♪」

ハルカ
「格闘タイプかぁ…えっと」


確か岩に強いんだったわよね…? 私のポケモンに岩はいないし…
でもそう言えば、格闘って何に弱いんだろう…?
私がひとりで唸っていると、またツツジさんが私を見る。


ツツジ
「うーん、またひとりで考えてますね~?」

ハルカ
「え? あ~その、格闘タイプって何に強かったり弱かったりするのかな~?って


私がそう言うと、ツツジさんはクスクスと笑う。
うう…どうせ無知よ~!


ツツジ
「えっとですね、格闘タイプは…飛行とエスパーに弱いんです!」


飛行…キャモメ、アゲハント。
エスパー…該当無し!

(当時にフェアリータイプは有りませんので除外してます)


ハルカ
「う~ん…じゃあ逆に格闘で弱点を突けるのは?」

ツツジ
「岩、悪、氷、ノーマル、鋼ですね」


なら、ノーマルのジグザグマ以外は該当無しね…
しっかし、5つのタイプに抜群取れるのかぁ~格闘ってかなり良いタイプなのかも♪
ワカシャモのタイプでもあるし、しっかり覚えとこう!


ハルカ
「とりあえず相性は悪くも無いか…やるなら結構ガチンコになりそうね!」

リンカ
「まぁ、ハルカちゃんなら何とかするでしょ! さぁ、今日も張り切って夕食作りますかな♪」

ツツジ
「ええ、期待してます♪」

ハルカ
「あはは…楽しみにしてま~す」


こうして、今日も1日ジムでお世話になった。
そして、次の朝7時…私は改めてカナズミから出発する。



………………………



ハルカ
「……」


私はカナズミシティを出て、更にトウカの森も抜ける。
そして私はハギ老人の家に着いていた。
私はおもむろにそこで海を見る。
あの先に、もしかしたらカガミがいるかもしれない。
私は決意を込めて、そこから一歩一歩踏み出した。



………………………



ここからは、まだカナズミにいた時ハルカのポケモン達が何をやっていたかというお話になります。
夕食後、誰もいないジム内で自由に放されていたポケモンたちは、ハルカが寝ている間に一体何をやっていたのでしょうか…?


ワカシャモ
「……」
ジグザグマ
「……」
アメタマ
「……」
タネボ-
「……」
キャモメ
「……」
アゲハント
(…どうしようかなぁ~?)


♀4体の中、♂はアゲハントとキャモメのふたりのみ。
その内のひとり、アゲハントはふと悩んでいた。


アゲハント
(何で、皆こうも静かなのかなぁ…?)


全員がそこまでまだ親しくないというのが理由のひとつだが、他の理由としてそういう性格のポケモン達が集まってしまった事が最大の問題であった…
かく言うアゲハントもおっとりな性格故、元々騒がしいわけでもない。
だが、どう考えてもこの輪に入りきれないのが彼の今の悩みだったのである。


アゲハント
(はぁ~、でも動かないと何も進みませんよね~)


そう思うも、彼は行動が決定的に遅かった。
おっとりな性格故、どうしても後手に回ってしまうのである。
しかしながら、それでも彼は彼なりに全力で頑張る事を心に決めていた。
そしてまずは、リーダー的な役割を持っているワカシャモに近付いて話し掛ける事にしたのである!


アゲハント
「あの~…」

ワカシャモ
「ひっ!?」


ワカシャモはビクゥッ!と、体を震わせて後ずさる。
1番実力もあり、ハルカの信頼も厚いワカシャモだが、この娘は生粋の臆病者でもあった。
バトルでは徐々に改善を見せているものの、それでも生来の性格をそう簡単には変えられないのだから…


アゲハント
「あ、すみません~…驚かすつもりはなくて…その~」

ワカシャモ
「あ…ゴメン、そういうつもりじゃ」


ワカシャモは深呼吸をし、一端落ち着く。
リーダーとしての自覚は一応持っているのか、ここは自分で取り締まろうと皆を見てこう叫んだ。


ワカシャモ
「み、皆~! ちょっと聞いて~!?」

ジグザグマ
「…ん」

タネボー
「…はい~?」

アメタマ
「……?」

キャモメ
「ん~?」

アゲハント
「………」


ワカシャモは全員の注目を集め、そこからゆっくりと言葉を進めた。
彼女は彼女なりに、勇気を出した場面である。


ワカシャモ
「皆! 折角の機会だから、自己紹介をしませんか?」


皆はワカシャモに注目し、全員頷く。
ここまでは実に順調である。


ワカシャモ
「えっとまずは私からね…私はワカシャモ、以前はアチャモだったけど…進化したので改めてよろしくね♪」


ワカシャモはそう言って手を使い、ジグザグマに順番を振る。
ジグザグマはやや控え目に、ゆっくりと自己紹介を始めた。


ジグザグマ
「…ジグザグマ、まだ進化はしてないけれどよろしく」


ジグザグマが言い終えると、次はワカシャモがタネボーに振る。
すると、タネボーはゆっくりと声を出した。


タネボー
「え~っと~~…私は~タネボ~…です~♪」
「み・な・さ・ん~、仲良く~してくださいね~?」


タネボーは至極ゆっくりと笑顔でそう自己紹介する。
普通に接していると、一見『おっとり』そうな性格の様だが、実は彼女の性格は『ずぶとい』性格である。
何事にも動じないその姿は確かに、納得する所もあるだろう。
タネボーの自己紹介で皆の表情はやや和らぎ、徐々に皆の間が狭まってくる。
次は何とアメタマが自分から自己紹介を始めた。


アメタマ
「えっと、アメタマです! あんまりバトルは強くないですけど、よろしくお願いします!」


彼女は『がんばりや』な性格であり、このメンバーの中では比較的明るい性格。
そういう意味でもムードメーカーになれる素質はあり、ある意味パーティにとって重要なポジションにも思えた。
そして、彼女はハイッとキャモメに回し、それを受けてキャモメはこう自己紹介をする。


キャモメ
「僕はキャモメです~、あんまり飛行タイプの技は使えないですけど一応鳥ポケモンですよ~♪」


彼は『のんき』な性格であり、♂のキャモメ。
アゲハントと同様に重要な♂であり、性格的にも大人し目で女性陣にも割と受け入れられている。
そして、最後に残ったのは事の発端となったアゲハント…


アゲハント
「アゲハントです…えっと~色々と迷惑をかけるかもしれませんが、これからも仲良くしてください~♪」
「何かと行動が遅かったりしますが~…気長に見てくださいね~」


こうして、どうにか全員の紹介が終わった。
これで皆の中に、少ないながらも会話が生まれたのである。
ひとまず、アゲハントのミッションは成功と言うべきだろう。


ワカシャモ
「グマちゃんは控えめだから…もうちょっと自分から話しかけた方が良いかもね」

ジグザグマ
「…出来る限り頑張るわ」

アメタマ
「私ももっと頑張らないと! でも、いつまで経っても良い技を覚えないのよね~」

タネボー
「それは、私もです~…いつまでも~、前線に出れなくて~」

アメタマ
「良いよね~シャモちゃんやグマちゃんは…私もそろそろメンバーチェンジになるのかも」

タネボー
「あ~…それは~あるかも~しれませんね~…」


タネボーはまるで危機感の無い声でそんな事を言う。
アメタマは流石に苦笑していたが、タネボーはまるで気にした様子は無かった。


キャモメ
「……」

アゲハント
「女性陣は楽しそうですね~」

キャモメ
「そうですね~…でも女性を守るのも、男の仕事ですからね~♪」


キャモメは呑気ながらも無駄に格好良い言葉を返す。
アゲハントはそれ以上言葉を繋げる事が出来ずに、そのまままったりと過ごすのであった…

とまぁ…そんなこんなで皆、夜まで仲良く過ごしましたとさ…
え? オチが無い? 今回はこれだけですよ?
まぁ、次回をお楽しみに~♪











…To be continued

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