28Days:「新たな試み~トゲトゲやま#5~」の巻

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 お待たせしました!今回から表紙イラストもリニューアルしてココロも登場します!Twitterのフォロワーさんのイラスト、ボクも嬉しい!
 いくらチームのピンチを救うためだったとは言え、ぼくは好きな子を怖がらせてしまった。どうやって信頼を取り戻せば良いんだろう。もしこのまま彼女にあの温かい笑顔が戻らなかったら……………ぼくはギルドでの生活を頑張ることが出来るのだろうか……………。




 「見事な作戦勝ちでしたね。ソラさん、道具の使い方が上手ですね」

 「ありがとう。まともにぶつかったら勝ち目なんか無いような気がしたんだ。とにかくココロちゃんが倒れる前に階段を上れて良かったよ」





 あたしたちは6階にたどり着いていました。ソラさんが利用した“ふっとびだま”はその名の通り相手ポケモンを遠くへと吹き飛ばし、その方向に壁があったり他のポケモンがいたりしたら、ポケモンにダメージも与えることも出来る効果がありました。ポケモンの技で言えば“ふきとばし”と似たようなイメージだと思います。とにかくゴローンが壁にぶつかって身動き出来ない間に一目散に階段を駆け上がることが出来たのですから、ソラさんは好判断をしたとした言いようがありません。階が変わったことであたしの毒も抜けて体調も回復出来たのです。





 (でも、自分も負けちゃいけないな。ススムさんはすっかりソラさんに気持ちを寄せているけど、あたしだって探検家として頑張ってきた経験があるんだから。少しでも彼に自分のことも見てほしい………)





 ソラさんの活躍に落ち込むどころかますます発奮出来ている自分に、なんだか呆れそうでした。でも、それくらいあたしもススムさんのことが好きなのです。だってこの右も左もわからない世界で自分のことを“仲間”として迎え入れてくれたのですから。少しでも彼に尽くしたいと考えるのは当然じゃないでしょうか。





 「ススムさん?どうしたんですか?」





 それよりもあたしはススムさんのことが気になりました。だってトボトボと浮かない様子であたしやソラさんよりも後ろを歩いていたのですから。あたしが声をかけても届いていない様子。何となくその浮かない理由を察することは出来ましたけどね。





 (少しの間でもあたしがそばにいて元気を出してもらってほしいな…………。ソラさんには悪いけど………良いよね)





 骨を握る力を強くして、あたしは彼に近寄りました。ソラさんが一瞬だけ寂しそうな表情をしたことなんて知らずに。





 「ススムさん、大丈夫ですか?どこか気分は悪くないですか?」

 「ココロ…………。ううん、そんなんじゃないんだ。ちょっと考え事してたら凹んじゃってね……………」

 「そう…………なんですか。でも…………」

 『!!?』





 あたしは彼にぎゅっと抱きつきました。ソラさんのようにふわふわした感覚じゃないから、ススムさんには物足りなかったかもしれません。それでも…………少しでも自分という存在を認識して欲しかったから、強く彼の腕に抱きついたのです。ススムさんもビックリしていましたが、ソラさんのその真っ赤になりながら悔しそうにしている姿は更に印象的でした。でもこれだけでは終わりません。





 「あたしだって…………そばにいますからね…………。ススムさんが元気になるまで…………」

 「ココロ…………」

 「うう…………」





 彼の気持ちを癒そうとあたしなりに優しい言葉をかけたのです。ススムさんも少し安心感を覚えたのでしょうか。表情が幾分か和らいだのをあたしは感じました。その反面ソラさんが悔しそうな表情をしていましたが、私は気に留める雰囲気も出さずにただずっと彼のそばを離れませんでした。だってこんなチャンス、簡単には巡ってこないんですから。





 (むしろソラさんが悔しがる意味がわからない。確かにススムさんが必要以上のパワーを出してソラさんまでを巻き込んでしまったのは事実だけど、そのおかげでピンチも脱出出来たんだから。自分が“パートナー”って自覚があるなら我慢しなきゃ。それとも単なるワガママなのかな)





 直接発言はしませんでしたが、これまで鬱憤が溜まっていたのは事実です。だってススムさんの一番そばにいたいのであれば、彼の考えをちゃんと尊重するのが当然だと思いましたから。自分の都合だけを受け入れてもらって、自分は相手の都合は聞かないなんて…………それのどこが対等の関係なのでしょうか。





 (それならあたしがススムさんの“パートナー”になりたい。どんなときも尽くしていけるような。だって、ススムさんの楽しそうな姿………見ていて幸せになれるもの)





 ソラさんには悪いけど、あたしの想いは本気です。ススムさんが元気になるまでそばを離れないように決めたのです。そう、まるで本当に“リーダー”を支える“パートナー”のように。





 「さぁ、行きましょうススムさん。あたしが支えてみせますから………」

 「ちょっと待ってよ!!!」













 「どうしたんですか、ソラさん。そんな急に大きな声を出したりして」

 「わからないフリしないでよ!!」

 「もしかしてススムさんのことですか?」





 私は正直苛立ちでココロちゃんへ電撃を放ちそうでした。何となくだけど自分のことを哀れな存在と言わんばかりにうっすらと笑みを浮かべていたのですから。





 「わかってるならススムから離れてよ!!さっき言ってくれてよね!?私がススムのそばにいた方が良いって!パートナーだからって!それなのに…………なんでいつもいつも私の邪魔ばっかりするの!?嫌がらせ!?」

 「何ですって?聞き捨てなりませんね!」





 私は悔しくてつい心無いことを口にしてしまいました。当然ですがココロちゃんの怒りを買ってしまい、せっかく仲直りしたことが台無しになったのです。お互いにまるで敵と対峙するような雰囲気になりました。





 「元はと言えばあなたがススムさんのことを困らせていたんでしょう!?あたしだったら我慢するわ!!変に気になって思うように身動きできないってなったら、足を引っ張ることになるもの!!」

 「そんなのココロちゃんの勝手な意見じゃない!!いきなりあんな炎を浴びたら怖くなっちゃうのだって当たり前じゃない!!何も知らないくせに変なこと言わないでもらえる!?」





 ココロちゃんさえチームに加入しなければ、ススムともっと気兼ねなく話を出来るのに………そのように思うと、彼女の存在が邪魔なんだなって思いました。そんな風に思いたくないから、少しでも彼女と打ち解けていきたかったけれど……………それは難しそうな雰囲気でした。





 「あなたってどこまでもワガママなんですね。元はと言えば、あなたがススムさんと探検隊になりたいって無理にお願いしたんでしょう?一人じゃ何も出来ないから。あなたには彼への感謝の気持ちって無いの?」

 「あるよ!!あるからススムの指示に従っているんだよ!」

 「だったらススムさんに謝りなさい!あなたが怯えてしまったおかげで彼が自信を失いそうになってるんだから!!」

 「ひどい!私の気持ちなんてどうでも良いってことなの!?」

 「そばを離れないで一緒にいるだけでも十分恵まれてるわよ!!あなたにはそれがわからないのね!!」

 「うるさい!うるさい!うるさ~い!!」

 「!!?」

 「ココロ!!」





 私とココロちゃんが言い争いをしている間、ススムはその場でオロオロとするばかりでした。何とか止めようとしていたのかもしれませんが、あまりのヒートアップっぶりに無力だったのかもしれません。さらに次の瞬間、ココロちゃんは私が感情任せに突撃した反動でその場に倒れ込んでしまったのです。「うぅ………」と痛みに耐えるためにうめき声をあげて。





 更にこんな酷いことまで彼女に向けて発言してしまったのです。





 「あなたさえ“トゥモロー”に加入しなければ、私はもっとススムと仲良くしていたんだ!!あなたが私の邪魔をしているんだ!!あなたなんてずっと独りで行動していれば良かったのに!!これ以上ススムの理解者になろうとしないで!!図々しいんだよ!!」

 「!!!?」





 ……………あたしはソラさんの言葉を聞いて、一番ワガママだったのは自分自身なのではと感じずにはいられなくなりました。そうですよね。彼女は自分の想いを叶えさせてくれたススムさんのそばにいて、もっと彼の為に力を尽くしたいとか自分のことを注目して欲しいと願ってあいたはずなんですから。それをあたしが邪魔をしていた。あたしが片想いをしたことで全てが狂ってしまった。ススムさんからの印象も含めて。





 「あなたはなぜススムと行動したいの!?」

 「もう良いじゃないか、ソラ。それくらいにしなよ。キミこそなんでそこまでココロのことを目の敵にするんだ。せっかくさっきまで協力的だったと言うのに。らしくないよ」

 「うぅぅぅ!!」





 その時でした。寂しげな表情でススムが話しかけてきたのは。ハッとしたときには既に遅し。ココロちゃんへの不満を聞いていたはずですから、私に対して何となく距離を置いているように思いました。つまり、初日ほどの好意が薄れていたとしても不思議じゃないことを意味しているのです。私はそのことが悔しくて悔しくてたまりませんでした。ススムはココロちゃんのことばかり気にしていて、自分のことなんかどうでも良いような……………そんな風にさえ感じてしまったのです。しかし、彼はココロちゃんにもこのように伝えたのです。





 「ココロもあまりソラを責めないでくれ。彼女はぼくの攻撃の巻き添えを喰らってしまっただけなんだから。ぼくがしっかりしていれば防げたことなんだ」

 「ですが…………」

 「本当にぼくに気持ちを寄せているなら、何にも言わないでくれ。こんなところで気持ちを引きずりたくないんだ」

 「ススムさん…………」

 「ソラも。お願いだからココロと言い争わないでくれ。不安な気持ちはわかるけど、キミの想いはしっかりと届いているから。まだまだこの先もギルドでの修行は続くんだから」

 「……………うん」





 これで彼から注意を受けるのは何度目になるでしょうか。ココロちゃんも、私も半分ふてくされたように返事をしてしまいました。





 ……………だって私もココロちゃんも、あなたのことを少しでも自分のそばから離したくない気持ちは同じだから。





 (…………やれやれ。女の子と一緒に探検活動をするのは大変だな。ギルドの中はともかく、ダンジョンの中では一緒に力を合わせてほしいよ)





 ぼくの気分はイマイチだった。だってこんなはずじゃなかったんだ。三匹がそれぞれ自分の得意なことでお互いにカバーし合える関係になりたかった。だけどソラもココロもぼくへの気持ちが強すぎて、変に負けず嫌いになっている。そのせいで感情的になって相手に酷いことをぶつけてしまったのだと思うと、気分が沈みがちになるのは仕方ないような気がした。





 (別に“パートナー”が二人いたって構わないと思うんだけどな。そうすればどっちかが置いてきぼり……………なんてこともないと思うんだけどな…………。女の子としたら許せないのかな?)





 所詮自分なんて男だ。女の子の気持ちがすべてわかる自信なんてない。でも少しでもソラやココロのいがみ合いが無くなる可能性があるなら、その術を考えてあげたいと思った。





 ソラのことが好きでたまらないのは変わらないけど、ココロだって一生懸命頑張ってくれているのだから。彼女の恋愛的な気持ちを汲み取れなくても、せめて「このチームに入れて良かった」と感じてくれたら、ぼく自身の気持ちも救えるような気がした。





 (よし、そうと決めたら…………!)





 急に心臓の高鳴りがドクンドクンと強くなっていく。もし彼女たちに受け入れられなかったったらどうしようみたいな不安もあったからだろう。それでも現状打破に向けて、ぼくは思いきって二匹へ話しかける。





 「あのさ!!」

 「キャッ!ビックリした!」

 「一体どうしたんですか?」





 二匹はビックリ仰天する。そりゃそうか。いきなり後ろを振り返って大声で話しかけられたら、誰だって驚いてしまうだろう。それでもぼくは自分の想いを伝えることに一生懸命だった。





 「あ、あのさ…………ソラとココロに聞いてほしいことがあるんだ!」

 「え?」

 「あたしたちに…………ですか?」





 “リーダー”のらしくない様子に二匹はキョトンとしている。ぼくは話を続けた。





 「うん。ぼくからの提案なんだけど、この際“パートナー”という役目をソラとココロ、二匹に担当させたいと思うんだ」

 「え!?“パートナー”を二匹!?」

 「そんな…………それじゃあ私はどうなっちゃうの?」





 案の定ぼくの提案に二匹は動揺を隠せずにいた。特にソラは2日前にチームを結成したときから“パートナー”という役割にやりがいを感じていただけに、それを剥奪された感じがしてかなり気持ちが複雑だった。





 「そうだよ。どちらかを優先させて動いてもらうんじゃなくて、二人がそれぞれ得意なことでぼくを支えてほしいんだ。いくらぼくが“リーダー”といってもダンジョンや探検活動のことは全然把握できてないことが多いし」

 「なるほど…………面白そうですね。別にギルドや探検隊の連盟のルール違反にはならないでしょうし、新しい試みのような感じがします!あたしは賛成しますよ、ススムさん」

 「ありがとう、ココロ………」





 上手く考えを伝えられたかわからない。それでもココロがニッコリと笑って受け入れてくれたから、気持ちが少しだけラクになった。





 「ちょっと待ってよ!私は反対だよ!!」

 「ソラ…………」

 「ソラさん…………」





 ところが………というか案の定と言うべきか、ソラが猛反対をしてぼくに詰め寄ってきたのだ。せっかくラクになりかけたぼくの気持ちはすっかり萎んでしまう。きっとそれは表情にも現れていただろう。気持ちを察したココロは冷たい視線………というよりは半ば怒りにも似た視線をソラに向けた。





 「私、どこまで我慢しないといけないの!?ススムと一番最初からそばにいたのは私なんだよ!?それなのにどうしてココロちゃんが私と同じような立場にならないといけないの!?」

 「だからススムさんが言っているじゃないですか!あたしやソラさんに、それぞれ得意なことで自分を支えて欲しいって!!ソラさんのことをあたしより嫌いだから、“パートナー”二人制を取り入れようとしてる訳じゃないって、なんでわからないんですか!!」

 「初めて出逢ったとき、お互いのことをよく知らなくても頑張れたからだよ!!だからススムともっと探検活動を楽しみたいんだ!!誰よりも近い場所にいてくれなきゃ意味がないんだよ!!」





 顔を真っ赤にして涙を流しながら気持ちを口にするソラ。とにかくぼくのことを離したくない…………そんな気持ちはココロにも伝わらないわけがなかった。だからこそココロだって怒りが収まらなかった。





 「あたしだってそんなこと知ってるわよ!本当はススムさんと一緒にいたいんだから!あなたよりもススムさんのこと、ずっと好きでいられる自信だってあるんだから!あなたにはわからないでしょう!?あたしは元々人間だったんだから!!なのに…………いつものように朝起きたら“カラカラ”になって、右も左もわからない世界に独りぼっちにいた不安なんて!ススムさんが仲間に入れてくれなかったら、ずっと独りで過ごさないといけないしんどさなんて!!」

 「ココロ…………」

 「ココロちゃん………」

 「あ……………///////」





 きっと初めてだろう。ココロが自らの話を教えてくれたのは。そしてその言葉にぼくたちは驚かされることになった。





 なんとぼくだけでなくココロまでもが、別の世界から訳もわからずこの世界にやってきたポケモンだと言うのだ。さらに彼女もまたソラ同様、ぼくへの好意をハッキリ示したのである。しかし勢いで口にしたことに後悔してるのか、顔を赤くしてその後は静かになった。





 しかし、ここで真実を聞いたからにはぼくのこともちゃんと伝えなきゃいけない。そう思って一歩前へ出ようとした…………そのときだ。ソラがココロに寄り添って話を始めたのは。





 「ココロちゃん。あなたにも伝えなきゃいけないね。実はススムもあなたと同じように、元々この世界にはいなかったんだよ」

 「えっ?…………ということは?」

 「うん。信じられないかもしれないけど、ススムも目覚めたら“ヒトカゲ”になっちゃったんだよ。ススムという名前と人間だったってこと以外の記憶が無くて困っているんだよ。だからココロちゃんと同じだよ」

 「そんな…………ススムさん」





 ソラの話が終わると、ぼくは笑顔で軽く頷いた。ココロはハッとした様子をしながらも瞳を潤ませる。みんなそれぞれ苦しみを抱えている。だからこそみんなで助け合って頑張っていこう…………そんな気持ちをココロだけでなくソラには伝えたかった。





 「ソラさんには悪いですけど、あたし…………本当にススムさんに恋しています。そして同じ境遇だってわかって、ますますその気持ちは強くなりました!共感してくれるような気がしたから」

 「わっ!ココロ………」





 ココロは急に左腕をつかむように寄り添ってきた。そのおかげでぼくはビックリする。同時に何度も好意を伝えられてなんだか恥ずかしい気持ちにもなった。でも複雑だ。だってぼく自身はソラへの想いがぶれることはなかったのだから。ココロが納得できるように、本音をどうやって伝えるべきか迷ってしまった。





 そんなぼくの右腕をつかむように、今度はソラが寄り添ってきた。そしてココロに負けじと彼女も改めて自分の気持ちを表明するのであった。

 



 「私だって!譲らないよ…………。だってススムのこと好きだもん。でも、これ以上ココロちゃんと対立したらススムが困っちゃう。だからお願い。二匹でススムの力になれるように頑張ろう?ススムが求めている“パートナー”として…………」

 「ソラさん…………。もちろんですよ。あたしこそ気持ちが強くなりすぎてごめんなさい」





 またしても言い合いが起きてしまうのか?ぼくの不安は杞憂に終わってくれた。ココロが境遇を明らかにしたことで、ソラも寄り添いたい気持ちが出てきたのが理由だろう。本当にこのまま二匹が力を合わせてくれることを願うばかりだった。





 こうして“パートナー二匹制”というニュースタイルで、ぼくたち“トゥモロー”は探検活動を行うことになったのである。





















    ドガーーーン!!

 「何、今の!?」

 「あたしたちの前から聞こえてきましたよ!?」

 「この先か!?」





 突然爆発音がぼくたちの耳に飛び込んできた!ぼくもかなり動揺をしたけど、ココロの言葉を聞いてから気持ちを切り替えて目の前の細い道を急ぐ。後ろからソラやココロもついてきた。何事もないことを願いながら。





 「出てこいや!!俺たちのすみかを荒らしている探検隊め!!」

 「俺たちがぶっ倒してやるぜ!!」

 「なめんじゃねぇぞ!!」

 「いたよ!」

 「アイツらか!!」

 「なんてこと!」





 道の先でぼくたちが目の当たりにしたもの。それは三匹のニドリーノが“ばくれつのタネ”をいくつも乱暴に投げて、ダンジョンそのものを破壊している姿であった。ここに来る途中に他のポケモンの姿が見られなかったことから考えると、もしかしたら彼らの行動に驚いて避難したのかも知れない。





 (それなら別に構わないけれど、なんかめちゃくちゃ嫌な予感がするんだよね………)





 ぼくたちは彼らに見つからないように、壁の影に身を潜めていた。もちろんいくら体が小さい種族のチームだとしても、狭い場所に三匹もいるとなると無理が出てきてしまう。





 「…………うん?なんだありゃ」

 「そこに誰かいるのか!?」

 「出てきやがれ!!」

 (ヤバ!!ばれちゃった!!)





 このときニドリーノたちには壁をぼんやりと照らす灯りが目に入っていた。その灯りの正体はぼくのしっぽの炎。つまり思わぬところで“リーダー”である自分が足を引っ張る結果になってしまったのである。しかし、このときのぼくはまだこの原因に気付いていなかったため、ただただ動揺するばかりであった。





 (どうする!?このままここにいたところで、きっと見つかっちゃうぞ!?)





 考えている時間は存在しなかった。こうなったら先手必勝策。勢いで挑もうとぼくは意を決した。後ろを振り返ってソラやココロにもそれを伝える。二匹は理解をしてくれたようで、特にソラに至っては不安そうな表情をしながらぼくの右腕をぎゅっと掴むのであった。





 「そこにいるのはわかってるんだぜ!?」

 「おとなしく出てきて俺たちのストレス発散道具になりやがれ!!」

 「お前らの自由になんて…………」

 「なるものですか!!」





 壁を作っている尖った岩。隔たりがその一枚だけになったところで、ぼくは目前の敵の前に飛び出した!!次いでココロが飛び出してくる!しかし、ソラだけはワンテンポ遅れてしまうことになった。強い気持ちどころか不安な気持ちを消すことが出来ず、「待ってよ、ススム!ココロちゃん!!」と、半分パニックになったような感じになってしまったのである。そのおかげでニドリーノたちには小馬鹿にされてしまった。





 「ブハハハハ!!何だよ!コイツらがこの山を荒らしていたってのか!?」

 「ヒトカゲやカラカラはともかく聞いたかぁ!?」

 「聞いたよ!“ススム~!ココロちゃ~ん!待ってよ~!!”だってよ!!」

 「くっ!!」

 「ううぅぅ…………///////」





 散々の言われように腹立たしい気持ちが出てくる。ソラはしゅんとなって恥ずかしい気持ちを抑えるのに精一杯だ。まるで“かいがんのどうくつ”のときのドガースやズバットと対決したときを思い出してしまう。





 (ソラさんってば。仕方ないわね。本当に足手まといなんだから…………。そのくせススムさんのことになると一人前に反論するなんて、図々しい………)





 あたしはススムさんを困らすソラさんに嫌悪感を抱かずにはいられませんでした。さっき協力しあうことを決めたのに、つい心無いことまで考えてしまったのです。





 (こんな人があたしと同じ“パートナー”だなんて。考えたくも無いわ…………)





 フラストレーションが溜まりっぱなしだったことも影響して、あたしはススムさんの指示を待つことなく、ニドリーノたちを骨で殴りかかりました!!ソラさんとは違うところを見せれば、もしかしたら自分に魅力を感じてくれるかも…………そんな理由を原動力にして!





 「覚悟しなさい!!“ホネこんぼう”!!」

 「生意気なんだよ!!“にどげり”!!」

 「あっ!!きゃあ!!」

 「ココロ!!」

 「ココロちゃん!!」





 あたしの得意なじめんタイプは、どくタイプのニドリーノには効果的。バトルを有利に進めるためにも、最初の一撃が大事だと思いました。しかし相手だってただでは済みません。迎撃する形でニドリーノが“にどげり”を繰り出してきたのですが、最初の蹴りが握っていた骨を吹き飛ばしてしまい、すぐさま繰り出された二度目の蹴りが体に直撃してしまったのです!!





 「大丈夫か!?」

 「無茶しちゃダメだよ!!」

 「う、うるさい!!あたしに近付かないで!!」

 「!?」





 私はびっくりしました。だってココロちゃんがまるで敵を見るような鋭い目付きで、自分のことを睨み付けてきたのですから。それだけではなく、傷ついた体を起こしてあげようと差し出した手を振り払ってきたのです。





 「あなたなんかに………あなたなんかに助けて貰わなくても平気よ!!自分のことすら満足に面倒見れないくせに!!」

 「酷い…………」

 「ココロ!何てこと言うんだ!!」





 信じられなかった。まさかココロが仲間を傷つける発言をするなんて。ショックを受けて涙目になっているソラの姿を見てしまったからか、思わずぼくもココロへ声を荒げてしまう。ところが彼女にはそんな自分の声など届いてないようだ。何せソラを振り払った直後、サッと起き上がったと思うと、再びニドリーノたちに向かって骨で殴り付けたのだから!!





 「何度やったって同じなんだよ!!“つのでつく!!”」

 「“たいあたり”!!」

 「“どくばり”!!」

 「うるさい!うるさい!うるさーーい!!」





 そんなココロにニドリーノたちは動揺しない。むしろ三匹それぞれ技を繰り出して、別方向から彼女に襲いかかる!対して冷静さを完全に失っているココロはもう何の技を繰り出しているのか分からないくらい、骨を乱暴にぶるんぶるん振り回していた。もちろんそれでは彼らにちゃんと技が命中することは無かった。





    ドガッッッッッ!!

 「きゃっ!!!」

 「ココロ!!」

 「ココロちゃん!!」





 次の瞬間、鈍い音と共にココロは吹き飛ばされてしまう。“どくばり”まで刺されてしまったが、毒が回るまでに至らなかったのがせめての救いだろう。それでもまとめて三つの技を受けてしまったものだから、ダメージは相当なものだった。慌ててぼくとソラが駆け寄り、彼女に声をかける。





 「ココロ!無茶するな!!」

 「そうだよ。私たち同じチームなんだよ?お願いだから、独りになろうとしないで!!」

 「うぅぅ…………ごめんなさい」







          ……………29Daysへ続く。











 





 













 





 

 









 







 



 











 









  







 







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