第4話 『ジム初挑戦! ハルカ VS 岩にときめくお人好し!』

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この作品には残酷表現があります。苦手な方は注意してください

これから戦うかもしれない相手に親切にされ、やる気を次第に無くし始めるハルカはカナズミシティを出る。
だが、街の外まで付いて来るツツジにハルカは遂に折れる事に…
結局、ハルカはツツジの推薦でカナズミジムに泊まる事となったのであった…
ポケットモンスター ルビー 『ハルカジェネレーション』



第4話 『ジム初挑戦! ハルカ VS 岩にときめくお人好し!』





ハルカ
(…さて、ここまで来たのは良いけど)


私はツツジさんに連れられ、カナズミジムの前にいた。
本音はこのままジム戦…と言いたいのだけれど。
やった所で勝てるかどうかは解らない…むしろ敗色濃厚でしょうね。
まぁ別に無理にやる必要は無いし、今回はあくまで『泊まり』に来ただけだ。
とりあえず、例によって私は看板に目を通してみた…



『カナズミシティ ポケモンジム リーダー:ツツジ -岩にときめく優等生-』



成る程、さしずめ恋人は岩タイプってか?
とりあえず、優等生って言うのは納得出来る気がした。


ツツジ
「それでは、入ってください」

ハルカ
「…ええ」


私はそう返事して中に入る…すると独特の空気を感じた。
入った先は、まさに一言でジム。
入り口の側にカウンターがあり、ここで受付などをする様ね。
また、トレーナーを鍛える施設でもある様で、透明なガラス越しにトレーニングをしているトレーナーの姿が見えた。



「あらツツジおかえりっ、ちょっと遅かったわね…何かあったの?」


突然カウンターにいた受付の人がそう言う。
こっちは割と気軽な話し方で、聞いている方も楽ね。
って言うか、まるで友人同士の会話じゃない…


ツツジ
「はい、ちょっと色々あったので」
「それじゃハルカさん、上に…」


ツツジさんが軽く対応すると、カウンター左にある階段を指差す。
宿泊施設は上…か。
私は受付に軽く一礼し、そのままツツジさんに付いて行った。



………………………



ハルカ
「………」

ツツジ
「ここが来客者用の部屋になります」
「この部屋は元々誰も使用していないので、自由に使ってもらって結構ですので」


ツツジさんが笑ってそう説明する。
私は苦笑しながら、中に入った。
一応手入れはされている様で、埃の後はあまり無い。
部屋は4畳半のスペースだけど、ベッド、ゴミ箱、押し入れ、エアコンも完備されているわね。
はっきり言って、それなりに良い部屋だ。


ハルカ
「…ふぅ」


私はとりあえず、荷物を床に置いてベッドに腰を降ろす。
疲れた…色んな意味で。


ツツジ
「それでは、何かあれば備え付けてある内線で呼び出してください」
「受付の番号は00で、私の部屋は02ですから」


そう言って、ツツジさんは部屋を出て行ってしまう。
ようやくひとりになれたわね…


ハルカ
「…さて、実際どうする?」


今の手持ちでは、ぶっちゃけ相性が悪すぎる。
岩タイプを主軸とするツツジさんのポケモン相手に、マトモに戦えるポケモンがほぼいないといって良いのだから。


ハルカ
「…特訓、しか無いか」
「相性の良い他のポケモンを探すなんて、消極的な事は出来ればしたくない」
「だとしたら…今のパーティで相性の良いポケモンを徹底的に鍛えるしかないわ!」


ただ、そこでも問題がある。
誰を鍛えるにしても、やはり不利な点があるのだ。
唯一相性的に不備のないタネボーは、未だにロクな草技を覚えないのもいい加減気になっているし…
もしかしたら、アゲハント同様そろそろ開花しても良いかもしれないんじゃ…?と、そんな事も脳裏にはよぎった。
もちろん、その結果勝てるという保証は無いけど…やらないよりは遥かにマシだ。


ハルカ
「…そう言えば、何体で戦ったら良いんだろう?」


よく考えたら、そもそもルールが解らない。
ジム戦にはジム戦でのルールが本来あるはずだし。
私はそう思い、早速聞いていた内線の番号を思い出す。


ハルカ
「どうせなら直接聞いた方が良いでしょ…えっと」


私は、ベッドの側にあった受話器を取って、番号を入力する。
番号は02と入力、すると呼び出し音が鳴りだした。
…が、一向にツツジさんは出ない。


ハルカ
「…出ないわね」


だとすると、部屋にはいないのかもしれない…というわけで今度は受付に聞こう。
流石にこっちはいないなんて事無いでしょうし。


受付
『はい、受付のリンカちゃんで~っす♪』

ハルカ
「………」


私は思わず呆けてしまった。
あまりに気楽過ぎる…って言うか、受付的にそれで良いの?
まぁ内線って解ってるからそんな対応してるんだろうけど…
とりあえず、私は至って冷静にこう尋ねた。


ハルカ
「すみません、ツツジさんは今どこに?」

リンカ
『ツツジなら今ジム戦やってるよ~?』
『見学したいなら1階のバトルフィールドにどうぞ~…ってもう終わるかもしれないけど』

ハルカ
「…!!」


私は無言で電話を切る。
これは絶好のチャンスだ! そう思った私はすぐに部屋を飛び出した。

そして部屋を出て、目の前の落下防止の柵を軽く飛び越える。
そうすればすぐに1階受付前!
私の部屋は階段を上ってすぐの部屋だったからね!


ズダンッ!!



「ひぇっ!?」

ハルカ
「おっと…」


何と、すぐ側には受付嬢がいた…確か名前はリンカちゃんだったわね。
リンカちゃんは顔を青くしながらワナワナと震えている。
ちょっと乙女には刺激が強すぎたわね…
私はとりあえず苦笑しながらこう尋ねた。


ハルカ
「あ、あはは~…えっと、バトルフィールドはこの先ですよね?」

リンカ
「……!」


リンカちゃんは思いっきり首を縦に振る。
私は空笑いをしながら、ジム戦の方に向かって行った。
すると、ガラス越しにはトレーナーたちが集まっている。
私が近付くと、自動でドアがスライドした。
そして、中の熱気が一気に伝わって来る。


ツツジ
「イシツブテ、『いわおとし』!!」

イシツブテ
「ツブッ!!」


ツツジさんが力強く指示を出す。
わぉ…戦いになったら、あんな真面目な顔するんじゃない…ちょっと見直したわ。
ポケモンの方を見ると、戦っているのはイシツブテというポケモンらしい…ツツジさんがそう言ってたし。
とりあえずバトルに集中したいので、図鑑は後回し。
相手は何のポケモンを…って!?


挑戦者
「アチャモ、避けるのよ!!」


何と、相手はアチャモを使っていた。
これは非常に参考になる…私もアチャモ使いだし。
でも、結果次第では私に大打撃を与えそうね…
そして、その予感は一瞬で的中した。


ドガガガッ!!


アチャモ
「チャ~!」


挑戦者のアチャモはいともたやすく岩に押し潰される。
文字通り効果抜群だ…立てそうもない。


ジャッジ
「そこまで! 勝者ツツジ!!」

挑戦者
「ああ…!」

ツツジ
「……」

ハルカ
(あっさりと、決まっちゃった…か)


さて正直、どうしよう?
私のアチャモがああも簡単に、とは思いたくないけど。
それでも、明らかに勝てるとは思えなかった。
私はその場で考え込んでいると、いつのまにか挑戦者を含めたトレーナー兼、野次馬たちが次々と部屋から出て行く。
気が付くとそこは、私とツツジさんだけだった…


ツツジ
「…ハルカさん、見てらしたのですか?」

ハルカ
「……」


私は無言だった。
間違いなく強敵だわ…あれだけの内容でも十分それが解る。
今やったら、多分確実に負ける。
それでも、やらなければならないのも事実。


ハルカ
(ここで逃げたら…前の繰り返し)


それだけは何としても避ける。
だけど、分の悪い賭けをわざわざやるメリットは無い。
時間が無いわけじゃないんだから…特訓よ特訓!
不安が無くなるまで、我武者羅に鍛え続けるしか無いわ!!


ツツジ
「ハルカさん? どうかしたんですか?」

ハルカ
「…あ」


気が付くと、ツツジさんが心配そうに顔を近付けて私を見ていた。
こうして見ると普通に美少女よね~


ハルカ
「…ごめんなさい、ちょっと考え事していて」

ツツジ
「さっきのバトルですか? 正直、あまり良い結果とは言えませんでしたが…」
「勝てたのは、運が良かったと思っても良いかもしれませんし」

ハルカ
「…?」


私は意味が解らなかった。
どう考えても圧勝…のはずよね?
それとも、相手は何か運の悪いアクシデントでも起きたのかしら?
すると、ツツジさんはこんな事を私に告げる…


ツツジ
「アチャモは確かに炎タイプです…が、もし進化していれば相性はこちらが不利になりますからね」

ハルカ
「!?」


アチャモが進化!?
私はここでピンと来る。
そうか、進化すれば何かタイプが追加されるのかもしれない。
例えば、岩タイプに強い何か!
なら、私がやる事はもう決まった…後は、実践するのみ!


ハルカ
「あの、ツツジさん…ジム戦の詳細を聞きたいんですけど?」

ツツジ
「え? あ、はい…えっとですね」
ツツジ
「ハルカさんはまだひとつもバッジを持っていませんので、使用ポケモンは2体…」
ツツジ
「ポケモンの交換は挑戦者のみ自由で、持ち物の使用は『キズぐすり』がひとつまでとします」


ふーん、つまりバッジの有無でルールが変わるって事かしら?
さっき負けたのトレーナーも同じルールだったのかしらね?


ハルカ
「持ち物も使用出来んるんですか?」

ツツジ
「はい、ジムの方から支給されます」
「使用する場合は、好きなタイミングでジャッジにコールしてください」


なるほど、それなら互いに薬の使用ポイントを見極める事で勝負が左右されるのね。
…ちなみに私はポケモンの持ち物の知識はあまり無い。
それ位今までを見れば解る! 何て言う強気な読者は、読み飛ばしてくれても良いわ。

とりあえず効果や効能、用途は何となく聞いた事があるんだけれどね~
形とか見た目とかでは一切判別が付かない。
だからジグザグマが物を拾って来ても、正直使い道が解らないのだ…
ここの所かさばってきているしね~
今度フレンドリィショップにでも行って、詳しく聞いた方が良さそう。
流石に、使い方位は覚えた方が良いし。


ツツジ
「ルールは以上です、何か質問はありますか?」

ハルカ
「いえ、大体解りました…」

ツツジ
「あの…ハルカさんも、挑戦なさるんですか?」

ハルカ
「…そうなりますね、少なくとも近日中に」


私はそう言って、部屋に戻る事にした。
やる事が決まった以上、ボサッとはしていられない。
私はボールを持っている事を確認し、すぐにジムを出た。


ツツジ
「って、ハルカさん何処へ~!?」


私はツツジさんの声を無視し、そのまま走り去る。
目的はまだ見踏査の116番道路だ!



………………………



ハルカ
「さぁ、行くわよ!?」

短パン小僧
「よーしっ、いっくぜー!!」


私は116番道路で、早速トレーナーと戦う。
繰り出すのはもちろんアチャモ!
ひたすら鍛えるしかない、そして進化させなきゃ!!



………………………



ハルカ
「…ふぅ、もう結構戦ったけど」

アチャモ
「チャモ~…」


今の所、進化の兆候は現れなかった。
もしかしたら、もっと先なのかもしれない…か。
しかし、現状の私にはこれが1番の近道だと思える。
私は腐る事無く、ただ目標を見つめた。


ハルカ
(…勝つんだ、絶対!)

アチャモ
「チャモチャモ!」

ジグザグマ
「ジグ…」

ハルカ
「ん…何?」


見ると、またジグザグマが何か拾って来た様だ。
私はそれをジグザグマの口から受け取る。


ハルカ
「…飴?」


まだ包装紙に包まれている飴だ。
赤と白のストライプ模様で、随分可愛らしい感じね。
私はおもむろに包装を解き、臭いや状態をしっかり確認してから、アチャモにそれを差し出す。
飴とか食べるんだろうか?


ハルカ
「…食べる?」

アチャモ
「チャモ?」


かなり小さな飴なので、多分ポケモン用だと思ったんだけど…
とりあえずアチャモは口を開けたので、私は下嘴に飴をちょこっと置いてあげた。
すると、アチャモはそれをゴクンと飲み込む。
さすがにちょっと焦った…飴って本来舐める物なのに。


ハルカ
「…もう、アチャモったらそそっかしいなぁ」

アチャモ
「…チャモ?」


私が苦笑してそう言うと、アチャモに突然変化が現れた。
アチャモの様子が急におかしくなり、体が光り出したのだ。
もしかしなくても、これは進化!?


ハルカ
「嘘っ!? 何で急に!?」


しかし、この際理由等どうでも良い!
私は嬉々としてアチャモを見つめていた・
遂に、遂にこの時が来たのだから!!



「シャモー!」

ハルカ
「出たーーー!!」


高らかな鳴き声と共に、アチャモは見事進化する。
私はすかさず図鑑に手を伸ばして確認した。


ポケモン図鑑
『ワカシャモ:わかどりポケモン』
『高さ:0.9m 重さ:19.5kg タイプ1:ほのお タイプ2:かくとう』
『野山を走り回って足腰を鍛える。スピードとパワーを兼ね備えた足は、1秒間に10発のキックを繰り出す』


ハルカ
「マジっすか!? 格闘タイプじゃない!!」


流石に驚いた。
あの臆病なアチャモが、よもやこんな格闘ポケモンになるとは!!
しかも秒間10発の蹴り!? 私より早いじゃない!
これなら岩タイプ相手でも、確かに勝てるに違いない!!


ハルカ
「よっしゃーーー!! 行くでジム戦!? ウチ等の力を見せたるんや!!」


嬉しすぎてついジョウト弁が出る。
しかし私はお構い無しだった。
ワカシャモをボールに戻し、すぐさまポケモンセンターに戻る。
まずは回復しないとね~♪



………………………



ハルカ
「さぁ来たわよ…絶対に勝つんだから!」


私は気合を入れて、再びジムのドアを潜った。
そして受付のリンカちゃんにこう尋ねる。


ハルカ
「リンカちゃん! ツツジさんいます?」

リンカ
「あ、ハルカちゃん!! あれ? もしかして会わなかったの!?」


リンカちゃんは私を見て早々にそう言った。
私は一瞬戸惑う。
しかし、よくよく過去を振り返ってみると…


ハルカ
「あんの天下無双お人好しジムリーダーお嬢様!!」


コンマ5秒で結論に達する。
恐らく…いや間違いなく私の後を追ってここを出たに違いない!!
更に考えると、すでに夜が更けて真っ暗になっている。
これでは今日ジム戦をするのは無理そうだし…


リンカ
「あの馬鹿娘、また携帯忘れて行ったのよ…だから連絡も一切来ないの!」

ハルカ
「って、公衆電話は?」

リンカ
「…多分目に入らない、あの娘本当に1度行動に出たら頭回らなくなるのよ~…ゴメンねハルカちゃん」

ハルカ
「あ、いや…良いです別に、私が探して来ますから」

リンカ
「そう? 悪いわね…あの娘も、もうちょっとジムリーダーらしくなればと思うのだけれど」
「バトルになればしっかりするのにねぇ…」

ハルカ
「…と、とりあえず探して来ます! 時間も時間ですから!!」

リンカ
「あ、これ持って行って! もし入れ違いになったらこっちから連絡するから!」


そう言って、リンカちゃんはツツジさんの携帯を私に渡す。
確かに、もし入れ違いになったら時間の無駄だからね。
私はそれをポーチに入れて、またまたジムを出た。



………そして、1時間後



ハルカ
「一体何処にいるのよーーー!?」


まさか全っ然、見付からないとは!!
街中をくまなく探したはずだけど、一向に見付からなかった。
人の通りも流石に減ってきてるし、前に見た妙なコスプレの男を何人か見かけた位。
ここで、ちょっとだけ嫌な予想をしてみる…


ケース1:街を出て、道路を彷徨っている(妥当過ぎて面白味は無し!)
ケース2:例の怪しい連中に拉致監禁(エロゲーか!)
ケース3:リンカちゃんも大ボケして実はもうジムに戻ってたり(ギャグマンガか!)
ケース4:既に殉職…(死にゲーか! コンティニュー案件でしょ!?)


ハルカ
「…とりあえず、街の外が妥当でしょう」


私は結局、特訓していた道路にまた向かうのだった…



………………………



ハルカ
(時間はもう21時…相当暗いわね)
(って言うか、本気で人っ子ひとりいないんだけど?)


一応草むらの方にも足を向けるが、気配は感じない。
いやポケモンの気配なら感じるけど、ツツジさんは見付からなかった。


ハルカ
「…いっそ呼んでみた方が良いかな?」


そう思いはするが、ちょっと戸惑う。
この場で叫ぶとなると、下手に野生ポケモンを刺激しかねない気がするからだ。
すると、当然バトルになるわけで…
とはいえ、暴れた方が反って目立つし発見されやすいかな?
等と一瞬思ってしまった…


ハルカ
(とりあえず却下…聴覚を頼りに探そう)


これでもかなり自信はある。
何なら絶対音感と言っても差し支えないわよ?
なので、私は早速耳を澄ましてみた。


『クスン…クスン…』


ハルカ
「…?」


今、何か聞こえた?
私はもう1度耳を澄ましてみる。


『クスン…クスン…』


ハルカ
「…泣き声?」


それともポケモンの鳴き声だろうか…?
だったらかなりやばい感じがするけど…丑三つ時には大分早いと思うわよ!?
私はここで少し考える…


コマンド

戦う ← ピッ!
逃げる


ハルカ
(と言っても、幽霊相手に物理攻撃が効くかしら?)


冷静に考えるとかなり無理そうだ…という事はこの際ポケモンで戦う方が良いのかな?


コマンド

自分で攻撃 ← ピッ!
ポケモンを繰り出す
モンスターボールを投げる


ハルカ
(そうよ! まずはやれるだけやってみないと!!)


やりもしないのに無理かどうかを決め付けるのは良くないわ!!
私は軽く足をステップさせ、いつでも蹴りを出せる様に重心を変える。
やはりこう言うのは先制攻撃!!
私は声のする方に向かって睨んだ。


ハルカ 「いざ、尋常に…勝負!!」


私はそう叫んで、重心を前に突進する。
距離はさほどない様で、微かに相手の姿が見えた気がした。
私は目標を確認し、その場からやや飛び上がって相手の顔面があるであろう先に向かって横蹴りを放つ。
当然、もう止まれない。


ハルカ
「昇天しなさい! この幽霊!!」


「ひぃっ!?」


ベキャアアアァァァァァァッ!!と、物凄い音がした。
が、それは私が木を蹴ったからであって、どうやら幽霊は屈んでかわした模様。


ハルカ
「あっれ~? おかしいなぁ…当たると思ったのに」


まさか、かわされるとは思ってもみなかった。
…が、その時バキバキバキ…ミシィッ!!と嫌な音が響き渡るのを私は確認する。


ハルカ
「ほえ…?」


思わずマヌケな声が出た。
それだけ、予想外だったのだ。
私が上を見ると、大きな木が倒れかかってきている。
当然、私は反射的にその場から逃げる事になった。


バキバキバキバィッ!! ドザアアアアァァァァァァァァッ!!!


ポケモン
「ニンニン!?」
ポケモン
「ミャ~!」
ポケモン
「スバスバー!!」
ポケモン
「ゴニョゴニョーーー!!」


色とりどりの鳴き声がオーケストラになって聞こえる。
ああ、そうか…皆もう寝てたのね。
私は迷う事なくコマンドを選択する。


コマンド

戦う
逃げる ←


ハルカ
「しっつれいしましたーーー!!」


まさに脱兎の如く逃げ出す。
その所業や、稲妻の如くだったであろう…しみじみ。



………………………



ハルカ 
「あ~びっくりした!」


私はまたカナズミシティに戻っていた。
しかし、我ながら凄まじい威力だったわ…その気になれば岩も砕けるしね♪
しかし、肝心の天下無双は見付からなかった…どうしよう?
携帯を見るも、連絡は無い。
私は思わず、ため息を吐く…すると、それに反応して声が放たれる。



「酷いですよ~…いきなり襲いかかるなんて~…グスッ」

ハルカ
「!? 何奴!?」


まさか、私のバックを取るなんて!
気配を全く感じなかった!?
が、振り向くとそこに奴はいた…!


ツツジ
「うう…ようやく見付かりました~…」


既に泣きじゃくり、ボロボロの顔になっている天下無双がそこにいた。
どうやら、アレほ幽霊では無かった様だ…
私は心の中でお茶目にテヘッ!と笑う。
そして、もう1度深くため息を吐く…そしてツツジさんにこう言った。


ハルカ
「ツツジさん…やっと見付けたわよ?」

ツツジ 
「うう…ひくっ」


かなり怯えた様子だわ…相当怖かったのね。
まぁ十中八九、私のせいなんだけど!!


ハルカ
「そんなに怖いなら、外に出なければ良いのに」


ツツジ
「うう…でもハルカさんがひとりで出て行ってしまって、もう夜遅くなるのに全然帰ってきませんし…」
「夜道は確かに怖いですけど、ハルカさんはもっと怖い目にあっているかもしれませんから…思わず飛び出て」
「でも、結局見付からなくて…道路をウロウロしてたら、急にハルカさんが…」

ハルカ
「あ、あはは…そうでしたか」


もうやる気が無くなった…さっさと帰ろ。
私は未だ泣き止まないツツジさんの手を無理やり引き、ジムに帰る。
ホントに、色々残念な美少女だ…



………………………



リンカ
「はい、タオル…もういい加減泣き止みなさいよ!」

ツツジ
「…はい、ごめんなさい」

ハルカ
「……」


ジムに帰ると、すぐにリンカちゃんが暖かいタオルを持って来てくれた。
どうやら粗方の予想は出来ていた様で、手回しの良い食事が食卓の前に並ぶ。
夜は基本的に誰もいないので、ほとんどはリンカちゃんが食事を作ってくれるそうだ。
ツツジさんも出来るには出来るそうだが、あまりやる機会は無いらしい。
ちなみにジムの奥に大衆食堂の様な場所があり、そこで食事を取っている。
まるで学校の学食をイメージする様な場所で、メニューもポピュラーな物ばかりだった。


ハルカ
「とりあえず、いただきましょう…」

リンカ
「そうね、ほら…冷めない内に」

ツツジ
「はい…それでは皆さん、いただきます」

ハルカ
「いただきま~すっ」
リンカ
「いただきます!」


こうして3人だけの食事が始まる。
会話は余り無かったけど、雰囲気は悪くなかった。
私は黙々と大盛り天ぷら蕎麦を食べる。
ツツジさんは狐うどん。
リンカちゃんはカレーライスだった。


リンカ
「しっかし、ハルカちゃんって凄いよね~! 2階から飛び降りても平気だし、木は蹴り倒すし!」
「もしかして、ポケモンも格闘系? だったらツツジヤバイよ~?」

ツツジ
「うう…そうなんですかぁ?」


何だか、かなり怖がられてる…
って言うか、やっぱり私は格闘系という第一印象から抜け出せないのね…


ハルカ
「…う~ん、とりあえず秘密にしておきます♪」


笑顔でそう言う事にしておいた。
って言うか、次に戦う相手に手の内さらけ出してどうするのよ!


ツツジ
「うう…それでも私はジムリーダーですから、全力で戦いますねっ」


そう言って、彼女はガッツポーズを取る。
かなり可愛らしいが、やはりお嬢的な感覚は抜けていない…この人、全部天然なんだろうか?
少なくともお嬢体質は天然そうだ…バトルではかなりマトモらしいのだけれど。
ハンドル握ると性格変わるアレよね…要は。


リンカ
「まっ、ハルカちゃんがこれだとツツジはダメそうね…いかにも修羅場を潜って来たって顔してるもん」

ハルカ
「……」


そうですか…やっぱそう見えますか。
私は心の中で空笑いをした。
もう良いわよ…どうせ私は母さんの娘だもの、おしとやかな女になんてなれっこないんだわ…
それでも、自分で自粛しようとは思った。



………………………



ハルカ
「…はぁ」


食事を取り、ひとっ風呂浴びて私は用意された部屋で休む。
ベッドの上に仰向けに寝転がり、力を抜く。
今日はしんどかった…本当に!
というわけで、おやすみ私…



………………………



そして次の日、時刻は朝の9時。
公式なポケモン協会所属のポケモン審査員(要は審判)が先日のバトルフィールドに立ち、私とツツジさんはその場で睨み合っていた。


審判
「それではこれより、ポケモンリーグ公認! カナズミジム公式、第172回ジム戦を行います!」


ワアアアアアァァァァァァァッ!!


途端に歓声が沸く。
まだ朝だというのに観客は大勢集まり、バトルフィールドの周りには沢山の椅子が用意されていた。
なお、バトルフィールドはジムごとに個性があるらしく、カナズミの場合は岩をベースにした砂地のフィールド。
広さは十分な広さがあり、学校の体育館位の広さがある。
一応場外ラインが敷かれてはいるが、意図的に出たりしない限りは失格にならないらしい。
フィールドには多くの岩や砂で地面が構成されている。
間違いなく、岩にとって有利なフィールドだろう。
中には人の身長を軽く超えるような大岩も多数設置されているので、場合によってはかなり戦略を考える必要がありそうね。


実況
『まず挑戦者の紹介です!! 今回の挑戦者は、ミシロタウンからやってきた旅のトレーナー、ハルカ選手ーー!!』


突然実況がそう呼び、歓声が私に飛び交う。
何だか、大きい大会の様な環境ね。
カナズミジムは歴史もあるらしいし、大きなジムだからこういう風になったんだろうか…?
少なくともコガネ時代の父さんだと、結構閑散としたジム戦をやっていた気がする。
とりあえず、私は観客に礼をして答えた。


実況
『そしてぇ、カナズミジムの誇る美少女ジムリーダー! 岩にときめく優等生! ツツジーーー!!』


当然の様な大歓声が起き、ツツジさんはそれに対し手を振って観客に答えた。
流石に地元の人気って所かしら? まるで地鳴りの様な声援だわ。
実際、観客はカナズミ中から集まったりする事も多く、今回の様に満員のケースも少なくはないらしい。
用意されている椅子が足りなくても、立ち見で済ませている人もかなりいる様だ。


審判
「制限時間は30分で、使用ポケモンは2体…ポケモンの途中交代は挑戦者のみ有効とします!」
「なお、試合中の図鑑使用は閲覧のみ! それ以外の用途での使用は失格と見なされる事もあるので注意する事!」
「なお、使用できる持ち物はこのジムより支給される『キズぐすり』ひとつのみとし、使用する場合は手を上げてコールする事!」
「コール後、私の方から試合を中断しますので、制限時間1分以内に使用を完了してください」
「なお、中断コールの後に加撃を行った場合はペナルティを課します!」
「以上が基本ルール! 挑戦者、何か質問は?」


粗方説明を終えると、いかにも体育会系な審判が私にそう告げた。
私は冷静にこう答える。


ハルカ
「いえ、結構です」

審判
「では、これより試合を開始する! まずジムリーダー、最初のポケモンを!!」

ツツジ
「ハルカさん…いくら親友でもバトルでは敵同士です」
「ですから、手は抜きません!!」


ツツジさんの顔はまさに迷いの無い澄んだ瞳だった。
そして、その顔はまさに真剣そのもの。
確かにこういう時『だけ』ジムリーダーね。
ちなみに親友って…いつの間に?
だがツッコム余裕も無く、ツツジさんはポケモンを繰り出してくる。


ツツジ
「お願い、『イシツブテ』!」

イシツブテ
「ツブッテ!!」


とりあえず、私は図鑑を参照する。
一応閲覧はOKって聞いてるので大丈夫でしょ?


ポケモン図鑑
『イシツブテ:がんせきポケモン』
『高さ:0.4m 重さ:20.0kg タイプ1:いわ タイプ2:じめん』
『長生きのイシツブテ程、体の角は削れ丸くなっていくが、気持ちはいつまでもごつごつ尖って荒々しいのだ』


成る程、昨日も見たけど…かなり頑丈そうね。
見た目は石に顔があって、手が生えているといった感じ。
体は小さくてもらかなりのパワーが予測出来るわね。


審判
「それではチャレンジャー、最初のポケモンを!」


私は図鑑を一旦直してボールを手にする。
さて…作戦通りに行くとは限らないけど。


ハルカ
「先発は任せるわ、『キャモメ』!」

キャモメ
「キャモ~」

審判
「…ではFight!!」


審判の声と共に、ポケモンは臨戦体勢を深める。
キャモメは飛行であるが同時に水タイプ。
岩タイプの攻撃には相性が悪いが、キャモメには水タイプの技がある。
そして予測だけど、スピードでは勝っているはず!
私はキャモメを信じて、強気に指示を出す。


実況
『さぁ、ついに試合開始だぁ!! 果たして勝利はどちらの手に!?』


ツツジ
「飛行タイプ…でしたら! イシツブテ、『いわおとし』!!」

ハルカ
「来たわ、予想通り!! キャモメ『みずでっぽう』!!」

ツツジ
「!?」

イシツブテ
「ツブー!!」

キャモメ
「キャモ~」


かなり荒々しい感じのイシツブテに対し、呑気なキャモメ…明らかにヤバそうだけど、キャモメは真面目に技を繰り出した。
昨日パッと見た感じだったけど、あの『いわおとし』と言う技はかなり出が遅い。
恐らく、地面や岩を叩く事で発生する技。
だからモーションが長く、その前に『みずでっぽう』は決まるはず!


ガガガガガッ!! バシャァン!!


キャモメ
「キャモ~!」
イシツブテ
「ツブッ…!」


実況
『お~っとぉ、開始早々互いのポケモンが相打ちだぁ!! これは立ち上がれるのかぁ…!?』


ほぼ同時に互いの攻撃がクリーンヒットした。
やはり、予想よりも遥かに早かったか…!
それも何処から岩が来るのか解らない…だから、相手の動きが止まっている時を狙うしか無かったのね。
キャモメにも不安があった為、若干迷いが生じた結果か…
相手よりも先に撃ち込めていれば…とは思うけど、それはただの結果論だ。


審判
「…両者戦闘不能!!」

実況
『何と、同時ダウン!! いきなり波乱のスタートだぁ!!』


それが判定だった…どうやら予想以上にイシツブテも水に弱かったみたいね。
これで、一応はタイ…しかもお互いに切り札は隠してる。
この切り札が勝負を決めるのだろう…そう思うと、流石にゾクゾクしてくる。
私は一晩かけてワカシャモの技を学習した。
それでもぶっつけ本番故に、どうなるかは解らないのだ。
後は、あの娘を信じるしかない!


ツツジ
「…まさか、あんな戦法で来るとは思いませんでした」
「岩と地面は、両方水に弱いタイプですから…ああなると回避は出来ませんでしたね」


そう言って、ツツジさんはイシツブテをボールに戻す。
私も同じ様にキャモメを戻した。
そして心の中で称える、ありがとう…キャモメ。


審判
「それではリーダー! 2体目のポケモンを!」

ツツジ
「…では、行きます! これが私の最愛のポケモンです!!」


「ノパー!」


実況
『出たぁ!! ジムリーダーが誇るエースポケモン・ノズパァス!! 果たしてこのポケモンを打ち破る事が挑戦者に出来るかぁ…!?』


ハルカ
「あのポケモンは…?」


ポケモン図鑑
『ノズパス:コンパスポケモン』
『高さ:1.0m 重さ:97.0kg タイプ:いわ』
『磁石の鼻はいつも北を向いている。ノズパス同士は磁石が反発し合う為、近くで顔を合わせる事が出来ない』


ノズパス…それは一見すると、モアイの様にも見える見た目だ。
そしてそのモアイに、短く太い手足をつけたような姿。
図鑑によると、赤く大きな鼻の部分は磁石。
要は方位磁石みたいな性質を持ったポケモンらしい。
さすがに1mあるノズパスは、かなり大きく見えるわね…
前に見たヘルガーはもっと大きかったけど…!
でもら大きさで強さが決まらないのがポケモンだもんね!
私はジャッジがコールする前に、最初の相棒を繰り出して答えた。


ハルカ
「頼むわ、『ワカシャモ』!!」

ツツジ
「!? やはり…!」


実況
『お~っとぉ、挑戦者は格闘タイプで応戦! 最後まで相性で勝負だぁ!!』


ワカシャモ
「シャモーー!」


高らかに鳴き叫び、ワカシャモは姿を現す。
問題は性格上…どうなるか。
あの臆病なアチャモがこびりついているだけに、不安は拭い去れない。
私はあえて呼びかけてみる。


ハルカ
「ワカシャモ! 大事な局面よ、当然戦えるわね!?」

ワカシャモ
「シャ、シャモー!」


ちょっと戸惑った様だが、ワカシャモら深く頷いた。
ちゃんと覚悟は決めてる! なら、私はこの娘を信じるだけ!!


審判
「Fight!!」


ジャッジのコールと同時に、私はワカシャモに指示を出す。
今度はこっちからよ!!


ハルカ
「ワカシャモ! 『にどげり』!!」

ワカシャモ
「シャモー!!」


ワカシャモは高速で突っ込み、速度が明らかに遅いノズパスの正面から前蹴りを2回放つ。
ドカッ! ガコオッ!!と、まさに岩を蹴る様な音でノズパスは1m程吹っ飛んだ。
まさに効果は抜群といった感じね!


実況
『ワカシャモの『にどげり』がクリーンヒットォ! 効果は抜群だぁ!!』


ハルカ
「良いわ、これなら行けそう! ワカシャモ、もう1発!!」

ツツジ
「させません! 『がんせきふうじ』!!」

ハルカ
「!?」


いきなり知らない技をコールされる。
私は止め様もなく、ワカシャモは同じ様に真っ直ぐ突っ込んでしまった。


ノズパス
「ノッパッ!」

ワカシャモ
「シャモ!?」


ドガァッ!! ズドドドドドッ!!


ワカシャモが蹴りに入る前に、ノズパスはその場で倒れこむ様に地面を右手で叩いた。
一瞬地面が揺れたかと思うほどの衝撃が走り、それと同時にワカシャモの周りの地面から岩がせり上がって、ワカシャモの全身を包み込んでしまったのだ…
このままでは、当然動けない!


実況
『ここでジムリーダーの得意技、『がんせきふうじ』が決まったぁ!! ワカシャモの動きが止まったぞぉ!!』


ハルカ
「これが…『がんせきふうじ』!」


まさに『封じ』と言う言葉がピッタリだ…これでは攻撃も防御も出来はしない!


ツツジ
「ノズパス! 『たいあたり』です!」


ツツジさんがそう命令すると、ノズパスはヨロヨロと起き上がってすぐに突っ込んで来る。
そして、まるで動く事の出来ないワカシャモに向かって、包んでいる岩ごと砕き割った。


ワカシャモ
「シャモー!」

ハルカ
「ワカシャモ!?」


まさに強力な一撃。
ノズパスの100kg近い重量が突っ込んできたのだ、相当なダメージだろう…
私はすかさず手を上げて審判にコールする。


審判
「タイム! 一時バトルを中断する!!」
「チャレンジャーは、この時間で薬を使用せよ!」

ハルカ
「……」


私は支給されていた『キズぐすり』をワカシャモに吹き掛ける
スプレータイプの薬なので、直接患部に吹き付けてワカシャモは体力を回復させた。
しかしながら、この量だと全快とまではいかない…予想以上にダメージはあったみたいね…
そして私は、ツツジさんに聞こえない様にワカシャモに作戦を伝えた。
何せ、相手はまだ道具の使用が残っている。
このままじゃ絶対勝てない…だから、打倒する為にはアレを破るしかない!


ジャッジ
「時間だ、試合を再開する!!」


実況
『さぁ、仕切り直しだぁ…この状況を挑戦者は打破できるのかぁ!?』


ハルカ
「やるに決まってるじゃない…! 作戦通りに頼むわよ!?」

ワカシャモ
「シャモー!!」

ツツジ
「相手は追い詰められています、ノズパス…落ち着いて!」

ノズパス
「ノッパー!」

審判
「Fight!!」

ハルカ
「ワカシャモ!」

ワカシャモ 
「シャモ!」


私が名前をコールしただけで、ワカシャモは前に突っ込む。
当然ながら技をコールしていない為、相手は何をしてくるかが読めない。
これが前もってワカシャモに伝えた作戦第1段階だ。
前もって伝えておけば、ポケモンはこういう風に自分でも判断してくれる。


実況
『ワカシャモの先制! ジムリーダーやや反応が遅れたぞぉ!』


ツツジ
「く…どんな技が来ようとも! ノズパス! 『がんせきふうじ』です!!」

ノズパス
「ノッパー!!」

ハルカ
「今よ、ワカシャモ跳んで!!」

ワカシャモ
「シャモー!!」

ツツジ
「あ!?」


今度はワカシャモが5メートル程の高さまで一気にジャンプし、空中で技をかわす。
当然ながら、ノズパスが地面を叩くという事は地面から岩が来るという事。
幸い、ワカシャモの周りには高い岩が無く、あの位置にはどんな岩も届かないはず。


実況
『ワカシャモ、『がんせきふうじ』をかわしたぁ! 見事な反応だ!』


ハルカ
「ワカシャモ、そのまま…」

審判
「タイム! バトルを一時中断する!!」


私はズッコケそうになる…ワカシャモもタイミングをすっかり外して、そのまま着地してしまった。
ツツジさんがここでタイムをかけたのだ…かなりいいタイミングね、流石はジムリーダー。
ツツジさんはノズパスに『キズぐすり』を与えている…これで作戦通りと言うわけにはいかなさそうね。
正直、千歳一遇のチャンスを逃したと言って良いかも…


実況
『流石ははジムリーダー…あそこでのタイムはまさに絶妙! これで挑戦者は更に苦しくなったぞー!』


審判
「時間だ! 試合を再開する!!」

ツツジ
「ノズパス、頑張って!!」

ノズパス
「ノパッ!」

審判
「Fight!!」

ハルカ 「……」
ワカシャモ 「……」

ツツジ 「……」
ノズパス 「……」


今度はお互いに静かな出だしを迎える。
もう下手な小細工は通じないでしょうね。
一応、単純な有利不利だけならこっちの方がタイプ上優勢のはず。
それでも、ノズパスの硬さは私の予想を越えていた。


実況
『互いに隙を窺っている…まさに嵐の前の静けさ! 果たしてどちらから仕掛けるのか!?』


ハルカ
(正直、一撃で大ダメージを与えられると思っていたのに…)


そう、思ったよりも相手は平気そうだったのだ。
別にやせ我慢の様には感じない…となると、ワカシャモ自身の問題でしょうね。
元々、アチャモの時点でとにかく攻撃が下手だった。
『ひのこ』とかは上手く出来るのに、『ひっかく』とかをするのはすこぶる苦手だったのだ。
要するに肉弾戦が基本的にダメ…これはワカシャモになっても改善されてなかった。
だから、予想以上にダメージが与えられていない。


ツツジ
「どうしました、ハルカさん…? まさか怖気づいたとは思えませんが」


ツツジさんは予想外に私を挑発してくる。
つまりそれは先に技を出したくない…?
でも先に動き、果たしてあの『がんせきふうじ』を避けられるだろうか?
ノズパスは、現在高い岩に囲まれている位置に立っている。
明らかにさっきの作戦を意識しての対策だわ。
正面から突っ込むだけでは…


ハルカ
(…そうか!?)


私は突如閃いた。
だが、それをワカシャモに伝える術は無い。
まさに一か八かの作戦…
でも、やらなきゃ! 私は、チャレンジャーなんだから!!


ハルカ
「ワカシャモ、行きなさい!! 私は貴女を信じてる!!」

ワカシャモ
「シャモーーー!!」


私の言葉に反応し、ワカシャモは正面から小細工無しに突っ込んだ。
これで良い、こうすれば!


実況
『意を決して挑戦者が出る! リスクを打ち破る勇気が実を結ぶのか!? 注目の一瞬だぁ!!』


ツツジ
「ノズパス、『がんせきふうじ』です!! これで終わりにしましょう、ハルカさん!!」

ハルカ
「ワカシャモ!、地面を叩きなさい!!」

ツツジ
「ええ!?」


私の指示が余程予想外だったのか、ツツジさんが思わず声をあげる。
だが、当然ノズパスは止まれない。
そしてノズパスの『がんせきふうじ』が発動…最初と同じ様に地面から岩がせり上がった。
それとほぼ同時に、今度はワカシャモが地面を強く叩く。

ドガアァッ!!!と、凄まじい音がする。
そして、最初と同じ様に岩石がワカシャモを包み込んだ。


実況
『『がんせきふうじ』がまたも炸裂! ワカシャモは大丈夫なのかぁ!?』


ツツジ
「…ノ、ノズパス! 『たいあたり』です!!」


ツツジさんがやや迷いを持ってそう指示した。
つまりコレはまさに絶好の機会!
私は聞こえているであろうワカシャモに指示を出す。


ハルカ
「ワカシャモ!! 気合入れなさい!! そんな岩…蹴り砕け!!」

ツツジ
「!?」

ノズパス
「ノッパー!!」

ワカシャモ
「シャー…モーーーーーー!!!」


ドッガアアァァァァァァァッンッ!!!と、とてつもない音が響き渡る。
それは一瞬の出来事だった…
ノズパスが『たいあたり』で岩ごと砕こうと突っ込んで来たのと同時、ワカシャモは凄まじい蹴りで岩を蹴り砕いたのだ。
そして、無防備に体当たりしてくるノズパスの頭をワカシャモは2度目の蹴りで迎え撃った。
ちなみに、岩石封じの中で何故動けるのか?という疑問には、最初のアレで答えられる。
確信は無かったけど、地面を強く叩く事で『がんせきふうじ』の中に無理矢理隙間を開けたのだ。
かなり無茶な戦法だったけど、蹴りを打つだけの隙間は現実に開けられたみたいだし♪


ノズパス
「ノッ、ッパ~……」


ズッドオオオオンッ!!!と、激しい落下音。
間違いなく、強烈なダウン!!
私は勝利を確信し、ガッツポーズを取った。


ツツジ
「ノズパス!?」

審判
「…ノズパス戦闘不能!! よって、勝者…チャレンジャー、ハルカ!!」


ウオオオオオオオオオッ!!!と、瞬間大歓声。
私の勝利が告げられ、ジム全体が揺れ動くかの様に歓声が巻き起こったのだ。
そしてその歓声の中…ノズパスをボールに戻し、ツツジさんが私の元に来る。
彼女の顔は、負けても晴れやかだった。


ツツジ
「…負けました、お見事ですハルカさん」
「これが、ポケモンリーグ公式認定のジムバッジ…『ストーンバッジ』です」


私はそれをツツジさんから受け取り、握り締める。
勝てた…正直不安だらけだった。
でも、私は自分の力とポケモンの力で見事に勝てたんだ!


ハルカ
「やったわよーーーーーー!!!」

ワカシャモ
「シャモシャモ…♪」


私は両手を振り上げて、観客に答える。
大歓声の中、ワカシャモは優しい笑顔で笑っている様だった。
そう、この娘はこういう性格だから…だから余計に不安だったけど、その分嬉しさも大きい。


ツツジ
「ハルカさん、私…もっと強くなります」
「ハルカさんの様に、もっとポケモンを信じて♪」

ハルカ
「うん、ツツジさんならきっともっと強くなる! だから…」

ツツジ
「はい!」


私は笑顔で笑い合い、同時にこう言った。


ハルカ
「また、戦いましょう!」
ツツジ
「また、戦いましょう!」



………………………



戦いの後、ジムの大衆食堂にて。
ちなみに時間はちょうど昼で、今日は私達3人の貸切らしい。


リンカ
「いやぁ…感動したわぁ~もう、ツツジのベストバウト決定だね!」

ツツジ
「はい…そうですね」

ハルカ
「…あの、食事までいただいちゃって、どうもありがとうございます!」

リンカ
「良いのよ! ツツジは負けちゃったけど、ハルカちゃんの事も応援したいから!!」

ツツジ
「そうです、親友のハルカさんが頑張ってくれれば、私ももっと頑張れますから!!」


そう言って、ふたりは笑って私の勝利を祝ってくれる。
親友…ね、まぁ悪くはないか。
女の子の友達は実の所あまりいなかったからそれなりに嬉しい。
ツツジさんは普段、天然でおっとりしてて、天下無双超お人好しおっちょこちょい天然ジムリーダーお嬢様だけど、ジム戦では本当にプロそのものだった。
この戦いはきっと私にとって力になる。
そう思えるからこそ…私もツツジさんも、強くなれるのだろう…
今は、そう…思えた。


ツツジ
「…ハルカさん、次は何処に行くのですか?」

ハルカ
「そうですね~、とりあえず歩いていける所までは…と思ってますから、とりあえずカナシダトンネルって言う所抜けてみようかと」

ツツジ
「…あれ、でもそこは」

リンカ
「うん、確か…」


ふたりは顔を見合わせる。
どうも何か問題があるらしい。


ハルカ
「どうかしたんですか?」

ツツジ
「…確か大きな岩が道を塞いでいるので、今は通行止めしてまだ開通していないって話なんですよ」

リンカ
「うん、いくらハルカちゃんでも大岩を砕くのわねぇ…」

ハルカ
「う~ん、小石程度なら簡単に出来るんですけどね…」

リンカ
「あははっ、まぁとりあえず無理無理!」


笑ってそう言われる。
じゃあどうしよう? いきなり行き先に困るんだけど…


ツツジ
「う~ん、でも近々開通すると言う話もありますし、とりあえず行くだけでも行ってみては?」

リンカ
「そうね、他に道も無いんだし」

ハルカ
「そうですね、そうします」


こうして、私は美味しく昼ご飯を頂き、カナズミジムを後にした。


ハルカ
「さ~って、それじゃあとりあえず行きますか…って、あれ?」


私がジムを出て大通りに出ると、向かい側の大きなビルからひとりの男が駆けて来た。



「邪魔だー! どけどけー!」


大きな足音をたて、例によって見た事のある格好の男が駆け抜けて行く。
あのコスプレだ…生きていたのね。
ちなみに、何か荷物を持っていた。
もしかして、前に言っていた奴?


スーツ姿の男
「待ってぇぇぇぇぇぇ! その荷物を、返してぇぇぇぇぇぇぇぇ!!」


情けない叫び声をあげながら、力なく男が追いかけて行く。
説明するまでも無くこの前の変な男ね。


ハルカ
「…まぁ進行方向だしね」


私はそう納得して進む事にした…あくまでもゆっくりと!



………………………



そして、私はカナズミの北東出口で情けない男を見付ける。
何か途方に暮れているわね。
まぁ間違いなく逃げられたんでしょうけど!
しかも、ここからは草むらがあるから下手に追いかけられない…つまりこの人トレーナーじゃないわね?
トレーナーなら野生ポケモンを倒しながら追えるはずだし、事実コスプレは行ったみたいだ。
あれ? ってことはあいつトレーナーだったのかな?
なんて事を思うが、この際気にしなかった。
とりあえず無視して道路に向かおう。


スーツの男
「あ、君は確かトウカの森で会った!」


そして当然の如く私に気付く。
しかも顔覚えられてたし…!
私は仕方無いので話を聞いてあげる事にした。


スーツの男
「実は僕、デボンコーポレーションって言う所の社員なんだけど」
「突然、あの男に忍び込まれてあの荷物を盗まれたんだ」
「あの荷物はとても大切なものなんだ! だからお願い! 取り返して来て!!」


成る程デボンね、一応知っている…って言うかそれ位有名。
色々と機械とかに精通していて、ポケモン関係の物もかなり開発していると聞く。
まぁ、それは置いておいて…


ハルカ
「…はぁ、しょうがないなぁ」


確か情報によるとまだ開通していないはずらしいので…どうせ立ち往生しているでしょう。
ここからは116番道路…特訓した時も、ツツジさんを捜しに来た時も来ているので、流石にもう地形は解っている。


ハルカ
「とりあえず、待っててよ? すぐに終わらせて来るから」


とは言うが、今回はちょっと先制攻撃は止めよう…マジで捕まるかもしれない。
とりあえず草むらを駆け抜けながら、私はカナシダトンネルに向かった。



………………………



ハルカ
「…着いたわ、まぁ一本道だしね」


あれから30分弱、私は目的地に着いていた。
ちなみに現場の人から聞いても、やはりトンネルは開通していないそうで。


ハルカ
「…まぁ、とりあえずはね」


「うおおお! ワシのピーコちゃんがぁ!!」


何やら泣き叫んでいる老人を発見する。
流石に何事かと思い、思わず話しかけた。


ハルカ
「あの、どうしたんですか!?」

老人
「ああ…さっき、ワシとキャモメのピーコちゃんが一緒に散歩をしていたら…」
「変な格好をした男が、無理矢理ピーコちゃんを拐ってこの中に入って行ったんじゃ」
「もし、ピーコちゃんに何かあったら、ワシは…ワシは……」
「うおおおおおんっ! ピーコちゃーーーん!!」


これはれっきとした犯罪ね!
人のポケモンを拐うなんて良い度胸してるわ!!
途端に私の攻撃スイッチが入り、指をボキボキと鳴らす。
でもリミッターはかけないと…殺したら私が追われちゃうわ。
とりあえず、勢い良く私はトンネルの中に入る。


ハルカ
「…そんなに広くは無いわね」


トンネル内は割と明るく、確かにまだ工事中と言った感じだった。
特に加工とかはしていなく、単純に掘り進んだだけの自然なトンネルだ。
長い通路に出ると、そこは大の大人がふたり通れる位の幅だった。
そして、私が歩いて行くと、目標を見付ける。


カツーン……カツーン……


異様に私の足音が無気味に聞こえた。
そしてその足音を聞いて異様にビビるコスプレの男が…


コスプレ
「んがぁ!? テメェは!?」


間違えるはずもなく、そいつは前に私の胴回し回転蹴りでKOされた男だった。
男は私を見ると、かなり後ずさる。


コスプレ
「く、来るのか!? 来るなら来いよ!!」

ハルカ
「震えながら言う台詞じゃないわね…」


私がそう言って、指をボキボキと鳴らしながら近付く。
するとコスプレは明らかに怯えた声でこう叫んだ。


コスプレ
「ちっくしょーーー! 奪ったポケモンは何の役にも立たないし、トンネルは行き止まりだし!!」
「やい! 俺と勝負するなら覚悟しろ!?」


やや錯乱気味にそう言って、男はモンスターボールを投げた。
そして、そこから現れたのは…


ポチエナ
「ポッチー!!」

ハルカ
「あらまぁ可愛い♪」


思わずそんな言葉が出る…まさに子犬と言った感じね。
確か最初に私が蹴ってしまったポケモンでもある…あれもポチエナだったわね…実に可哀相な事をしてしまったと反省する!
私はそんな事を思いながらも、ボールを取り出した。


ボンッ!


キャモメ
「キャモ~」

コスプレ
「何ぃ! トレーナーだったのかぁ!?」


予想通りの答え…まぁ良いけどね!
とりあえず、やるからには容赦せん!!


ハルカ
「キャモメが役立たずだとか好きに言ってくれた礼よ!? キャモメ『みずでっぽう』!!」

キャモメ
「キャモ~」


ドバンッ!


ポチエナ
「キャインッ!」

ハルカ
「うわ…やられた鳴き声も可愛い」


ポチエナはキャモメの『みずでっぽう』1発で吹っ飛んでしまった。
さすがにキャモメの技も威力が高くなってきたわね…水の塊がかなり大きくなってきてるし。


コスプレ
「ぐは…まさか、一撃とは…!」


コスプレ野郎は余程悔しいのか、その場でぐったりと項垂れる…失礼な奴ね!?


ハルカ
「さぁ、奪った物全部返しなさい! さもないと…」

コスプレ
「くっそ~…情報では、ただ単にデボンの荷物を奪うだけの簡単な物じゃなかったのか?」
「けっ、こんなモン返してやるよ!!」


そう言って男は私に荷物を投げ付ける。
私が片手でそれをキャッチすると、男は私の脇を抜けて逃げて行った。
見ると、ピーコちゃんも無事の様だ。


ハルカ

「おおよしよし…大丈夫?」

キャモメ
「モ~メ♪」

老人
「おお! ピーコちゃん、無事じゃったか!」


入れ替わりに、老人が中に入って来た。
そして、ピーコちゃんを優しく抱き締める。
感動の再会ね…どれだけ可愛がっているかが解るわ~。


老人
「ピーコちゃんを助けてくれて本当にありがとう!」
「ワシの名は『ハギ』…103番道路の海辺に住んでいる元船乗りじゃが、もし何か手伝える事があったら言ってくれ!」

ハルカ
「あ、はい…」


船乗りねぇ…と言うことは、海を渡れたり出来るのかな?
だとすると、他にも探索地域が増えそうだけど…


ハギ
「さ、それじゃ家に帰ろうかピーコちゃん」

ピーコ
「モメ~♪」


そう言ってハギ老人とピーコちゃんは行ってしまった。
とりあえず私はひとりになる。


ハルカ
「…ここはやっぱり通れないか」


当然ながら、やや巨大な岩が文字通り行く手を阻んでいた。
いくらなんでもこれは私には無理だ…
って言うか、人間には出来ない気がする。
せめて道具が無いとねぇ?
とりあえず私はトンネルを出た。



………………………



外に出ると少し太陽の光が眩しかった。
単にトンネルの中が暗かったから反動でそう感じるだけだけど。
私は荷物の入ったリュックサックを背負い、また走って帰る事に…


ハルカ
「しっかし、ここんとこ気が休まらないわね…」


やたらと疲れる気がする。
ジム戦はともかく、何でコスプレの相手までしなければならないのか?
私はこれから起こるであろう嫌な予感に不安を抱き、本気でこれからどうしよう?と思うのであった…





…To be continued

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