第3話 『天下無双のお人好し』

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読了時間目安:46分

この作品には残酷表現があります。苦手な方は注意してください

ジグザグマの拾ってきた薬で、何とか一命を取り留めたアチャモ。
アチャモの回復を待ち、ハルカは改めてトウカシティを出発する。
謎のトレーナーカガミにリベンジを誓うハルカ。
ハルカの本当の冒険は…ここからだ!
ポケットモンスター ルビー 『ハルカジェネレーション』



第3話 『天下無双のお人好し』





ハルカ
「勇気リン・リン! 元気ハツ・ラッツー! …以下略!!」


…と、私はどこぞの国民的アニメの主題歌を熱唱しながら、ひとり森の中を歩いていた。
時刻は現在午前7時頃…ちなみに、昨日はまたトウカで泊まる事になったので日を改めた。
とりあえず当面の目的であるカナズミシティに行く為、この森を抜けなければならないのだ。
で、それに当たって当面の問題なのが…


ハルカ
「…虫、多すぎ!!」

ジグザグマ
「ジグジグ…」


予想はしていたけど、ここまで多いとは思わなかった。
ちなみにここまで野生ポケモンと30戦程こなして、その比率は…
虫8:ジグザグマ1:スバメ1!!
他にもポケモンがいそうな感じだけど、今の所はこんな比率だった。
その間、ジグザグマも色々ボールやら薬やら拾って来てくれる。
とはいえ中には見た事もない道具が多く、次第にかさばっていくのも問題だった。
ちなみにあれから新しいポケモンはゲットしていない。
その代わりと言っては何だけど、レベルも順当に上がったのかケムッソがカラサリスに進化したわ!

そしてそれは…今から約1時間前に遡る。



………………………



ハルカ
「出来れば、今日中に抜けられると良いんだけど…」


正直ここで野宿はキツイわ…『むしよけスプレー』でも買っておけば良かったかも。
幸いアチャモのお陰で、バトルに苦労は無いのが救いか。
とりあえず、どんな虫が出て来ても炎で一掃してくれるもんね~
たまに木が燃えてかなり焦ったけど…新人のキャモメがそこは活躍してくれた。
くれぐれも素人トレーナーは火の(ポケモン)用心を怠らない様に…! ちゃんと水(ポケモン)を用意しましょうね♪


ハルカ
「にしても、気が付いたらアチャモとジグザグマばっかり育ってるなぁ~」


ジグザグマ
「ジグ?」


元々、最前線で戦わせているので当然といえば当然なんだけど…
ただ、実の所問題はタネボーとアメタマにある。
このふたり…かなり戦えないのよね。
レベルアップ目的で優先的に出しても、ここのポケモンは今までの野生ポケモンよりちょっと強いし、途中でアチャモやジグザグマに交換する事が殆どだったのよね…
(特にタネボー!!)

とはいえ、ちょっとでも戦闘に参加すれば若干ながらも成長しているみたいだし…(多分!!)
こんな地道な事がいつか実を結ぶと私は信じ、ケムッソも含めた、タネボー、アメタマの3体は優先的に前に出していたのだ…
とはいえ、その結果代わりにトドメを差すアチャモ、 ジグザグマ、キャモメの3体は逆に突出してレベルが上がってしまったのも事実。

アチャモ達3体は既に十分に強くなっており、この森のケムッソやジグザグマはほとんど一撃で倒せるレベルだ…
更に新しい技も覚えたりと正に好調子!
ジグザグマは『ずつき』を覚え、キャモメは新たに『ちょうおんぱ』を覚えた。
対して、肝心のタネボーはやっと覚えたのが『せいちょう』…攻撃技じゃないぢゃん!!
アメタマは何とか『でんこうせっか』を覚えてくれるが、イマイチ攻撃力が低い。
そして……


ハルカ
「今だ恵まれない感じのケムッソか~…」


技は一応『どくばり』を覚えたんだけど、どうにも連戦はキツイ!
努力の甲斐あって何とかひとりでも戦う事は出来るんだけど…
今は薬も駆使しながら、私はケムッソを重点的に戦わせていた。

…とそんな所へ、ガサッ!と草むらを揺らす音が!


ハルカ
「…?」

ジグザグマ
「ジグ…」


ガサ、ガササ!と、何かが動く聞こえる。
距離はおよそ5m…ちなみにここは森の中といっても日差しは入ってくるので視界はそんなに悪くない。
ジグザグマは何かの気配に警戒するも、私はそれを制してケムッソを先に繰り出した。


ハルカ
「ジグザグマは退がってて! ケムッソ頼むわ!」

ジグザグマ
「ジグ…」

ケムッソ
「ケム…」


ケムッソは小さな鳴き声をあげながらも、どうにもボ~っとしていた。
これがやっぱり不安なのよね~



「マユマユ…」

ハルカ
「…あれ?」


見ると、見た事のないポケモンが出て来た。
私はすかさず図鑑出して参照する。


ポケモン図鑑
『マユルド:さなぎポケモン』
『高さ:0.7m 重さ:11.5㎏ タイプ:むし』
『マユルドの体は口から出した細い糸が体を包み、硬くなった物。繭の中で進化の準備をしている』


ハルカ
「あれ…これってケムッソの進化系なんだ」


ふと、進化ルートのデータに目が行く。
って事は、私のケムッソもコレになるわけかぁ…ならゲットはしなくても良いわね。
私はそう思い、ケムッソにすかさず指示を出した。


ハルカ
「ケムッソ、『どくばり』!!」

ケムッソ
「ケム」


ケムッソの小さな口から細い針がいくつも発射される。
そしてそれ等はマユルドに全て直撃した。
…が。


マユルド
「マユ~」


全く効いてないご様子…結構タフね。
だが、相手は反撃する気配も見せなかった。


ハルカ
「…やる気あんのかなぁ?」

マユルド
「マユ~」


私はとりあえず、そのままケムッソに攻撃させる。
当て続ければ、流石にいつかは倒せるでしょ!?


ハルカ
「ケムッソ、今度は『たいあたり』よ!!」

ケムッソ
「ケム…」


ケムッソはどうにも気合の入らない鳴き声を出し、ゆっくりとマユルドに突っ込んで行く。
…が、ドカッ!とケムッソがぶつかった所で逆にケムッソが弾かれてしまった。
それを見て思わず私は驚く。


ハルカ
「うっそ、そこまで硬い!?」

マユルド
「マユ~」


そしてマユルドは全く効いていないご様子…
いくらなんでもタフすぎでしょ…流石は進化系?


ハルカ
「ん? まさか…」


私はここでピン!と来て、図鑑を見る事にした。
そして、マユルドの覚える技の一覧を見た時点で確信する。


ハルカ
「やっぱり硬くなってるー!?」


そう、マユルドの技のひとつ『かたくなる』だ。
しかも、このマユルドはそれしか技を覚えていない御様子…
まさか守るだけで消耗戦仕掛ける気!?
だが私はここでムキになり、ヤケクソ気味にケムッソへ指示を出した。


ハルカ
「勝つ気の無い相手に負けてられないわよ! ケムッソ、『どくばり』を連発して!!」
「流石に毒になれば硬くてもいつかは倒れるわ!」

ケムッソ
「ケム…!」


ケムッソは口からこれでもかと言う程『どくばり』を繰り出す。
マユルドもそれに合わせてひたすら硬くなっていくが…
ここで私は改めてタイプ相性を学ぶ…『どくばり』のダメージは、虫タイプには効果が薄いみたいね…覚えとこ!

しかし作戦は功を奏し、見事マユルドは毒に侵された。


マユルド
「マ、マユ~…」


マユルドは苦しそうな鳴き声をあげ、しばらくした後にようやくダウンする。
かなりの時間がかかったけど、どうにか勝つ事が出来たわね!


ハルカ
「ふぅ…苦しい戦いだったわ、私をここまで追い詰めるなんて…」


…と、どこぞのアメリカ人格闘家の決め台詞をパロってみた…いつもながら笑わせる台詞よね。
何せ、どんなに楽勝で勝っている試合でもこの台詞を吐くのだから、見ている方としては面白い事この上ない。
しかしながら、それで負けている相手は相当の精神ダメージがあると思われる。
なので、一応意味はあるんだろう!とここは思っておく。
そんなバカな事を考えながらも、私はケムッソを見る事に…って。


ハルカ
「あれ? ケムッソは?」


見ると何処にもいなかった。
しかしながら、ケムッソがいたであろうその場所には…



「サリサリ…」

ハルカ
「…誰?」


私は思わず目を丸くする。
見ると、どことなくマユルドに似ていた。
私は、とりあえず図鑑で見る事に…


ポケモン図鑑
『カラサリス:さなぎポケモン』
『高さ:0.6m 重さ:10.0㎏ タイプ:むし』
『落ちない様に糸を枝に巻き付けて、体を支えながら進化を待っている。小さな穴から外の様子を伺う』


ハルカ
「…まさかケムッソの進化系?」

カラサリス
「サリサリ…」


見ると、間違いなくあのケムッソの風格が漂うこのおっとり感…
私は確信するも、どうにも腑に落ちなかった。


ハルカ
「ケムッソって…マユルドとカラサリスのどちらかに進化するの?」

カラサリス
「サリ?」


当のカラサリスは?を浮かべ、いつものおっとり感全快で佇んでいた。
私はとりあえずボールに戻す事にする。


ハルカ
「…どうなってるんだろう? まぁ、いっか」



………………………



…とまぁ、こんな感じで進化に至ったわけよ!
で、私はとりあえず進化を心の中で喜びながらカナズミシティを目指していた…と。


ハルカ
「…?」

ジグザグマ
「ジグジグ」


そしてそのまましばらく歩くと、前方に変な男がいるのに気が付く。
…と言っても、オダマキ博士の例もあるから油断は出来ないわね。
その人は全身真緑のスーツでピッチリ固め、端から見ると何処にでもいそうな会社員と言った感じだわ。
何かを探している様にその辺りをウロウロしながら、草むらの影とかを念入りに見ていた。


ハルカ
(例によって、あんまり関わりたくは無いわね…)


等と思うが、どうせ巻き込まれるのであろうと心の中では確信している。
私って運が無いから…多分!
さて、そんなバカな事を心の中で考えている内に、気が付くと男との距離が縮まっていた。
とりあえず、私は無視する方向だったのだが…


変な男
「あ、ねぇ、そこの君」

ハルカ
「………」


当たり前の様に声をかけられてしまった…
ここまで予想を裏切らないのは、ある意味立派だろう。
しかしながら、私は明らかに嫌そうな顔をして男を見る。


変な男
「この辺に、キノココって言うポケモン見かけなかった?」
「おじさん、あれ好きなのよね」

ハルカ
「キノココ?」


とりあえず、知らない名前ね。
少なくとも出会った事は無い。
しかしわざわざこんな所で探すって事は、ここに出て来るのだろうか?
そう思って興味がてら、私は少しここで特訓でもしようかと思ったら、その矢先…



「いつまで経っても来ないから、わざわざ来てみればいつまでもこんな所でウロウロと…!」


突然男の後ろ(恐らくカナズミ側)から、不思議なコスプレ(?)をした変な男が出て来た。
歳は割と若そうで、20代前後位の男だと思うけど、いい年こいてコスプレ?
って言うか、そうでなかったらアレ何か制服の類?
趣味悪ぅ…と私は思いながらも、とりあえずさっさとこの場を退散したいと思った。


変な男
「な、何だ君は!?」


「さぁ、大人しくその荷物を渡してもらおうか!?」


どうやら、アレは山賊の類らしい…それともただの盗賊か?
どっちにしても、穏やかではない様だ。
私ははぁ…と深くため息を吐き、低い体勢でその盗賊野郎の懐に入る。



「んなっ!?」


ドカァッ!!と、森の中で鈍い音が響いた。
恐らく周りから見たら、一瞬時が止まった様にも見えただろう(多分!)
決めた技は、ただの右胴回し回転蹴り…間違いなく相手のテンプルを捉えたし、確実に気絶しているでしょうね。
一応手加減はしたけど、私は念の為に確認しておく事にした…


ハルカ
「………」
「まぁ、男前になったという事で!!」

ジグザグマ
「ジグ…?」


思わずそんな言葉が出た。
ジグザグマがかなり?を浮かべていたが、もう気にしない!
ちょっと顔面がエグイ事になってただけだし…多分死んではいないはず!
とはいえ、流石に悪いとは思ったので、持っていたタオルで男の傷を塞いでおいた。


変な男
「…え~っと、とりあえずありがとう」


そんな風に礼を言われる。
まぁ助けたと言えばそうなのかもしれないけど…
下手したら一方的な暴行にも見えてでしょうね…今度からもっと手加減しよう!

どうにも、昨日の1件のせいもあって気が昂ぶってたわ…
この歳で殺人犯にはなりたくないし、気を付けよう!


ハルカ
「ところで、この辺って変な盗賊が多いんですか?」

変な男
「いやそんな話は聞いた事無いけど…でも、彼は僕の荷物の中身を知ってて狙っていたみたいだし…」
「…ハッ!?」
「た、大変だ! 急いで戻らないと!!」


変な男は何かを思い出した様で、勝手に何処かへと行ってしまった。
多分カナズミの方だろう。
しっかし、何か面倒臭そうな事言ってたわね…


ハルカ
「…荷物の中身を知ってて狙ってた? キナ臭いわね…」


どうにも嫌な雰囲気だ。
もしかしたら、こういうのみたいなのが組織ぐるみで動いているのかもしれない。
とりあえずこの場に留まってても仕方無いので、私はまずここから移動する。
そしてなるべく目立たない場所を中心に、しばらくポケモン達を鍛える事にした。

私のパーティは6体フルメンバーだし、やるだけやってても多少不安がある…
いくらバランス良く育てていた所で、多ければ多い程全体のレベルは上がり難くなるのだから…
少なくとも全員がひとりだけでも戦える様にならないと、ジム戦などもっての他な気がした。


ハルカ
「…カラサリスって、すぐに進化するのかな?」

ジグザグマ
「ジグ?」


ジグザグマは?を浮かべて首を傾げる。
いや、ジグザグマに聞いたわけじゃないんだけど…
とりあえず、前に戦った虫取り少年が言っていた言葉を私は思い出す。
虫ポケモンは、進化が早いから使いやすい。
私はそれを信じて、カラサリスに全ての戦闘を任せる事にした。



………………………



森の出口付近まで辿り着いた所で、私は野生ポケモンとのバトルを繰り返す。
そして夕暮れ時になる位の時間まで戦い、ポケモン達がほぼ限界まで疲れて来たのを皮切りに切り上げる事にした。
まだカナズミシティはちょっと遠いし、この辺で野宿する場所を探さないとね…
というわけで、私はトウカの森を抜けて歩き出す。



………………………



ハルカ
「…ん、あれは?」

ジグザグマ
「ジグジグ…」


森を出てから数分歩いた所で、すぐに大き目の家を私は見付けた。
もう日は隠れているし、これは良いタイミングね。
私は今夜、その家に泊めてもらおうと画策した。


ハルカ
「…ん?」


見ると、立派な花壇がある。
綺麗な花が咲き、木の実も生っていた。
今までも何度か木の実をポケモン達に食べさせた事があるけど、これも同じ類だろう。
色や形と同じ様に見えるしね~

とはいえ…今はそれは置いておき、私は早速家の呼鈴を鳴らした。


チリンチリン…



「は~い」


すると、まず女性が家から出て来る。
私よりもちょっと年上に見えるわね。
とりあえず、私は控えめにこう切り出した。


ハルカ
「あの、実は眠る場所を貸してもらいたいんですけど…」
「他には何もいらないんで、もし良ければお願い出来ませんか?」

ジグザグマ
「ジグジグ…」

私が申し訳無さそうにそう言うと、女性は優しく笑い。


女性
「良いわよ♪ もう夜も遅いしどうぞ入って!」
「そこのジグザグマも、一緒に構わないから♪」

ハルカ
「あ、いえ…こっちはすぐにボールに戻しますから」


私はそう言って先にジグザグマをボールに戻す。
その後、女性に中を案内された。
そして中の様子を見た私は、思わず唖然となる。


ハルカ
「わぁ…凄い花達」


そう、どうやらここは花屋の様だったのだ。
中にはちゃんとカウンターもあり、色とりどりの花やら木の実やらが飾られている。
私はしばらくボ~っと花を見つめていると、さっきの女性よりも年上の女性が近付いていたのに気付く。


年上の女性
「ようこそ『サン・トウカ』へ」

ハルカ
「あ、どうも…」


私は丁寧に頭を下げる。
すると、女性も頭を下げ。


年上の女性
「そんなに硬くなさらないで、気軽にしてくださると良いですよ?」
「最近、この辺りも物騒みたいですし…今夜はゆっくり休んでください♪」

ハルカ
「物騒…?」


私がそう言うと、今度は私よりも小さな娘が近付いて来る。
似た様な雰囲気の所、姉妹って感じかしら?


小さな娘
「うん…何だかおかしな格好をした集団が、カナズミシティに向かったそうなの」


おかしな格好…って、私はあの時の盗賊を思い出した。
多分アレの一派だろう…別に確信は無いんだけど、何となくそんな気はする。


年上の女性
「狭い部屋かもしれないけれど、我慢してね…」
「こっちよ…さぁ」


そう言って、私は部屋に案内される。
確かに狭いわね…って言うか。


ハルカ
(まさか、押し入れ?)


そう思える程、中には物が押し込められていたのだ。
多分これでも整理はしてるのだろう。
とはいえ、文句を言える立場でもないので、私は笑ってこう答える。


ハルカ
「いえ、十分です…どうも」


私はとりあえず荷物を置き、あらかじめ備えてあった布団の上に座る。
とりあえず、疲れたわ…


年上の女性
「貴女、ポケモントレーナーなのよね?」

ハルカ
「え? ええ…」


私は不意を突かれた為、驚きながらもそう答える。
正直気が遠くなってた…そんな私を見てか、女性は不思議な眼でこちらを見る。


年上の女性
「貴女、もしかして初心者トレーナー?」

ハルカ
「………」


見事に当ててくれる…そうか、やっぱり端から見たらそう見えるのね…
私は思わず、ちょっと沈んでしまった。


年上の女性
「あれ? どうかしたの?」

ハルカ
「あ…すみません、今日はもう寝ますんで」

年上の女性
「って、まだ19時位よ?」

ハルカ
「その分朝は早く起きるので、大丈夫です」

年上の女性
「そう…? まぁ、生活リズムは人それぞれだろうから追求はしないけど」
「ああ、先に言っておくわ…トイレは部屋を出て右手側にすぐだから」
「シャワールームも近くにあるから、好きな時に浴びて」

ハルカ
「どうも…」


私はそう答えると、女性は部屋を出て行く。
すると、途端に静かになった。
この辺りは夜になるとこんなに静かなのね~
私はとりあえず、今日はシャワーを我慢する事にする。
とにかくもう寝たい…
後はそのまま、私は大の字になって眠ってしまった…



………………………




「ドーーードリオーーーー!!!」

ハルカ
「…?」


そんな声が聞こえたかと思うと、私は思わず目を覚ます。
そして何事かと思い、目を擦りながらも外を見た…が何も見えない。
それもそのはず、この部屋には窓が無いのだから…


ハルカ
「あ…そっか、押入れで寝てたんだっけ」


それを思い出した私は荷物を確認し、とりあえず部屋を出る事にした。
そして私が部屋を出ると、この家の人は皆既に起きていた。
私は一瞬寝過ごしたのか?と思うも、備え付けられていた時計を見てすぐにそうではないと理解する。
現在時刻、AM6時…間違いなく早朝ね。
ということは…単にこの家の人達の起床が早いだけ?
私がそんな事を思っていると、3人は私に気付いて挨拶をしてきた。

年上の女性
「あら、おはようございます♪ もうお目覚めになられたのですね」

ハルカ
「おはようございます…あの、早速ですが私、もう行きます」

年上の女性
「そう? 何だか突然ね…」

ハルカ
「…は、はは」


私は思わず苦笑してしまう、何だかこの人達…どこか変だ。
それとも私が変なのか…どうにも疲れが抜けなかった。
そんな私は花の香りに癒され、サン・トウカを出る。

ハルカ
「う~ん、まだ鍛えたい気はするけど…カナズミシティも気になるわね」
「とりあえず、行くだけでも行ってみよう…最悪そこで特訓しても良いしね」

ジグザグマ
「ジグ」


外に出したジグザグマも、頷く様にそう鳴き声をあげた。
こうして私は、道なりに歩いて行く。
途中、湖のせいで真っ直ぐ抜ける事が出来ない為、そこは迂回していかないといけない。
そんなこんなで私は、ゆっくりと景色を見ながら歩いて行った…



………………………



ハルカ
「うん?」


湖の上の橋を渡っている途中で、私はふたりの少女を見つける。
その少女達のあまりにもそっくりな顔付きを見る限り、間違いなく双子と思われた。
すると、思わず私と目が合ってしまう…そうなれば、トレーナーの性には逆らえない。


双子ちゃん左
「あ、今目が合いました!」

双子ちゃん右
「だったらポケモンバトルです!」


そう…これがトレーナーの定め。
目が合ったトレーナー同士は、その場でバトルをするのが基本なのだ。
これは基本的に避ける事が出来ない。
勿論、目を合わせなければ問題無いのだけど、うっかり合うと例えこちらのポケモンがボロボロでも戦うのが基本ルール。
まぁたまに例外もあるけど、この場合はそれに当てはまらない。
なので私は覚悟を決め、ボールを取り出して投げる。


ハルカ
「行け! 『カラサリス』!!」

双子ちゃん左
「『タネボー』ちゃん、出て来て!」
双子ちゃん右
「『ハスボー』ちゃん、お願い!」


そう言って相手は2体のポケモンを同時に出した。
…ん? 2体?


ハルカ
「って、2対1ーーー!?」


私は思わず叫んでしまう。
流石にコレは初めてのケースだ。
こういうバトルって有りなの!?


双子ちゃん左
「2対1じゃないよ~?」

双子ちゃん右
「そっちも2体いるのです!」


すかさずそうツッコマれる。
ああ、そうか…確かに最初からジグザグマがいるものね。
私は納得しながらも、とりあえず図鑑を開く。
見た事の無いポケモンがいたからだ。


ポケモン図鑑
『ハスボー:うきくさポケモン』
『高さ0.5m 重さ2.6㎏ タイプ1:みず タイプ2:くさ』
『池や湖の水面に浮いて暮らす。葉っぱが枯れると弱ってしまうが、綺麗な水を求めてたまに陸地を移動する』


ハルカ
(…って事は、どっちも草タイプなのね!)


私は改めて自分のポケモンを見た。
カラサリスは虫なので草と相性が良い、これは今までの戦闘で気付いた事だ。
ジグザグマは今の所弱点が解らない。
だけど、こちらが有利にもなる事は無い…つまり相性上の有利不利が無いので、戦い方を組み立てやすいのだ。
私はそう納得し、とりあえず私はそのふたりで戦う事にする。
しかし、これには新たな問題点も…


ハルカ
(ふたり同時に、命令を与えれば良いのかな?)


初体験だけに、どうにも判断が難しかった。
要は、格闘技で言うタッグマッチという奴なんだろうけど、お互いに2体同時で戦うというのが気になる。
何せ初めての事だけに、上手くやれるかどうかが解らないのだ。
自分が戦うのなら、余計な事は考えなくて良いんだけど…


ハルカ
「ええい、仕方無い! ジグザグマはタネボーに『ずつき』! カラサリスは『かたくなる』!」

ジグザグマ
「ジグ!」

カラサリス
「サリサリ…」


私はここである失敗に気付く。
って、先にふたりとも指示を飛ばしたら相手に何をするかがバレる!
とはいえ時既に遅し! 相手のタネボーがまず前に出る。
タネボーの技はよーく知ってる! これは流石にマズイ!!


双子ちゃん左
「タネボーちゃん、『がまん』です!」

双子ちゃん右
「ハスボーちゃん、『なきごえ』です!」

タネボー
「タネッ」

ハスボー
「ハス~♪」


…と、こんな風に相手はこっちの動きを見てから同時に最適な指示を与えて来た。
素人とはいえ、これは完全に私のミスだ。
ジグザグマは当然止まる事無く、タネボーに『ずつき』をかましに行った。
返されたら、やられる!?


ジグザグマ
「ジグ…!」

タネボー
「タネッ!?」


しかしタネボーが『がまん』の体勢に入る前に、ジグザグマの『ずつき』がドカァッ!と鈍い音を鳴らしてヒットした。
何故そうなったかと言うと、ジグザグマが何故か真っ直ぐ突進したからなのだ。
ジグザグマなのに…

だが、これはまさしく幸運!
『ずつき』は直撃すれば相手を怯ませやすい、この場合もタネボーは怯んで技を出せなかった。
だけど、見た感じタネボーにはまだ余裕がある。
確実に直撃だと思ったんだけど…


ハルカ
(そっか…ハスボーの『なきごえ』で、ちょっと攻撃が甘くなったのね)


多分そうだろう…『なきごえ』はモーションが無い分、すぐに出せる技だもんね。
ちなみに私のカラサリスは無傷で『かたくなる』に成功していた。


ハルカ
「とりあえず、私のペース! そのまま行くわよジグザグマ、『たいあたり』!!」

双子ちゃん左
「タネボーちゃん、『がまん』です!」

ハルカ
「カラサリス『いとをはく』!!」

カラサリス
「サリ~」

タネボー
「タネ!?」


タネボーが『がまん』に入るとほぼ同時、カラサリスの繭から糸が放たれ相手に絡み付く。
ちなみに、ハスボーも同時に巻き込んでくれていた…そこまでは私にも予想外!
しかしこういう場合、複数の相手を指定する事も出来るのね…覚えておかないと。
まぁ、結果オーライ!


ジグザグマ
「ジグッ」


ドンッ!!とまたしても鈍い音が響き渡る。
その衝撃でタネボーの小さい体は吹き飛んでしまった。
良い当たり! これは決まったわね!!


タネボー
「タネ~…」


タネボーは横サイドから『たいあたり』を受け、今度はそのままダウン。
やるわねジグザグマ…さっきは真っ直ぐ行った癖に次は横からだなんて。
とりあえず、後はハスボーだけね!


双子ちゃん右
「ハ、ハスボーちゃん『みずでっぽう』!!」

ハスボー
「スボー!!」

カラサリス
「サリ…!」


とはいえここは迂闊…! ハスボーは糸に巻かれてもすぐに振り払って『みずでっぽう』を繰り出したのだ。
私はそれに反応する事が出来ず、カラサリスは『みずでっぽう』をマトモに正面から受けてしまった。


ハルカ
「カラサリス、大丈夫!?」

カラサリス
「サリ…」


どうやら無事の様だ…硬くなっていたのが良かったのかな?
水自体のダメージは無理でも、衝撃は確実に和らげてくれた様だし。
ここで私はすかさず指示を出した。


ハルカ
「カラサリス、『どくばり』よ!」

カラサリス
「サリサリ」


ヒュヒュヒュ!と、細かい針が連続でハスボーを狙う。
当たれば毒も有り得るわよ…さてどうする?


双子ちゃん右
「ハスボーちゃん、避けて!」

ハルカ
「そこへ『ずつき』よジグザグマ!」

双子ちゃん右
「ええ!?」


私は相手の行動を読んでいた。
この状態で相手が動かないわけは無い。
何故なら、草タイプは毒に弱いんだから!
トウカの森で、私のタネボーもケムッソの『どくばり』に散々悩まされたもんね…つまり経験は力なり!
効果抜群の一撃は、例え技の威力が小さくても当たればかなりの致命傷を負う。
だからこそ、それをかわそうとするのは本能的に正しいのだ。
そしてそれは同じ草タイプのハスボーも同じだと私は判断した。
つまり、この場合は私の読み勝ちって訳ね!


ジグザグマ
「ジグッ」

ハスボー
「ハスー!」


私の指示に合わせ、ジグザグマがタイミング良くハスボーの避けた先に『ずつき』をかました。
ジグザグマのスピードが速いのもあり、こういう動きも楽々こなしてくれるのは実に助かる。
ホント頼りになる娘よね~♪

とりあえず、これで私の勝ち!
初めてのタッグマッチにしては、出来すぎな位の結果ね♪


ハルカ
「ジグザグマ、カラサリス、おめで…って!?」


何と、カラサリスの様子がおかしい。
私は何事かと思うと、カラサリスは震えながら体を輝かせていたのだ。
そしてその光に包まれカラサリスは大きく姿を…



「ハ~ント♪」


そして進化! しかも可愛い!!
私は嬉々として図鑑を参照する。


ポケモン図鑑
『アゲハント:ちょうちょポケモン』
『高さ:1.0m 重さ:28.4㎏ タイプ1:むし タイプ2:ひこう』
『甘い花粉が大好物のポケモン。花を付けた鉢植えを窓辺に置けば、花粉を集めに必ず飛んで来るよ』


ハルカ
「やったぁ…ようやく進化だ!」

双子ちゃん左
「おめでとうお姉ちゃん!」

双子ちゃん右
「今回は負けちゃったけど、また機会があったらバトルしてくださいね!」

ハルカ
「あ、うん! もちろん!!」


私は笑ってそう答える。
しっかしようやく成虫に進化かぁ~…ここまで努力した分、嬉しさも倍増ね!
私はとりあえず、アゲハントを抱きしめ様と近付いた。


ハルカ
「おいで、アゲハント!」

アゲハント
「ハ~ン♪」


アゲハントは羽を羽ばたかせて私の腕に飛び込んで来る。
そして、私はアゲハントを抱えるが…


ハルカ
「…って、こんなに重かったっけ?」


よくよく思い出せば、図鑑では28.4㎏とか書いてあったわね。
それって殆ど鉄アレイ並みの重量じゃないの…
とりあえず私はアゲハントを一旦ボールに戻し、一路カナズミへと向かった。
この橋を越えれば…もうすぐだ。



………………………



-ここはカナズミシティ、自然と科学の融合を追及する街-



ハルカ
「…時間はちょうど昼過ぎか、結構早く着いちゃったな」


私は時計を見てそう呟く。
時刻は丁度14時を差し掛かった所。
今私は、目的地であるカナズミシティの前にいたのだ。
この街は流石にただの街じゃない…かなりの広さね。
道には数々の人が行き交ってるし、街の活気を伝えてくれる。
私は少しキョロキョロとしながらも、街の中に入って行った…



………………………



ハルカ
(さて…これからどうしようかな?)


本来なら一気にジム戦!…と言いたい所だけど。
少なくとも、今ジム戦をしても絶対勝てない気がしていた…
なので、とりあえずはポケモンセンターに向かう事にする。
まずは拠点を構えるのが必要だろう…もしかしたら何泊もする事になりかねないし。
幸い、真っ直ぐ進むだけでセンターには到着出来るし、迷う事も無い。


ハルカ
(しっかし、造りはほとんど同じなのね…)

受付
「いらっしゃいませ、ごゆっくりどうぞ!」


街の広さとは裏腹に、センターの中はほとんど同じ造りだった。
内装もさして変わらず、いつも通りにカウンターの受付嬢が出迎えてくれる。
この辺は共通規格なのかしらね?


ハルカ
「とりあえず、ポケモンの回復をお願いします」


昨日は家で眠る結果になったけど、それでもポケモンは回復している様だった。
この結果を見るに、ポケモン自身もちゃんと休息の時間経過で回復する機能があると思える。
とはいえ、それでもセンターで一気に回復してもらった方が早いので、それに頼るのが普通だろう。
旅をする上では、何処で休むかもしっかり考えないとならないけど…ね。


受付
「それでは、お預かりします」
「およそ20分程で終わると思いますが、それまではどうなさいますか?」


どうなさいますか?と言われてもね…とりあえずこの街は初めてなんだし。
まぁ、折角だから観光でもしますかな…?


ハルカ
「しばらく観光がてら歩き回ります」
「なので、しばらく預かってもらって構いませんか?」
「多分、1時間程で帰ると思いますから」

受付
「畏まりました…それでは責任を持って、こちらでお預かりさせていただきます」
「それではお手数ですが、トレーナーカードをご提示いただけますか?」

ハルカ
「あ…はい」


私はすぐに懐からカードを出す。
長時間預かってもらうには、そういう対応も必要なのね。
受付嬢は慣れた手付きでカードをPCに通す。
そして数秒後、それを引き抜いて私に返した。


受付
「それではハルカ様、カードをお返しいたします」
「どうかお気をつけて、ご観光なさいませ…」

ハルカ
「は、はい」


流石は都会で働く天下の受付嬢。
何だか堅苦しすぎて肩が凝るわね…
私は苦笑しながらも、そのままセンターを出た。


ハルカ
「…さて、まずはどうしようかな?」


とりあえず目的も特に無いし、色々と動き回る事にしよう。
ここに来るまでにショップも見付けたし、買い物も済ませないと…
トウカシティで父さんにちょっとお小遣いを貰ったから、少しだけ余裕もあるのよね~♪
とはいえ、食事だけでも路銀はやはり食われてしまう。
ポケモンたちはポケモンセンターで食事を貰えるから問題は無いのだけれど…
如何せん人間はそうもいかない。
という訳で私は空腹感に負け、飯処を探す事にした。


ハルカ
「お…いかにもな店」


見ると、でっかく看板に牛丼と書いてあった。
しかも値段はかなりリーズナブル。
とりあえず私は迷わず中に入る。


店員
「いらっしゃいませーーー!!」


自動ドアを開けて私が中に入ると、冷房が効いているのか冷たい風をまず感じる。
それもそのはず、この時間帯でもやたらと暑苦しい男共が店内にたむろしているのだ。
流石に熱気が凄いわね…汗臭い事この上ないし。
普通なら女が入る場所じゃないでしょうね…


ハルカ
(しかっし…この面子)


店の中をざっと見渡すも、やたらと屈強なお兄さんたちが多かった。
どう考えても格闘系の人達とかガテン系のそれだと考えられる。
ある意味私と同種なので解りやすいか…


店員
「お客さん、忙しいから早く座ってくれますかー!」

ハルカ
「あ、はいは~い」


私はそう答え、すぐに空いている席に座った。
そこは不幸にも暑苦しい男に挟まれる席だ。
そこしか空いて無いんだから仕方無い。


店員
「はい、お冷やどうぞ! 注文はお決まりですか!?」


やけに威勢の良い若店員さんが、私の前にコップを出してそう聞く。
すると私はメニューも見ずに…


ハルカ
「牛丼特盛りつゆ濁卵付きで!!」

店員
「はい、まいど! 特盛りつゆ濁卵付き一丁~!!」


…と、テンポ良く厨房にそう告げた。
すると、注文を聞いて来た店員が不思議そうに私を見てこう話しかける。


店員
「お客さん、もしかして常連? 初めて見る気がするけど、馴れてるねぇ~」


そりゃそうよ…だって、ここの系列店のはコガネシティでも散々食ってたし。
ここも同じチェーン店なんだから、慣れてて当たり前。
ただ、どうにも最近世界情勢が狂ってきたのか、牛丼店の癖に牛丼を廃止するという強行に出ているのよね…

…で、代わりに出したのが豚丼だから驚き。
不味くはないんだけど、やっぱり牛の底力には到底勝てないと私は思った訳よ…
なので、デカデカと牛丼を推しているこの店を見て入ると決めたのよ!


ハルカ
「まぁね、この地方では初めてだけど…」


この男臭い熱気も結構慣れた物でもある。
格闘家時代、ロードワーク後に寄ってたりしたからね♪


店員
「へぇ…女の子では結構珍しいね」
「もしかして、お客さんも格闘系? かなりガッチリした筋肉してるし、鍛えてあるよね?」


…と、いきなり当てられた。
と言っても、実際には元格闘家が正しいんだけど…ね。
まぁ体を鍛えているのは今でもだし、間違っちゃいないんだけど。


ハルカ
「まぁ、以前はね…今はポケモントレーナーよ」

店員
「そうか~、って事はやっぱりジム戦だな?」
「カナズミジムは岩タイプのジムだし…っと、らっしゃーい!!」


そんな事を呟くも、すぐに他の客への対応に追われてしまっていた。
その後、すぐに出来上がった牛丼を私は全て平らげる。
久し振りの牛の味に感動したわね♪


ハルカ
(にしても…岩タイプだから、やっぱり…って?)


どうにも腑に落ちなかった。
何で格闘系でトレーナーなら、それがジム戦に繋がるんだろう?
しかも岩タイプだからって…?
私は食い終わってからも、しばらくそこで考え続けてしまう。
すると次第に客は少なくなり、ピークも終わりを迎える様だった…


店員
「何か考え事かい?」


私がまだゆっくり水を飲んでいると、また先程の店員が話し掛けて来た。
私は丁度良かったと思い、改めて聞いてみる。


ハルカ
「ねぇ、どうして格闘系がトレーナーだったらジム戦だって解るの?」


私がそう尋ねると、店員は呆気に取られてしまった。
よっぽど意外だったのね…


店員
「どうしてって…普通そうだろ? 格闘タイプのポケモンは岩タイプに相性が良いんだから」

ハルカ
「格闘タイプ…って、そうなんだ」

店員
「本当に知らなかったのか?」


予想が外れて意外だったのか、店員は軽く唸る。
まぁ、私が初めたてのトレーナーだとは思われてなかったんでしょうけど…


ハルカ
「あはは…私、まだ初心者だから」
「残念だけど、格闘タイプのポケモンは持ってないの」

店員
「そうか、じゃあどんなポケモンを使ってるの?」


店員は興味津々に聞いてくる。
今は休憩時間なのか、誰も彼を咎める様子は無かった。
なので、私は素直にこう答える。


ハルカ
「そうね…私が使っている中で1番強いのは、今は炎タイプのアチャモかな」

店員
「炎タイプ!? まさか、それでジム戦に挑む気かい?」

ハルカ
「え、まぁ…やるなら、当然そうなると思うけど」


私の答えに対し、店員はしこたま驚いた顔をする。
そして肩を竦めて店員はこう返した。


店員
「止めとけ止めとけ! 腕に自信があっても、炎で岩に戦うのは基本避けるモンだ!」
「初心者って言ってたからついでに教えてやるけど、岩は炎、虫、飛行に対して有効なタイプだ」
「逆に岩タイプに有効なのは水、草、格闘、地面、鋼タイプだな」


店員が丁寧にそう説明してくれる。
成る程、これは勉強になるわね。
でも、同時に辛い現実を突きつけられた…


ハルカ
「………」

店員
「どうした?」

ハルカ
「あ…ううん、何でもない」
「教えてくれてありがと…代金、ここに置いておくから」

店員
「あ、まいどありー!」


私は店を出て、すぐにポケモンセンターに戻る事にした。
これから、よく考える必要がある。



………………………



ハルカ
「…あ、先客か」


中に入ると、ひとりの女性が受付と話していた。
立ち聞きするつもりはなかったけれど、近付く事で会話が聞こえてしまう。
私の耳が良いのも原因だけどね!


受付
「お疲れ様です、ポケモン達の回復ですね?」


「はい…私のポケモン達を、よろしくお願いします」


そう言って女性は受付にふたつのモンスターボールを渡した。
トレーナー…か。


受付
「確かにお預かりいたしました…それでは10分程で完了致しますので、しばらくお待ちください」


受付嬢はそう言って、丁寧にお辞儀をする。
マニュアル人間…何となくそんな言葉が脳裏をよぎった。
そんなバカな事を考えていると、受付嬢が私に気付く。


受付
「あ、お帰りなさいませハルカ様…ポケモンの回復は終了しておりますので、こちらへどうぞ」

ハルカ
「あ、どうも…ところで部屋は空いてますか? ワンボックスで良いんですけど」


私は受付からボールを受け取りそう尋ねると、受付嬢は困った顔をしてしまった。
わ…なーんか嫌な予感~


受付
「大変申し訳ございません…今夜は多数のお客様が既に予約なされておりますので、ワンボックスは全て埋まっております」
「空いているのは、スイートルームのみですが…いかがなさいますか?」


簡単にそう言われる。
これは面倒になったわね…ちなみにスイートルームはいわゆるホテルとかのソレと同じで、基本1番高い部屋よ。
当然扱いもホテル同然なので設備サービスも全て込みなので、至れり尽せり…なんだけど! 高い!!
ただでさえ今は節約したい所なので、流石にそれは無理だ。


ハルカ
「あ、じゃあ少し待たせてもらって良いですか?」
「もし、キャンセルとかあったら教えてください」

店員
「畏まりました…それではキャンセルが届いた場合、すぐにご連絡致します」

ハルカ
「はい…お願いします」


私はそう言って礼をする。
受付嬢も丁寧に礼をしてくれた…まぁマニュアルだろうけど。



「では、行きましょうか」

ハルカ
「は、はぁ…?」


突然やんわりとした声で話しかけて来たのは、さっきの女性だ…まだいたのね。
見た感じ、私とそんなに歳は離れてない感じかしら?
年上っぽい気もするけど、やけに丁寧な口調なのは素かしら?
とりあえず目的は互いに待合室のはずなので、別に断る理由は無い…か。
そう思った私は、女性の後ろをゆっくりと歩いた。
そして椅子の前に辿り着くと、私たちは並んで座る。
他の客は近くにいないわね…文字通りふたりきりだ。



「初めて見る顔ですけど、旅人さんですか?」

ハルカ
「…はい、ミシロタウンから」


私は一応丁寧に答える。
まぁあんまりしっくり来ないんだけどね! こういう堅っ苦しいのは基本苦手だし…



「そう…ミシロタウンからでしたか」

ハルカ
「………」


「…どうかしたのですか? 何か悩み事でも?」


私は牛丼屋での事を思い出していた。
実に切実な問題なのよね…今はそっちで頭が一杯だ。


ハルカ
「あ、いえ…大丈夫ですんで」


私はそう言うも、もちろん大丈夫な訳が無いんだけど。
それが解っているだけに、表情に出さざるをえなかったのかもしれない…
そういえば、この人結局誰なんだろう?
少なくとも普通の人とは思えないんだけど…
髪は黒いロングヘアーで、大きな赤いリボンを付けているのが特に印象的だ。
服は黒色の学生服っぽいのであり、下には白のカッターシャツを着込んでいた。
首には赤いネクタイも着用しているわね…

とりあえず、見てくれからどうにも普通じゃない感じはする。
明らかにお嬢系とか、そういう類に思えた。
またはエリート系…とか、そんな風格も感じるわね。



「そういえば申し遅れました…私、ツツジと言います」

ハルカ
「…私はハルカ」


女性はツツジと名乗り、ぺコリと私に頭を下げる。
私も合わせて名乗るも、そこで重大な事に気付いて思わず驚いてしまう。


ツツジ
「どうかしたんですか?」

ハルカ
「…貴女が、カナズミジムのジムリーダー?」


父さんから聞いた名前と一致してるし、多分間違いない。
それっぽい雰囲気も感じるしね…
私の言葉を受け、ツツジさんは驚いた顔をした。


ツツジ
「知っていたんですか? でも、そうですね…あれだけ噂等が飛び交えば、自然と耳に入る物でしょうし」

ハルカ
「…トウカシティのジムリーダーをやっている父さんから聞いたのよ、『ツツジに会え』…って、知り合いなんでしょ?」


私はそう説明する。
父さんは彼女と知り合いだからこそ、わざわざ会えと言ったはずだ。
だが、期待とは裏腹にツツジさんは?を浮かべる。


ツツジ
「いえまぁ、お会いした事は確かにありますけど…別に親しい知り合いと言う程でもありませんよ?」

ハルカ
「はぁ…?」


逆に意味が解らなくなる。
じゃあ何故父さんはああ言ったのか…?
ただ単に、会ってぶっ倒せと言いたかったのだろうか?
有り得るわね…あの天然親父の頭だと。
ったく、いい加減過ぎるわよ…
私が深いため息を吐くと、受付嬢がツツジさんを呼んだ。
どうやら回復は終わったらしい。


受付
「お待たせいたしました、ツツジ様」

ツツジ
「どうも、ありがとうございます」


ツツジさんはボールを笑顔で受け取る。
裏表の見えない自然な笑顔だ…きっとファンも多いんだろうな~
私がそんな事を考えていると、ツツジさんはまた私の所に来る。
まだ何かあるのだろうか?


ツツジ
「…今日はかなりの人間がここに来ています」
「多分、キャンセルが入る確率は低いと思いますよ?」

ハルカ
「…だったら、街の外で野宿しますし」


私はやや突き放す様に言う。
この人、どうにもやり難い。
単なるお人好しなんだろうけど、後で戦うかもしれない人間相手に心を容易く許すのはちょっと引っ掛かった。
…この辺が私の格闘家的な考え方なんだろうなぁ~


ツツジ
「…あの、よろしければ私が泊まる場所をご提供致しますが?」

ハルカ
「…え?」


それはいきなり美味しい申し出だ。
確かに悪くはない…けど、どうにも恩は作りたくないわね。
私はあくまでGive and Takeが心情だ。
タダは基本信用しないし、易々と頼るつもりもない。
なので私はあえてこう返す。


ハルカ
「…いえ、結構です」
「私、ここでギリギリまで待ちますから」

ツツジ
「…そうですか」


私がややムキになるように強く言うと、ツツジさんはシュンとしてしまう。
ああもう! 何でこんなに覇気が無いのよ!?
私は流石に我慢の限界を感じそうになった。
ツツジさんに悪気は1ドットも無いのだけど、どうにも反撃しそうになる。
私って改めて虐めっ子なのかもしれない…何となくアカネちゃんの事を思い出してしまったわね。
そんな事を思い出しつつも、私は激情を抑えて冷静になった。
全くこれじゃどっちが年上なのか?…って、年齢は聞いてないんだけどね!
まぁ、多分年上でしょ…


ハルカ
「あの…まだ何か?」


私は少々苛つきながらもそう聞く。
ツツジさんはまだ一向に帰る気配が無いのだ。
時刻はまだ16時前なので、時間はあるけど…
出来るならひとりでジム戦の事を考えたいんだけどねぇ?


ツツジ
「いえ…でしたら、ギリギリまで私も待ちます」
「そして、一緒に私の家に帰りましょう♪」


なんて、そんな訳の解らない事を言うのだ…
私は思わず頭を抱える…何でそうなるのよ?
どうやら私は既にツツジさんの家にお邪魔する事になっているらしい。
私は…一気に脱力した。
何でこんなのがジムリーダーなんだろう?
流石に気が抜けるわ…それでもジム戦はやらなければならないんだけどね。
私はこの状況を打開する為、いっそ街を出る事に決めた。
きっとその方が良い…ここは何か空気がおかしいから!


ハルカ
「はぁ…悪いですけど、私もう街を出ますんで!」

ツツジ
「ええ? って、ハルカさん!?」


私はツツジさんを無視して歩き出した。
はぁ…もう何だかやる気が無くなったわ。
ジム戦の対策考えないといけないのに、逆にやる気を無くしてどうするのよ…


ハルカ
(とはいえ、本当にどうしますかね…私のポケモンじゃロクに戦えないってのに)


そう、最大の問題は正にそれなのだ。
私のポケモンは、炎、ノーマル、草、飛行、虫、水。
一応タイプはバラけているものの、その殆どが岩に分が悪いというのだ。

アチャモは炎だから攻撃も防御もロクに通用しない…
アゲハントは虫と飛行の合わせ持ちだから、岩の攻撃は絶対耐えられない…
アメタマとキャモメは水を持っているけど、どっちも岩には弱い…
タネボーはそもそも草タイプの技が無いし…論外!
ジグザグマも相性的には悪くは無いはずだけど、技の性質上岩には効き難い気がする。

結論…どうにもならない!
この際、新しいポケモンを見付けるしかないのかもしれない。
だとしたら、トウカの森ではなくカナズミシティを北に出てみた方が良いのかもしれないわね。
そこなら新しいポケモンもいるかもしれないし。
ついでに特訓も兼ねて、私は早速行ってみる事に決めた。
なので…とりあえずその場から180度方向転換する。
するとその勢いで私は人を突き飛ばしてしまう事に…


ツツジ
「きゃっ!?」

ハルカ
「ってツツジさん!? 何でこんな所に…」


アレで流石に諦めると思っていたのに甘かったらしい…どうやらこの人、筋金入りのお人好しだ。
私は本日何度目であろうかとも思えるため息を思わず吐いてしまう。
そして、これ以上追いかけて来られても邪魔でしかないのを私は瞬時に理解した。


ハルカ
「…もうどうでも良いから、好きにして」

ツツジ
「は、はい! じゃあ一緒に行きましょう!!」


そう言って、結局案内される事になった。
正直、疲れた…もうさっさと休みたい!





…To be continued

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