第2話 『敗北、そして迷わざる心』

しおりが挟まっています。続きから読む場合はクリックしてください
 
ログインするとお気に入り登録や積読登録ができます
読了時間目安:59分

この作品には残酷表現があります。苦手な方は注意してください

初めての(?)のポケモンバトルで、ハルカは半ば強引な攻めを展開しながらもユウキの『ミズゴロウ』を倒す。
始めのポケモンバトル勝利に喜ぶハルカ。
だが、ハルカの冒険はまだまだ始まってもいない!
ポケットモンスター ルビー 『ハルカジェネレーション』



第2話 『敗北、そして迷わざる心』





ユウキ
「ただいま! 今帰ったよ、父さん…」

オダマキ
「おお、お帰りユウキ! ハルカちゃんも一緒だね♪」

ハルカ
「…お邪魔します」


私は、一応丁寧に頭を下げてそう言う。
無論両手を前に重ね、的確な角度でお辞儀をするのだ!
これでもら礼儀作法は習った事のある口なのよ!?
ただの格闘馬鹿とは思われたくないので、ちゃんと人並みに勉強だってしてるしね♪
というわけで、初対面はかなりアレだったので流石に注意しておく事にする…


オダマキ
「ああ、ゆっくりしていくと良い、丁度話もあったしね」
「とりあえず、まずはユウキと話があるからちょっと待っててくれ」

ハルカ
「はい」


私はそう返事し、数歩退がった所でふたりの会話を見届ける。
その光景は、いたった何処にでもありそうな親子の姿だった…


ハルカ
(にしても、博士って色々なパターンがあるのね~)


あんまりこういう所には来た事が無かったせいか、ふとそんな事を思ってしまう。
例えばTVでオーキド博士なんかを見ていると、やっぱり威厳が有って立派な人だというのが見て解るけど…
それに対して、このオダマキ博士はかなりアバウトな感じがして、オーキド博士なんかとはかけ離れた存在な気がする。
勿論、悪い意味ではなく良い意味で、だ。

一見、理知的で厳しそうなイメージがあるオーキド博士に対し、オダマキ博士はかなり大らかでスポーティなイメージがある。
私は博士って皆オーキド博士みたいなので、そういうのが普通だと勝手に思ったけど…
このオダマキ博士を見ていると、そのイメージはあっさりと覆る。
もっともオーキド博士も少年時代の頃は、かなりブイブイ言わせた程のトップトレーナーだったらしいので、実際にはどうとも言えないのかもしれないけど…

それでも、オーキド博士はあるきっかけを境目に研究者としての道を歩んだらしいのよね~
理由の詳細は未だに知られていないそうだ…


ハルカ
(何か…辛い事でもあったのかな?)


そんな事を何となく考えていると、話が終わったのかオダマキ博士が私を手招きする。
その横に並んでユウキが腰に両手を当てて、私に微笑みかけていた。
私はかなり丁寧な作法で歩み寄る。
多分見た目はおしとやかそうに見える、はず…まぁ今更だろうけどね!!


オダマキ
「ハルカちゃん、ユウキに勝つなんて凄いじゃないか!!」

ハルカ
「…え?」

それは何か、予想外の発言。
はっきり言って、褒められるとは考えてもいなかった。
ついさっきのバトルの事も話していたのね…


オダマキ
「ユウキは私の所でもう何年もトレーナーをやっている凄腕なのに、それに勝つとは思わなかった」
「正直…最初のアレを見て、これはかなり大変そうだと思っていたからね」
「てっきり、最初で挫折していると思っていたよ…」

ハルカ
「…そ、そうですか」


どうやら、全く期待されていなかったらしい。
いや、そりゃそうでしょ…我ながらアレじゃね?
私は自分でも納得しながら、苦笑してしまう。


オダマキ
「でも、これで確信したよ…君はやっぱりお父さんの血を引いている!」
「これからどんなトレーナーになっていくかが、非常に楽しみだ♪」

ユウキ
「父さん、褒めるのはそれ位にして…早く渡してあげなよ?」


ユウキがそう言うと、博士はおお…と何かに気付き、背後の机から何かを持って来る。
そして、それを私に差し出した。


ハルカ
「…?」

オダマキ
「君にこれをあげよう! 実はまだ試作型なんだが、新型のポケモン図鑑だよ?」


ポケモン図鑑…これがあの有名な奴か!
形はジョウトのTVとかで見た奴よりもコンパクトであり、何だか携帯ゲームの様な感じだ。
横長でカパカパ系のデザイン、赤色で中心にワイドディスプレイを内臓。
左右に各種ボタンが有り、それ等を押せば各種情報が見れるのだろう。


オダマキ
「あくまで試作型だから、全国のポケモンに対して使える訳じゃないが…ホウエン地方のポケモンだったら多分ほぼ全部対応していると思う」
「もちろん! 世界にはまだ見知らぬポケモンがいるであろうから、その中が全てじゃないけどね」


ハルカ
「でも、こんな貴重な物タダでは貰えません…」


私は流石にそう言って断る。
確かに嬉しい申し出だけど、Give and Takeを重んじる私としてはタダで貰うと言うのは気が引けたのだ…


ユウキ
「貰っとけよ、トレーナーなら大体必需品だし」
「知識が全く無くても、それがあればかなり助かるはずだぜ?」


ユウキがそう言って勧めてくる。
そしてそれを聞いてオダマキ博士は、微笑しこう提案する…


オダマキ
「よし、じゃあこうしよう…この図鑑は、君への賞品だ」

ハルカ
「はい…?」

オダマキ
「君がユウキと戦って、それで勝ち取った物だって事さ」


私は、それを聞いて少し納得する。
実質タダに違いないのだけど、自分とアチャモの力で勝ち取ったと思えば、一応貰う理由にはなる気がした。
それに、そこまで勧めてもらってるんだし…ね?


ハルカ
「…分かりました、有り難く頂きます」


私がそう言って図鑑を受け取ると、オダマキ博士は嬉しそうに微笑み、うんうんと頷く。
私はそれを見て、少なからず感激した。


ハルカ
(これで、私もポケモンともっと触れ合える)


今まで触れる事さえなかったポケモン。
憧れながらも、近付く事すら無かったポケモン。
ジムリーダーの娘として産まれながら、私はあえてそう生きてきた。
理由はまだここでは語らない。
これはあくまで私自身の戦いだから…これでようやく踏み出せるんだ。
私はここでようやくポケモンと生きて行く。
そして…昔の自分に決別しよう。


ユウキ
「それから、俺からはこれが賞品だ」


気が付くと、今度はユウキが私に5個のモンスターボールをくれる。
ちなみにモンスターボールは使わない場合、およそビー玉位の大きさになっている。
中心のスイッチを押す事で内部プログラムが起動し、通常の大きさになって瞬時にポケモンの解放が行われるらしいのだ。

使い方は既にユウキに教えてもらったのでちゃんと覚えてる。
ちなみに、モンスターボール内ではポケモンの生命維持も行われるらしい。
酷く傷付いたポケモンを中に入れる事で、一時的な延命措置を施す事が出来るんだそうだ。
ただあくまで一時的な処置なので、毒になっているポケモンはボールに入れていてもいつかは倒れてしまう。

なお、中に入っているポケモンはある粒子状態で保存させる為、大きさに関係なくボールに入る事が出来るそうだ。
これはかなり難しい理論みたいで、残念ながら私では解りかねるけど…


ハルカ
「とりあえず…ありがとう」


私はそれを貰うと、腰に下げているボールラックにセットした。
トレーナーが1度に持てる所持ポケモンは6体が限界。
もちろん持つだけならそれ以上出来なくはないが、下手したら法律に引っかかるのでポリスに捕まっても文句は言えないらしい…
未使用の空ボールならいくら持っていても犯罪ではないので、好きなだけ持てば良いそうだ。

なお私はポケモンの知識は無くても、その用具等には知識を持っているのであしからず。
ただ、内部構造は知っていても使い方は知らないと言う、とんでもない女だったりするのよね私…
誰でも知っている事を知らないっていうのも変な話だけど…ね。

というわけで、図鑑の使い方も当然知らない。
このポケモン図鑑は今までリリースされた中でも新型であり、コンパクトさと使いやすさが売り。
プリインストール時ではまだ何のデータも入っていないけど、これはどうなんだろ?
とりあえず、見付けたポケモンを自動的に登録していくシステムなので、使い方を解らない私でも多少は安心のはず。
と言っても、参照の仕方が解らない以上まずは色々試してみないと…


ハルカ
(とりあえず…これがパワーボタンかしら?)


私は図鑑を開き、おもむろに左手の親指で1番大きなボタンを押す。
が、押せない…!
おかしいわね…ロックでもかかってるの?
私がしばらく無言で唸っていると、ユウキが…


ユウキ
「それはアナログスイッチだ…パワーボタンは画面左下の緑のボタンだよ」

ハルカ
「………」


成る程ね…そりゃ押しても効かないわ。
私は言われたボタンをとりあえず押す。
すると画面左上の赤いランプが点灯し、液晶ディスプレイに画面が映し出された。
まず、白い背景に『Pocket Monster』のロゴが現れ、一度ブラックアウトしてから参照画面が表示される。
私は先ほどのアナログスイッチをクリクリ動かして、画面内のカーソルを動かしてみる。
中には既に判明しているホウエン地方のポケモン200匹がすでに登録されていた。


ハルカ
「って、全部入ってるじゃない…」

オダマキ
「ああ一応ね…でもらまだホウエン地方にはきっと新しいポケモンがいると思うから、それが全てじゃないと思うよ?」
「だから、もし新しいポケモンを発見したら教えてくれ♪」

ハルカ
「はぁ、分かりました」


私はそう言って、とりあえず図鑑を仕舞う。
これで参照の仕方は解った。
これならポケモンと出会っただけで、後は図鑑が認証してデータを引き出してくれるだろう。


オダマキ
「それじゃあ、ハルカちゃん最後に私から一言!」
「まずはこれから、ホウエン地方全部を歩き回ってみると良い」
「そしてトレーナーとしてこの先頑張るつもりなら、まずはトウカシティに行ってお父さんに会うんだ!」
「ハルカちゃんがトレーナーになったと知ったら、きっとお父さんも喜ぶと思う♪」

ハルカ
「…はい」


笑ってそう言う博士に対し、私は冷静にそう言う。
まぁ、父さんの事はこの際置いておいて、とりあえずトウカシティに行ってみるのが先決か。
私は最後に丁寧に礼をし、研究所を後にした。



………………………



ハルカ
「………」


私は歩きながら考えていた。
一応、母さんには言うべきかな?
それとも言わないべきかな?
今から旅に出るという事は、しばらく会わないという事だし…
少なくとも黙って行けば、確実に心配されるだろう。
といっても、あの母から本当にそんな声が聞けるのかは正直不安なんだけど…

というわけで、私は放っといて行く事にした。
研究所を出て、すぐに道路の方に向かう。
すると、あまりにも予想外な出来事に遭遇し、私は思わずギョッとしてしまった。



「あら、ハルカ遅かったわね?」

ハルカ
「母さん、何で!?」


何でわざわざ道路を遮る様に立っているのよ…?
っていうか、何で私がこっちに来るって解ってたのよ?



「…全く、貴女はいつまで経っても変わらないわね?」
「一言言っていけば良いのに、それさえしない」
「だから貴女は、いつまで経っても心配させる娘なのよ…」

ハルカ
「………」


私は何も言えなかった。
心配という声があっさり聞けた事には驚いたけど!
いつも天然で、ぽわ~っとしている母からはとても想像出来ない雰囲気だわ。



「…まぁ良いわ、どうせ止めても行くでしょうから」
「だから、これを渡しておきたかったの…」


そう言って、母さんは新品のランニングシューズを私に渡してくれた。
ピカピカに輝いており、サイズも今の私にピッタリであろう事は見て解る。



「家の事なら何も心配しなくて良いわ、貴女はあ貴女の道を歩みなさい」
「ハルカは昔の私にそっくりだから、きっとそのシューズをボロボロに踏み潰す事も解ってる」
「だから、思う存分暴れてきなさい! 私と、お父さんの娘ならね?」


そう言って、母さんは私にウインクして右手で親指を立てる。
こんな母親の姿は、私も今までに見た事が無い。
って言うか、別人でしょ!? どう考えても!?


ハルカ
「あ、あの~…本当に母さんですか?」


あまりの衝撃に、恐る恐る聞いてしまった。
それほど衝撃的だったのだ!
私が母さん似って、正直絶対違うと思うんだけど…?



「…そうね、ハルカの前ではいつもおしとやかに見せ様と思ってたから」


私は自分の耳を疑う。
おしとやか…? 幻聴でしょうか…?
どう見ても天然で無駄にテンション高いだけの痛いオバチャンって感じでしょうに…



「でも私は元がこういう性格だから、やっぱり飾ってもダメだったのね…」
「結局貴女は、こういう風に育っちゃった」
「とりあえず、早くその靴を履き替えなさい…貴女のはもうボロボロでしょ?」


私は言われて、自分の靴を見る。
確かに軽くて丈夫なスニーカーだったけど、格闘技の練習やら何やらでもう既にボロボロだ。
皮は剥がれ、紐も一部切れているし替え時なのは確かかも…

私はそれを名残惜しみながらも、新たなシューズを履き変える。
フィットは完璧、初めてなのに何だか馴染んだ気にすらなる。
私は前のスニーカーを両手で取り、それを母に預け様とすると。

ブオンッ!!と、私の手からスニーカーが上空に舞い上がった。
あの母さんが蹴り上げたのだ…しかも右後ろ回し蹴りで。
そして靴は空中でクルクル回転し、綺麗に母の右手に捕まる。
母さんはまだ蹴りを振りぬいた体勢のままだった。

ちなみに蹴りは私の眼前で止まっており、風圧だけで私の髪がかなり浮き上がった事だろう。
頭に当たってたら間違いなく吹き飛んでたわね…それだけの威力が予想出来る。
こんのバカ親…! こんなモン隠してたなんてね!?



「ふふ…行って来なさい!」


そう言って体勢を維持したまま、母さんは左手の親指を立てる。
私は一瞬呆然としながらも、すぐにこうして応えた。


ブオンッ!!


私は母さんと同じ様に、相手の眼前で右後ろ回し蹴りを寸止めする。
リーチは私とほぼ同じなので、端からは鏡に映した様なポーズに見れたはずだ。
そして、私も笑い…


ハルカ
「行って来ます、母さん!!」


しっかりとした声でそう言った。
そして、私は母さんに背を向けて走り出す。
周りの視線がかなり痛い気がしたが、もう気にしなかった!

どうやら、母さんは私が思っているよりもずっと大きな人だったらしい…
アレはきっと修羅の道を歩いた女の目…もしかしたら私よりも強いのかも、いや強いのだろう!
だからこそ、母さんは娘をもっと強くする為に笑って送り出した。
それなら、私も笑って進むしかない。
これから何が起こるのかが本当に楽しみでしょうがないし!
私はそんな期待と不安を胸に、ミシロタウンを後にした…



………………………



ハルカ
「アチャモ、『ひっかく』!」

アチャモ
「チャモチャモー!」

野生のアメタマ
「!?」

野生のアメタマは、アチャモの『ひっかく』を受けて怯んだ。
それを見て、相手に反撃の体力が残っていないのを私は確信する。


ハルカ
「行けぇ、モンスターボール!」


私は即座に野性のアメタマに向かってモンスターボールを投げ付ける。
これこそが、トレーナーでは常識のゲット作業ね!


アメタマ
「……!」


ボールはアメタマに当たると同時にカパッと開く。
そしてその瞬間ボール内から赤い粒子変換光がアメタマを瞬時に包み、ボールの中に閉じ込める。
ボールがHITしてからここまでで、およそ1秒。
しかし、閉じ込めただけではゲットにはならない。
閉じ込めた後もポケモンはボールの中で暴れ出ようとするからだ。
ここで出られてしまったらゲットは失敗で、使ったボールはもう使えなくなってしまう。

そう、モンスターボールは失敗した時に限って使い捨てなのだ。
1度失敗してしまったボールは2度と作動する事は無い。
要するに廃棄物になるわけだが、勝手に廃棄してはいけないらしい…
法律上、使用後のモンスターボールは各タウンのフレンドリィショップかポケモンセンターに渡す事になっている。
使用済みのボールはそこでリサイクルされる訳ね。
使用後で使えなくなっているとは言え、モンスターボールを悪用する人間がいるので、法律上これが定められる事になったんだと…


ゴロゴロ…ゴロゴロ…カチッ!


ボールは中の野性ポケモンが暴れる事で、地面をゴロゴロと転がる。
しばらくするとその動きも止まり、さっきの様な機械音が鳴るのだ。
これで、ゲットは成功となる。


ハルカ
「やったぁ!」


私はアメタマの入ったモンスターボールを手に取り、そしてガッツポーズを取った。


ハルカ
「『アメタマ』、ゲットよ!!」


さて、ハルカのくせにいきなり野生のポケモンと戦って、しかもゲットしているじゃないか!?と思いの皆さん。
一体何がどうなっているのだ?と、思うかもしれないけど、ただ単に話がすっ飛んだだけよ。

私が今どこにいるかというと102番道路という所にいる。
とりあえずは、父さんに会う為トウカシティに向かっている途中ね。
その途中で、訓練ついでにゲット作業に勤しんでいたのだ。
ちなみにアメタマ(♂♀は図鑑の機能で判断してくれる、ちなみにこの子は♀)は4体目。
つまりアチャモを含めると、私のパーティは現在5体となっている。


ハルカ
「ようやく5体か…」


とりあえずユウキやオダマキ博士のお陰で、途中でいきなり戦いを挑まれたトレーナーとも普通にポケモンバトルは出来た。
その全てでアチャモは活躍し、ここまで来るのに3人程と戦い、全て勝利!
ちなみに、102番道路に入る前の101番道路で、ジグザグマ(♀)とケムッソ(♂)をゲットしていた。
そして、102番道路に入ってすぐタネボー(♀)をゲット!
って、よくよく考えたらケムッソが逆ハーレム状態に…?
私って♀と出会う確率高いのかなぁ? まぁ偶然だとは思うけど。


ハルカ
「よし、じゃあ皆1度出て来て!」


私は右手の親指以外、各指の間に4つのボールを挟み、それらを左手でスイッチを全部同時に押して全て宙に投げる。
するとボールは空中で開き、中から4体のポケモンが出て来た。


ジグザグマ
「ジグジグ…」
ケムッソ
「ケム~」
タネボー
「タネッ」
アメタマ
「タマタマ…?」


アメタマは、出て来ていきなり何が起こったか解らないといった顔をしていた。
皆結構そうみたいで、ゲットされてすぐは状況を理解出来ていない様なのよね~


アチャモ
「チャモ~、チャモチャ」

アメタマ
「タマ? タマタマ…」


アチャモがまず皆の輪に入り、アメタマに挨拶みたいな事をする。
アメタマは先ほどのダメージでちょっと辛そうだったけど、アチャモの応対に対して笑って応えた。
ちなみに、ポケモンにはそれぞれ個性や性格がある。
と言っても、それらは図鑑に表されるわけではないのだけど…
要は私の判断なのだが、今はどうとも言えない。
まだ出逢って日も浅いし、性格まですぐに解る程私はポケモンに詳しくは無いのだから…

それでも、ユウキが教えてくれたお陰でアチャモが『おくびょう』な性格だと言うのは理解している。
この娘はやる時こそやってくれるのだけど、どうしても踏み切れない所がある気がする。
回避は速いけど、攻撃がイマイチなのよね…やっぱり性格なんだろうなぁ~
このせいでどうにもアチャモは攻撃が上手くない、いやむしろ下手だ。
それが祟って、これまでの戦いでも非常に辛い所があったし…
圧倒的に相手よりもLvが上のはずなのに、倒しきれない事が多いのは悩み所かも…

まぁ、こういう性格でも努力すればある程度どうにかなるだろうし、今は気にしない方が良いのかもね~
何より個性は大事だし! アチャモはそれだけ他人想いな所があるのは評価点と言って良いだろう。
そわな性格だからこそ、アチャモは戦って傷付けてしまったアメタマを真っ先に案じている。
まだ回復はしていないし、ダメージは残ったままなのもあるだろうけど…
アチャモはホントに優しい子で、他の仲間ともすぐに打ち解けていったのよね…
流石に1番最初のジグザグマをゲットした時は、結構怯えていたけど…
初めてという事もあり、しこたま驚いていたのだろう…その時だけは私にすがりつく様に隠れていたから。
でも、今は慣れたのか我が身の様に仲間を想っている。
やっぱり仲間は仲間を変えていくのね…このまま良い傾向で進んでいけばいいけど♪


ハルカ
「………」


私は次にジグザグマを見る。
この娘も野生相手に何度か戦わせているけど、この子も攻撃が下手だ…
ただ、臆病と言うよりもこの娘はあまりにも『ひかえめ』な感じがする。
初めてアチャモと出会い、怯えるアチャモに対してモジモジと恥ずかしがっていたしね~

次にタネボー…この娘は全く解らない!
何と言っても、ロクに攻撃技が無いのだから!
覚えている技は図鑑で参照出来るので、間違える事は流石に無くなったものの、肝心のタネボーは『がまん』と言う技しか無かったのだ。
しかもこの技は発動に時間がかかる為、攻撃する前にやられそうになる事もしばしば…故にこの娘が1番手がかかりそうでもある。
しかしながら、この娘は他と比べてやたら打たれ強い。
技の性質を生かす事もあるからでしょうが、恐らくタネボー種自体が打たれ強い方なのだろう。
それを踏まえても、私のタネボーは固い気がするけど…


ハルカ
(それも性格…のせいだったり?)


だとしたら、この娘は相当『ずぶとい』性格とでもいうのだろうか?
今一、自信は無い!


ケムッソ
「………」(ジーー)

ハルカ
「……?」


私がひとりで唸っていると、ふとケムッソと目が合った。
寂しいのかな?と思い、私はケムッソの方に向かうが…


ケムッソ
「………」(ジーー)

ハルカ
「…どうしたの?」


私は思わず聞いてしまう。
しかしケムッソは何も答えてくれず、ただ私の目を見ていた。
何ていうか…こういう第一印象では、この子は『おっとり』な性格かもしれないわね…
妙にボ~っとして、攻撃をマトモに受ける節があるので、いきなりピンチになる事もしばしばある。
この子はタネボーとは逆に防御が心配ね…


ケムッソ
「………」

ハルカ
「………」


多分、この子はこれが素なのだろう…私はそう結論付ける事にした!
私はとりあえず1度回復の為、目の前に見えるトウカシティに急ぐ事にする。
全員をボールに戻し、私はバッグを背負い直して走り始めた…



………………………



-ここはトウカシティ、自然と人が触れ合う街-



決して大きい街ではないが、ハルカの父センリの経営するジムもあり、街は活気には満ち溢れている。
この街に住む人々は我が父センリに憧れる者が多く、ジムトレーナーの数も比較的多い方に入るそうだ。


ハルカ 「無事に着いたわね、まずはセンターに行かないと」


私はまずセンターを探した。
理由はポケモンを回復させる為だ。
今回は鍛錬も含めて、全員がかなり疲れている。
ギリギリまで戦っていただけに、流石に限界のはずだ。


ハルカ
「あ、入ってすぐの所にあったのね…」


私が街に入り、真っ直ぐ歩くと数分でポケモンセンターに到着する。
ちょうど夕方だから、人もまばらだった。
ポケモンセンターには人間用の宿泊施設もあるので、旅のトレーナーは結構いる事が多い。
一応、どの街のセンターでも十分な数の部屋が設置されているので、寝る場所にはさほど困らないとは思われる。
もちろん、良い部屋だとそれ相応の金はかかるんだけど。
なお、泊まるだけの部屋なら一応タダ、ただし本当にタダの部屋…っていうか見た感じ、コトキタウンのは本当に押入れみたいな感覚だった。
かろうじて灯りはあるものの、人ひとりが限界の広さ。
とりあえず、ここも泊まるだけなら同じ様な物なのだろう。
私は場合によっては父さんのジムに泊めてもらおうとも考えてるけど。


受付
「いらっしゃいませ、トウカ支店にようこそ!」


元気に受付の人が挨拶してくれる。
ポケモンセンターはどこもほぼ同じ様な作りで、1階受付で即座にポケモンの回復を頼める。
右手側にはインターネットに接続できるPCも置いてあるわね。
何気にメールとかもやり取りできるので、家のPCに送る事も可能だ。

ハルカ
「ポケモンの回復をお願いします…」

受付
「はい、それではお預かりいたしますね♪」
「…えっと、今からですと大体1時間程の時間がかかりますので、それまではお待ちください」

ハルカ
「はい」


大体、回復にはひとり10分程度の時間がかかるらしい。
空いている時は、同時に行えるので10分以内に終わる事もあるけど、この時間帯はかなり込んでいた様で、こうして時間がかかってしまう。
要は順番待ちね…
私は仕方が無いので、このままジムに向かう事にした。
といっても…場所が解らない…か。


ハルカ
「あ、ちなみにジムって何処にあるんですか?」

受付
「ジムでしたら、センターを出てしばらく右に向かえば、右手側にそれっぽい建物が見えると思います」
「そこがトウカジムですよ、見た目が目立つから解りやすいと思います」

ハルカ
「そうですか、ありがとうございます♪」

受付
「いえ、でもポケモンを持たなくてよろしいのですか?」


受付は私が挑戦すると思っていたのだろう。
私は首を横に振って、やや小さい声でこう答える。


ハルカ
「…私の、父が働いているんです、だからちょっと会いに」


リーダーとは流石に言わなかった。
それを聞くと、受付の人は笑顔で。


受付
「そうでしたか! それではお気をつけて…」

ハルカ
「はい、それじゃあポケモン達をお願いします!」


私はそう言って、少し駆け足気味にセンターを出た。
まだ日は沈んでいないし、暗くなる前にジムに辿り着かないとね!
というわけで、私は右に向かって走る!



………………………



やがて5分程走ると、この前テレビで見た建物と同じ様な建物が確かに見えた。
その場から右手側に15m程、私はすぐに駆ける。


ハルカ
「…確かにこの建物は目立つわね」


他にこんないかにもな建物も無いし、何より看板にトウカジムって書いてあるから間違いない。
私はその看板をまず確認する。



『トウカシティ ポケモンジム リーダー:センリ -強さを追い求める男!-』



ハルカ
「………」

滅茶苦茶似合うフレーズよね…
私は感心しながらもそのままトウカジムに入って行く。

ガララ…と独特の音と共に入り口のドアは開く。
玄関には家の中なのに石が敷き詰められており、靴がやや乱雑に散らばっていた。
そして玄関に上がって中に入ると、そこは木の板が張ってある広いフロア…
そこは正に道場の如きであり、一見すると修練場の様に見える。
しかしそこに練習生やジムトレーナーの姿はひとりも見当たらないし、更にその奥に部屋がまだ続いている様だった。
そして、その扉の正面にはひとりの男がいる。


ハルカ
「…父さん」

センリ
「…? ハルカ? ハルカじゃないか!」


父センリは私を見ると、とても驚いた顔をする。
そう、この人こそ私の実の父『センリ』である。
2年振りという事もあって随分懐かしく感じるけど、その姿は昔と何も変わらなかった。
良くも悪くも…だけど。
私はそう思いながら、父さんのすぐ側まで歩いた。


センリ
「本当によく来たな…母さんはどうしたんだ?」


私はまず事情を父さんに話す事にする。
すると父さんは、更に驚いた顔をした。


センリ
「そうか…ならハルカも私と同じ様にトレーナーになるのか!」
「それは、楽しみだな…」


父さんは本当に楽しみしているのだろう。
両腕を組んで嬉しそうに笑っている。
いつかは、この父さんと戦う事になる…それがトレーナーの通る道なら、私は避ける事が出来ないんだろうな。

と、そんな雰囲気の中…ガララ…と、突然後ろの引き戸が開く音がする。
そこに現れたのは、どこかオドオドした雰囲気の美少年だった。


美少年
「あの…」


身長はおよそ140cm位、目は女の子の様にクリッとしている。
顔はどこぞのアイドルみたいな、一見すると本当に女の子だろう。
体も細くて華奢、服装は控えめではあるものの、地味ながらによく似合ってはいる。
そんな少年を見て、父さんは不思議そうにこう尋ねた。


センリ
「君は…確かミツル君だったね? こんな時間にどうしたんだい?」


私は少し横にどき、父さんとミツル君の間を空ける。
すると、ミツル君と呼ばれた少年は控えめにこう答えた。


美少年
「…こんばんわ、センリさん」


少年はそう自己紹介をすると、ペコリとお辞儀をする。
年の割に中々礼儀正しい少年ね。
しかし父さんと知り合いだったのか…まさか隠し子なんてオチは無いと思うけど…


ミツル
「実はお願いがあるんです…僕、明日には別の町に行かないといけないんですけど、ひとりで行くのがどうしても寂しくて…」
「だから、ポケモンが欲しいんです! ですので、僕にポケモンの捕まえ方を教えてください…」


少年は力強くそう説明するも、すぐに俯いてしまう。
自分ひとりでは到底自信が無いのだろう、私とは全く逆ね。
まぁ…私の場合、自信満々で失敗するんだけどね!


センリ
「成る程…分かった、では君にこのポケモンを貸してあげよう」
「そしてそのポケモンで戦い、このモンスターボールでゲットするんだ」


そう言って父さんはミツル君の前まで歩き、ふたつのモンスターボールを少年に渡した。
ミツル君はそれを父さんから受け取ると、わぁ…と顔をほころばせて喜ぶ。
まるでトランペットに憧れる少年みたいね…って違うでしょ!?
↑ひとりノリツッコミ


センリ
「ハルカ、ミツル君が無事に捕まえられる様に、一緒に行って見守ってあげなさい」

ハルカ
「え…?」


父さんは突然そんな事を言い出す。
まぁ、まだ時間があるから別に良いけど…


ミツル
「それじゃハルカさん、お願いします…」

ハルカ
「…まぁ父さんの言い付けなら、仕方無いわね」


私はため息を吐くも快く同意し、一緒に102番道路に向かった。
既に夜は更けかけており、辺りは薄暗くなっている。
そう言えば、昼と夜では活動しているポケモンが違うのよね~
そろそろそんな時間帯が切り替わる時だと思える。
今なら、私がまだ出逢っていないポケモンも出て来るかもしれないわね…



………………………



というわけで、私たちは102番道路に出てすぐの草むらに来ていた。
ミツル君は、何だかワクワクする様に草むらを散策している。


ミツル
「ポケモンって、こういう草むらに出たりするんですよね…」
「って!? …う、うわっ!」

ハルカ
「…!?」


突然、ポケモンが単独で草むらから飛び出して来る。
と言っても、かなりゆっくりな動きだけど…
とはいえ、今まで私が見た他のポケモンに比べると明らかに異質なポケモンだった。
私はポケットから図鑑を開き、早速参照する。


ポケモン図鑑
『ラルトス:きもちポケモン』
『高さ:0.4m 重さ:6.6㎏ タイプ:エスパー』
『頭の角で人の気持ちを感じ取る。人前には滅多に姿を現さないが、前向きな気持ちをキャッチすると近寄る』


この様にポケモンがその場にいる場合、図鑑に付いている超高性能小型カメラを向ける事によって、さっきの様に図鑑に登録されているポケモンは教えてくれるのだ。
ちなみに登録されていない場合は、規格内のポケモンなら名前だけ解る。
そういう場合はまずポケモンをゲットし、モンスターボールから情報をダウンロードする事によって図鑑に登録していくのよ。
もっともその範囲外…つまり図鑑製作者の知らないポケモンだけはどうにもならないの。
つまり、そういうのを見付ければまさに大発見って奴ね!


ミツル
「よ、ようし…行けモンスターボール!」


ミツル君がモンスターボールを投げると、中からジグザグマが現れる。
私の出遭ったジグザグマよりも流石に鍛えられている感があるわね。
ポケモンバトルがどんな物かを既に解っている様で、すぐに戦闘態勢を取っていた。
さすが父さんのポケモンね…

ってそう言えば、まだ自分の持ってるポケモンの紹介データは見てなかったわね…
折角だし、今の内にジグザグマも見ておく事にしよう。


ポケモン図鑑
『ジグザグマ:まめだぬきポケモン』
『高さ:0.4m 重さ:17.5㎏ タイプ:ノーマル』
『いつもあっちこっちへジグザグ歩くのは、好奇心がとても強くて目に映る色んな物に興味を持つからだ』


ハルカ
(その割に、私のジグザグマはかなり動かないのよね…やっぱ控えめだから?)

ジグザグマ
「ジグザグー!」


ちなみに今更だが、ジグザグマは名前の通り狸(たぬき)の様なポケモンだ。
ただ通常の狸と違い、その茶色い毛は針の様に尖っている。
その気になれば武器に出来るかもしれないわね!
とはいえ、実際に触るととても柔らかいし、抱き心地は今の所アチャモの次に気持ち良いのよ!?


ラルトス
「ラル~!」


対して、相手はラルトス。
少々説明し難いけど、白い肌をして小さな子供の様にも見える。
頭にはまるで緑色の帽子を被っている様で、足はスカート状になっていた。
そしてちゃんと2本の足がありしっかりと地に足は付けている。
そして特に目立つのは何かやら赤い突起の様な物が2本頭に付いていた。
あれが例の角だろうか?
とりあえずエスパータイプと言うだけあって、どんな攻撃をするのかちは興味がある。
触れる事もせずに肉が飛び、骨を挫く等という事は、どうにも信じ難い物ね~
それでもエスパータイプのポケモンは愛好者も多く、ジムも存在するというのだから驚きだ。
その気になれば、私にも出来るのかもしれないわね~


ラルトス
「ラル~!」


ラルトスは可愛く『なきごえ』をあげる。
それを聞いて、ジグザグマは多少ながら動き難そうな顔をした。
あれもポケモンの技だしね…格闘で言う、気合とかと通じる物があるのかも。
何せ、私のアチャモが最初に何の技を覚えたかと言うと『きあいだめ』だったし…臆病な癖にやるじゃないと思ったわ!


ミツル
「え、えと…ジグザグマ、『たいあたり』!!」

ジグザグマ
「ジグザグー!」


ジグザグマは横に高速でジグザグしながら、ラルトスに接近して『たいあたり』をした。


ラルトス 「ラルッ!?」


すると、ラルトスはいともたやすく吹っ飛ぶ。
見た感じ、かなりのウエイト差がある様だし当然よね…
しかもジグザグマの『たいあたり』はやけに痛いのだ。
スピードが乗っているのもあると思うけど、マトモに食らったら一撃ダウンも十分考えられる威力…
実際、ラルトスはすでにグロッキーだ、ボールを投げるなら今ね。


ミツル
「戻れ、ジグザグマ!」


ミツル君はわざわざジグザグマをモンスターボールに戻し、空のモンスターボールを取り出した。
相手はまだ動けるのに、余裕を見せて大丈夫かしら?


ミツル
「ここでボールを投げるんですよね…やってみます!」

ラルトス
「ラルゥ!?」


しかしながらミツル君の投げたボールは見事ラルトスに当たり、ラルトスはボールの中に閉じ込められてしまう。
ここからゲット開始…後は相手の体力次第ね。


ゴロゴロ…ゴロゴロ…カチッ!


そんな機械的音が聞こえ、ゲットは無事に完了する。
何だ、思ったよりあっさりだったわね…


ミツル
「やった…これが、僕のポケモンだ」


そう口にすると、ミツル君は笑みを浮かべる。
そしてボールを回収して。


ミツル
「ありがとう、ハルカさん! それじゃあジムに戻りましょう」

ハルカ
「ええ」



………………………



ミツル
「センリさんありがとうございます、これはお返しします」

センリ
「そうか、無事ゲット出来た様だな」


ミツル君は満足そうにジグザグマのボールを父さんに返す。
父さんもミツル君の表情から、全てを悟った様にボールを受け取った。


ミツル
「はい、それじゃあ僕はこれで」

ハルカ
「…元気でね」

ミツル
「…は、はい! ハルカさんも、どうかお元気で」


ミツル君はそう言ってジムを出て行った。
私は小さな背中を見送り、改めて父さんと向き合う。


センリ
「…何か言いたそうだな」


父さんも私の表情から何を言いたいのか読み取ったのか、やや苦笑していた。
父さんもアレに気付いてる…だからなんだろう。
私は少し険しい顔をし、低めの声で小さくこう言った。


ハルカ
「…病んでいるんでしょう? ミツル君、多分肺かな?」

センリ
「…さてな、別にそれはお前が考えなくても良い事じゃないのか?」
「それにシダケタウンに着けば、もう心配は無くなるだろうからな…」


父さんは、まるで全部解っていると言った風にそう言う。
まぁ父さんがそう言うなら、そうなのだろうけど…


センリ
「さて…ハルカ、初心者のお前にはまず言っておく事がある」
「これからトレーナーとしてポケモンリーグを目指すのなら、まず各地のジムでバトル勝つ必要があるのは知ってるか?」

ハルカ
「ええ、それ位は理解しているわ」


と言っても、細かいルールとかは知らないけどね!
まぁそんなのは、実際にやる時覚えれば良い事だし!


センリ
「ふむ、ならホウエン地方にある8つのバッジを手に入れる事でポケモンリーグに挑戦出来るのは知っているか?」

ハルカ
「それも知ってる、だからその為には父さんとも戦わなきゃならないのよね?」


私が目を細めながそう言うも、父さんは全く物怖じせずに微笑んでいた。
やれやれ…私の事はまだまだって感じの顔ね。
まっ、実際その通りなんだけど!


センリ
「だが、私とハルカが戦うのはまだ先だ…」
「トレーナーとしてまるで成長していないハルカに勝っても、私は嬉しくないからな」

ハルカ
「……!」


父さんは自信満々にそう言う、実際そうなんだろう。
今日なりたてのトレーナーに負ける程、父さんは甘くないはずだしね。


センリ
「とりあえず、まずはカナズミシティに行って、ツツジというジムリーダーに会うといい」
「そして、そこから順に各地を回ってポケモンを鍛えていくんだ…」
「そしてそうだな…もしバッジを4つ集める事が出来たら、その時はちゃんと父さんが相手をしよう!」

ハルカ
「…分かったわ、なら父さんとの戦いは後の楽しみにしておくから」


私はそう言って一応納得する。
そんな私の反応見て、父さんはやや苦笑してしまっていた。
な、何よ…? 何か引っ掛かる反応ね?


センリ
「ははは…そういう所は本当に母さんそっくりだ」
「母さんも、父さんを力ずくで手に入れた人だからな…お前はやっぱり母さん似だよ」

ハルカ
「そ、そう…」


かなり引っ掛かる言葉だったけど、とりあえずは今後やる事は決まったわね。
まずそのツツジってジムリーダーに会う為、カナズミシティに向かう!
とはいえ、仮にもジムリーダーっていう位だから相当強いのだろう…

多分、今のまま私じゃ絶対に勝てない。
ただでさえ私はポケモンの知識が皆無だし、初の挫折を味わう事も想定しないとね…
…未だにタイプ相性がよく解ってないのも大問題だ。
水が火を消すとか、虫が草を食べるとか、そういう解りやすいのなら良いんだけど…
問題は技自体の効果…図鑑に一応載ってるんだけど、まだ技名とタイプがどうにも一致しない。
これから頑張って覚えないとね~



………………………



ハルカ
「…こんばんわ」

受付
「お帰りなさいませ! ハルカさんのポケモンはすっかり元気になってますよ?」


そう言われ、私は安心してボールを受け取った。
とりあえず出発するにしても、時間は既に遅い。
大体、初日はじっくり鍛えながらコトキで一泊するつもりだったのに、無理してここまで来てしまったのが原因だしね~
って、どれだけの距離を走ったのよ!?

実際には歩いて1日とか絶対無理な距離だし…
私の類稀なる体力と脚力があってこその結果ね!


ハルカ
「…あの、泊まる部屋空いてます?」

受付
「ええ、今でしたらどの部屋も空いていますよ?」

ハルカ
「それじゃあ一泊お願い出来ます? 部屋はワンボックスで…」


ちなみにワンボックスとは、無料で泊まれる例のアレだ。
本当にカプセルホテルの劣化だから、女の子には正直お勧め出来ない…軽く監禁気分を味わえるわよ?
後、一応センター内に大浴場がたったの100円で入れるので、体だけは洗っとかないと…


受付
「分かりました、それではトレーナーカードを」


突然ピンと来ない言葉が出てきた。
…トレーナーカード?


ハルカ
「え? そんなの持ってないんですけど…」

受付
「あ、ご新規の方だったのですね…申し訳ありません! てっきりもう常連さんかと…」
「失礼致しました…それではこちらの登録用紙にご記入お願い出来ますか?」

ハルカ
「あ、はい」


私は差し出された用紙に必要事項を記入して受付に提出する。
すると何やら受付はPCにデータを入力し、1枚のカードを取り出す。
多分、あれがトレーナーカードなんだろう。


受付
「それでは、これをどうぞ…」
「そのトレーナーカードは、ハルカさんのトレーナーとしての証明書となります」
「今は新規カードですのでまだカッパーカードですが、これからの活動に応じてランクが上がっていきますので…」
「そしてこれが宿泊する部屋の鍵です、外出の際には1度お預けいただきます様…」

ハルカ
「あ、はい…」


私はカードと鍵を受け取ってらそれを一旦懐に仕舞う。
後はそのまま部屋に向かう事にした。
そして食事を先に取ってから体をゆっくり休め、その後は大浴場で体を綺麗にしてからすぐに就寝する事にした…



………………………



ハルカ
「………」


私は出発前、あらかじめポケモンセンターに貼り付けられていたタウンマップでカナズミシティの場所をチェックしておく。
どうやら、この道路を越えて森を抜けなければならないらしい…
ここからだと、ちょっと遠いわね…まぁ3日もあれば着くでしょうけど。
とはいえ、森の中で野宿になりそうだ…それも旅っぽいかしら?


ハルカ
「そう言えば、この辺りはどんなポケモンがいるのかな?」


私そう考えて西に向けて歩いていると、やがて海が見えてくる。
そして見た事の無いポケモンの姿を確認した。


キャモメ
「キャモキャモ!」

ぺリッパー
「ペリーッ!」


まさしく見た事の無いポケモン達だ。
早朝の静かな浜辺で、けたたましく鳴いて羽を休めるポケモン達の姿を私は遠目に眺めていた。


ポケモン図鑑
『キャモメ:うみねこポケモン』
『高さ0.6m 重さ9.5㎏ タイプ1:みず タイプ2:ひこう』
『餌や大事な物を嘴に挟み、色んな場所に隠す習性を持つ。風に乗って滑る様に空を飛ぶ』
『ペリッパー:みずどりポケモン』
『高さ:1.2m 重さ:28.0㎏ タイプ1:みず タイプ2:ひこう』
『小さなポケモンや卵を嘴に入れて運ぶ空の運び屋だ。海辺の険しい崖に素を作る』


私はポケモン図鑑でそのポケモン達を参照してみた。
距離はかなり離れているのに、それでもちゃんと見れる辺りかなり射程距離はあるわね。


ハルカ
「鳥ポケモンか~…アチャモも進化したらあんな風に空を飛んだりするのかな?」
「そうだったら、背中に乗って飛んでもらう事も出来るのかな?」


何となくそんな事を思ってみる。
でもアチャモはヒヨコだからどう考えても、成長したら鶏(にわとり)だろう…
それが不安極まりなかった…きっとこのままの方が可愛いよね?
図鑑を参照すれば進化系も見れるはずだけど、私はあえて進化を楽しみにしたい為、その先を見る事はしなかった。
正直不安の方が大きいんだけど…



「キャモッ!」

ハルカ
「ん?」


いきなり、後ろからそんな泣き声が聞こえる。
それは紛れもなく、さっきのポケモンの鳴き声と同じだった。
しかし、私はゆっくりと後ろを振り向くもそこに何も無かった。


ハルカ
「あれ…? 確かに声が聞こえたのに」


「キャモ~♪」

ハルカ
「もしかして…?」


私はふと頭に両手を伸ばす。
すると…どうやら私の頭に乗っていた様だ。
それは紛れもなくさっき見たキャモメであり、私が優しく両手で抱き上げてあげると、可愛い『なきごえ』をあげた。


ハルカ
「うわ…可愛い~、でも野生の割に懐っこいなぁ?」

キャモメ
「キャモ~?」


私はそのままモンスターボールをキャモメに使ってみる。
これも折角の縁だろうし、ここはゲットしておかないと!
しかしながら私の意気込みとは裏腹に、情けない音をたてて、ボールはいともたやすく使用不可になってしまう事に…


ハルカ
「流石に、弱らせないとダメか~」

キャモメ
「キャモ?」


キャモメは何が起こったのか解っていない様な顔ね。
その雰囲気はとても呑気そう…多分そうだわ。
仕方無い、多少気が進まないけどバトルしてゲットする事にしましょうか!
と、言っても…


ハルカ
(アチャモはだと強すぎて、一撃で倒してしまいかねないか…?)


しかも炎タイプだから、水には弱いはず。
だとしたらタイプ的に却下ね…


ハルカ
(ジグザグマもちょっと強いか…? キャモメは見た目打たれ弱そうだし、もしかしたらやりすぎてしまうかも…)


『たいあたり』はノーマル技だから、ジグザグマの場合通常よりも威力が高いのもある。
確か、タイプ一致の技は威力が高まるらしいのよね~


ハルカ
(ケムッソも虫タイプだし、飛行にはちょっと危ないかぁ…)


それ以前にケムッソはまだ幼虫なせいか、バトル自体が相当キツイ。
大分強くはなって来たとはいえ、まだ相性不利の飛行相手には不安があるわね…
アメタマもほぼ同様の理由で却下!


ハルカ
(と、なるとタネボーなんだけど…タイプ相性はともかく、攻撃技が無いのよね~)


でも、現状1番やり過ぎない気はした。
なので、私は悩んだ末にタネボーを繰り出す。


ハルカ
「任せたわよタネボー!」

タネボー
「タネ~」


私はアンダースローでボールを投げ、ボールの中からタネボーが勢い良く飛び出す。
タネボーは特に意気込む事も無く、落ち着いた感じで相対していた。
頼むわよ…? って、どうなるかは相手次第なんだけども!


ハルカ
「タネボー、とりあえず『がまん』よ!!」

タネボー
「タネッ」


私がそう指示すると、タネボーは早速『がまん』の体勢に入る。
後は、攻撃を受けて反撃するだけ!
この技のポイントは、あくまで受けたダメージを倍返しする点。
とはいえ、我慢している間にこちらは何も出来ないんだけど…
それだけに相手に行動が読まれていると、攻撃も出来ずに終わる事もあるのだ。

そして決定的な弱点とも言えるのが、タネボー自身の体力!
タネボーは見た目以上に打たれ強いのだけど、それでも『がまん』を連発出来る程の体力は無い。
我慢している間にダメージを受ければ、それだけ倍返しのチャンスもあるものの、失敗したらもう2発目は無いと言っても過言ではない。
それで回復の度にポケモンセンターに通っていたんじゃ、時間のロスも大きいのよね~
全く、育てるのがかなり大変なポケモンだわ…その分愛着も沸くんだけどね!


キャモメ
「キャモ~!」


キャモメは首を大きく上げ、口から水の塊を吐き出す。
私はその技を図鑑で参照してみた…


ハルカ
「あれが、『みずでっぽう』って技か…」


使い手にもよるのかもしれないが、キャモメのそれは塊を吐き出す様な攻撃だった。
タネボーはその直撃を食らうも、まるで怯む様子は無い。
ヤバッ!? 今のは流石にちょっとダメージが足りなさ過ぎる気が…?
下手に中途半端なダメージを与えたら、そのまま逃げられるかも…


タネボー
「タネーッ!」


そして、あっさりとタネボーはその攻撃を倍返しする事に…
タネボーの体が輝き、高速の体当たりがカウンターになった。
だが、キャモメはダメージが薄い!とばかりに顔で首を傾げている…


キャモメ
「…キャモ?」

ハルカ
「…ガクッ! やっぱダメじゃん!!」


私は仕方無いので、このまま確率にでもかけてボールを投げる事にする。
…がっ、どれだけバッグを漁ってもボールは見付からなかった。


ハルカ
「あ、あれ?」


私は尚もバッグを開けて漁るが、ボールは一向に見えなかった。
嫌な予感…って事は。


ハルカ
「…さっき使ったのが最後かぁ!?」


私は頭を抱えて、そう叫ぶ。
その姿をキャモメは不思議そうに見ていた。
冷静に考えてみたら、貰ったボールは5個だったのだから当然だ!


ハルカ
「ガビ~ン…何の為にこんな無駄な事を」


…と私が項垂れ、意気消沈してタネボーをボールに戻そうとボールを操作するも、突然ボールからポケモンが出て来てしまった…


ジグザグマ
「ジグゥ~」


そこから出て来たのはジグザグマ。
って、思いっきり間違えてるじゃないの~!
私は少し慌てるも、改めてタネボーのボールを手にした。
今度は間違わずにタネボーをボールに戻す。
そして今度はジグザグマを戻そうとすると…


ジグザグマ
「ジグジグッ」


何やら、ジグザグマが変な物を咥えている事に気付いた。
見ると、モンスターボールの一種みたいだけど…?


ハルカ
「あれ? どうしたのこれ…?」

ジグザグマ
「ジグジグ…」


どうやら、どっかでいつのまにか拾っていたらしい。
だけど、そのボールは何やら普通のボールとは違って見える。
黒が基調で、黄色いラインが入っているわね…
初めて見るボールだけど…?


ハルカ
「これ、使えるのかなぁ…?」


落ちている物だったら、むしろ使用済みが当たり前な気がするけど…
私はとりあえず、ボタンを押してみると。


ハルカ
「あ、ちゃんと動いた!?」


どうやら、そのまま使えるらしい。
ならばと思い、私は壱か罰か賭けてみる事にした。


ハルカ
「行け! この際謎のボール!!」

キャモメ
「キャモ?」


ボンッ! コロッ、コロコロ…コロッ


謎のボールは見事キャモメに当たり、定番の音を鳴らして地面を転がる。
私は祈る様に手を合わせ、ほのボールを見つめた。
やがて、それはゆっくりと抵抗を止め…カチッ!と音を鳴らしてゲットを確定させる。
私はそれを確認して思わず飛び上がった。


ハルカ
「やったーーー! キャモメゲット!!」


とはいえ、あのボール落とした人がちょっと可哀想かも。
それにしても、ダメージもほとんど与えてなかったみたいのによく捕まったわね?


ハルカ
「見た事無い柄だけど、特別なボールだったのかな?」


私はキャモメが入っているボールを見つめてながらも、何となくそう思った。
そして今後ボールが無いのは流石に困りものなので、1度買い足しにトウカまで戻る。



………………………



ハルカ
「これで、準備良しと…」


私はモンスターボールを新たに10個補充し、再び道路を歩く。
トウカのフレンドリィショップで聞いた所、あの謎のボールはハイパーボールと言って、かなり高価なボールらしい。
キャモメの様な捕まえやすいポケモンに使うのは、普通無いらしいそうだ…それは知らなかった。
ちなみにジグザグマは絶えず色々と動き回る習性のせいか、色んな物を拾ってきてくれるらしい。
私はそれを聞いてから、常にジグザグマを外に出しておく事にした。
これならバトルにもすぐに出れるし、問題も無さそうだ。
もっとも私のジグザグマは控えめな感じだし、あまり動き回らないのだけど…
ある意味、珍しいジグザグマかもしれないわね…


ハルカ
「そう言えば、トウカの森はこのまま進めば良いのかな?」


「それなら浜辺の小屋を通り過ぎれば、すぐに見つかるわよ」

ハルカ
「!?」


私はその声を聞いて咄嗟に振り返った。
すると私の背後には誰かがおり、わざわざそう教えてくれていたのだ。
しかし…その何者かは大きな布…というかローブのような物で全身を覆い、姿系はおろか体付きも良く解らなかった。
とはいえ、どう考えてもただの親切な人には見えない。
僅かに布の隙間から見える視線からは明確な意思は伝わってこないものの、その瞳から放たれる空虚な輝きは確実に只者ではないと解った。
唯一解る事は、私とほぼ同じ位の身長…か?
声や口調からしても、女性っぽいけど…


ハルカ
「……?」


「………」


私は唯一見えるあの虚ろな視線から、少し考えてみる。
とりあえず、明らかに怪しい人間なのは確かだ。
一応、私は冷静に応える事にした。


ハルカ
「とりあえず、教えてくれてどうも…」


「…それよりも、今ここで私とポケモンバトルをしてもらえるかしら?」

ハルカ
「!?」


途端に、凄まじい『気』を感じて私は思わず身構える。
相手は片手にモンスターボールをひとつ持っており、そこから感じる気は軽く恐怖を感じる何かだった。
正直、これから何と相対するのか…?と、私が焦る程に。
少なくとも、私が今まで慣らしていた人対人の経験は、全く役に立たないのだと推測する。
しかし、勝負を挑まれて逃げるのはトレーナーの恥、私は現在最高のポケモンを繰り出す事にした。


ハルカ
「『アチャモ』、頼むわ!!」

アチャモ
「チャモ~!」


「行きなさい…『ヘルガー』」

ヘルガ
「ヘルーーー!!」


高き咆哮をあげ、大きな黒い犬が姿を現す。
その佇まいからは、とてつもない威圧感を感じさせた。
間違いなく、アレは強い…!
私は冷や汗を滴しながらも、まず図鑑を開いてポケモンを参照する。


ポケモン図鑑
『データ参照失敗…未登録のポケモンです』

ハルカ
「嘘、何で!?」


「余所見をしている暇があるの?」

ハルカ
「くっ…なら先手必勝よ! アチャモ、『ひのこ』!!」

アチャモ
「チャモチャモ!!」


アチャモは口から文字通りの『ひのこ』を相手に向かって吐き出す。
そのまま、いくつもの『ひのこ』がヘルガーに直撃した…がっ。


ヘルガー
「…! ヘルーー!!」


ヘルガーはそれをマトモに受けても全く動じない、むしろ更に高らかに咆哮をあげていた。
そんなバカな!? 全く効果が無いなんて…!



「残念だけど…特性『もらいび』のヘルガーに炎は通用しないわよ?」

ハルカ
「!?」


相手は静かな口調のまま、抑揚も無くそう説明する。
私は焦るも、今はバトルに集中する事が重要だと思って相手を見る。
とりあえず解ったのは…あのポケモンは炎を吸収するって事!?



「ヘルガー…『かえんほうしゃ』」

ハルカ
「!?」

ヘルガー
「ガァーーーッ!!」


指示を聞いたヘルガーは私が反応するよりも速く、口から凄まじい炎を噴出させた。
そしてアチャモが何も出来ないままその炎はアチャモに着弾し、小爆発を起こす程の威力を見せ付けた。
凄まじい威力…! アチャモがいくら炎タイプでも、あれじゃ…!?
私は瞬間ゾッとし、思わず体を震わせて叫ぶ。


ハルカ
「アチャモォォォォォッ!?」


私の叫びも空しく、ここら一帯の草むらが残らず燃え尽きていた。
そして、その中心地にアチャモは無惨に倒れている。
私は不安に高ぶる心臓を無理やり抑え、アチャモの元に走った。



「…この程度か、流石にまだ期待外れね」

ハルカ
「貴女ぁ…!? 一体、私に何の恨みで!」


謎の女は無感情な言葉遣いでそう言った。
私は激しい怒りを込め、涙目にソイツを睨み付ける。
これがポケモンバトルでなければ、今すぐぶっ飛ばしている所だわ!



「やっぱり、まだまだ時間がかかるか…戻りなさい『ヘルガー』」


謎の女は、ヘルガーをボールに戻して森の方へと足を向ける。
何か引っ掛かる言葉ばっかりだけど、一体何なのよアイツは!?


ハルカ
「待ちなさい、アンタは一体…!?」


私がその背中にそう言うと、ゆっくりとした動きで彼女は半身だけ振り向く。
今度は視線も見えなかったけど…彼女は虚ろな声でこう言った…



「私の事はとりあえず、『カガミ』…とでも呼べば良いわ」

ハルカ
「…!?」


その意味は私には全く解らなかった。
だが、それが一応名前なんだろう。
かなり引っ掛かる言動だけど、とりあえずそれだけは重要な事だと私は認識した。


ハルカ
「カガミ…忘れないわよ!? いつか絶対にリベンジするわ!!」

カガミ
「…その言葉覚えておくわ、それまでにせいぜい強くなりなさい」


そう言い残し、カガミは去って行く。
私はしばらくその背中を見送った。


ハルカ
「って!! それ所じゃなかった。アチャモしっかりしてぇ!!」


私はハッとなって思わず泣き叫ぶ。
アチャモは完全に気を失っており、力なくぐったりとしていた。
まさか…死んだなんて!?
私は最悪のシナリオを振り払えも、アチャモを抱えて全力で走り出す。
すぐにポケモンセンターに…!
でも、ここはすでに森の手前…トウカまで戻るにはかなりの時間がかかる!


ハルカ
「…それでも、戻るしかない!」


私はとりあえずアチャモをボールに戻そうとする。
が、途端に私を呼ぶ声があったのを聞いて動きを止める。


ジグザグマ
「ジグッ、ジグッ!!」

ハルカ
「ジグザグマ…? どうしたの?」


見ると、また何やら妙な物を咥えていた。
見た事のない物だが、どうやら薬の様だ…手持ちの『キズぐすり』とはデザインが違うけど…
明確に違うのは、液体でなく固体だという事か…
私はそれを見てもしやと思い、本日2度目の壱か罰かでその薬をアチャモに食べさせた。


ハルカ
「お願い…飲み込んでアチャモ!!」


私は半ば無理やり押し込む様に、アチャモにそれを食べさせた。
そして、数秒後…奇跡は起こる。


ハルカ
「!?」

アチャモ
「チャ、チャモ…?」


何と、アチャモは息を吹き返したのだ。
私は思わず泣いて抱き締める。
そしてアチャモを強く抱き締めたまま、優しく頭を撫でてあげた。


ハルカ
「…良かった…! 良かった…アチャモ~!!」

アチャモ
「チャモ…?」



………………………



その後、私はアチャモをボールに戻してセンターにまた戻る事に…
アチャモの事もあるし、今日はもう一泊する事になりそうね。


受付
「相当酷いダメージを受けていました…幸い、薬のお陰で大事には至っていませんが」

ハルカ
「そうですか…良かった」

受付
「ですが、よく『げんきのかけら』なんて持っていましたね? アレかなり高価な薬なんですよ?」

ハルカ
「この娘が…たまたま拾ってきてくれたんです」

ジグザグマ
「ジグジグ」

受付
「そうですか…特性『ものひろい』のジグザグマは色んな物を拾ってきますからね」
「とりあえず、ハルカさんも休んでください」
「涙の跡がみっともないですよ? せめて顔を洗わないと…」

ハルカ
「あ… ゴ、ゴメンなさい…!」


私は目元を隠し、洗面所に向かう。
ジグザグマをボールに戻し忘れたけど、多分大丈夫よね?



………………………



ハルカ
「………」

ジグザグマ
「ジグ~」


次の日、私は昨日の戦いで燃え尽きていた草むらを見る。
カガミと名乗った女、明らかにレベルの違うトレーナーだった。
だけど、私は心の中でカガミにあえてライバル宣言する。
憎くないと言えば嘘になるだろうけど、私は憎しみでは決して戦わないと心に決めている。
格闘技をやって、精神修行もやってきたんだから…!

だこらこそ正々堂々ポケモンバトルでリベンジをすると心に決め、私はカガミの消えた森の方へと歩き出す。
あそこがトウカの森だ…そしてその森を抜けた先にカナズミシティはある。
場合によっては、カガミともカナズミシティで会えるかもしれないわね!


ハルカ
「とはいえ、問題は今のままでは何も出来ない事か」


既に力の差は歴然。
私の手持ちで1番Lvの高いアチャモがあの結果では、てんで話にならない。
しかも炎タイプが炎で倒されたのだ…並大抵の力量差ではああはならないだろう。
とはいえ、それなら私はもっと強くなれば良いだけだ…そう思ってただ歩を進める。
もう迷いは無い…心の迷いは道を誤る事になる。

私はただ愚直に強くなる事を思い、強く足を前に踏み込むのだった…






…To be continued

読了報告

 この作品を読了した記録ができるとともに、作者に読了したことを匿名で伝えます。

 ログインすると読了報告できます。

感想フォーム

 ログインすると感想を書くことができます。

感想

感想の読み込みに失敗しました。

 この作品は感想が書かれていません。