No.25 † 荒野の研究所 †

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リコンの町から北へ向けて出発しようと、私達が荷物を纏めてポケモンセンターから出た時……

アーシェ:「……っ!」
サモン:「どうしたんだい?アーシェさん。」
アーシェ:「……悪い。今、見たくねぇモンが見えちまって……」
フクス:「えっ!?アーシェさん……もしかして、『見える人』……ですか?」
アーシェ:「え?違う、違う!ほら。あそこに居る黒い服を着た男達が見えるか?」

私は少し離れた場所で立ち話をしている男性2人を指差す。

フクス:「あの人達がどうしたんですか?」
アーシェ:「顔は違うけど、あの服は忘れようにも忘れられねぇ……あいつ等の仲間が、私が世話になった教会を襲撃したんだ。」
サモン:「……っ!?それって、アーシェさんがお世話になった神父さんの命を奪ったっていう事件の……」
アーシェ:「連中が此処に居るってコトは、奴等のアジトがこの近くにあるのか?…………フクス、サモン。悪いけど、もう1日だけこのポケモンセンターで宿泊してもらって構わないか?」
フクス:「え?えぇ……それは構いませんが……アーシェさん、もしかして……」
アーシェ:「あぁ。ちょっと連中のアジトで暴れて来る。組織そのものを壊滅させるのは無理でも、手痛いダメージを与えてやるつもりだ。」
サモン:「アーシェさん。気持ちは解るけど、いくら何でも1人でなんて無謀すぎるよ。そういうことは警察に任せて…………」
アーシェ:「悪い、サモン。こればっかりは……大丈夫。何か遭っても私の自己責任、2人を巻き込むつもりは無いからさ。」
フクス:「何を水臭い事言ってるんですか。私達も協力しますよ。」
アーシェ:「え?」
サモン:「えっ!?アーシェさんを止めるんじゃないのかい!?…………はぁ、仕方ない。何ができるかは分からないけど、ボクも付き合うよ。」
アーシェ:「2人共……何か遭っても自己責任だからな。………………ありがとう。」

話が纏まった私達は、何処かへ歩き去ろうとする男性達の後を見失わないギリギリの距離を保ちながら追いかけた。


◆◇✝◇◆


リコンから北方に広がる荒野。
町から数十分……やや北東へ歩いて行ったところに、大きな研究所……工場?のような建物があった。

研究所の周囲は高い鉄の壁が聳え立ち、更にその上には有刺鉄線が張り巡らせられていて、しかもオマケに電気まで流れているみたいで、時々バチッ!と何かが弾けるような音が聞こえる。

そんな鉄の壁の一部に大きな……たぶん、左右に開閉すると思われる扉があり、すぐ傍に縦長長方形の小さな装置があることから、多分これで電子ロックってヤツを解除するんだろうけど……

サモン:「最初の関門だね。」
フクス:「当然ながらロックを解除する暗証番号なんて知るはずも無く……どうしましょう?」
アーシェ:「ハガネール、アイアンテール!」

ボールから出現したハガネールは頷くと、その巨躯を大きくしならせ……勢いを付けて鋼鉄の尻尾を縦に振り下ろす。
ハガネールの尻尾は最も上にある電気が流れる有刺鉄線を物ともせず、目の前の大きな扉を瓦解させた。

同時に、電子ロックを解除せず、扉そのものが壊されたことにより、施設中にけたたましいサイレンの音が響き渡る。

アーシェ:「よしっ!」
サモン:「えぇぇ……まさかの力技……」
フクス:「此処までの道中で『アーシェさんって、実は賢い人』だと思い始めていたのに……」
アーシェ:「だって、解けもしねぇ問題に悩んでるなんて、時間がもったいないだろ?それにほら、『機械は叩けば大体上手くいく』っていうだろ?」
サモン:「え?何か微妙に違うような……」
フクス:「『しかも機械じゃなくて壁じゃないですか』……と、ツッコんであげない私達の優しさ。」
アーシェ:「とにかく!サイレンは鳴っちまったけど、無事に中に入れるようになったんだ。私はこのまま中へ入るぞ。」

私はハガネールをモンスターボールに戻し、継承が鳴り響く施設内へと侵入した。


✝✝✝


施設内部

アーシェ:「さてと……」

黒衣の男達が慌てて廊下を走って行くのを物陰に隠れてやり過ごし、私は目の前にある電子ドアが開いた状態の部屋に駆け込んだ。

アーシェ:「ん?この資料は……」

私は部屋の中央にある机の上で散乱していた資料の1枚を手に取る。
そこには、タイプ:ヌルやシルヴァディの生態に関する内容が記載されていた。

アーシェ:「これは……ヌルじゃねぇか。シルヴァディの物もある……もしかして、此処でヌルを量産しているのか……?」
フクス:「あっ!アーシェさん、此処に居たんですか。」
サモン:「あっちこっちでこの組織の人が走り回っているというのに、特に何をすることもなく悠長だね。」
アーシェ:「ん?2人共……どうした?安全な外で待ってりゃいいのに……」
フクス:「それでも良かったんですけどね……やっぱり、アーシェさんが心配だったというか……ところで、何を見てるんですか?」
アーシェ:「ん?あぁ。この机の上にあったヌルとシルヴァディに関する資料。此処に居た研究者は何処に行ったのかは判らねぇけど……たぶん、この施設でタイプ:ヌルが作られてる。」

私がリュベルの町の一件で出会ったこのシルヴァディも……元々は此処から連れて来られて、憶測だけど何処かの誰かに売られるために、あの時檻に入れられていたんだと思う。

アーシェ:「あと、資料によると、シルヴァディは『メモリ』とか呼ばれるアイテムを所持させると、タイプが変わるらしい……」
サモン:「持たせるアイテムによってタイプが変わる……幻のポケモン、アルセウスみたいだね。」
アーシェ:「たぶん意識して作られてんじゃねぇかな?今日まで気にしてこなかったけど、この資料とサモンの今の発言で確信した。シルヴァディの特性『ARシステム』の『AR』ってのは、アルセウス(Arceus)のことで間違いないだろう。」
サモン:「創造神と呼ばれるポケモンと同じ特性のポケモンを作り出すなんて……神様に喧嘩を売っているとしか思えないね。」
アーシェ:「おっ!言うねぇ。まぁ、私もサモンと同意見なんだけどな。私はそこまで神様に対する信仰心ってのは薄い人間だけどさ、それでも何て言うか……絶対に踏み込んじゃいけない領域ってのは、理解しているつもりだぜ。」
フクス:「…………そのメモリって、もしかしてコレじゃないですか?」

そう言って、フクスはこの部屋のどこかに置かれていたのだろう、色とりどりのメモリ計17枚が入った箱を机の上に置いた。

アーシェ:「これが……」

「何やら騒がしいと思えば……まさか、侵入者が入ってくるとは……」

ふっと声がした方へ視線を向けると、ヨレヨレの白衣を纏った、白色の長髪を束ねることなく伸ばしっぱなしにした痩せ型の男性が立っていた。

男性:「私達『チーム・アプリストス』のアジトに忍び込むとは……良い度胸をしていますね。」
アーシェ:「チーム・アプリストス……それがテメェ等組織の名前か。サモン、フクス、お前達は先に外に出てろ。」
サモン:「うん……わかったよ。」
男性:「おっと!逃がしませんよ。」

男性はそう言いながら投げたハイパーボールが開き、中からジュラルドンが姿を現した。


【 ジュラルドン 】
ごうきんポケモン / 高さ:1.8m / 重さ:40.0kg / 鋼・ドラゴンタイプ
磨きあげた特殊な金属の体は軽いうえに硬いが、錆びやすいのが欠点。
雨が苦手で、洞窟に棲む。


アーシェ:「ちっ……!頼むぞ、相棒!」

私が投げたボールが開き、バシャーモが姿を現す。

男性:「いきますよ……ジュラルドン、龍の波動!」
アーシェ:「バシャーモ、守る!」

ジュラルドンが体勢を低くして口から放った衝撃波を、バシャーモは守りの姿勢で受け流す。

アーシェ:「反撃に移る、バシャーモ!スカイアッパー!」
バシャーモ:「(。`・ ω ・) ”」

私の指示に頷いたバシャーモが、攻撃を受け流されて隙ができたジュラルドンの顎に拳を叩き込み、そのまま天高く突き上げるようにアッパーを繰り出す。

アーシェ:「伝説のポケモン、ディアルガと同じタイプのそいつには、今の攻撃は効いただろ?」
男性:「ほぅ……色違いのポケモンを自慢するために戦闘に出しただけかと思いましたが、ちゃんと考えているのですね。」
アーシェ:「言い方がいちいち腹立つな……バシャーモ、ブレイズキック!」
男性:「ジュラルドン、てっていこうせん!」

脚に炎を纏わせたバシャーモが倒立前転や宙返りを多用して接近する目の前で、ジュラルドンが全身を光らせながら先程と同じ体勢を取り……脚を振り下ろそうとしたバシャーモに向けて、ジュラルドンの口から眩いビームが発射された。

ビームを受けたバシャーモの攻撃は中断され、ジュラルドンの攻撃が撃ち終わったと同時に宙返りをして体勢を立て直しながら着地した。

アーシェ:「ちっ……私のバシャーモにダメージを負わせるとは……ただ、その技を撃ったジュラルドンも、少なからずダメージを負うはずだぜ?」
男性:「もちろん。自分の使うポケモンの技ですもの。その仕様は重々承知していますよ。それでも、貴女のポケモンを倒す足掛かりになるのであれば、ポケモンのHPなど安いものです。どうせ、ポケモンのHPを回復する薬や機械を使用すれば、全快するわけですしね。」
アーシェ:「そりゃそうかもしれねぇけど、もっと自分のポケモンを労わってやれよ。」

フクス:「いやぁ、一進一退のバトル……でもやっぱり、タイプ相性的にアーシェさんのバシャーモが有利ですかね?」
サモン:「そんな暢気なことを言ってる場合じゃないよ。逃げられないなら、せめてアーシェさんとバシャーモに加勢して、早くポケモンバトルを終わらせないと……」
フクス:「そうですね。それじゃあ……」
サモン:「え?あの、フクスさん?」

私の背後で何やら金属が組み立てられるような音が聞こえる……

男性:「ん?なっ!?まっ、待ちなさい!そこの黒髪の貴女、何をするつもりですかっ!?」

男性の声に、チラッと頭を動かして視線を後ろにやると……フクスが筒状の何か物騒な物を構えていた。

アーシェ:「……っ!?フクス、おまっ……何持ってんだ!?」
フクス:「え?アーシェさん。バズーカを知らないんですか?早朝バズーカのもっと凄いヤツですよ。」
アーシェ:「どっちも知らねぇ……ってか、何でそんな物、構えてんだよ!?」
フクス:「アーシェさんの加勢をしようと思いまして。」
アーシェ:「いや、それとその物騒な物の繋がりが分からねぇ!」
フクス:「私、モンスターボールを素手で投げると明後日の方向へ飛んで行ってしまうので……モンスターボールを使う時は、バズーカから射出するんです。」
アーシェ:「物騒すぎる!気持ちは嬉しいけど、コイツとは純粋に1対1でバトルしたいから、絶対に射出するなよ?」
フクス:「フリですか?」
アーシェ:「違うわ!」
フクス:「あ……」
アーシェ・サモン:「「え?」」

偶然なのかワザとなのか……フクスがバズーカとやらの引き金を引いてしまったらしく、話し相手だった私の方を向いていた銃口から勢いよくモンスターボールが射出された。

バシャーモ:「(。`・ ω ・)」
アーシェ:「相棒!」

咄嗟に間に入ったバシャーモが発動した『守る』によって射出されたボールは弾かれ、そのまま大きく放物線を描き……この場に居た4人と2匹がその軌道を目視で追う中
部屋の奥にあった大きな機械の中央・薄いガラスカバーを重力の力を借りて叩き割り、そのままカバーの下にあった赤いボタンを勢いに任せて強く押し込み、動きを止めずに機械の台座の部分をコロコロ転がり、端まで移動するとまた重力に従って床の上に落ちた。

『自爆装置が稼働しました。3分後にこの施設を爆破します。』

アーシェ・サモン:「「!?」」
男性:「何という……何という事をしてくれたのですか!?あぁぁ……私の研究所が……アプリストス幹部であるこの私、『ヨシュア』の研究所が、まさかこんな形で爆破されるだなんて……」
アーシェ:「そんなに緋想にくれるくらいなら、何で自分の施設に自爆装置なんて付けたんだよ?」
ヨシュア:「全ての研究が済んだ後、私の手で起動させて証拠隠滅をするつもりだったのです!それが、まさかこんな……研究だってまだ終わっていないというのに……あぁぁ……ボスから責任問題を追及されてしまう……」

そう言いながらヨシュアと名乗った男性がジュラルドンをボールに戻す。

ヨシュア:「紅髪のお嬢さんと、茶髪のお嬢さんに関しましては、特に何とも思っていませんが……黒髪の貴女!貴女だけは絶対に許しません!いつか必ず捧腹してさしあげます!覚悟しておいてください!」

ヨシュアはそう言いながら踵を返し、私達の前から慌てて走り去って行った。

アーシェ:「あ~あ。顔を覚えられたうえに、恨みまで買っちまったな、フクス。」
フクス:「まさか、こんなことになるなんてねぇ~。」
サモン:「そういう話は後にして、ボク達も早く逃げよう!あまり時間が無いよ!」
アーシェ:「おっと、そうだな。とりあえず……フクスへの折檻は後回しだ。」
フクス:「えっ!?」
アーシェ:「何を意外そうな顔してやがる!当たり前だろうが!」


私達が慌てて施設から脱出し、ハガネールが壊した正面ゲートから完全に施設外に出て、更にルアン方向へかなり離れた瞬間
周囲に爆音を轟かせながら、大きく太い火柱を上げて施設が吹っ飛んだ。


*****


翌朝
ルアン・ポケモンセンター

『フィリア地方西部に位置する研究所爆破事故』は新聞の一面記事として取り上げられ、TVのニュース番組でも大々的に取り上げられていた。

アーシェ:「(あのヨシュアって野郎……研究はまだ途中みたいなこと言ってたよな……偶然の事故とはいえ、連中にちょっとでも痛手を負わせることができたのはデカいかな。)」

そうぼんやりと考えていると、私のライブキャスターの呼び出し音が鳴った。

アーシェ:「もしもし。」
ティア:『アーシェちゃん、ニュース見たわよ。そっちの犯罪組織が所有していた研究所が爆発事故を起こしたって。』
コルボー:『俺もさっき、知ったんだが……お前、俺とコルポスの港町で別れた後も、西を目指して……たんだよな?巻き込まれなかったか?』

私が通話画面を開くと、異国に居る私の友達兼保護者の2人の顔が映った。

アーシェ:「あぁ~……うん、私は大丈夫。」
ティア:『そう?なら良いのだけれど……アーシェちゃんって厄介事に巻き込まれやすいタイプだから、お姉さん、心配だわ。』
アーシェ:「えっ?あ……あははは……」

フクス:「アーシェさん。あの研究所から勢いで持って来たメモリ、此処に置いておきますねぇ。」

アーシェ:「ちょっ!?フクス!今、通話中……」
コルボー:『聞こえたぞ、アーシェ。研究所って……お前、やっぱり関わってんじゃねえか!』
アーシェ:「成り行き!成り行きだから!仕方なかったんだよ!」
ティア:『今、一緒に旅をしている私の知らない子が居るみたいだけど……その子じゃ、アーシェちゃんを止められなかったのかしら?』

むしろ、そいつの持っている道具のせいで基地の自爆装置が起動した……って言ったら、2人はどんな反応をするんだろう?

コルボー:『けどまぁ……爆発したのは犯罪組織の研究所なんだろう?フィリアの平和に少しでも貢献したという意味では、よくやった……とでも、言っておいてやるか。』
アーシェ:「ん~……まぁ、そうかな。対峙した組織の幹部は『まだ研究が終わってない』みたいなことを言ってたし……少なからずダメージは与えられたんじゃないかと思う。」
コルボー『ちゃっかり組織の幹部と対峙してんじゃねえよ。』
ティア:『でも、そう……その組織そのものが壊滅したわけではないのね。』
アーシェ:「とにかくさ!この件に関しては地元民の私が、警察やらポケモン協会のお偉いさんやらに報告して何とかするからさ!」
ティア:『絶対よ?自分で組織を壊滅させようとしちゃ駄目よ?』
コルボー:『いいや、アーシェの事だ。今後も絶対厄介事に突っ込むか、巻き込まれるだろうな。それで、そのまま勢いで組織を壊滅させちまう可能性が……』
アーシェ:「う”っ……否定できねぇ……」
ティア:『アーシェちゃん、お願い。そこは否定して?』

サモン:「アーシェさん。ポケモン協会の人が来て、アーシェさんと御話しがしたいって……」
アーシェ:「あぁ、わかった。そういうことだから2人共、通話を終了するよ。久しぶりに顔を見て、声が聞けて嬉しかった。」
ティア:『うふふ。もっと気軽に電話してくれていいのよ?』
アーシェ:「いや、私もそうしたいんだけど、時差とか……2人共、今頃仕事してるんだろうな……とか考えるとな。」
コルボー:『ははっ、お前でも一応、配慮ってモンができたんだな。』
アーシェ:「うるせぇな。さてと……それじゃ、人を待たせてるから。」
ティア:『えぇ。またお話ししましょう。アーシェちゃん。』
コルボー:『いろいろ大変みてえだけど、上手くやれよ。アーシェ。』
アーシェ:「うん。ありがとう。またな。」

2人との通話を終了し、私はポケモン協会の役員さんが待つポケモンセンターのロビーへと向かった。

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