No.24 † 死後の世界観 †

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読了時間目安:12分
フィリア大陸最西端の町・『 リコン 』
通称・『墓地の町』。
この町の3割が人の住む場所……残りの7割から町の外の荒野まで人やポケモンの墓がいっぱいで、町外れには『彼岸の神殿』が建てられており、伝説のポケモンギラティナが宝玉である白金玉と一緒に祀られている。

リコン・ポケモンセンター

フクス:「何ていうか……静かな町ですね。」
サモン:「ボクが知ってる中だと、シオンタウンが一番近いかな……」
アーシェ:「それじゃあ、2人共……観光は各々楽しんでくれ。私はちょっと、行きたい場所があるから別行動させてもらうぜ。」
フクス:「何処に行くんですか?アーシェさん。」
アーシェ:「……2人にとっては、何のおもしろみもねぇ場所だよ。」

私はそう言って1人でポケモンセンターから出た。

フクス:「さてと…………サモンちゃん。アーシェさんの後を付けましょうか。」
サモン:「え?いや、アーシェさんだって1人になりたいときだって、あるんだろうし……バレたら怒られるんじゃないかな?」
フクス:「その時はその時。怒られるときは……2人一緒です。」
サモン:「いや、あんまり巻き込まないで欲しいんだけど……」


*****


リコン・共同墓地

私は自分の両親の墓参りを済ませた後、もう1つ離れた場所にある墓の前に立った。

アーシェ:「久しぶり、神父様。近況報告が遅くなって、すまねぇな。」

ヴァン神父の墓石に花を供え、跪いて胸の前で十字を切る。

アーシェ:「あれから、まだそんなに月日は経ってねぇけど、私にも異国の頼りになる……一緒に居て楽しいと思える友人が4人もできたよ。本当に、あんたに出会う前の私からは考えられない進歩なんじゃねぇかと思ってる。」


フクス:「アーシェさん、私達の事……そんな風に……」
サモン:「その友達がこうして尾行して、物陰から覗いてるとも思ってないだろうね。きっと。」


アーシェ:「本当に……あの時、自ら命を絶たなくて、あんたに救われて良かった。私、いろんな場所に旅して、ポケモンや友達と出会えた今が凄く楽しいんだ。だから……さ、そっちの世界で会うのは、まだまだ先になりそうかな。」

私はゆっくりと立ち上がり、もう一度眼下にある墓石を眺める。

アーシェ:「それじゃ、またそのうち現状報告をしに来るよ…………背後で隠れてるつもりでいる覗き魔を、待たせておくのも悪いしな。」

墓石の前から踵を180度返し、自分の背後にあった大樹の陰に居るフクスとサモンの元に歩み寄る。

フクス:「……イツカラ気付イテマシタ?」
アーシェ:「花を添えて、十字を切ったあたりからかな?サモンが覗き見なんて提案するとも思えねぇし……発案者はてめぇだな?フクス。」
フクス:「何故バレた。」
アーシェ:「何故バレないと思った?」
サモン:「ごめんなさい、アーシェさん。でも、お墓参りに行くなら言ってくれれば……」
フクス:「この際だから開き直って御訊きしますが……こちらにはどなたが?」
アーシェ:「……皆に出会う前にな、ちょっといろいろ遭って自暴自棄になっていた時、私に救いの手を差し伸べてくれた恩人・恩師ともいえる教会の神父様が、此処で眠っている。」
サモン:「そんな人がどうして……病気かい?」
アーシェ:「いや……事情は判らないんだけど、私が旅に出ようと教会を発った後に何か変な連中に教会が襲撃されてな。その時に……」

今思い返してみても……何であいつ等は教会を襲撃したんだろう?
連中の利益になりそうな物が教会にあったんだろうか?

アーシェ「まぁ、そんな訳で……私からすれば恩人だけど、2人にとっては、まったくの他人の墓参りになるからな。そんなのに付き合ってもらうのも悪いと思って、自由行動にしたんだけど……」

私はサモンの隣に立っているフクスへ視線を向ける。

フクス:「あ……あはははは……」
サモン:「それで?墓参りを済ませたアーシェさんは、これからどうするんだい?」
アーシェ:「ん~……どうすっかな……せっかくだしこの地の神殿を見学していくか。」
フクス・サモン:「「神殿?」」
アーシェ:「そっか、サモン……フクスもまだ見たことなかったか。このフィリアには東西南北の最端の町にそれぞれ、神殿があるんだよ。この最西の町であるリコンにも『彼岸の神殿』ってのがあって、伝説のポケモンギラティナが祀られていて、宝玉として白金玉が飾られてるんだ。」
サモン:「彼岸って……その神殿はお化け屋敷か何かなのかい?」
アーシェ:「いや、神殿だって。まぁ……黒曜石造りだから、それなりに雰囲気はあるけどな。」
フクス:「せっかく国外に来て、地元の方も此処に居ることだし……是非とも見学していきたいですね。」
サモン:「そうだね。アーシェさん、案内してもらえるかな?」
アーシェ:「おう。もちろん良いぜ。」


*****


彼岸の神殿
通路を挟んで両側の黒曜石造りの壁には、この地にまつわる死後の世界観を伝える絵画や、壁画などの調度品がガラスケースに入れられた状態で保管されており
伝承を伝える古國語が、黒曜石を削ったトコロに流し込んだ金が冷え固まることで、薄暗い空間でもハッキリと表示されている。

フクス:「おぉ~……絵画や骨董品がいっぱいですね。」
サモン:「……?アーシェさん。此処って具体的にはどんな場所なんだい?何か、説明っぽい文字が浮かび上がってるんだけど、読めなくって……これはこのフィリアで使われている文字なのかい?」
アーシェ:「ん?あぁ、いや。これは今現在フィリアで使われている文字の基礎となったモンだから、読める人は殆ど居ねぇよ。」
サモン:「そうなんだ……」
アーシェ:「まぁ、サモンの前の壁に刻まれている文字の内容を簡単に言うと、このフィリア地方の死後の世界観が書かれてる。」
サモン:「アーシェさん、この文字が読めるのかい!?」
アーシェ:「その反応は3回目だな……ティアもコルボーも驚いてたよ。まったく!私にだって、それなりの学はあるんだぞ?」
フクス:「いやぁ、アーシェさんの普段の言動から、察するのは難しあぃたたたたた!」

とりあえず、茶化しに入っていたフクスの顔面を右手5本の指で締め上げる。

サモン:「ボクも詳しくは知らないんだけど、各地方に墓地は存在していても、こうやってハッキリと死後の世界観を伝える施設っていうのは珍しいと思うよ。このフィリアではどんな伝承が?」
アーシェ:「伝承ってほどでもねぇけどな。まず、このフィリアで考えられているのは死後の世界は大きく天国と地獄の2つに分けられているということ。この思想は他国でも似たようなもんだろうから、あんまり珍しくないな。」
フクス:「ポケモン図鑑のゴーストタイプのポケモンの説明欄で、魂をどうこうするって説明を見かけたりするけど、死後の世界に関するものは無いですね。」
アーシェ:「そりゃまぁ、ゴーストタイプのポケモンが魂を何やかんやするってのも、死後の世界観も伝承でしかねぇからな。ゴーストタイプのポケモンに関しては実験する術があるのかもしれねぇけど、実際に試して魂を奪われた時点で伝える術が無いだろ。だって、そいつはもう死んでるんだから。」
フクス:「確かに……」
アーシェ:「そんで、フィリアでの死後の裁判みたいなのは至ってシンプルで、『神様に好かれた者は天国へ行き、神様に嫌われた者は地獄に落とされる』だ。」
サモン:「本当にシンプルだね。どうすればその神様に気に入られるっていう具体的な伝承は無いの?」
アーシェ:「ん~……私の知る限りじゃ、ちょっとな……そもそも、天国に関する伝承ってのは、地獄に関する伝承に比べて少ないんだよ。天国に関しては『神様に愛されれば、こんな素晴らしい場所で永遠に過ごせますよ』ってことくらいだ。」
フクス:「……言われてみれば、絵画も殆どが薄暗い世界を描いた物が多いですね。」

少し離れた場所まで絵画を見て廻っていたフクスの声が聞こえてくる。

アーシェ:「フクスの言う通り、それらは大体地下の世界……地獄の光景を想像で描いた物だからな。天国の伝承に対して、地獄の伝承ってのはメチャクチャ想像豊かで、『死者の国への入り口は西の最果てにある』とか、『死後の世界を流れる川の渡し賃は金貨1枚』だとか、『地獄の入り口は3匹のヘルガーが見張ってる』とか、犯した罪に対して落ちる地獄の情景とか……地獄巡りをした奴が書いたんじゃねぇか?って思うくらい、事細かな伝承が多いんだ。まぁ、それも生きている人間に対する戒めの部分が大きいんだろうけど。」
サモン:「なるほど……あっ、この壺に描かれてるドラゴンって……もしかして、ギラティナかな?」

サモンの横から展示されている壺を見ると、6枚の羽と6本の足を持つドラゴンが、おそらく罪人と思われる人間を攻撃している光景が描かれていた。

アーシェ:「おそらく、そうだろうな。ギラティナのアナザーフォルムってヤツだろう。このフィリアでのギラティナは地獄の獄卒の1匹って考え方をされてるからな。」
サモン:「へぇ……シンオウ地方の伝承とはずいぶん違うんだね。」
アーシェ:「そりゃまぁ、たとえシンオウで語られているギラティナと、このフィリアで語られているギラティナが同一個体だったとしても、場所も変われば人の考え方だって変わるさ。」
フクス:「でも、いいですね。こういう犯罪が駄目!みたいなことをちゃんと伝えられる施設があると、犯罪率も低いんじゃないですか?」
アーシェ:「だと良いんだけど……そう簡単にはいかねぇんだよな。」
フクス:「そうなんですか?」
アーシェ:「まぁ、確かにこのリコンでの犯罪ってのは、他の町に比べたら少ないらしいんだけど……基本的に、フィリアの人達って『死後の世界なんてあるわけない』って思っている人達だからな。」
フクス:「えぇっ!?」
サモン:「伝承がちゃんと伝わってないって、この神殿の存在する意味が無いじゃないか。じゃあ、此処にある絵画や骨董品に描かれてる絵は?フィリアの人が描いたんじゃないのかい?」
アーシェ:「そうだぜ。私と同じように徐々にだけど、神話なんかに興味をもった連中がな。」

こういう伝承とかに興味を持ってくれる人が増えたら、東や南の神殿で起きた馬鹿みたいな騒ぎも無くなるんだろうけどな……

アーシェ:「さてと……私がこの神殿で説明できるのは、これくらいだ。あとは白金玉を見てお開きにしようか。」
サモン:「いや、充分だよ。ありがとう、アーシェさん。此処がどういう場所なのか、よく解ったよ。」


*****


リコン・ポケモンセンター

アーシェ:「ふぅ……」
サモン:「アーシェさん。昼間はありがとう。他国のだけど、歴史や文化に少しでも触れることができて楽しかったよ。」
アーシェ:「そっか。そいつぁ良かった。」

1人本を読んでいると、風呂から出てきたサモンが声を掛けてきた。

サモン:「アーシェさんはこれからどうする……何処へ行こうか決まっているのかい?」
アーシェ:「いや、此処で神父様の墓参りをするのが一時的な目的だったからな……」
サモン:「そっか。」
アーシェ:「まぁ、余程のことが無い限り、2人を見放したりしねぇから安心しな。むしろ、私の方が迷惑かけてるよな……( ̄∇ ̄;)ハッハッハ」
サモン:「自分で言っておいて、勝手に気落ちしないでよ。」

フクス:「ふぅ……良いお湯でし………あら?珍しいですね。サモンちゃんがアーシェさんを追い込んでるなんて。」
サモン:「人聞きの悪い言い方、しないでもらえるかな?」

あぁ……やっぱり、誰かと旅をするってのは良いな。
この2人ともそのうち別れることになるんだろうけど……その時が来るまで、めいいっぱい楽しませてもらうとするか。

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