プロローグ

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読了時間目安:4分
夜も更け、星々が海を照らしている。
海に星座が投影され、まるで巨大な海図のようだ。
そんなことを思いながら灯台守が海を眺めていると、彼の視界に一隻の船が映り込む。
その船は木造で、造りは一昔前のものだった。
こんな夜中に何をやっているんだ? と、灯台守は思った。
彼は近く嵐がやってくるのを知っていたので、手持ちのデンリュウにメッセージを送らせようとした。
親切な灯台守は、灯台の中に入り相棒を呼びに行く。

「デンリュウ、明かりを頼む。」

返事がない。
灯台守が急いで階段を降りてデンリュウの持ち場を見に行くと、そこにはぐったりと横たわったデンリュウがいた。

「デンリュウ! 大丈夫かデンリュウ!!」

幸いにもデンリュウは寝ていただけだった。
しかし、長年灯台守をやってきたデンリュウが勤務中に居眠りなんて信じられない。
不思議に思いながらも、さっきの船が心配になったので再び外へ出る。
もう船は見えなくなっていた。

「しまった、行ってしまったか……。」

こうなってしまうと、彼にできることは無事を祈るほかない。
天然の海図は依然その姿を保っている。


サー……サー……
波の音が甲板中に響く。

「ふぅ……海風が気持ちいいな。」

男は壺に語りかけている。

「さあ、もうすぐお前の半身に会えるからな。 安心しろよ。」

その壺にはドーナツのような穴が空いており、何やら顔のようなものをも見受けられる。

男が夜空を見上げると、鼻先に水滴が落ちてきた。
雨か、と思った時には大雨に。大雨だと思った時には嵐になっていた。

「ザブラ! 早く中に入れ!」

「わかった、今行く」

ザブラと呼ばれるこの男は、小走りで船内にもどろうとした。
その時、手招きしていた男に雷が落ちた。
ものすごい雷鳴に紛れ、微かに男の声がする。

「ぐああああああああああ!!」

程なくして男は息絶えた。わずか数秒の出来事だ。
しかし、私はその数秒に何か違和感を覚えた。
何故なら、雷が落ちるとしたら高いところだからである。
マストがあるのにわざわざ中腰だった男に落ちた雷。
金属部品には目もくれずに男の脳天を垂直に貫いた雷。
いや、そもそもコレを雷と言っていいのだろうか?

「何かがおかしい……とにかく、一度安全なところに寄港しよう。」

そう思った矢先、船に津波のような大きさの波が直撃した。
船は大きく揺れた。 至極当然のことである。
そして男は、あろうことか壺から手を離してしまった。
たかが壺くらい命に比べれば安いものだが、彼にとってはそうもいかないらしい。

「しまった! 行くな! 行くんじゃなあああい!」

男の声も突風と荒波にかき消されてしまった。
幸いなことに壺は水より密度が小さかったらしく、水に浮かんんでいた。
男が手を伸ばすが、壺には届かない。
わかりきったことだが、人間の腕というものは案外短いのだ。


さて、水に浮かんだ壺の行方は、どこの誰にもわからない。
波止場のキャモメに聞いてみたが、首を縦には振らなかった。

そう、ある男を除いては…………。

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