49.しねしねこうせん

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読了時間目安:5分

この作品には残酷表現があります。苦手な方は注意してください

 二人の人間が部屋で話合っていた。
「まずいぞ、納期まで三時間しかない」
「後一問考えれば終わりだ。このチャンスを逃す訳にはいかない」
 二人はクイズ作家として活動する身だ。主に、雑誌に掲載する用のクイズの作成依頼を受けている。
 今回は雑誌ではなく、なんとグレンジムからの依頼だった。
 グレンジムは挑戦者にクイズを出すらしく、そのクイズの作成を彼らに依頼してきた。いわゆる外注だ。雑誌のクイズよりも単価は遥かに高い。何が何でも二人はノーミスでクイズを納品したかった。
 部屋にあるホワイトボードには、このように書かれている。

 わざマシン28とは、○○である。(答えは×にする予定)

 〇〇に入れる言葉を、さっきから考え続けていた。
「〇〇に入れるのは、なんでも良いんだよな」
「ああ、答えは『×』だからな。ポケモンの技でなくていい。適当な技名を入れればいいだけ」
「しかし、その適当な技名で良いのが浮かばないんだよな。センスの良い架空の技名が思いつかない」
「とりあえずお前、頭に浮かんだ適当な技名を、ひたすら言ってくれないか?」
「は?」
「パッと思いついた技名を並べてくれ」
「……なんでも良いのか?」
「お前が言った技名を、俺が速攻で『ボツ』か『採用』か判定していく」
「お前が判定するのか」
「納期まで時間がない。とにかく数を出しまくって、それから良いものを抽出していこう」


「分かった。じゃあいくぞ」
「こい」
「ハイパーガトリングワイパー」
「ボツ」
「レーザーストロングフィンガー」
「ボツ」
「トルネードスプラッシュサンダー」
「ボツ」
「ファイナルパワフルアタック」
「ボツ」
「ゼルメルツガード」
「ボツ」
「スラッシュエレザード」
「ボツ」
「パワフルアンダーストリップ」
「ボツ。お前真面目にやってるのか」
「やってるよ」
「碌なのが一つもないぞ」
「お前が、頭に浮かんだ適当な技名を片っ端から言えって」
「本当に適当じゃねーか。なんだよ、パワフルアンダーストリップって」
「しょうがねーだろ。頭に浮かんだんだから」
「まあいい。もっと技名案出せ」
「サウザンドキラーファイヤー」
「ボツ」
「フリーズポイズンプッシュ」
「ボツ」
「セカンドナックルストーム」
「ボツ」
「デスキングドームパワー」
「ボツ」
「シニアゼルメルツサンダー」
「ボツ」
「メガサンダーグラデーション」
「ボツ」
「バタフライマシンガンG」
「ボツ」
「エターナルソードスラッシュ」
「ボツ」
「アナザーダークネススペース」
「ボツ。お前やっぱりふざけてんだろ」
「ふざけてねえよ。っていうか、これだけ出してるのに全部ボツかよ」
「全部ボツだよ。こんなの採用できるか」
「一個ぐらい良いのあっただろ」
「なかったよ。もっと格好良い技名考えろ」
「ロックンロールアタック」
「ボツ」
「ギカサイレントアタック」
「ボツ」
「ソーラーエレガントアタック」
「ボツ」
「ゼルメルツナチュラルアタック」
「ボツ」
「ジェネリックライトアタック」
「ボツ。なんでさっきからアタックばっかりなんだよ」
「もうネタがないんだよ」
「死ぬ気で捻り出せよ。最後のはなんだよ。ジェネリックライトアタックって一番弱そうじゃん。後ちょいちょい出てくる、ゼルメルツってなんだよ。意味不明だ」
「知らねーよ。お前が思いついた技名言えっていうから」


「なんだよ。俺が悪いっていうのか?」
「ああそうだよ。お前が悪い」
「そうかよ。じゃあ俺が一人で全部考えるよ。お前なんかいらん。お前はもう、しね!」
「じゃあお前はしねしね!」
「しねしねってなんだよ!」
「しねって気持ちがより強い事を表した言葉だよ」
「なんだよその意味分からん発想は。そんな幼稚な発想力だから、クイズもまともに考えられないんだよ!」
「なんだと!」
「ああ! やんのか!」
「おう上等だやってやるよ。外へ出ろ。ポケモンバトルで決着だ」
「上等だ! 俺のケンタロスのはかいこうせんでぶっ潰してやる」
「じゃあこっちはしねしねこうせんでぶっ潰してやる」
「なんだよしねしねこうせんって」
「『しねしね!』って気持ちを込めた光線じゃ」


「……ちょっと待て。しねしねこうせん……これだ!」
「は?」
「さっきのクイズだ。しねしねこうせん……。これは面白い技名じゃないか。これでいこう!」
「お前何を?」
「『わざマシン28とは、しねしねこうせんである。』最後の問題はこれで決まりだ」
「……いや、絶対駄目だろこんなの。ジェネリックライトアタックの方がまだマシだから」
「よし全部の問題を考え終えた! グレンジムにメール出すぞ」
「おいおい本気かよ。お前これジムに挑戦する少年少女に出す問題だぞ!」
「大丈夫だ」
「PTAから苦情来るぞ!」
「平気平気」
「最近のSNSの怖さ見くびるなよ。すぐ晒されて炎上するんだぞ!」
「グレンジムに送信っと。よし送った! 納品完了!」
「うわこいつ本当に送りやがった! 知らんぞ俺は」

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