第一話「輝く青」

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【クロガネシティ】

エネルギーみなぎる場所と名高い、俺の故郷だ。

石炭業で有名だが、同時にポケモンジムも有しているためそれを踏み台にポケモントレーナーとして旅立つ者も多い。



「ソウ、お昼できたよ」


母の呼ぶ声がして、どうにかベッドから起き上がりリビングに向かう。

ちょうどズバットの耳のように逆立った髪も直さず、目玉焼き乗せトーストの前に座る。


「またこんな時間まで、まだ進路も決めてないのに呑気でない?」


こんな小言も聞き飽きた、寝惚けたフリで聞き流す。

とはいえもう中学三年の秋だ、危機感がないわけではない。

現に同級生たちはほぼ全員、卒業後トレーナーとして旅に出るか、就職のために進学するのかを決めそれぞれ準備をしている状況だ。



「ポケモントレーナーか……」

「なにソウ、いつの間に決めてたの?」

「いやっ違くて」

「したって今……」


トーストを食べ終えた俺はまた聞こえないフリをして部屋に戻り、ズバットの耳を直す。





五年前、まだ小学生だった俺は同年代の子供の大半がそうだったようにポケモントレーナーに憧れていた。



ーー五年前ーー

【207番道路】

俺の昔からの遊び場だ。

幼い頃から毎日のように出かけてはポケモンを追いかけ、時には追いかけられたりしていた。

ヨーギラスなどのとても珍しいポケモンも何度か見かけるほど入り浸っていた俺は、もうこのテンガンザンの麓で知らないことはないと得意になっていた。


「あ!コロボーシ!、」


朝にしか出会えないその小さなムシポケモンを、俺は夢中で追い回した。

ドッ。

突然頭に衝撃を食らい、痛みで尻餅を着く


「いったあ!」


たんこぶができそうな頭をさすりながら見上げる。


「オドシシ……」

「ブルォオオーー!!」


俺の頭と同じ衝撃と痛みをその尻に受けたオドシシは明らかに怒った様子で遠吠えをした。


「まさか……」

ガサッガサッ

コッコッコッ


蹄の音がどんどん増えていく。

右、左、後ろからも。

気付けば逃げ場などなくなっていた。


「ご、ごめんなさい……!!」


涙目で訴えてもオドシシの脅しは収まる気配もない。


「ごめんなさいごめんなさいごめんなさい!!」


泣きながら頭を抱えうずくまる。



「あつっ!?」


突然、手の甲の一点に激しい痛みを覚えた俺は思わず顔を上げた。

焼ける草むら、飛び散る火の粉、後退りするオドシシたち……の"角"を見てしまった俺は突如としてひどい眠気に襲われた。

何が起きたかも分からずぼやける視界で捉えたものは


「青い、ポケモン……?」





気が付くともう夕方になっていた。

見回してももうオドシシも青いポケモンもいない。

青いポケモン……このあたりで見かけるものではゴマゾウが当てはまるが、あの青色はゴマゾウのそれよりもっと鮮やかに輝いて見えた。

青く輝くポケモンなど、俺は見たことがなかった。



それ以来、俺が207番道路に行く目的は変わった。

他のポケモンには目もくれず、ただあの青い輝きを探した。

好奇心というよりも俺はそのポケモンに運命のようなものを感じていた。

俺がポケモントレーナーになるなら、最初のポケモンはあいつだ。


「あいつじゃないと嫌だ……!」


いつしかそう思うようになっていた。






そして今、俺はまだあの青いポケモンの尻尾もつかめていない。


「ま、尻尾があるのかさえわかってないんだけど」


自嘲気味に笑いながらよく磨かれたモンスターボールを五つカバンに詰め、玄関に向かう。


「また麓に行くの?いつまでもそのー、青いポケモン?にはっちゃきになってないで早く進路を決めてほしいわ」

「わかってるよ」


今度は小言を無視する訳にもいかず、少し不機嫌に返事をして家を出た。

青く輝くあのポケモン、あいつ以外でトレーナーとしてデビューする気はない。

だから諦めようと思っている。

来週、最後の進路希望調査の提出締切日がある。

その日までにあいつに出会えなければ、俺はトレーナーを諦めて進学する。





秋晴れの青とあの日見た青を見間違えぬよう、少し目をこすって207番道路に向かった。

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