44.どちらがバトルで勝ちそうか判定する講座

しおりを挟みました
しおりが挟まっています。続きから読む場合はクリックしてください
読了時間目安:5分

この作品には残酷表現があります。苦手な方は注意してください

 みなさんこんにちは、本日の講座のお時間がやってまいりました。
 今日も、バトル前にどちらのトレーナーが勝利するか予想できる目を、養って頂きましょう。
 みなさんもご存知のようにこの都市にはポケモンリーグがあります。リーグが行われる一週間前に抽選会が行われ、そこで対戦相手が決定します。
 抽選会で対戦相手が決まった後の、二人のやり取り。ここに注目してください。このやり取りを聞くだけで、どっちがバトルて勝つのか、簡単に予想できるんですよ。
 え? よく分からない? それでは、具体例を紹介します。


 まずは、レベル1から。
 今から流れる会話を聞いて、どちらが勝ちそうか予想してください。

A「ほう。一回戦の相手はお前か。相変わらず胸くそ悪い面してんな」
B「なるほど君か。君はまだ、ポケモンを道具扱いしてるのか」
A「はあ? ポケモンを道具扱いして何が悪いんだ」
B「ポケモンは戦いの道具じゃない。戦ってくれるパートナーのことをもっと考えるべきだ」
A「あのなあ、ポケモンは友達だとか相棒だとか、綺麗ごとばっかり言ってんじゃねえよ。そんなことばかり言ってるから、お前はいつまでも弱いままなんだ」
B「お前のその歪んだ考え、俺が直してやるよ」

 はい。これは簡単ですね。答えはBです。Bが勝ちます。
 ええ。これぐらいは分からないと、話になりませんよ。こういうポケモンを道具とか奴隷とか表現する系の人が、一回戦で落ちるのは定番ですからね。みなさんぜひ覚えて帰ってください。


 さて、次はレベル2です。今度はちょっと難しいですよ。

A「お前か。次の対戦相手は」
B「……」
A「お前、ずいぶん冷たい目になったな」
B「俺のことはほっといてくれ」
A「なあ、いい加減やめろ。あんな奴に付いていくな」
B「断る。俺はあの人の、素晴らしい思想に惚れたんだ。あの人はやかて、世界を支配する」
A「本気で言ってるのか。あいつはやがて、世界を破滅させるつもりなんだぞ!」
B「こんな世界、破滅して問題なし。破滅の上に創造はある。あの人なら、理想の世界を創ってくれる」
A「だからお前は、騙されてるんだよ! 目を覚ませって!」
B「だまれ! 俺が辛くて堪らなかったとき、遠くでこそこそ嘲笑っていたのは、お前らじゃないか!」
A「……!」
B「あの人は俺の心を救ってくれた! あの人だけが、俺のことを認めてくれた!」
A「……分かったよ。お前は好きにしろ。だが、この勝負で俺が勝ったら、お前はあの人から離れろ」
B「ああ」
A「くそっ、なんでお前こうなっちまったんだよ」

 はい。これはちょっと難しいですね。ですが、答えは明確です。これは絶対に、Bが勝ちます。
 「Aの方が正しいこと言ってるのに?」って思った方、もっと見る目を養いましょう。
 闇落ちしたっぽいこのBは、まだ改心する段階じゃないですよ。もうちょっと心が揺らいだり、気持ちが引っ張られたりしてからじゃないと、負けないですよこれは。Bが負けるのは、もうちょっと後です。
 加えて、Aも未熟さを見せており、今回勝てるとは思えませんね。結局、討論ではBに負けてる訳ですから。論破できないから、「バトルで勝ったら言う通りにしろ」って強引な方向に持っていってるじゃないですか。討論に勝てないようじゃ、バトルでも勝てませんね。


 ……と、このように、バトル前の会話を聞くだけで、勝敗ってなんとなく分かっちゃうんですよ。みなさんもぜひ、試してくださいね。
 以上で、本日の講座は終了します。来週はレベル3から始めます。楽しみにしてください。


 講座を聞き終えた人は、皆嬉々とした表情をしたり、ガッツポーズを取ったりしていた。部屋から出た彼らは、皆同じ場所へと向かうのである。
 彼らが向かったのは、賭博場であった。彼らは既に勝ち誇った表情をしていた。
 講座を開催した人は、札束を数えつつニヤけていた。馬鹿高い受講料のおかげで、彼は簡単に稼ぐことができた。
「賭博に熱中するような連中は、どうしてこうも騙しやすいんだか」

読了報告

 この作品を読了した記録ができるとともに、作者に読了したことを匿名で伝えます。

 ログインすると読了報告できます。

感想フォーム

 ログインすると感想を書くことができます。

感想