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読了時間目安:4分

この作品には残酷表現があります。苦手な方は注意してください

 そして。影を渡って逃げた人間達へと瞬く間に追いついた彼は、唸りを上げて山道を走破する車を念動力で持ち上げると、中にいる人間(獲物)を凝視する。
 顔を引き攣らせた二人は彼に向かって何か言っているがそんな事には興味がない。
 こんな状態にも関わらず、やはり『カズヤ』と比べると感情も生気も此方の方が明らかに溢れているなと彼は思った。あの人間は己を殺そうとした彼とその弟分と妹分の三悪霊を前にしても、薄っすらと微笑むくらいしかしない。イカれている。壊れている。気持ちが悪い。理解が出来ない。恐ろしい。だから殺す。
 人間は生態系の頂点である。だから殺す。得体の知れない技術を用いて山を森を削り取って人工物へと塗り替える。だからそれを利用して殺す。異形達を率いて異形を狩ったりもする。だからその異形ごと殺す。
 だが、牙も爪も無い。炎も毒も吐かず雷も発さない。力も弱く肉体も脆弱。
 更に。この人間の雄達は彼の攻撃を避けることも出来そうにない。

 嗚呼。殺しても何も面白くないなこいつら。

 宙に固定された車の中で喚き散らす人間達を()っと観察して、彼はそう思った。
 彼の中の殺意が急速に萎んでいく。
 だから、車を浮かべていたテレキネシスを解除する。超常の支えを失い当たり前の結果として車は墜落する。
 重い音を響かせて落下し、転がり、横転してこれ以上の走行は出来そうにない。車体が(ひしゃ)げて、硝子の割れた窓から呻きながら虫の様に這い出てきた人間達のもとへ、彼は降り立つ。
 この獲物に対して抱いていた殺意は消えた。そう彼は自覚する。否。獲物ではなかったのだ。そして、刹那の愉悦に浸るための玩具にもなりえない。そう、理解する。
 明らかな恐怖に震える人間の瞳を影霊(ゲンガー)たる彼が覗き込む。
 別に彼が改心しただとか、生命の大切さに目覚めたとかそういうことでは決して無い。彼はこれまで通りの彼であり、今後も殺意も悪意も害意も周囲に撒き散らす存在であり続ける。
 これはただ、この人間達を殺す事が、あの意味のわからない人間(、、、、、、、、、、)を殺す事よりも優先してやるほどの事ではない、というだけ。そしてこれも、以降あのふざけた人間『カズヤ』を殺すまで人間を殺さないというわけでもない。そこまで彼は我慢強くないし、拘らない。只々、今この瞬間に気分が乗らなくなったというだけのこと。
 呼吸するように眼に映るものを殺してきた彼なのだから、気紛れに何故呼吸(殺害)するのかと考えてみたりしたとしても、それが治まる事なんて事はありえない。これからも息をするように殺していくし害していく。
 だから。目の前の弱者を殺す気は失せた代わりに溢れんばかりの悪意を込めて、ニタリと歪んだ彼の眼が妖しく光る。

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