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この作品には残酷表現があります。苦手な方は注意してください
彼は不満だった。不服だった。苛立っていた。自分が【ジム】なるよくわからない建物の開けた場に居ることには勿論苛ついているし、弱々しい人間の下僕のような事になっている現状にも腹を立てていた。
尋常ならざる強さの忌々しきバシャーモに、幾度も瀕死まで叩きのめされて叩き込まれた【ポケモンバトル】なる人間の遊びの規則。規定。
そんなものは知ったことではないし、そんなものに縛られるつもりもない。ないが今ここでそれを破ると、劫火を纏った化物が跳び出て来て彼を打ちのめす事は自明。負けるつもりも毛頭ないがしかし、まだ勝てない。そう理解もしている。
なので。目の前に居て己を舐めた眼で見ている、【ジムトレーナー】なのだという人間とそれと共に居る名も知らぬ異形へその憤懣をぶつける事にした。
「よろしくお願いします」
「ああ、よろしく」
弱々しい人間が頭を下げる。それに答える自信に満ちた【ジムトレーナー】。
「お前、どこぞの山で調子にノッてた所をあの人間に捕まったらしいなぁ。だっせぇ」
「ああ? 誰から聞いた」
間違ってはいないがだからこそ苛つくので吹聴した奴は殺す。勿論こいつも殺す。そう彼は決意して問う。
「以前に来た、人間のガキだよ。雌の。『ボス』達に、絶対に甘く見るななんて連絡してきたんだけどよ、でもお前もその人間も別に強くなさそうだがねぇ?」
ニタニタとそう返してくる。
「ああ、そうかい。じゃあ、お強いお前にお前を壊してもらうよ」
彼も大きな口を三日月の様に歪ませてニタリと笑い返す。
そうこうしているうちに、「試合開始!」という誰ぞの掛け声により【ポケモンバトル】は開始された。
嗚呼。なんという不遜。だから、彼は。躰は勿論、心までもをぶち壊すことにした。
彼の眼が妖しく光る。