No.10 † 泉での遭遇劇 †

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フィリア大陸最東端の町・ハイルドベルグから北に進むか、南に進むか話し合った結果、『 フィリアの綺麗な海が見たい 』 というティアの意見により、此処から南下することに決まった。

正直な話、地元民の私も知識はあるものの、実際に南方には行った事が無かったりする。
大陸の東と西を行ったり来たり……前に居た施設は確か北方にあった筈……だから、南方のリゾート地に行くのは、これが本当に初めてなのです。

……とはいえ、そんなすぐに景色が変わるはずもなく、ハイルドベルグを出て南下するしばらくの道中は、樹木が生い茂った森の中の補正されていない道を歩く事になる。

アーシェ:「こりゃ、昼飯は此処で食うことになりそうだな。」
ティア:「そうね。ちょっと早いけど、もう昼食にしましょうか。」

それぞれ支度のために荷物を開き、食料やらアウトドア用品を支度する。

アーシェ:「ん?あ……木の実が残り少ないな。」
ティア:「本当。無くても大丈夫とはいえ、やっぱり、あると何かと助かるのよね。」
アーシェ:「ん~……ちょうど森の中に居るんだし、散歩がてらちょっと探してくるよ。ティアは昼飯の準備の方、よろしく。」
ティア:「えぇ。大丈夫?迷子になっちゃ駄目よ。」
アーシェ:「え?あぁ……うん、たぶん大丈夫だと思う。とりあえず、行ってくる。」


* * * * *


ティアと別れて少し森の中を歩いただけで、まぁ……見つかるわ、見つかるわ。

オボンやモモン、ナナシなど割とメジャーな物から、ソクノやイアの実などのそこそこ珍しい木の実が収穫できた。

アーシェ:「マトマ……マトマの実かぁ……う~ん……あのティアが、辛さで悶える姿も見てみたいような気もするけど、友人にそんな真似するのもなぁ……けどまぁ、ポケモンの中には辛い味が好きな奴も居るそうだし……ポロックの材料に……ん?」

木の実を求めて森の中を歩いていくうちに、気が付くと綺麗な泉の前に出ていた。

アーシェ:「へぇ……此処にも泉があるのか……」

泉の存在を確認し……そして、私は今の自分の姿を見る。
頑張って木の実を集めた代償として、泥や汗でちょっと汚れてしまっていた。

このまま飯を食うのもなぁ……かといって、ポケモンセンターの風呂もまだまだ先だし……

アーシェ:「……周りに人も居ないし……よし!」

私は木の実を地面にそっと置き、着ている物を全て脱いで泉の中に入った。

アーシェ:「冷たっ……でも、はぁぁ……気持ち良いな……」

透明で澄んだ水はとても冷たく、直接肌を刺激する。
全身の力を抜いて、水の上に浮かんで宙を眺めていた時、足の先にある茂みが動く音がしたので、慌てて泉の底に足を着けた。

茂みの揺れが止まり……上手くやり過ごしたかと思った瞬間、茂みの中から1匹のエネコロロが姿を見せた。

アーシェ:「エネコロロ?」


【 エネコロロ 】
おすましポケモン / 高さ:1.1m / 重さ:32.6kg / ノーマルタイプ
決まった住処を持たずに、マイペースで自由気ままな暮らしを好むポケモン。
他のポケモンが寝床に近寄って来ても、決して争わずに寝る場所を変える。
夜行性で、日暮れから行動を始める。
流行に敏感な女性トレーナーに好まれる。エネコロロ同士のスタイルや毛並みの美しさを競う。


野生のポケモンか?だったら、結構珍しいし……しかも、よく見たら色違いだ。

マジでゲットしたいけど、荷物は全部ティアの所に置いて来ちまったしなぁ……持参してるモンスターボールには既に3匹の仲間が入っている。

せめて、少しでも近くで眺めようと泉から岸へと出た瞬間———————……

「シャーリー、駄目だろ。勝手に行ったら……」

色違いエネコロロのトレーナーらしき男性が同じ茂みの中から出てきた。

アーシェ・男性:「「あ……」」

その場の空気が一瞬にして凍りついた。絶対零度状態である。

私はエネコロロを見るために、水の中から完全に出た状態で……いきなりの事で、大事な場所を隠す事もできないまま、完璧な全裸を初対面の男性の前に晒してしまい……

男性は男性で、いきなり見ず知らずの女性の一糸纏わぬ姿を目撃してしまい、驚きと戸惑いを隠せないでいる……。

アーシェ:「えっと………その、見られても減るモンじゃねぇとはいえ、そんなに見つめられると、さすがに恥ずかしいんだけど…………」/////
男性:「あ……いや、すまん!まさか女の子が居るとは思わなくって……!!」/////
アーシェ:「いっ、いや!私の方も……ちょっと警戒が緩んでたみたいで……!!あの、服を着るから、少し後ろを向いててくれないか?」/////
男性:「え?あっ……あぁ、わかった!!」/////

男性がシャーリーという名のエネコロロをボールに戻し、慌てて私に背を向けてくれたので、その間に急いで服を着てしまう。

アーシェ:「も……もう、大丈夫。こっち向いてくれて良いぜ……」/////
男性:「その……本当に悪かった!何せ、この地には来たばかりで……南下しようと、この森を突っ切る途中で、野生のポケモン相手に出してたエネコロロが……」
アーシェ:「ん?お前、旅行客なのか?」
男性:「まぁ、そうなるかな……俺は『 コルボー 』。シンオウで働いてたんだが、自分の強さを磨きったくて……な。有給休暇をフル活用して、観光がてら旅をしてるんだ。」
アーシェ:「そうなのか。私はアーシェ・バーンハルウェン。私も今、仲間と一緒に……あ。」
コルボー:「どうした?」
アーシェ:「やっべぇ……そういや、ティアを待たせたままだった。そうだ!せっかくだし、コルボーも一緒にどうだ?さっきのあの調子じゃ、昼飯まだ食ってねぇんだろ?」
コルボー:「え?いや、まぁ……そうなんだけど、良いのか?急に邪魔しちまって。」
アーシェ:「うん。大丈夫、大丈夫。こういうのは人数が多い方が楽しいだろうしな。最悪、足りなかったら私のを分けてやるよ。」


* * * * *


アーシェ:「ごめん、ティア。待たせちまって。」
ティア:「いいのよ。丁度今、できたところだし……あら?そちらの方は?」
アーシェ:「シンオウ地方からのお客さん。森の中で迷子になってたのを助けた。」
コルボー:「迷子って言い方は勘弁してくれ。えっと……初めまして、コルボーといいます。」
ティア:「あらあら、そうなの。私はティアと申します。アーシェちゃんの旅の仲間兼保護者をやってます。」
アーシェ:「旅の仲間ってのは認めるけど、保護者は勘弁してくれねぇかな?」

とりあえず……談笑を含んでの楽しい昼食を済ませ、再出発の準備をする。

アーシェ:「あっ……なぁ、コルボーは南下するんだったよな?」
コルボー:「あぁ。南下したら次は西、北……かな。大陸中央にも行ってみたいとは思うが……とりあえず、本土から呼び戻しの連絡があるまでは、道なりに旅をするつもりだ。」
アーシェ:「そっか!じゃあ、どうせなら私達と一緒に行かないか?進む方も一緒だし……何より、地元民が1人でも居たほうが良いだろ?」
コルボー:「いや……そう言ってくれるのは嬉しいけど、女性だけの旅に野郎を含んで大丈夫なのか?何より、お前の独断で決めてしまってるようだが、ティアの意見は……」
ティア:「私?私もアーシェちゃんの意見に賛成。旅の仲間は多い方が楽しいし……何より、男の人が居てくれると心強いわ。」
コルボー:「そうか?じゃあ、ティアの賛同を得られたようだし……アーシェの勧誘を受けるとするかな。しばらくの間、厄介になる。宜しく頼むぜ、アーシェ、ティア。」
アーシェ:「おう!私達の方こそ、よろしく頼む。」ニコッ
ティア:「宜しくね、コルボーさん。」ニコッ

私はコルボーと握手を交わし……そのまま、コルボーの顔を引き寄せる。

コルボー:「うおっ!?」
アーシェ:「(コルボー。その……さっきの泉の件……ティアには内密に……頼む!お互いのためにも……な?)」ヒソヒソ
コルボー:「(あ……あぁ、わかった。)」ヒソヒソ
ティア:「どうしたの?2人共。」
アーシェ・コルボー:「「いっ……いや、何でも無い!!」」
ティア:「本当?何か、アーシェちゃんの顔が赤いんだけど……」
アーシェ:「気のせい!!全然大丈夫、問題無い!平常運転だから!!ほら、出発しようぜ!!」/////

くっ………思い出しただけで、顔が熱くなってきた。

けどまぁ……うん。衝撃的な出会いだったけど、新しい仲間ができた事は素直に喜ぶべきだろう。

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