6.シンオウ神話

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この作品には残酷表現があります。苦手な方は注意してください

うみや かわで つかまえた
ポケモンを たべたあとの
ホネを きれいに きれいにして
ていねいに みずのなかに おくる
そうすると ポケモンは
ふたたび にくたいを つけて
この せかいに もどってくるのだ

ーーミオ図書館 シンオウ神話より


 旅人はシンオウのとある村にやってきた。この村は人口は少ないが、漁業が盛んと聞いていた。
「なんだあれ?」
川付近に「永久機関」と書かれた看板を見つけた。看板の近くでは一人の男性が釣りをしている。
「こんにちはー」
「ここらでは見かけない顔だな」
「旅をしている者です。お聞きしたいんですが、永久機関ってどういう意味なんですか?」
「これのことか」
 男は旅人に説明をはじめた。


「ここで捕まえたポケモンを食べた後、骨を綺麗にしてここに流すと、ポケモンが肉体をつけて戻ってくるんだ」
「はい?」
 旅人は、言っている内容が理解できなかった。
「(シンオウ神話にそういうのがあるのは知ってるけど……)」
「村にはこういう場所が何個もあって、分かりやすいように『永久機関』って看板を立てている」
「待って下さい。本当に戻ってくるんですか?」
「戻ってくるよ。戻ってくる」
 男は、それがさも当然のような口調で話す。
「だいだい戻ってくるのに四十五秒かかるかな。戻ってきたら、もちろんもう一回捕まえて食べる」
「確かにシンオウ神話でありましたけど。そういうのって伝承みたいなもので、マジで戻ってくるものだとは思いませんでしたよ」
「いや、本当に戻ってくるよ。他の村は知らないけど」
「知らなかった……。ちなみに、何回流しても戻ってくるんですか?」
「いや一回だけだよ。一度戻ってきたポケモンをもう一回流しても、返ってこないよ。そりゃあそうだよ。何回でも戻ってきたら、この村大金持ちになっちゃうよ。永久機関、っていうのはあくまでそういう表現だから」
「まあまあ、それはそうでしょうけど。でも一回戻ってくるだけでも、十分凄いですよね。単純に考えて、倍捕れるってことじゃないですか」
「そうだな。おかげでうちの村は漁業が盛んだ。俺みたいに個人で釣りやる人も多い」
「……大丈夫なんですかこんなことやってて? バチとか当たりそうな気が」
「別に大丈夫なんじゃない? よし! 今月は46匹釣れた。ということは、92匹釣れたってことか」
「……」
「お前もここで釣りやってみるか?」
「すいませんが用事あるんで。これで失礼します」


 旅人は村から速攻で抜け出した。
「この村気持ち悪っ!」

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