戦略士官ルーナメア⑤

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ルーナメア(ラティアス♀)
エルニア(エルフーン♀)
 かつて読み聞かされた童話に、お菓子の家が出てきたことを覚えているだろうか。それを初めて語られたとき、幼いラティアスは想像を巡らせ、気がつけば涎をじゅるりと垂らしていた。
 その夢が、ルーナメアとエルニアの眼前に広がっていた。
「お、お菓子の……」
「街じゃと……」
 圧巻だった。チョコレートで建てられた摩天楼、サクサクとしたクランブルの商店街、お城は甘いホイップクリームに包まれ、マホイップの兵士たちが、飴の槍を掲げて見回りをしていた。
 異界『第七スペース』、通称スイーツシティ。この世界は甘味素粒子でできていた。
「中佐」エルニアは綿を震わせながら呟いた。「もう我慢できません、今にもこのエデンに飛び込んでしまいそうです」
「耐えるのじゃ、少尉。わしらは地球連合艦隊の士官であるぞ。士官養成学校でこれよりも辛く厳しい試練に耐えてきたじゃろう、すべては受付を済ませてからじゃ……」

 たとえお菓子の世界といえど、無秩序に食べられてはあっという間に崩壊してしまう。そのためスイーツ目当てに訪れた観光客は、取り壊し予定の廃屋に案内される。それでも壁はチョコレート、屋根はクッキーで、飴の窓を堪能できる。ルーナメアたちもまた、マホイップの兵士に連れられて、高くそびえるマンションの屋上にやってきた。
 既に他の観光客が、ケーキの鉢植えやチョコレートの床を囓っていた。
「皆さんはラッキーでしたね」マホイップはニコニコ微笑んで言った。「このマンションは立て替えを予定しているのです。皆さんがたくさん食べてくれれば、それだけ早く着工できるので、ぜひ頑張ってください!」
 頑張れと。なるほど。
 ルーナメアとエルニアは互いに視線を交わして。じゅるりと涎を垂らして、にんまりと笑った。
「艦隊士官の名誉にかけて、喜んで解体に協力しようぞ!」
「合点承知です、中佐!」
 2匹の獣が、甘い天国に向かって飛び込んだ。
人助けのためならば!

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