黄金の宝玉

しおりが挟まっています。続きから読む場合はクリックしてください
 
ログインするとお気に入り登録や積読登録ができます
読了時間目安:9分
 脳裏によみがえる記憶の数々に、私は向き合っていた。
 そうだ。グラ……いや、きんのたまおじさんは世界のどこにでもいた。

 あの日、カントー地方トキワシティで初めて出会った。
「それは、おじさんのきんのたま! おじさんの、きんのたまだからね!」
 そう言って、きんのたまを押しつける。ただの変態だった。

 カントーといえば、3の島といわれるナナシマの一つにも彼は居た。
「それは、おじさんのきんのたま! おじさんの、きんのたまだからね!」
 やはり変態だった。しかも、そのあと、ダウジングマシンを使うとなぜか“きんのたま”が埋まっていた。
 記憶があやふやだが、確かにカントー地方に“きんのたま”を景品にし、ポケモンバトルを仕掛ける集団がいた。当然無関係ではあるまい。

 シンオウ地方のことだ。ある森の中に隠れるように彼はいた。当時のマスターがポケモントレーナーだと思って近づいたのだが、バトルを仕掛けてくる気配もなく、話しかけたところ、
「さがしたかい? まちかねたかい? きんのたまおじさんだよ」
 相変わらず変態だった。
「きみにこれをあげちゃうよ。おじさんのきんのたまだからね。有効に活用してくれよ」
 もうどうしようもない。

 ――しかし、その後が酷かった。一度、別のマスターに引き取られ、再度シンオウを訪れたときのことだ。同じ場所にやはり彼は居た。
「さがしたかい? まちかねたかい? きんのたまおじさんだよ」
 またか、と半ば呆れる程度だったが、現実は予想を上回る。
「特別にもう一個あげよう。だって、きんのたまだからね!」
 変態以外の何者でもなかった。
 その後、シンオウ地方のリゾートエリアの“めずらしい石を集めている”人が住んでいるという別荘に“きんのたま”があるのを見つけた。また、そのリゾートエリアの池の中央にある木を挟むようにして、2つの“きんのたま”が落ちており、まるで何かを暗示しているようであった。

 あと、イッシュ地方だ。私が当時のマスターとプラズマ団を追いかけ潜入した電気石の洞穴でのことだ。そこに双子のトレーナーがいた。この時にはうっすら顔に見覚えがあり、嫌な予感がしたのである。
「なんたって兄より立派な、きんのたまだからね!」
「なんたって弟より凄い、きんのたまだからね!」
 兄弟揃って変態だった。
 また、数年越しに同じ場所を訪れたときには、おじさんは、ひとりの少年を引き連れていた。いつもと違うパターンに少し面食らう。
「……おじさんのきんのたまだからね!」
「ぼくは、きんのたまボーイ!」
 どうかしていた。しかも、おじさんがくれたものが“きんのたま”であり、少年がくれたのが“でかいきんのたま”であったことも闇が深い。

 カロス地方では会わなかったように思う……いや、姿こそ見えなかったが、今思い返すと不自然だったことがある。
 クノエシティのボール工場をフレア団が占拠し、当時のマスターとこれを撃破したときのことだ。そこの社長がお礼の品をくれると言い、好きな方を選べと提示したものが、一つはマスターボール。そして、もうひとつは……きんのたま。
 結局2つともくれることになった。当時のマスターのライバルとも言うべき友人も隣にいたので、このとき、“きんのたま”は2つ譲渡されたことになる。これは何かを暗示していないか。さらに不自然なのはその時の社長の様子だった。
 社長は「でかいきんのたまの使い方は私にもわからない」とやたら念押しに言って来た。今思い返すとあまりにもおかしい。
 また、別の場所になるが、キナンシティでも、“きんのたま”を拾ったが、そのすぐ傍に茂みが二つ、それに挟まれるように木が生えており、これもまた何かを暗示しているかのようだった。

 そういえば……ホウエン地方だ。
 キンセツシティの屋上を歩いていると、当時のマスターのもとへ歩いてくる人影がいた。マスターに向き合うと唐突に、「はいっ。手を出してね!」と言う。反射的に手を出したマスターに、そのおじさんはおもむろにそれを手渡した。今までは話しかけてくるパターンがなく、油断していたかもしれない。
「……あー! 手に持っちゃった! それじゃ、それは今からキミのものだね! いやー、よかったね!」
 想定どおり、きんのたまであった。
 もちろん得意の台詞を言い残し、きんのたまおじさんは去っていく。
「それは、おじさんのきんのたま! 有効に活用してくれ! おじさんのきんのたまだからね!」
 私はその前のことは知らないのだが、ホウエンのマスターがその時、「あのおじさんには前にも会ったことがある」と教えてくれたエピソードがある。
 本格的にホウエン地方を巡る旅に出る前、ダイゴという男から色々なお願いをされ、それを受けちょっとした冒険に出ていたという。
 ある依頼を受けた時のことだ。
「ある島に……あるおじさんが出没するってウワサなんだ。何やら危ない予感がするのでついてきてほしいんだ」
 そんなダイゴの頼みを受け、当時のマスターはその島へ向かった。
 迷路のように入り組んだ島の奥へ行くと、一人のおじさんがいたそうだ。おじさんはマスターを見かけると声を掛けてきた。
「はいっ、おいっ、そこのっ、少年っ。おじさん、いっぱい持ってきたぞ! きんのたまを! ホウエンに!」
 そしてきんのたまを渡されたらしい。
「まだまだ、たまは、たーんとあるぞー。よーし、どんどん配るぞー」
 そう言い残すとおじさんはどこかへ消えて行ったという。
 何はともかく依頼はこなしたのでダイゴの元へ戻ると、ダイゴに「キミが無事で安心したよ」と言われ、自分から「ついてきてほしい」とお願いした癖に、そのあまりの白々さに腹が立ったと言っていた。
 また、その時マスターは「なぜか島にキノココしか出て来ないのも不思議だった」と首を傾げていた。これもきっと何かの暗示だ。

 そして、アローラだ。
 アローラでの出来事はまだ記憶に新しい。今の目の前のグラと名乗ったおじさんのラフな格好に通じるものがある。
 アローラ他方ウラウラ島のマリエ乗船所に着き、当時のマスターが一人のおじさんに話しかけると、
「いやー、長旅を経て、やっとこさアローラに着きました! 最初に出会えたトレーナーさん。記念にこれをどうぞ!」
 そして、その後に決めゼリフ。
「それはおじさんの、きんのたま! 有効に活用してくれ! おじさんのきんのたまだからね! ……しかしアローラ地方は島ばかりで、おじさんのふるさとと似ているね! おじさん、ナナシマでたくさんのきんのたまを掘り当てたからね。あちこちに配っているんだね」
 アローラでは、至るところで、おじさんではない人から意図的とも思われるタイミングで、きんのたまを押しつけられることがあった。他の地方でもそういったきんのたま絡みのエピソードはこの他にも語るに尽きない。
 おそらく、目の前のグラの息のかかった連中だろう。

 そういえば……。アローラで思い出したことがある。エーテルパラダイスで、ある人から、でかいきんのたまを55個渡された。この人によれば、サカキに乗っ取られた部屋に、大量に隠されていたらしく、「きっとレインボーロケット団の運営資金でしょう」と述べていた。
 このことには、きんのたまおじさんは関わっていないかもしれないが、ロケット団が昔きんのたまを集めていたこととは関連があるかもしれない。

 アローラのマスターと共にレインボーロケット団と闘った記憶が少し蘇る。ロケット団と名に冠する組織は、しかし正しくはロケット団ではない。最大の共通項といえば、その組織を束ねる首領がサカキである点だ。
 そのサカキが、私の知るサカキかどうかは別だ。ウルトラホールと呼ばれる事象がこの世界にはあり、俄には信じがたいが、そのサカキは時間と空間を超えた別の世界からやって来たのだという。
 思い出そうとしても、それ以上の記憶はなく、もしかしたら、きんのたまに関する記憶のインパクトが強烈すぎたのかもしれなかった。

 *

 ――以上を私は瞬時に思い出したのだ。
 時間と空間を超越して存在する、きんのたま。これには、この世界の外にある強大な存在が何かしら関与していると思わざるを得なかった。
 目前の、きんのたまおじさんがどういう存在かはわからないが、彼の話を引き続き聞くしかない。私は動揺を押し隠し、努めて冷静を装った。

――――――――――
【補足】信じる信じないは貴方次第……

 恐ろしいことに今話はパロディでも筆者の悪ノリでもなく、ポケモンシリーズ内で見聞きできる、公式の話である。
 今回ばかりは基本的にはゲームに忠実に作成したつもりであり、諸々の文献を元に記載したが、調べれば調べるほど、常軌を逸しているしか思えなかった。「きんのたま」にかける異常なまでのゲーム製作陣の並々ならぬ熱意と、狂気的ともいえる愛を感じるエピソードであった。みんな、下ネタ好きなのだろうと思う。
――――――――――

読了報告

 この作品を読了した記録ができるとともに、作者に読了したことを匿名で伝えます。

 ログインすると読了報告できます。

感想フォーム

 ログインすると感想を書くことができます。

感想