かつての姿に思いを馳せる

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 皆さんこんにちは。本日も主人が仕事をしている間に、僕は家でお留守番をしながら、家事をこなしています。特に皿洗いや洗浄に関しては、みずタイプの僕にとって造作もありません。
 どんなにガンコな汚れでも、指先一つでねらいうち!高圧洗浄機並の強さで発射すれば、車の洗浄や風呂場の掃除もできて、逆にジョウロ並の弱さに調整すれば、主人が趣味でやっているガーデニングの水やりもできちゃいます。

 「うんうん、今日もお手伝い完了。まさかこんな形で、僕の得意技が活躍するとは思いませんでした」

 ベランダに置いてある花壇の水やりを終えて、僕は両腕を上にグーッと伸ばす。ちょうど近くで洗濯物を干していたシーちゃんも、空になった洗濯かごを抱えてやって来た。

 「レオンくんお疲れ様。お花の水やり、もう完璧にできるようになりましたね。すごいです!」

 「あ、ありがとうシーちゃん。こっちも全部終わったから、一緒に中へ戻ろう」

 シーちゃんが持っている洗濯かごを一緒に運び、僕たちは今日の家事をやり終えた。
 敵ポケモンを倒すためにずっと磨いてきた、僕にとって最大の武器だったこの技。それ故に最初は加減が分からずに、水圧で皿を真っ二つに割ってしまうこともありました。しかし、今までのように練習を重ねていき、気がつけば機械のように調整ができるようになりました。
 まさか成長してからもこんな経験を積むとは思いませんでしたが、昔もこんな風にひたすら特訓を続けていたなと、少し懐かしさを感じています。
 リビングに戻った僕は、冷蔵庫からおいしい水を取り出して、シーちゃんが用意してくれた青とピンクのマグカップに注いで、一緒にリビングのソファーに座る。

 「…ふぅ〜。お手伝いを終えた後の水は、一段と美味しく感じるね」

 「フフッ、本当ですね。ただのおいしい水なのに、不思議と疲れが吹き飛んでしまいます」

 半分くらい飲み終えた僕は、そのままソファーにもたれてリラックスする。そんな僕を見ながら、シーちゃんは何故かクスクスと笑っている。

 「ど、どうしたの?何か可笑しかったかな?」

 「あ、いえ…こうして一緒においしい水を飲んでいると、昔マスターと特訓した後も、おいしい水を飲んでいたなと、懐かしんでいただけですよ」

 あ、そうか…確かに僕も昔、主人との特訓を終えた後は、いつもおいしい水を飲んでいた。シーちゃんも同じだったのか…。

 「僕も同じだった、懐かしいね…。確かまだ僕たちが、メッソンとラルトスだった頃だよね?」

 「はい、まだ私が技も少なく臆病だったり、レオンくんが泣き虫だった頃ですね。フフッ」

 う、恥ずかしいことを思い出させてくれますね。確かにあの時は何事にも自信が持てず、主人の前で泣いてましたが…

 「じ、じゃあ今の僕はどう思いますか?」

 少しむきになって、そんな質問をぶつけてしまった。さすがに答えづらいかと思いましたが…

 「そうですね…。今のレオンくんは、とても強くなりましたし、見た目もカッコよくなりましたね」

 無垢な笑顔でシーちゃんはそう答えた。てっきりヒョロっぽくなったとか言われると思ったので、予想外の言葉に僕の顔が熱くなるのを感じた。

 「ち、ちょっとお水おかわりしてくる!」

 空になったマグカップを持って、僕は逃げるようにキッチンへ向かった。そして再び、おいしい水をマグカップへ注いで、それを一気に飲み干した。

 「う〜、いきなりあんな風に褒められたら、どう反応したらいいのか分からないよ…」

 僕は頭を抱えながら、小声でそう呟く。そして熱を冷ますかのように、僕の尻尾はぶんぶんと揺れていた。

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