レノードとミュウツー②

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 一世紀以上も前のこと、ミュウの化石に含まれる遺伝情報から史上最強の人工ポケモンを造るべく、日夜研究を重ねてきた科学者たちが、陰謀論にハマったミュウツーを見たらどう思うだろうか。食堂の一角でスープをかき混ぜながら、レノードはにんまりと口端を吊り上げた。
「2107年6月、ポケモンGメンの記録では、お前はカントー地方のヤマブキシティに半月ほど滞在していたらしいな」ミュウツーは食事に手をつけず尋問を始める。
「潜入捜査のため、シルフカンパニーの清掃業者に扮していました。裏でポケモンの闇取引が横行しているという内部告発の事実を確かめるためにね。あいにく商売敵のガセ情報でしたが」
「なら、これは知っているか? 同じ頃、ロケット団幹部が、ヤマブキシティのホテルで死体で発見された事件だ」
「それは初耳ですね」
「妙だな。お前が活動拠点にしていたホテルで起きたんだぞ。場所も時期も同じなのに、知らなかった?」
「あいにく捜査に集中していたもので」
「死因は感電死だ。そういえば、お前が当時の任務に同行させていたポケモンは誰だった?」
「ウォッシュロトムです。そりゃあ、清掃業者ですからね」
「清掃業者だから。そうだな。凄い偶然だ」ミュウツーはまるで勝ちを確信したかのようにほくそ笑んでいた。「やはり睨んだ通りだ。ポケモンGメンは、表では重大事件の解決を使命に謳いながら、裏で暗殺や破壊工作に勤しんでいた」
「とんだ濡れ衣ですよ!」レノードはひどく落胆したような顔をして見せた。「あなたの口から、そんな風評が出てくるなんて思わなかった。ちゃんと現実の僕を見てください。僕がそんな恐ろしいことができる人間に見えますか?」
「いいや」ミュウツーがテーブルから身を乗り出して、にたにた笑顔が眼前まで迫ってきた。「だが、この先お前の行動から目を離さない。船の保安責任者はこの俺だ。何を企んでいようが、必ず阻止してみせるからな」
このふたり良いな…もっと話してほしい…!
次回から通常の短編集に戻ります。

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