ユリちゃんは少し背伸びしたい

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「ユリちゃんの将来の夢は?」
 よくある、先生からの宿題。クラスメートの皆はヒーローや、パティシエ。ポケウッド俳優なんかも。そんな夢ある職業が出てくる。
「……お医者さん、かな?」
 私の場合は、あまり悩まずにこうだった。わっと歓声が上がるのを覚えている。多分、成績はずっと良いから。皆に本気だと思われたんだ。

「司書さん、解剖学の本ってある?」
 イエッサンを連れた、褐色の綺麗なお姉さんは驚いていた。私が真面目に頼み込むと、図録を探してきてくれた。でも、「ちょっと中は刺激的かもよ……?」と心配そうに教えてもいた。隣のイエッサンと同じ下げた瞳が、何だか可笑しくなる。
 何となく、私はリアルな専門書に手を伸ばしたくなったから。静かな市内図書館の一室。眼鏡の大人達に紛れて、平然と本を捲ってみる。中身は、難しい言葉だらけ。ちょっとした図解も、白黒で断面として載ったり、かなり味気ない。
 膝にはミミッキュが座っていて、きっと絵本を読む女の子に見える。実際には、分からない図面とカルテの用語が並んでいる。
「きゅきゅ?」
 膝にいた、ミミッキュのキューちゃん。私がずっと分厚い本とにらめっこしてたから、眠たそうだ。つまり退屈ということ。
 この分からなさを話のタネに、またラングドシャ先生に聞きに行くというのも。先生は喜ぶかもしれないけど、今回はやめようと思った。私、多分ちょっと浮かれていたから。この分からないって、ようは私と先生の壁だ。現実的な、知識と経験の差。溜息が出る。ミミッキュが私に話しかけてくる。
「どうせなら驚かせたいの」
 「焦らなくていいよ」って言われてるような。そんな優しさ。よく見ると、黒い手に飴を握っていた。
「飲食禁止だよ……?」
 ふふって笑ってしまった。お友達に似て、イタズラっ子になりつつあるのかな? なんて思って、飴玉を隠すように放り込んで笑っていた。

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